英霊に出会いを求めるのは間違っているだろうか 作:ゲーマーN
【ヘスティア・ファミリア】対【アポロン・ファミリア】、今回の戦争遊戯の形式は攻城戦。両陣営の冒険者は既に戦場に身を置いており、正午の始まりの鐘とともに行動を開始する。
無数の団員を抱える【アポロン・ファミリア】と団員一桁の【ヘスティア・ファミリア】、戦力差は絶望的であり、余裕の表情をするアポロンに対して、ヘスティアはどこか不安そうな表情で目の前の鏡――『神の鏡』を見つめていた。
「ベル・クラネルとは別れを済ませてきたかい?」
「……」
無言を返す女神の姿に、アポロンはやれやれと肩を竦め、優雅な所作で自分の席に戻っていく。
『それでは、間もなく正午となります!』
実況者の声が木霊する。
冒険者が、人々が、神々が、全ての者の視線が『鏡』に集まった。
そして、
『
号令のもと、大鐘の音と歓声とともに、戦いの幕は開けた。
◇
同時刻、古城東側、荒野の中央を静かに歩んでくる……全身をマントで覆った、謎の人物。
「お、おいっ」
「なんだ……?」
奇怪な格好をした人物だった。おそらくフード付きのケープを身に付け、その上から更にマントを羽織って全身を覆っている。フードで顔を覆ったその人物に弓使い達も気付く。
まず間違いなく敵だろう。だが、たった一人で、詠唱をするわけでもなく、黙々と歩いてくる正体不明の人影に【アポロン・ファミリア】の構成員は狼狽えていた。
城壁から約100Mまで接近すると同時、その人物はバッと両腕を広げ、マントを脱ぎ去った。
「は?」
細い両手が握り締めていたのは、紫色に染まった――一振りの魔剣だった。
◇
「アーディ……!?」
その人物の素顔を目にした【ガネーシャ・ファミリア】の団長シャクティ・ヴァルマは、その青い瞳を大きく見開いた。何故なら、『鏡』が映し出した人物――アーディ・ヴァルマは彼女の妹であり、7年前、【暗黒期】の戦いで死亡したはずの人物だったからだ。
同じくアーディの名と姿を知る者達が一様に驚愕を露わにする中、実況を務める褐色の肌の青年の下に新たな情報が届けられる。
『新しい情報が届きました! 信じられません!? 正真正銘、彼女は【暗黒期】に死亡した【ガネーシャ・ファミリア】の団員、アーディ・ヴァルマとのことです! ベル・クラネルの魔法により、天界から召喚された正真正銘の彼女本人です! Lv.4の上級冒険者だ!』
◇
「フフンっ! この私がオラリオに帰ってきたわよ!!」
英霊は一人に非ず。反対側、西側では同じく外套を脱ぎ捨てたアリーゼが、真紅の魔剣を振り抜いていた。城壁の上にいた者達の目の前で、凄まじい震動と爆音が炸裂する。
「な、何だァ!?」
東西から押し寄せてきた衝撃に、古城内部は混乱に陥っていた。
砦の正面から外に飛び出した者達は、その光景を見上げ、同時に言葉を失う。
膨大な土煙を上げ、城壁の一部が破られていた。
「し、信じらんねえっ!? あいつら、攻めてきやがった!?」
城壁の階段から転げ落ちるように団員の一人が戻ってくる。他の団員は慌てて彼に問い詰めた。
「数は!?」
「さ、三人だ!」
◇
『元【アストレア・ファミリア】団長、アリーゼ・ローヴェル! 【
そこで、興奮を露わに実況を行っていた青年の言葉が停止する。彼の視線の先には、信じ難い名前と情報が記されていた。
『……し、失礼しました! 最後の一人は、【ヘラ・ファミリア】の【才禍の怪物】! 【静寂】のアルフィア! 真偽不明ですが、情報によればLv.8とのことです!』
「な……が、ぁ……?」
その言葉に、アポロンは呆然とした表情で立ち尽くしていた。
上級冒険者が三人、その内の一人はLv.8。オラリオ最強の冒険者、【猛者】オッタルを上回る怪物が、敵として子供達の前の前に立っている。
その絶望を証明するように、フードを脱ぎ捨てたアルフィアは詠唱を口ずさんだ。
「【祝福の禍根、生誕の呪い。半身喰らいし我が身の原罪】――」
◇
「――【哭け、聖鐘楼! ジェノス・アンジェラス】」
大きな鐘の音とともに、古城の壁は跡形もなく消し飛んだ。
【アーディ・ヴァルマ】
所属 :【ヘスティア・ファミリア】
ホーム:―――
種族 :英霊
クラス:ルーラー
レベル:4(天界での修行により生前からランクアップしている)