英霊に出会いを求めるのは間違っているだろうか 作:ゲーマーN
「【ファイアボルト】!!」
発光する右手から放たれた大炎雷が、巨人の『
『――――――――――』
白い稲光とともに凄まじい轟音を撒き散らしながら、大炎雷は衝突した魔力塊を粉砕し、そしてその先にあったゴライアスの頭部を一過――撃ち抜いた。
右目を含めた僅かな部分を残し、巨人の顔面が八割方消失する。間を置いて巨大空間である階層の果てに魔法は炸裂し、絶壁を爆砕する。
頭を失って生存できる生物はいない。勝った――そう冒険者達が信じ込もうとした、その直後。
「!?」
夥しい赤い粒子が、巨人の首元から発生した。火山の如く立ち昇る光の粒子に誰もが言葉を失う中、おぞましい勢いで失われた巨人の顔が修復されていく。戦慄と絶望に抱き竦められる冒険者達の視線の先で、剥き出しの目玉が、未だ再生されていない眼窩の中でぎょろりと蠢いた。
その視線の先に在るのは自らに死を覚悟させるほどの痛打を届かせた者。即ち、ベル・クラネルを殺意のままに睨み付ける。
「――ベルッ、逃げなさい!!」
平静をかなぐり捨てたリューの叫び声虚しく、ゴライアスから『
口腔が弾け飛び、牙の破片と血肉を混ぜ込んだ魔力の塊がベルの体を吹き飛ばす。ズタボロになる彼の瞳に飛び込んできたのは――大砲弾となって突き進んでくる山のような巨躯だった。
意識が凍る。回避不可能、かつ疑いようのない一撃必殺。直撃を待つのみの巨人の鉄槌に、ベルが己の死を確信した、まさにその時。
「――」
目の前に、偉丈夫が飛び出した。
誰よりも早く駆け出していた冒険者、桜花が、ゴライアスの拳の前に割り込んだ。
その目を限界まで見開きながら、ベルは、桜花と共に殴り飛ばされた。
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
散る血飛沫、剥がれ落ちる眷属のエンブレム。
巨人の雄叫びに打ち据えられながら、宙を舞った二人の体が地面に叩きつけられる。
◇
『もし、英雄と呼ばれる資格があるとするならば――』
◇
薄れ行く意識の中に、その声が、英雄譚を読み聞かせてくれた祖父の声が聞こえた気がした。
『……剣を執った者ではなく、楯をかざした者でもなく、癒しをもたらした者でもない』
幼い憧憬の日々に訪れた、少年にとって原点の言葉。
(己を賭した者こそが、英雄と呼ばれるのだ)
祖父の言詞。その最後の一言を心の内で口にしたベルは、殆どを黒が占める闇の狭間で、血が微かな視界をも覆い尽くす中、己の全てを――今、絞り出せる全てを賭した。
「……素に、銀と鉄。礎に……石と、契約の……大公。祖には……宙を裂く雷霆」
◇
桜花とは別の方向へ転がったベルを救い出そうと疾走していたリューが素早く駆けつける。しかし、それを許すようなゴライアスではない。自らの命を脅かしかねない目の前の命を確実に葬り去るために、三度の『
――間に合わない。絶望が脳裏をよぎる。また、私は目の前で命を失うことになるのか。五年前の悲劇が、仲間の死に際が、リューの足を止めてしまう。
「え……?」
だが、彼女の
「偽りの正義が消えれば――そこには調和と秩序、そして笑顔が生まれる」
マジックサークル。ベルの傍に展開された魔法陣の内より、一つの人影が姿を見せた。
「リオン……久しぶりね。どう? あんたの正義は見つけられた?」
緑の瞳を持ち、滑らかな赤い髪をポニーテールに纏めたヒューマンの少女。
「アリー……ゼ……?」
アリーゼ・ローヴェル。かつてリューが所属し、正義を掲げ、オラリオの治安維持を行っていた【アストレア・ファミリア】の団長が、今再び正義を為すために地上へと舞い降りた。
【アリーゼ・ローヴェル】
所属 :【ヘスティア・ファミリア】
ホーム:廃教会
種族 :英霊
クラス:セイバー
レベル:5(天界での修行により生前からランクアップしている)