うp主の妄想による、息抜きサブストーリー   作:天元突破クローズエボルハザード

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今回の依頼は……

キリト「うーん…………。どういうことだ、こりゃ?」
不可解な圏内殺人――

アスナ「このまま放置はできないわ。
もし、《圏内PK技》みたいなものを誰かが発見したのだとすれば、早くその仕組みを突き止めて対抗手段を公表しないと大変なことになる。」
パーティー再結成、捜査開始!

→被害者?カインズ
→容疑者?グリムロック

ヨルコ「――お話します。《出来事》……そのせいで、わたしたちのギルドは消滅したんです。」
被害者達の過去にあった事件――

→《ギルティソーン(罪のイバラ)

ヨルコ「二人は、"結婚"していました。」
ハジメ「結婚?」

→結婚システム

ハジメ「装備破壊……殺人トリック……」
ハジメ「全データの共有……ストレージとコルの統合……死別……分配率……離婚……」
揃っていく手掛かり――

ハジメ「……証明できた。」
トリックの真相とは!?


双剣9:Aの事件/二人の関係~解明編~

翌日、なんとか時間通りに二人の元へ着いた。すると、別れてから起こったことをキリトが報告してきた。

曰く、キリトが預かることになっていたあの短槍が、聖竜連合の《シュミット》に押収されてしまったらしい。

 

アスナ「DDAが?」

それを聞いたアスナが眉をひそめた。

DDAとは、ディヴァイン・ドラゴンズ・アライランスの頭文字で、つまり《聖竜連合》の略称である。

最大派閥のギルドだけあり、情報は早いようで早速自分たちも捜査するらしい。

 

ハジメ「次は俺だな……本当は昨日話したかったが、夜遅くだったしな……。」

そう言って俺は、昨夜まとめたメモを交えて、推理を話した。

ハジメ「まず、あの事件に関してだが……あれは《圏内PK》じゃない。殺人に見せたトリックだ。」

キリト・アスナ「「えっ!?」」

まぁ、他にもあるが最初はここからだろう。

 

キリト「でも、《生命の碑》には……。」

ハジメ「名前があったかもしれないな。でも……亡くなった日付は?」

キリト「え?」

ハジメ「もし、昨日の日付じゃなかった場合、そこから前提は崩れ去るはずだ。」

俺の言ったことを確かめるべく、キリトが黒鉄宮の《生命の碑》に確認しに行った。

そして数分後、戻ってきて言った。

 

キリト「ハジメの言ったとおりだ!亡くなったのは4月22日だ。」

アスナ「ちょっ、ちょっと待ってよ!?じゃあ、あの時亡くなったカインズさんは!?」

ハジメ「そこが出発点だったのだよ、アスナちゃん。」

そういうと俺は、街中にあった証拠を提示した。

 

ハジメ「こいつは、カインズさんのプレートアーマーの破片だったものを集めた残骸だ。

現場には、これらしか落ちていなかった。しかし、おかしくはないか?

もし、衣服以外にも何かあったら、落ちているはずなのに。」

アスナ「え、え~っと?」

キリト「!そういうことか!」

どうやら、キリトは一早く気付いたようだ。俺はキリトに頷き、アスナちゃんにもわかるように続けた。

 

ハジメ「本来、死んだプレイヤーの装備はドロップしないが、オブジェクト化されたアイテムは無条件でドロップする。

もし、プレートアーマーの以外にもオブジェクト化されたアイテムがあったとしたら、それが落ちているはずだ。

それがないってことは、考えられる理由は二つ。

一つは、衣服アイテム以外装備していない。もう一つは、PKに見せかけた転移のカモフラージュだ。」

アスナ「か、カモフラージュ!?」

驚くアスナ。まぁ、確かに暴論じみてはいるだろう。だが、確かな証拠はある。

 

アスナ「だ、だって…………、だって。」

それが信じられないといったように、かぶりを振り、掠れ声で反駁するアスナ。

アスナ「だって……わたしたち、確かに見たじゃない。カインズさんが……死ぬところを。」

キリト「違う。」

それにキリトが即答する。

 

キリト「俺たちが見たのは、カインズ氏のアバターが、ポリゴンの欠片を大量に振りまきながら、光を放って消滅する現象だけだよ。」

ハジメ「そう、あの時のポリゴン片は、カインズさんのプレートアーマーのもの。

圏内では、何があってもプレイヤーのHPは絶対に減らない。

でも、装備品とか、オブジェクトの耐久値は減る。

あの時、カインズさんのアーマーにはあの槍が突き刺さっていた。つまり――」

アスナ「あの槍が削っていたのは、カインズさんのHPじゃなくて、装備の耐久値だったのね……。」

そこまで話して、漸くアスナも理解してくれたようだ。

 

キリト「そゆこと。そして、正に鎧が壊れる瞬間を狙って、中身のカインズ氏は……」

ハジメ「結晶でテレポートした……

その結果発生するのは、死亡エフェクトに限りなく近い、まったく別のもの。」

アスナ「…………なるほどね……。」

アスナは瞑目し、深く息をつくと、安心したように呟いた。

 

ハジメ「そして、同姓同名の死亡者にヨルコさんとカインズさんの二人は、この偶然を使って、ある事件の真犯人を炙り出すことにした、ってとこかな?」

アスナ「ある事件?」

さて、次の推理と行くか。そう思った俺は、昨夜ヨルコさんから聞いた情報を、二人に話した。

 

アスナ「……そんなことが……。」

キリト「でも、それが一体どんな関係があるんだ?グリムロックが怪しいのはわかるが……。」

ハジメ「そう、そこ。ヨルコさんの情報では、二人は結婚していた。

そうなると、二人のアイテムストレージは、共有化されたことになる。ここが重要なポイントだ。」

不思議がる二人をよそに、俺は更に続けた。

 

ハジメ「俺が独自の情報網で調べ上げた情報によれば、結婚は「当事者同士の全データ共有」とされている。

まぁ、言ってしまえば互いにステータスをいつでも閲覧できる上に、アイテムストレージと所持コルが一緒になるってことだ。

個人情報保護もへったくれもないシステムだがな。」

そしてここで、グリムロックが指輪事件における犯人だと裏付ける証拠を提示する。

 

ハジメ「そして、離婚時には自動分配、交互にアイテムを選択しての等価、あるいはパーセンテージ配分によって成立する、とされている。

だが、無条件での離婚は、アイテムの分配率を自分0、相手100にしなければならない。

それが成立する場合が、一つだけある。もうここまで言えばわかるか?」

キリト「……まさか!」

またもやキリトが気付いたか。君のような勘のいい相棒は尊敬に値するよ。

 

ハジメ「……そう、死別だ。」

俺の言葉を聞いたアスナのその瞳が、一度、二度とゆっくり瞬かれる。

その目に浮かぶ色が戸惑いから、深い戦慄へと移り変わり、掠れた声で言葉を紡いだ。

 

アスナ「それって……それじゃあ、グリセルダさんは……。」

ハジメ「まぁ、待て。それだけじゃあグリムロックは罪を認めんだろう。」

キリト「!?何でだよ!?もう証拠は「最初に行った事例だ。」!」

そう、この推理には穴があるのだ。

 

ハジメ「もし指輪がストレージに格納されずにオブジェクト化され、グリセルダさんの指に装備されていたとしたら?

当然、犯人はそれらを持ち去るはずだ。」

キリト「!」

勿論、これを封殺するための切り札はそろっている。

 

ハジメ「だが、ヨルコさんの証言で裏が取れた。

グリセルダさんは指輪をどうするか、ギルド全員で会議をしたとき、こう言ったらしい。

"SAOでは、指輪アイテムは片手に一つずつしか装備できない。

右手にはギルドリーダーの印章(シギル)、そして……左手に指輪は外せないから、自分には使えない"と。」

アスナ「じゃあ……指輪はどこに?」

ハジメ「グリムロックが持ち去ったに決まっている。でも、さっきも言ったはずだ。」

そう、指輪はレアものだけではない。

 

ハジメ「右手にはギルドの印章(シギル)、左手にはグリムロックとの結婚指輪がある。

しかし、彼女の葬式の日に、何故かグリムロックはそれらをヨルコさんにあげてしまった。

まるで、そのアイテムが無価値だと判断するかのように。まるで殺害の実行犯と同じ行動に見えないか?」

キリト「確かに……何処かに埋めるなりなんなりしておけば、痕跡も残さないのにな。」

さっきの話で聞いた《シュミット》とやらも、犯人候補に浮上してはきたが、恐らくこっちはダミー。

グリムロックが自分の犯行を隠すための、替え玉だろう。

 

ハジメ「ヨルコさんとカインズさんは犯人を炙り出すために、疑似圏内PKを行った。

そしてそれに焦りを覚えているのが、グリセルダさん殺害に手を貸したシュミット。

それらを一望しているのが、主犯のグリムロック、といったところか。」

これが、俺が昨夜辿り着いた推理だ。キリトはその結論に納得し、アスナは困惑した表情だった。

まぁ、真相は本人達から聞けばいいだろう。そう思ったその時だった。

 

アスナ「……そういえば、どうしてハジメ君は結婚システムについて知っているの?」

ハジメ「……後日、キリトも交えて話すよ。」

やれやれ、仕方がないか。

その後日、俺がキリトに秘密にしてもらったことを、アスナに説明したのは、また別のお話。

 

その後は朝食がてら近くのカフェテリアで情報を精査することにした。

その際には、もしもの過程で話された《貫通継続ダメージ》の話題が上がり、ヨルコさんとの待ち合わせまで時間を余らせていたこともあり、ついでに検証する流れになった。

 

アスナ「で……実験って、どうする気?」

キリト「こうする気。」

怪訝な声を上げるアスナに対し、キリトは腰のベルトに装備した長さ12cmほどのピックを見せつけた。

ただ、HPの提供はしても、わざわざ装備の耐久値までとはいかないらしく、しっかりグローブは外している。

 

アスナ「ちょ……ちょっと待ちなさい!」

右手を振り上げ、もう投げます、といったところでアスナからストップがかかる。

治癒クリスタルを用意している辺り、相当惚れ込んでいるなこりゃ。

 

ハジメ「キリト、ここはアスナちゃんに従っておこうや。」

キリト「いや、でもこれくらいのピックだったら、そんなに減らな――」

アスナ「バカ!圏外じゃ何が起こるかわからないのよ!」

キリト「は、はい……。」

見事雷を落とされ、キリトのついでに俺もパーティーを組まされた。

 

キリト「じゃ、じゃあ、いきます。」

若干ビビりながらピックを構えるキリト、それを心配そうに見守るアスナと、紅茶を啜る俺。

キリトは大きく息を吸うと、モーションを起こす。ライトエフェクトがかかり、それが一定の軌跡を描く。直後にどすっと手の甲を貫通した。

先ほどパーティーを組んだので、画面端にキリトのHPバーが表示されている。

それを見ると、3%ほど削れている。

続いて、紅いエフェクトがかかると同時にキリトのHPバーが0.5%ほど削れる。

 

アスナ「……早く圏内に入ってよ!」

アスナに背を押され、近くのゲートまで向かう。その間も5秒ごとにHPが減少していく。

ゲートを潜り抜けると、視界に《INNER AREA》と表示が浮かんだ。そして――HPバーの減少が停止した。

 

ハジメ「……止まったな。」

俺の呟きに、キリトはこくりと首肯した。

キリト「武器は刺さったまま、でも継続ダメージは停止、か。」

アスナ「感覚は?」

キリト「残ってる。

これは……武器を身体に刺したまま圏内をうろつくバカモノが出ないようにするための仕様かな……?」

キリトはピックを摘まむと、一気に引き抜いた。不快な感覚が走ったのか、一瞬顔をしかめる。

さて、そろそろ時間か。そう思っていたその時。

 

キリト「……ってうわ!?」

突然の叫びに振り向くと、目の前では――

キリト「おまっ……な……なっ……!?」

キリトの左手がアスナに思いっきり握られていた。……青春してんなー。

 

アスナ「これでダメージの残留感覚消えたでしょ?」

キリト「―――う、うん、ま、ども。」

あー、コーヒーが甘いなぁー!

 


 

10時ちょうどに宿屋から出てきたヨルコさんは、昨日はよく眠れなかったらしく、目の下に隈ができていた。

そんな状態のヨルコさんをあれこれ連れまわすのは気が引けたので、昨夜夕食を取り損ねたレストランで話を聞くことにした。

 

ハジメ「昨日の情報のおかげで、真犯人を追い詰めることができるかもしれません。

ただ……そこまで誘き出す方法がまだ見つかりませんが……。」

ヨルコ「そうですか……では、やはり……。」

ヨルコさんの言葉に、俺達は頷いた。

 

アスナ「ね、ヨルコさん。あなた、槍使いの《シュミット》って名前に聞き覚えはある?」

俯いていたヨルコさんが、アスナさんの言葉を聞いてぴくりと震えた。

ヨルコ「……はい、知ってます。

グリムロック同様、昔、私とカインズさんが所属してたギルドのメンバーです。」

やはり、か。これで後は、シュミットから自白を引き出せばゲームセットだ。

 

ハジメ「それと、昨日の圏内PKについてですが……そちらについては真相に辿り着きました。」

ヨルコ「!」

その言葉にハッとなって顔を上げるヨルコさん。俺の推理は図星だったようだ。

 

キリト「あんたとカインズ氏は、シュミットの自白を引き出すために疑似圏内PKを起こした。

そして、指輪事件の真犯人を炙り出すために、今回のことを計画した。それであっているか?」

ヨルコ「……はい、私たちはリーダーを殺した真犯人を、見つけ出さねばならないのです。」

そう、ヨルコさんとカインズさんの二人が……ん?待てよ……。

 

ハジメ「……ヨルコさん、カインズさん以外にこのことを知っている人は?」

ヨルコ「え?グリムロックさんですが……?」

ハジメ「何ッ!?」

それは不味いな……いや、逆説的なチャンスかもしれない。

ハジメ「では、こういった作戦で行きましょう。」

そう言って俺は、真犯人を化かすための作戦を考案し、全員で黒幕を炙り出すことにしたのだった。

 


 

キリト「……しかし、豪勢な建物だよなあ……。」

アスナ「ほんと、どこにそんなお金があったのかしら?」

ハジメ「男ってこー言うのが好きだからしゃーなし。

それにかける情熱は、とんでもないくらいにヤバいのさ。」

午後2時。ヨルコさんと別れた俺達は、第56層《聖竜連合》の本部前に来ていた。

やってきた理由は、先日短槍を奪っていったシュミットに話を聞くためだ。

 

何の嫌がらせか、血盟騎士団本部のある55層のひとつ上の層に建てられた《ホーム》、いや《要塞》はつい1週間ほど前に完成したそうだ。

それを記念したパーティーには数百人いる攻略組全員が招待され、それはそれは豪勢なものだった。

 

だが、そこで事件が起きた。何と数百人分用意された料理の大半がものの30分で消えたのだ。

皆一様に「幽霊か!」、「いや、俺らに倒されたボスの亡霊の仕業だ!」、「それ結局幽霊じゃねーか!」と、騒ぎ立てた。

まあ、すぐに犯人は見つかったのだが……。

 

過剰な味覚信号が送られたことによる腹部の膨満感に顔を歪ませるキリト、クライン、エギルの3人。

呆れてものも言えないところだが、どうにか話を聞いてみる。

すると、キリトの口からある程度のことを聞けた。曰く、イヤガラセだそうだ。

あてつけのように行われた豪勢極まるパーティーにイラっときたらしい。

 

そんなことで3日間も苦しむんだから、始末に負えない。

まあ、それはそうとDDAの本部に着いたわけだ。

だが、さっそく話を聞きに行く、とはならなかった。

だって、デカすぎて、どうやってシュミットを呼んだらいいかわからないし。

 

アスナ「そんなの、あの人たちに訊いたらいいじゃない。」

ハジメ・キリト「「へ?」」

アスナの指さす先、そこにはRPGのラスダン前の中ボス的な感じの重装槍戦士がまるで仁王像のように立ちはだかっていた。

気にした風もなく聞きに行ったアスナを見送ると、キリトが話しかけてきた。

 

キリト「あれじゃあ門番っつうか、なんかの中ボスだよな絶対。」

どうも同じことを思っていたらしい。名付けるなら要塞ガーダーだろうか?

そんなことを考えながら、様子をうかがう。

 

アスナ「こんにちは。わたし、血盟騎士団のアスナですけど…。」

すると、巨躯の戦士がのっそりと動いた。これは……テンプレ的な展開か?

そう思っていた俺と、何か仕掛ける気か!と余計な気を回すキリトを裏切るかのように、軽薄な声が聞こえてきた。

 

門番「あっ、ども!ちゅーっす、お疲れっす!どーしたんすかこんなトコまで!」

早ぇーよ!キャラ崩壊速すぎだろぉ!?全然ボスでも仁王像でもなかったよ!思わずずっこけてしまった俺達。

見てみると、アスナの可憐な笑みにメロメロのご様子。……その純情が届かないことは黙っていよう。

 

アスナ「ちょっとシュミットさんに用事があって寄らせてもらったの。連絡してもらえます?」

数分後、「今日は頭痛がするから休む」と言っていたはずのシュミットはものすごい形相とものすごい速度で城門までやってきた。

『指輪の件で話がある』と言い添えたのが功を奏したらしい。

駆け付けるや否や、「場所を変えてくれ」と嘆願してきたので、とりあえず主街区に降り、手頃なカフェで事情聴取と相成った。

 

シュミット「誰から聞いたんだ。」

キリト・アスナ「「へ?」」

ハジメ「ギルド《黄金林檎》の元メンバーのヨルコさんからですが?」

主語言わないとわかんないでしょうに。

 

するとシュミットは、ヨルコさんの名前を伝えた直後に《安堵》の表情を見せた。

ってことは、グリムロックはコイツも口封じに殺すつもりってことか……。

そう考えていると、今度はキリトがシュミットに質問した。

 

キリト「シュミットさん。

昨日あんたが持ってった槍を作ったグリムロック氏、今どこにいるか知ってるか?」

シュミット「し……知らん!!ギルド解散以来一度も連絡してないからな。

生きてるかどうかも知らなかったんだ!」

激しく首を振りながら、早口でまくし立て、更に視線も右往左往させている。

まるで何処からか及ぶ魔の手を警戒するように。

と、ここで今まで黙っていたアスナが、窘めるように言った。

 

アスナ「あのね、シュミットさん。

わたしたちは、黄金林檎のリーダーさんを殺した犯人を捜してるわけじゃないの。

昨日の事件の手口を突き止めたいだけなのよ。《圏内》の安全を今まで通りに保つために。」

この言い方なら、安心して計画通りに誘導できそうだ。アスナ、ナイス!

 

アスナ「……残念だけど、現状で一番疑わしいのは、グリムロックさんです。

もちろん、他の誰かがそう見せかけている可能性もあるけど、それを判断するためにも、どうにかしてグリムロックさんに直接話を聞きたいの。

心当たりがあるなら、教えてくれませんか?」

アスナの真摯な眼差しに当てられると、立つ瀬なしといったところか、ぼそぼそとだが話し始めた。

 

シュミット「…………居場所はわからない。

でも、当時グリムロックが異常に気に入っていたレストランがある。

ほとんど毎日のように行っていたから、もしかしたら今でも……。」

キリト「ほんとか!?」

なるほど、毎日のように行っていたとなれば、今でも時折通っている可能性がある。

 

キリト「なら、その店の場所を……」

シュミット「条件がある。」

言いかけたキリトの言葉を遮り、シュミットはある条件を提示してきた。

シュミット「………彼女に、ヨルコに会わせてくれ。そうすれば教えよう。」

そうきたか、ならここからが、化かし合いの開幕だな!

 


 

ヨルコ・シュミット「「…………。」」

一時間後、どうにかセッティングしたヨルコさんとシュミットの話し合いの場。

念のため、双方の武装解除とウインドウを開かないことを守るよう厳命し、話し合いと相成った。

久しぶりに会うはずの、元《黄金林檎》のメンバー二人。

普通なら会話を弾ませる場面だと思うが、今はその限りではない。

しばし無言のまま視線だけ見交わしている。

 

ヨルコ「……久しぶり、シュミット。」

先に口を開いたのはヨルコさんの方だった。対するシュミット、一度喉を鳴らし、掠れ声で答えた。

シュミット「……ああ。もう2度と会わないと思ってたけどな。」

そこからは旧交を温めるように弾んだ会話を見せた二人。

但し、その心温まる会話も長くは続かなかった。

会話の内容がメンバーの、カインズさんの話題に触れ始めた辺りから壊れ始めた。

 

シュミット「何で今更カインズが殺されるんだ!?あいつが……指輪を奪ったのか?

リーダーを殺したのはあいつだったのか!?」

低い叫びに、ヨルコさんの表情も変わる。

今まで浮かべていた微笑は露と消え、正面からシュミットさんを睨みつけている。

 

ヨルコ「そんなわけない。

私とカインズが指輪の売却に反対したのは、お金に換えて無駄遣いするよりも、ギルドで使って有効活用するべきだと思ったからよ。」

シュミット「それは……、オレだってそうさ。

大体……指輪を奪う動機があるのは、オレたちだけじゃない。

売却派のなかにこそ、売り上げを独占したいと思った奴がいるかもしれないだろ!」

そのまま、ガントレットを身に着けた右手で自分の膝を叩き、頭を抱える。

 

シュミット「なのに……、グリムロックはどうして今更カインズを……。

俺たち三人を全員殺す気なのか!?」

怯えるシュミットを見て、幾何か平静さを取り戻したのか、ヨルコさんがぽつりと言葉を投げかけた。

 

ヨルコ「まだ、グリムロックが犯人と決まったわけじゃないわ。

彼に槍を作ってもらった他のメンバーの仕業かもしれないし、もしかしたら……」

その虚ろな視線は、なにを見るのか?

音もなく立ち上がると、ゆっくりゆっくり後ろの窓に向かって後ろ歩きをしていく。

 

ヨルコ「私、ゆうべ、寝ないで考えた。

結局のところ、リーダーを殺したのは、ギルメンの誰かであると同時に、メンバー全員でもあるのよ。

あの指輪をドロップした時、投票なんかしないで、リーダーの指示に任せればよかったんだわ。

私たちはみんな自分の欲を捨てきれずに、誰もそれを言い出せなかった。

結局、私たちはギルドじゃなくて、自分を強くしたかっただけだったのよ。」

長台詞を終えると、ちょうどヨルコさんの腰が窓枠に当たった。

そこに腰かけると、ヨルコさんはさらに続けた。

 

ヨルコ「ただ一人、グリムロックさんだけはリーダーに任せると言ったわ。

あの人だけがギルド全体のことを考えてた。

だからあの人には、私たち全員に復讐して、リーダーの仇を討つ権利があるんだわ……。」

しん、と静まり返るなか、かちゃかちゃ、と小さな金属音で気が聞こえてきた。

音源は、恐怖に身を包んだシュミットだった。うわ言のように何かを呟く最中、突然身を起こすと、叫ぶ。

 

シュミット「お前はそれでいいのかよ、ヨルコ!

今まで頑張って生き抜いてきたのに、こんな、わけのわからない方法で殺されていいのか!?」

皆の視線が窓際のヨルコさんへ集中する。

ヨルコさんは、視線を宙に彷徨わせながら、やがて何かを伝えようと、その唇を動かす。

 

――その瞬間。

とん、という乾いた音が部屋の中に響いた。同時、ヨルコさんの眼がぽかんと、見開かれた。

何事か、と俺達が動き出そうとしたその時、一陣の風がヨルコさんの背中に流れる髪をなびかせた。

そこで俺達は、信じられないものを見た。

ヨルコさんの背中、その中央には例の《ギルティソーン》によく似た短剣が突き刺さっていた。

前後に頼りなく揺れるヨルコさんの身体が、遂にぐらりと傾き、窓の外に落ちてゆく。

 

アスナ「あっ……!」

アスナの声にならない悲鳴をバックに、俺とキリト君は飛び出す。

どうにかヨルコさんを引き戻すべく、手を伸ばす。だが――

伸ばした腕は届くことなく虚空を掴むのみで、ヨルコさんは宿の外の通路へと落ちてゆく。

 

ハジメ・キリト「「ヨルコさん!!」」

叫ぶ僕たちの目の前で、地面に落下したヨルコさんの身体は青いエフェクトに包まれる。

ぱりん、という、破砕音。同時に、ポリゴンの欠片が、ブルーの光とともに拡散した。

その時、窓の先にひっそりと立つ黒衣の人影があった。

 

キリト「野郎っ……!!待てっ!」

キリトも人影を視認したようで、窓枠に足をかけて叫ぶと、そのまま逃げる黒衣のプレイヤーの方に向かって道幅5メートル分の距離を一気に跳んだ。

 

アスナ「キリトくん、だめよ!」

アスナが窓枠から身をのりだし、切迫した声で必死にキリトを止めようとする。

まぁ、相手は原理原則は不明ながら《即死攻撃》を仕掛けてきた輩だ。

攻略組トップの実力者とはいえ、そんな輩の攻撃を喰らってしまえば即死してしまう可能性は否めない。

 

そんな心配をよそに、キリトが何とか追い詰めようとするが、黒衣のプレイヤーは懐からなにかを取り出す仕草をする。

先程の短剣かと思い、キリトも剣を構えようとした。しかし、

 

キリト「……違う!」

黒衣のプレイヤーが取り出したのは転移結晶。

ただ、転移結晶は音声コマンドで発動するアイテムなので、この至近距離なら転移先の場所がわかってしまう。

そんなヘマをする輩とも思えないので、少々不審に思っていると、それは聞こえてきた。

 

ゴーンゴーン

それはここマーテンの街に午後5時を知らせる鐘の音だった。

同時、黒衣のプレイヤーは転移しようと転移結晶を掲げる。

 

それを見たキリトが、三本の投げ針(ピック)をソードスキルで投擲する。

しかし、圏内なのもあって全て紫色のシステムの障壁に阻まれてしまう。

それを見越してか、黒衣のプレイヤーは悠然と音声コマンドを入力する。

聞き取ろうと耳を澄ましても、鐘の音に阻まれて捉えることは叶わず、見事とり逃してしまった。

 

帰り際、キリトが先ほどヨルコさんが亡くなった場所に落ちていたダガーを拾ってきた。

先ほど見た時にも思ったが、やはり先日カインズさんの命を奪った《ギルティソーン》によく似ている。

作成者も恐らく同じグリムロックだろう。

そんなキリトはというと――

 

アスナ「ばかっ、無茶しないでよ!」

開口一番、抜剣しながら憤怒と安堵が半々混ざったような声音と表情のアスナから、お説教を受けていた。

が、すぐに剣を収め、声量を落として続けた。

 

アスナ「……それで……どうなったの?」

キリト「テレポートで逃げられた。見た目からして性別は男性、体格は中肉中背。それくらいか……。」

見かけからの情報は以上だ。だが、それに当てはまる人間はこのSAOの世界には大勢いる。

なにせ、SAOプレイヤーのおよそ8割が男性プレイヤーなのだから。

 

アスナ「その男がグリムロックって可能性は?」

アスナがそう聞いてきた。まあ、状況からみればそうなのだが、いかんせん証拠はない。

さして意味を持たないアスナの質問に、不意に反応して見せたのはヨルコさんが殺され、尚一層の恐怖に包まれ、体を震わせるシュミットだった。

 

シュミット「……違う。」

キリト「違う……何が?」

訊ねたキリトを見ることなく、より一層身体を縮こませながら、シュミットは呻くように続けた。

 

シュミット「あれは……あの黒ローブは、グリムロックじゃない。あいつはもっと背が高かった。

それに……それに。」

続いて発せられた言葉に、俺達は驚いた。

 

シュミット「あの黒ローブは、リーダーのものだ。

彼女は、街に行く滝はいつもあんな地味な格好をしていた。あれは……さっきのあれは、彼女だ。

俺たち全員に復讐に来たんだ。あれはリーダーの幽霊だ。」

はは、はははは、と壊れたような笑みをこぼすシュミット。

 

キリト「幽霊じゃないよ。ヨルコさんを殺したダガーは実在するオブジェクトだ。

SAOのサーバーの中に書き込まれた何行かのプログラムコードだ。

信じられなきゃ、昨日かっぱらっていったショートスピアと一緒に、好きなだけ調べればいい。」

そう言って、キリトはダガーを差し出そうとシュミットの目の前のテーブルに置く。

ごとん、と鈍い音がする。途端、シュミットは笑みを消し、絶叫する。

 

シュミット「い、いらない!槍も返す!!」

叫ぶ叫ぶシュミット。何度も操作ミスをしながら黒いスピアをオブジェクト化させる。

半ば放り投げるようにして、それをキリトに渡すと、再び頭を抱え込んでしまう。

 

アスナ「……シュミットさん。わたしも幽霊なんかじゃないと思うわ。

もしアインクラッドに幽霊が出るなら、黄金林檎のリーダーさん一人だけのはずがないもの。

今まで死んでしまった3,500人、みんな同じくらい無念だったはずよ。そうでしょう?」

まあ、その通りだろうな。しかし、シュミットは穏やかに告げられたアスナの言葉も否定する。

 

シュミット「あんたらは……彼女を知らないだけだ。

グリセルダは、すげえ強くて、いつも毅然としてて……でも、不正や横着にはとんでもなく厳しかった。

それこそアスナさん以上だ。だから、もし自分を罠にはめて殺すような奴がいれば……

グリセルダは、そいつを絶対に許さない。

たとえ、化けて出てこようともソイツを裁きに来るだろうさ……。」

それきり、部屋は重苦しい沈黙に包まれる。

が、キリトがそれを長いこと許すはずもなく、大きく息を吸うと、言った。

 

キリト「……あんたがそう信じるなら、好きにすれば良いさ。でも俺は信じない。

この二件の《圏内事件》には、絶対システム的ロジックが存在するはずだ。

俺はそれを突き止めてみせる。……そのためにも、あんたにも約束通り協力してもらうぞ。」

シュミット「お、オレがか……?」

 

キリト「ああ、グリムロックの行きつけの店の場所を教えるって、あんた言ったよな。

今となっては、それだけが唯一の手掛かりだ。何日でも張り込んで、必ず見つけ出す。」

すると、それを聞いたシュミットは、重い腰を上げて、壁際のデスクに歩み寄り、備え付けの紙とペンで店の名前と場所を書き付け始める。

序に、元黄金林檎のメンバーについても書き記してもらった。

少しして、書きあがった紙を片手に戻ってくると、それを差し出しながら口を開いた。

 

シュミット「…………攻略組プレイヤーとしては情けないに尽きるが……

オレはしばらくフィールドには出れそうにない。ボス攻略はオレ抜きで編成してくれ。それと……」

いつもの剛毅さが完全に薄れた様子のシュミット。一度言葉を切り、呟いた。

シュミット「……これから、オレをDDAの本部まで送ってくれないか。」

まぁ、そうだろうな。そんなシュミットを、俺達は本部まで送り届けるのであった。

 


 

ハジメ「さて、そろそろいいか……。」

これでシュミットが罪の自白をするきっかけはできた。

後は、黒幕を化かして、実行犯共を締め上げるだけだ。

 

キリト「にしても……よくこんな作戦思いついたよな。特にアスナの演技がすごかったな。」

アスナ「そう?キリト君の演技も迫力のあったと思うわ。」

ハジメ「お~い、イチャついてないで、さっさと配置につくぞ~。」

キリト・アスナ「「イチャついてなんていない!」」

やれやれ、こっちのバカップルは何時になったら入籍することやら。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

今回は団長無しで謎を解いたので、騎士団入りはまだ先になりました。
展開としては真相解明とラーメンのくだり以外はほぼ原作と同じです。
さて、そろそろ圏内編も終盤に入りました。次回、遂に真相が明らかになる!?こうご期待を!

次回予告

シュミット「よ、ヨルコ……?それに……カインズ?」
誘導作戦開始!

ヨルコ「違うっていうなら、反論してみなさいよ!!」
真犯人を追い詰める!

グリムロック「私は、どうしても彼女を殺さねばならなかった。彼女がまだ私の妻でいるために。」 
その狂気の言い訳とは――

キリト「あなたの意思は……俺たちが引き継ぐよ。」
ここに誓う、その意思を。

次回 ソードアートオンラインfeatジオウ
双剣10"強襲のR/人のココロ~解決編~"

これで終わりだ!

この先の物語は、何がいいですか?

  • SAO編の続き
  • 推しの子二次創作
  • ISギーツクロス
  • 次はFATEに行ってみようぜ!
  • このすばにぶっこんでみようや
  • ワンピいこうぜ
  • じゅじゅつだいじに
  • ジョジョにまかせろ
  • ブロリーMAD
  • ヒロアカがんばれ
  • ギアスつっこめ
  • あくまのがっこう
  • はめつのおうこくなんてなかった…
  • 超次元GOGO!
  • DIVE to OVERLOAD
  • 東方珍道中
  • ちょび髭の閣下レーン
  • 勇者ヨシヒコと魔王ハジメ
  • いいから本編だ☆
  • うp主め、好きにしろ
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