うp主の妄想による、息抜きサブストーリー   作:天元突破クローズエボルハザード

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ソードアートオンラインfeatジオウ
今回の依頼は……

ハジメ「あれは《圏内PK》じゃない。殺人に見せたトリックだ。」
キリト・アスナ「「えっ!?」」
事件の真相、解明!

キリト「亡くなったのは4月22日だった。」
→《2人のカインズ氏》

アスナ「あの槍が削っていたのは、カインズさんのHPじゃなくて、装備の耐久値だったのね……。」
→《HP×、耐久値〇》

ハジメ「互いにステータスをいつでも閲覧できる上に、アイテムストレージと所持コルが一緒になるってことだ。」
→《結婚、ストレージ共有》

ハジメ「アイテムの分配率を自分0、相手100に、それが成立する場合が、一つだけある。死別だ。」
→《無条件離婚、分配率、死別》

ハジメ・キリト「「ヨルコさん!!」」
第2の犠牲――!

シュミット「あの黒ローブは、リーダーのものだ。あれは……リーダーの幽霊だ。」
犯人は亡霊!?

ハジメ「さて、そろそろいいか……。」
ここからが、真実(ハイライト)だ!


双剣10:強襲のR/人のココロ~解決編~

ハジメ「……そろそろだな。」

第19層、グリセルダさんの墓が見える林の近くで、俺はある奴を待ち伏せをしていた。

キリトとアスナには、それぞれ別行動で移動してもらっている。

主街区からはバイクで突っ走っていったため、そこまで大した時間もかからなかったが。

因みに、キリトは馬で駆けだそうとしていたので、急いで止めた。

 

ハジメ「!」(他にも気配がある……透明化も使っておくか。)

漸く今回のターゲット、シュミットが墓前にやってきた。

シュミットの表情には罪悪感が浮かんでおり、必死にグリセルダさんへの謝罪の言葉をかけ続けていた。

すると、その後ろから現れる人物が二人。

 

シュミット「よ、ヨルコ……?それに……カインズ?」

そう、さっきのヨルコさんの死亡は、カインズさんの時と同じく、偽装だったのだ。が、その時。

ハジメ「!」(動いた!)

早速、実行犯共が動き出したようだ。

メッセージでキリトに「敵襲来、突入する。」と伝え、その場に参戦した。

 

ハジメ「オラァ!」

???「ッ!?」

突然上空からやってきた強襲者に、実行犯共は驚きつつも、サッと後退して体勢を立て直した。

そこへキリトも漸く到着し、ヨルコさんたちの前に出る。

 

キリト「よう、PoH。久しぶりだな。その趣味の悪さも相変わらずか?」

ハジメ「まぁ、こんなちゃちい作戦請け負う奴なんて、お前等くらいしかいねぇだろうしな。」

そう、実行犯共の正体は、アインクラッド初で現状唯一ののレッドギルド《ラフィン・コフィン》、通称ラフコフのメンバーだったのだ。

 

今回俺達の目の前に現れたのは、その中でもTOP3の異常者共、リーダーの《PoH》、《ジョニー・ブラック》、《赤眼のザザ》の、三人組だった。

まぁ、ヨルコさん達を人質にしようにも、前門には黒の剣士、後門には無慈悲の魔王だ。

PoHがフードの奥で軽く舌打ちするのが聞こえた。

ブラックとザザも自分達の不利となったこの状況に右往左往している。

 

PoH「…………Suck。」

にらみ合いが続くかと思われた矢先、PoHが短く罵倒する。

仕掛けてくる気なのかと気を揉んでいると、おもむろに左手の指を鳴らした。

すると、配下二名はすんなり引き下がる。

逆にPohは右手の包丁を掲げると、まっすぐこちらを指し、低く吐き捨てた。

 

PoH「……《黒の剣士》、《仮面魔王》。貴様らは、いつか必ず地面に這わせてやる。

大事な大事なお仲間の血の海で無様に転げまわる姿を、期待して待っている。」

ハジメ「寝言言ってねぇで、とっとと消えな。そうすりゃ命だけは助けてやるが?」

最後に阿保らしいことを言い出すPoHに、遠慮なく挑発すると、奴は顔を更に歪めながらも、その手の肉切り包丁を器用に腰のホルスターに収める。

 

それに追従するように配下二名も剣を収め、悠然と歩を進み始めた頭首を追いかけ始める。

ブラックの方は、すんなりボスを追いかけて行ったのだが、意外にも全身ぼろマントで髑髏マスクのエストック使いのザザの方が俺たちというか、キリトに突っかかってきた。

 

ザザ「格好、付けやがって。次はオレが、お前を馬で、追い回して、やるからな。」

キリト「……なら、頑張って練習しろよ。ま、俺にはこっちのほうがいいけどな。」

カッコつけているところ悪いが……それ、俺が貸した奴だからな?

そんなキリトの軽い挑発に、ザザは某星の戦争の黒い敵役のようにしゅうっと呼吸音だけを漏らし、仲間を追うように消えていった。

 

索敵スキルの範囲から三人が消えたことを確認し、変身を解除する。

キリトの方も剣を収めると、未だ麻痺の解けないシュミットに解毒ポーションを渡してやる。

そして、ラフコフに襲われた余韻から冷めやらぬ死神ローブ姿のヨルコさんとカインズさんを一瞥すると、若干皮肉めいた口調で話しかける。

 

キリト「また会えて嬉しいよ、ヨルコさん。それに……初めましてかな、カインズさん。」

数時間ぶりに見かけるヨルコさんは、申し訳なさそうに目を伏せながら、上目遣いに僕たちを見ると、僅かばかりの苦笑を浮かべながら答えた。

 

ヨルコ「全部終わったら、きちんとお詫びに伺うつもりだったんです。」

ヨルコさんがそう言い頭を下げると、カインズさんがそれに追従するようにぐいっと頭を下げた。

カインズ「初めまして――ではないですよ、キリトさん。

ハジメさんとは、直前で一瞬眼が合いましたから。」

そういえばそうだったな……いやぁ、あの時はしてやられたものだ。

 

ハジメ「まさか疑似的な殺人トリックを見せられるとは、あの時は思ってもいませんでしたよ。」

カインズ「そうなんですか?

ヨルコからは、最初から気づいていたのでは?と聞かされていたので、てっきり……。」

ハジメ「買いかぶり過ぎですよ。実際に気づいたのは、ヨルコさんと別れた後ですから。」

そう苦笑交じりに答えていると、今度はようやく麻痺の解けたシュミットが、未だ緊張の抜けない声で聞いてきた。

 

シュミット「……二人とも、助けてくれた礼は言うが……なんで判ったんだ。

あの三人がここを襲うって……」

これに答えたのはキリトだった。

 

キリト「判った、ってわけじゃない。こうなるんじゃないかって、予測したんだ。

まあ、殆どハジメの作戦だけどな。」

ハジメ「よせやい、今回は俺一人じゃ解明には至らなかったよ。だから、俺達の作戦勝ちだ。」

そう言って、表情を切り替える。これから、真犯人を裁くのだから。

 

ハジメ「《圏内PK》に関しては、カインズさんとヨルコさんによる自作自演だ。

だが、指輪事件から今回の一連の騒動を、裏から操っていた真犯人は、グリムロックだ。」

シュミット「なっ……!?」

シュミットは驚いていたが、ヨルコさんとカインズさんは、事前に聞いていたので、俯いていた。

 

ハジメ「まず、グリムロックは二人の計画を聞き、それに乗った、というのが最初の話だった。

だが奴の目的は、グリセルダさんの無念を晴らすためでもない。

奴は、自分がグリセルダさんを、愛する女を殺した罪を隠蔽するために、二人を利用したんだ。」

未だ呆然とする三人。更に畳みかけるようにキリト君は続けた。

 

キリト「いいか……グリセルダさんのストレージは、同時にグリムロックのものでもあった。

だから、グリセルダさんを殺したところで指輪は奪えないんだ。

グリセルダさんが死んだ瞬間に、グリムロックのストレージに転送されてしまう。

シュミット……あんたは、計画の片棒を担いだ報酬を金貨(コル)で受け取ったんだよな?」

キリトがそう訊くと、地面に胡坐をかいたままの重戦士はゆっくり首肯した。

 

キリト「あんたがDDAに入れたってことは、それなりの大金だったんだろう?

となると、それを用意するには、指輪を売却するしかなくなる。

それができるのは指輪の持ち主であるグリムロックだけだ。」

シュミット「グリムロックが……?アイツが、あのメモの差出人……

そして、グリセルダを殺した犯人だったのか……?」

ただ茫然と宙を見つめるシュミット。だが、これが現実だ。

 

ハジメ「ヨルコさんとカインズさんの圏内PKによって、シュミットさん、アンタは必ず罪悪感を覚える。

そして、グリセルダさんのお墓の前で罪を自白、カインズさんとヨルコさんがそこへ現れ、アンタを裁く。

それが二人の目的だった。

だが、グリムロックは事件の隠蔽の為に、二人とシュミットさんを、纏めて消すつもりだった。

その結果……あの三馬鹿が現れたってわけだ。」

そう、これなら自白でもしない限り、《指輪事件》の一件は通り魔的事件で片付いてしまい真相は闇の中だ。

 

シュミット「……そうか。だから……だから、あの三人が…………。」

虚ろにそう呟くシュミット。それを見て憂鬱なのはキリトも変わらずか、若干苦い表情で続きを話す。

キリト「そう、その通りだ。《ラフコフ》のトップスリーがここに現れたのは、グリムロックが情報を流したからだ。

ここに、DDAの幹部なんていう大物が仲間なしで来ている、と……。

まあ、多分、グリセルダさんの殺害依頼をしたときから、繋がりがあったんだろう。」

ヨルコ「…………そんな……。」

顔面蒼白のヨルコさん。膝から崩れ落ちそうになるのを、同じく顔面蒼白のカインズさんが支える。

 

ハジメ「……さて、そろそろ事件も終わりだ。アンタの見苦しい言い訳、聞かせてもらおうか。

ねぇ……グリムロックさん?」

俺がそういって振り向けば、そこには白と赤の見た目にも色鮮やかな騎士服を纏うアスナが、一人の男を引き連れてくる様子が見えた。

いつにも増して剣呑な目つきの彼女は、右手に細剣を携えている。

 

引き連れてきた男――グリムロックの外見は、まず一言、かなりの長身ということが挙げられる。

見た感じでは190近い。

顔は今のところ夜の暗闇のせいで見えないが、ゆったりとした革製の服とつばの広い帽子とくれば、まるでどこかの映画のヒットマンのように見えないこともない。

まあ、これには幾分か先入観が含まれているので、何とも言い難いのだが。

 

近づいて来るうちに、顔も見えてきた。

銀縁の色付き眼鏡のせいで微妙だが、どちらかと言えば柔和な印象の顔だった。

だが、その目に浮かぶ狂気までは眼鏡では隠せない。

グリムロックは俺達から数mほど離れたところで立ち止まると、チラリとグリセルダさんが眠るであろうその小さな墓標を見てから口を開いた。

 

グリムロック「やあ……、久しぶりだね、皆。」

穏やかに発せられた声に、数秒ほどしてからようやくとヨルコさんが応じた。

 

ヨルコ「グリムロック……さん。あなたは……あなたは、本当に…………」

そこで押し黙るヨルコさんだったが、その先の問いは誰にだって予想はつく。

――何故、グリセルダさんを殺して指輪を奪ったのか。

そして何故事件を隠蔽するために、自分たち三人を殺そうとしたのか。

それに、グリムロックは、顔に浮かべた微笑を崩さずに答えた。

 

グリムロック「……誤解だ。私はただ、事の顛末を見届けるためにここに向かっていただけだよ。

閃光様の脅迫に素直に従ったのも、それを正すためだ」

誤解ねぇ……俺やアスナでも看破(リピール)できる程度の隠蔽技術で、まだ言うか。

 

アスナ「嘘だわ!あなた、プッシュの中で隠蔽ハイディングしてたじゃない。

わたしが看破(リピール)しなかったら、ずっと隠れてるつもりだったはずよ!」

グリムロック「仕方がないでしょう、私は攻略組ではないんだよ。

そんな私が、あの恐ろしいオレンジの前に飛び出せなかったからと言って責められる謂れはないだろう?」

アスナの鋭い反駁に、穏やかにそう返すと、両手を軽く上げる。

 

オレンジねぇ……さっきの会話も聞いていたなら、奴等がレッドだってこと分かっているはずなんだがなぁ?

それに一向に態度を変えないグリムロックに業を煮やしたのか、声を荒げようとするアスナ。

しかし、それをキリトが制止し、口を開いた。

 

キリト「初めまして、グリムロックさん。俺はキリトっつう……まあ、部外者だな。

――確かに、今あんたがここにいることと、《ラフコフ》連中がここを襲撃してきたことを結びつける材料はない。」

まぁ、そりゃそうだ。だが、指輪事件に関しては言い逃れようも出来ん。

 

ハジメ「でも、アンタは去年の秋に起きた《指輪事件》の主導者でもあるからな。

何故なら、例のレア指輪はグリセルダさんが誰に殺されようと、彼女とストレージを共有しているアンタの手元に残ったはずだ。

そして、真実を暴こうとした二人と、共犯者のシュミットさん……関係者の口を塞ごうとした。

それであっているだろ?」

俺がそう告げるも億尾も動じた様子もなく、グリムロックは逆にこちらのターンと言わんばかりに、口許を歪ませた。

 

グリムロック「なるほど、面白い推理だね。

……でも、君たちの推理には残念ながら、ひとつだけ穴がある。」

ハジメ「その指輪がオブジェクト化されたかもしれない、だろ?」

俺の言葉に、グリムロックは一瞬驚いたような表情をしていた。

何勘違いしてるんだ。まだ俺のバトルフェイズは終了してないぜ!

 

ハジメ「確かに、指輪がストレージに格納されずに、装備された状態だったら、指輪は犯人のものだっただろう。

でも……それは無理だったんだよ。」

グリムロック「何故そう言い切れるんだい?君はその現場にいたわけでもないのに。」

そうだな、俺も部外者だ。だが……仲間からの証言からは逃れられんだろう。

 

ハジメ「ヨルコさんから聞いた話では、指輪の処遇の会議の時、彼女はこういっていたそうだね?

"SAOでは、指輪アイテムは片手に一つずつしか装備できない。右手にはギルドリーダーの印章(シギル)、そして……左手に指輪は外せないから、私には使えない"と。

それだけじゃない。実行犯にとって、レアアイテムは持ち去りたいとは思うだろう。

だが、あるものは無価値と判断されて、現場に残されたままだった。

それが何か、アンタは知らなかったわけないだろう?」

俺の指摘に、グリムロックは困惑の表情を浮かべる。だが、まだ手は緩めない。

 

ハジメ「ヨルコさん、発見されたアイテムは、自然消滅した剣だけじゃなかったのでしょう?」

ヨルコ「……えぇ。私は、皆には内緒で、遺品をもう一つだけ埋めたのよ。」

そう言うと、ヨルコさんは振り向き、墓標の前で跪くと、それを掘り返し始めた。

それを全員が見つめるなか、おもむろに立ち上がったヨルコさんは、右手に持つ銀色に光るそれを差し出した。

 

アスナ「あっ……《永久保存トリンケット》……。」

なんと――あれが噂の《永久保存トリンケット》か。

マスタークラスの細工しか作成できないため、その小さめのサイズに対して、割に高値で取引されると聞くが……こんなところでお目にかかれるとは。

 

ヨルコさんはそっとそれを開くと、中に入るものを取り出した。

それは――指輪にしては少し大きめのもので、銀製だった。

微妙に平らになっている天頂部には、これはギルドマークか、リンゴの彫刻が見て取れた。

 

ヨルコ「これは、リーダーがいつも右手に装備していた、《黄金林檎》の印章。」

そう言って、それを戻すと、もう一つの指輪――黄金に輝く、今度は細身のそれをそっと取り出した。

 

ヨルコ「そしてこれは――

リーダーがいつも左手の薬指に嵌めていた、あなたとの結婚指輪よ、グリムロック!

内側に、しっかりリーダーとあなたの名前も刻んであるわ!

……この二つの指輪がここにある以上、リーダーは殺された瞬間もこれらを装備していたっていう揺るぎない証よ!

違う!?違うっていうなら、反論してみなさいよ!!」

最後の方は涙混じりの絶叫だった。

 

――これで、チェックメイトだ。

言い逃れのない証拠を突き付けられ、グリムロックは軽く10秒は凍り付いていた。

やがて口端は細かく震え始める。

 

グリムロック「その指輪……。そうか、あの時……グリセルダの葬式の日に、君は私に聞いたね、ヨルコ。

指輪を持っていたいか、と。あの時……欲しいとさえ言っていれば…………。」

深く俯くグリムロック。やがて、糸が切れた人形のように膝から崩れ落ちる。

そんなグリムロックに向かって、ヨルコさんは鋭さの失せた声で囁くように言った。

 

ヨルコ「…………なんで……なんでなの、グリムロック。なんでリーダーを……

奥さんを殺してまで、指輪を奪ってお金にする必要があったの?」

グリムロック「…………金?金だって?」

と、膝立ちのまま、グリムロックは掠れた声でく、く、と笑った。

左手を振り、メニューウインドウを呼び出したかと思うと、やや大きめの革袋をオブジェクト化した。

それを無造作に放ると、どすんという重い響きとともに、いくつもの金属音が重なって聞こえた。

 

グリムロック「これは、あの指輪を処分した金の半分だ。金貨一枚だって減っちゃいない。」

ヨルコ「え…………?」

金目当てじゃない、ってことは……狙いはグリセルダさんだったのか?

 

グリムロック「金のためではない。私は……私は、どうしても彼女を殺さねばならなかった。

彼女がまだ私の妻でいるために。」

……は?何言ってんだこいつ?

 

グリムロック「彼女は、現実世界でも私の妻だった。一切の不満のない理想的な妻だった。

可愛らしく、従順で、ただ一度の夫婦喧嘩すらもしたことがない。

夫唱婦随という言葉は彼女のためにあったといっても良いほどだ。

だが……この世界に囚われたのち……彼女は変わってしまった…………。」

{現実《リアル》夫婦だったのか。それは流石の俺でも驚いた。

しかし、奴の発した言葉の節々に、何処かしら狂気を感じた。

すると、グリムロックは狂気に満ち満ちたように眼を見開き、肩を震わせながら続ける。

 

グリムロック「このデスゲームに怯え、恐れたのは私だけだった。

グリセルダ……《ユウコ》は戦闘能力においても、状況判断力においても、私が及び至ることはなかった。

彼女は……現実世界にいたときよりも、遥かに生き生きとしていた。その様子を傍で見ていて思った……

いや、認めざるを得なかった。私の愛したユウコは消えてしまったのだと。

たとえゲームクリアが為され、現実に帰る日がやってきたとしても、大人しく従順だったユウコは永遠に帰ってこないのだと…………。」

……従順?消えた?まるで自分の奥さんをペットやロボットとでも勘違いしたような言い方だな。

 

グリムロック「……もし、現実に帰ることができたとして……ユウコに離婚を切り出されたら……

そんな屈辱に、私は耐えることができない。ならば……

ならばいっそ、合法的殺人が可能な、この世界にいる間に、ユウコを、永遠の思い出の中に封じてしまいたいと願った私を……誰が責められるだろう…………?」

ハジメ「……くだらんな。」

長く、ひどく独善的でおぞましい独白を聞いて、俺以外に言葉を返す人はいなかった。 

 

ハジメ「ただ自分の奥さんに嫉妬して、自分から変わろうとしなかった貴様の自業自得だろうに。

従順?屈辱?思い出?どれも貴様の勝手な主張だろう。グリセルダさんは貴様の人形じゃねぇんだよ。

そんなに自分にとって都合のいい女が欲しいなら、ぬいぐるみとおままごとでもやっていたらよかっただろうに。」

グリムロック「……君にもいつか解るさ、探偵君。愛情を手に入れ、それが失われようとしたときにね。」

ハジメ「永遠にわかんねぇよ、ボケ。」

俺は奴の胸倉をつかんで持ち上げ、即座にぶった切る。

そもそもの話、立っている場所が違うんだよ、この〈ピー〉が。

 

ハジメ「愛情は時間の許す限り、いくらでも取り戻せる。だが、愛する者の命は、時がたっても戻らない。

その程度すら理解できなかったのか?最初のころに奥さんがなくなった時、どうするつもりだったんだ?

結局貴様は、自分の女をモノとしか見ていなかっただけだろう。

相手の一面ひっくるめて受け止める覚悟もない貴様に、愛を語る資格などない。

もし、まだ愛しているというのなら、誰にも責められず、許されぬまま、その罪を背負い続けてみせろ。

それすら出来ないというのなら、二度と愛などと軽く口にするな。

この変態妄想趣味の気色悪い中年ブサイク男めが。」

そう言って、グリムロックを突き放し、俺は下がった。

 

キリト達も何か言いたそうだったが、俺が勢いよく怒涛の攻めを見せたせいか、ちょっとドン引きしていた。

俺は真実を述べただけなのに。そして、言われたグリムロック本人は終ぞ押し黙り、首をもたげさせた。

 

シュミット「……三人とも。」

訪れた静寂を破ったのは、グリムロックの登場以後、だんまりを決め込んでいたシュミットさんだった。

シュミット「この男の処遇は、俺たちに任せてもらえないか。もちろん、私刑にかけたりはしない。

だが罪は必ず償わせる。」

その声音に、先刻まで怯え竦んでいた男の姿はない。

今のシュミットさんなら攻略組の一翼を担うものとして、公正に判断を下すだろう。

 

キリト「解った。任せる。」

キリトも同じ考えに至ったようで、ゆっくりと立ち上がったシュミットさんを見上げ、小さく頷いた。

それに無言で頷き返すと、シュミットさんはグリムロックを立たせ、「世話になったな」と軽く礼をすると、連れだって丘を降りていく。

それに続くように、ヨルコさんとカインズさんの二人も歩き出す。

が、俺達の前で一時立ち止まると、深い礼とともにヨルコさんが口を開いた。

 

ヨルコ「お三方には、感謝してもしきれません。三人がいなければ、私たちは殺されていたでしょうし……

グリムロックの犯罪も暴くことはできませんでした。」

言い切ると、再度深く頭を下げ、シュミットを追いかけるため若干小走りで駆け出す二人を、俺達はその場で見届けた。

やがて四人のカーソルが消えると、ようやく静かになった荒野の小丘。

ちょうど満月のこの日、本来ならばここで月見でもするのも悪くないのだが、そんな気分でもない。

 

アスナ「…………ねえ、二人とも。」

穏やかな夜風に乗せて聞こえてきたのは、アスナの声だ。

アスナ「もし二人なら……

仮に誰かと結婚した後になって、相手の人の隠れた一面に気付いたとき、どう思う?」

キリト「えっ……?」

ハジメ「ふむ……。」

予想外の質問に固まるキリト。俺の中では答えは決まっているが。

 

ハジメ「別にその一面が全てって訳でもなければ、それですぐに変わるわけでもない。

まぁ、理解できる落としどころをつけて行けばいいさ。ま、こればっかりは相手次第だけどな。」

そもそも、俺の知り合いは殆どが癖の強い奴等ばかりだ。

今更、個性の引き出しが一つ二つ増えたところで、印象など変わらん。それが答えだ。

 

キリト「ふ、深いなあ…………。」

そう漏らすキリト。次はキリト、のはずだが未だ考え中の模様。

少しして、ようやく考えが纏まったのか、口を開く。

 

キリト「俺は……ラッキーだった、って思うかな。」

アスナ「え?」

キリト「だ……だってさ、結婚するってことは、それまで見えてた面はもう好きになってるわけだろ?

だから、そのあとに新しい面に気付いてそこも好きになれたら……に、二倍じゃないですか。」

拙い意見だが、本心で話していることは明確だ。それ故にキリトの人柄を表しているとも言えよう。

アスナはしばし眉を寄せたあと、少しだけ微笑んだ。

 

アスナ「ふぅん、変なの。」

キリト「へ……変…………。」

変と言われ少し傷ついている様子のキリト。アスナ、お前の照れ隠しもどっこいどっこいだと、俺は思うぞ?

とその時、キリトと俺の肩をアスナさんが突然掴んでくる。

 

何事かと、驚く俺達の前に――原理原則一切不明の光景が目の前に広がる。

丘の上にあるグリセルダさんの墓標の傍らに、その姿はあった。

短髪の髪に、引き締まった身体。更にはそれを包む金属鎧に、腰には細身の長剣。

その女性プレイヤーの姿は伝え聞いたグリセルダさんの姿そのものだった。

 

二人は完全に理解不能の現象にフリーズしている。

俺?ゴーストも幽霊が見えたんだし、某神(笑)もお盆になると帰ってきそうだし、別段おかしいことじゃないと思う。

 

すると、その目に浮かぶ強い光。

それ即ち、自らの発揮できる全ての力を持って、攻略に臨むという意思を秘めた、攻略者の瞳。

それらから熱い思いを感じ、それが自然と言葉となった。

 

キリト「あなたの意思は……俺たちが引き継ぐよ。いつかゲームをクリアして、皆を解放して見せる。」

アスナ「だから……どうか安らかに、天国で見守っていてください、グリセルダさん。」

ハジメ「今度はいい旦那さんに出会えるよう、星に願っておきます。」

キリト、アスナ、俺と紡がれた言葉が、夜風に乗り、グリセルダさんに届くと同時、透き通るような笑みを見せ――。

瞬間、その姿は昇ってきた朝日に消える。

立ち尽くす俺達だったが、やがてアスナが微笑みを浮かべ、言った。

 

アスナ「さ、帰ろ。明日から、また攻略頑張らなきゃ」

キリト「……そうだな。今週中には今の層は攻略したいな」

ハジメ「俺は引き続き、手伝いでもするか。」

言葉を交わすと、俺達は主街区目指して歩き始めた。

 


 

アスナ「……そんなことがあったのね……。それにしても、まさか別世界から来たなんて……。」

ハジメ「俺も、何でここに放り込まれたのかがわからない。

まぁ、このゲームは必ずクリアして見せるさ。」

あの後、最前線で俺が購入した別荘にて、アスナに俺の秘密を打ち明けた。

アスナも最初は驚いてはいたが、全て聞き終わった後、誰にも口外しないと約束してくれた。

 

ぐ~う

 

そんな緊張をほぐすかのように、キリトのお腹から、見事なまでの腹鳴りが聞こえてきた。

茅場もたまにはいい仕事をするらしい。

そんなことを思っていると、目の前に白い紙の包みが突き出された。

それを受け取り、アスナのほうを見てみれば――

 

キリト「……く、くれるの?」

……この唐変木。

アスナ「この状況でそれ以外に何があるのよ!見せびらかしてるとでも?」

キリト「い、いえ。すいません。じゃあ有り難く。」

包み紙を開くと、少し大きめのバスケットサンドが見えた。

小腹もすいていたので、ありがたくいただくと、あることに気づいた。

まあ、もぐもぐしながら言うわけにもいかず、食べ終わってからにしようと思っていると――

 

キリト「ごちそうさま。それにしても、いつの間に弁当なんて仕入れたんだ?

屋台じゃ、これ売ってなかったよな。」

いや、何でまず、作ってくれたって思考にならないんだよ。

アスナ「こういうこともあるかと思って、朝から用意してたのよ。」

さらりと言ったが、これはアスナの最大級のヒントのはずだ。流石にこれには……。

 

キリト「へえ……流石。俺、メシのことなんてまったく考えてないからな。……ちなみに、どの店の?」

ダメだこりゃ。

アスナ「売ってない。」

キリト「へ?」

アスナ「お店のじゃない。」

そりゃ見て分かるだろうに。しかし、10秒程思考停止したキリトは、特大の爆弾を落とした。

 

キリト「え……ええと、それはその、何といいますか……が、がつがつ食べちゃって勿体なかったなあ。あっそうだ、いっそのことアルゲードの市場でオークションにかければ大儲けだったのになあ、ハハハ……。」

その結果、キリトがガツン!と強烈な音とともに脛に一撃をもらったことは、言うまでもない。自業自得。

 

アスナ「ねえ……二人ならどうしてた?もし黄金林檎のメンバーで、レアアイテムの指輪の件どうしてた?」

キリトが失礼な一言をかました数分後、アスナがぼそりと呟いた。

キリト「…………。」

ハジメ「ドロップした奴が好きにすればいい。売るなり使うなり、誰かに無償で上げるなり、な。」

俺は即答だったが、キリトは熟考していた。

 

キリト「……俺の場合は、そういうトラブルが嫌でソロやってる節があるからな……。

前のMMOじゃ、それでギルドが崩壊したこともあるし……やっぱり、言えないな。

自分が装備したい、とも言えないけど、だからって他のメンバーに笑って譲れるほど聖人でもないしな。

俺だったら、売却派に入ると思うよ。アスナは?」

アスナは対照的に、迷うことなく即答した。

 

アスナ「わたしも、ハジメ君と同じでドロップした人のもの。」

キリト「へえ~。」

アスナ「KoB(うち)はそういうルールにしてるの。

SAOには記録(ログ)とか見れる機能はないから、そういうのは全部自己申告じゃない。

ならもう、隠蔽とかそういうトラブルを避けようと思ったらそうするしかないじゃない。それに……」

そこで言葉を切り、アスナは少し目許を和ませた。

 

アスナ「……そういうシステムだからこそ、この世界での《結婚》に重みが出るのよ。

結婚すれば、二人のストレージは共通化されるでしょ?

それまでは隠そうと思えば隠せたものも、結婚すればできなくなる。

《ストレージ共通化》って、凄くプログマチックなシステムだけど、同時にとってもロマンチックなものだとわたしは思うわ。」

……成程、茅場もそう言った思考だったのかもしれんな。

 

だとすれば、一概にも結婚システムが悪いわけでもない。

と思っていると、またもやキリトが爆弾発言をかました。

 

キリト「そ、そっか、そうだよな。

じゃ、じゃあ、もしアスナとパーティーを組むことがあったら、ドロップねこばばしないようにするよ、俺。」

……コイツは一体、どれだけアスナに叱られることやら。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

今回で圏内編は終了です。
変更点としては、キリアスのグリムロックに対するセリフとグリムロックの反撃(笑)、後ズッコケ3幹部の出番が少々削られて、キリアスの食事シーンがここで入れられたぐらいですかね?
そして相も変わらずの唐変木っぷり、でも原作通りくっつくのでご安心を。
アスナも漸くここでハジメさんの秘密を知ることに。これで3人は正真正銘の仲間です。
さて、次回は鍛冶屋のあの子が登場します!乞うご期待を!

次回予告

ハジメ
「圏内事件を解決して数日、ハジメはアスナに紹介された鍛冶屋を訪ねた。
そこで出会ったのは、アスナの親友である店主、リズベットだった。
後から訪れたキリトを加えて、3人は伝説の鉱石を手に入れるために、吹雪舞う山の主、フロストワイバーンに挑むことに。
果たして、彼等は無事生還することができるのだろうか!?そして、伝説の鉱石の正体とは!?

次回 ソードアートオンラインfeatジオウ
双剣11"氷龍住まうNight Cave~鍛冶屋の維持、水晶の秘密~"」

この先の物語は、何がいいですか?

  • SAO編の続き
  • 推しの子二次創作
  • ISギーツクロス
  • 次はFATEに行ってみようぜ!
  • このすばにぶっこんでみようや
  • ワンピいこうぜ
  • じゅじゅつだいじに
  • ジョジョにまかせろ
  • ブロリーMAD
  • ヒロアカがんばれ
  • ギアスつっこめ
  • あくまのがっこう
  • はめつのおうこくなんてなかった…
  • 超次元GOGO!
  • DIVE to OVERLOAD
  • 東方珍道中
  • ちょび髭の閣下レーン
  • 勇者ヨシヒコと魔王ハジメ
  • いいから本編だ☆
  • うp主め、好きにしろ
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