うp主の妄想による、息抜きサブストーリー   作:天元突破クローズエボルハザード

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ハジメ
SAO(ソードアートオンライン)という名の、デスゲームと化した仮想世界≪アインクラッド≫にて、ハジメとキリトは、それぞれ武器の修理と調達の為に、鍛冶屋を訪ねる。
そこで出会った店主の少女、リズとひと悶着あり、一行は、55層のに雪山にあるという鉱石を求めて、その頂上、ドラゴンの巣へと挑むことに。
しかし、運悪く深い穴に落っこちてしまい、彼等は閉じ込められてしまったのだった。」
リズ
「今思えば、アタシもムキになり過ぎたわね~。あ、初めまして!鍛冶屋のリズことリズベットです!」
ハジメ
「あの時のキリトの行動は正直俺もどうかと思ったよ。剣折った上に挑発って……
ソロ時代の悪癖が抜けていなかったなホント。」
キリト
「わ、悪かったって……その件ではアスナにしこたま怒られたんだから、もういいだろ?」
リズ
「あ!そう言えばあの時の剣の代金、まだ払っていないでしょ!」
キリト
「ギクッ!わ、分かっているよ……。」
ハジメ
「ご利用は計画的にな―、あ、双剣12、どうぞ!」


双剣12:完成、dual wielding!~確かな温もり、前に進むこと~

キリト「……とにかく、こう暗くなっちゃ今日はここで野営だな。

幸いここはモンスターはポップしないみたいだし。」

数秒間思考停止していたキリトは、大きく伸びをしながら言った。

確かに、もうそろそろ暗くなってきたしな。俺もここで一夜明かした経験はある。

以降、寝袋は通気性の良いものと通常のもの、保温タイプの3つをコネクト用ストレージに入れてある。

 

キリト「んじゃ、そうと決まれば、っと……。」

キリトはウインドウを操作すると、幾つかのアイテムをオブジェクト化させた。

大きな野営用のランタンに、簡単な料理もできる手鍋、それと食料関係が詰まっているであろう謎の麻袋、それで最後にマグカップが三つ。

 

リズ「……あんたいつもこんなもの持ち歩いてるの?」

キリト「ダンジョンで夜明かしは日常茶飯事だかr「アスナに報告しとくわ。」!?」

フフフ、これはもう1日拘束されそうだな……ドンマイ、キリト♪

 

キリト「いや、あの……これには深い事情が……」

ハジメ「そうかそうか、じゃあ……仕方がないよね?」

キリト「あっはい、スミマセンでした。」

――まあ、俺も基本ソロだし、人のことをとやかく言えないので、これくらいで勘弁しておこう。

 

とりあえず、キリトが出したランタンをクリックして火を灯し、手鍋をその上に置くと、適当にその辺から雪の塊を鍋に放り込む。

更に麻袋の中身を勝手ながら拝見し、適当に見繕って鍋に放る。

蓋をして、鍋をダブルクリックすれば、待ち時間3分のウインドウが浮かび上がる。

その姿を見て、意気消沈していたはずのキリトが訊いてきた。

 

キリト「ん?ハジメ、料理スキル上げてるのか?」

ハジメ「あぁ、スロット限界までスキルで埋めるつもりだからな。

もしもの時の野営スキルくらいは身に着けておかないとね。」

キリト「ほー、幾つ?」

ハジメ「えっと……あ、あともうちょいでコンプしそう。」

キリト「マジかよ!?早いな!」

キリトはそうも言うが、実はまだまだなのだ。

 

ハジメ「調味料の研究にかける時間がな~。素材発掘、人材育成、迷宮マッピングにサブクエスト……

色々と忙しくて出来てねぇんだ。」

キリト「いや、せめて一つは誰かに任せておけよ。特にマッピングとかはさぁ。」

ハジメ「あ、そうそう。74層のフロアボス戦、一緒に来てくれ。俺一人じゃ無理っぽいから。」

キリト「それはまぁいいけど……珍しいな、お前が無理だなんて言うの。」

そりゃあ、色々とね?あるんですよ、色々。

 

と、そんな他愛もない話をしているうちに、ポーン、という軽い効果音が鳴り料理が完成したようだ。

蓋を開けると、入れた香草の香りが辺り一帯に広がり、胃袋を刺激される。

キリトが目線で「はやくはやく」と急かすので、三人分を急いでカップにそそぐ。

 

キリト「はい、リズも。」

リズ「ありがと……。」

リズにも渡し終えると、俺もスープを飲み始める。――味は問題ないな。

キリト提供の食材アイテムは中々にランクも高めだったらしく、ある程度スキルで補えば味付けも問題なかったようだ。

 

リズ「なんか……へんな感じ……。現実じゃないみたい……。」

スープの暖かさに心癒していると、ぼそりとリズが呟いた。

……まぁ、ここ(この世界)、現実であってゲームの世界なんだけどね。

 

リズ「こんな……始めてくる場所で、初めて会った人と、こんな風にご飯食べてるなんてさ……。」

キリト「そっか……。リズは職人クラスだからな。

ダンジョン潜ってると、行きずりのプレイヤーと野良パーティー組んで野営するとか、結構あるよ。」

リズ「ふうん、そうなんだ。……気か褪せてよ。ダンジョンの話とか。」

キリト「え、う、うん。そんな面白いもんじゃないと思うけど……。おっと、その前に……。」

キリトは、空になったマグカップ等々の食器類をストレージに放り込むと、続けて色々と操作し、大きな布の塊を三つほど取り出す。

広げたそれは、見てくれからして野営用のベットロールのように見えた。

 

キリト「高級品なんだぜ。断熱は完璧だし、モンスターの索敵を避けられる隠蔽効果もばっちりだ」

ハジメ「お前、色々持ちすぎだろ。まぁ、俺も自分の寝袋あるけどさ。」

キリト「いや、お前の場合容量おかしいから!なんで巨大ロボまであるんだよ!?」

そんなツッコミ込みの会話をしつつ、手早く武装全解除したキリトは右に置いたベットロールに潜り込んだ。

 

まぁ、折角なので俺とリズも、キリトに倣い武装を解除すると、左、真ん中のベッドロールに入る。

現在時刻は8時ごろ、寝るには早い時間だ。

ならばとキリトに目線を飛ばせば「わかった」と、同じく目線で返される。

 

リズ「ね、さっきの話、してよ。」

キリト「ああ、うん……。」

ちょうどリズからの催促もあり、キリトは両腕を頭の下で組むと、ゆっくりと話し始めた。

コペルや月夜の黒猫団、クラインやエギル、それにシリカにアスナとの思い出に加え、俺も知らないキリトの経験談も話してくれた。

と、キリトが話し終えたタイミングでリズが、話し手であるキリトの方に向けていた体の向きを、仰向けに変えた。

 

リズ「ねえ……二人とも。聞いてもいい……?」

ハジメ「何だい?」

キリト「いきなり改まって、どうした?」

俺とキリト、それぞれが反応を見せる中、リズはやけに弱った声で続けた。

 

リズ「なんであの時、あたしを助けたの……?助かる保証なんてなかったじゃん。ううん……

二人とも死んじゃう確率の方が、ずっと高かった。それなのに……なんで……。」

そう、リズは言外にこう語っているのだ。――なぜ、自分を見捨てなかったのか?

 

『見捨てる』、キリトにはできない選択だろう。

あの悪夢を見た以降、いやそれ以前からもキリトは苦しみ続けてきた。

本来、年端も行かぬただの少年が、背負うべきではない筈のものに責任を感じている。

なんと、残酷なことだろうか。

見かけ楽しそうに微笑んでいる時ですら、もし命を救えなかったらと恐怖し、逆に命を救えたと安堵しているのだ。

 

キリト「……誰かを見殺しにするくらいなら、一緒に死んだほうがずっとましだ。

それがリズみたいな女の子なら尚更、な。」

努めて穏やかに、一瞬だが宿った強張りを悟らせぬようにキリトは答えた。

 

ハジメ「王様だからな。民草守るのは俺の役目だ。

先陣切って道照らすのも、誰かの代わりに傷つくのも、俺の使命だと思っているからだ。

たとえどんな障害が立ちふさがろうとも、全力でぶち抜いて、そんでもって精一杯手を伸ばす。

それが俺の、掲げた信念だからな。」

 

何故リズが唐突にこんなことを言い出したのか、理由は大体見当がつく。

彼女は『人の温かみ』に飢えている。仮想世界という言い訳は、この世界には適用されない。

ゲーム内での死=現実世界での死となったあの日から、既にこの世界は現実とさして変わらなくなった。

とは言え、やはりここは現実世界とは何もかもが違う異世界だ。リズのように飢えることもあるだろう。

それでも、この世界も現実世界も、『心』だけは唯一変わらない。それがただ一つの真理。

 

リズ「……馬鹿だね、ほんと。ほかにそんなこと言う人たちいないわよ。」

溢すように漏らすリズは、さらに続ける。

リズ「ね……手、握って。」

ベットロールから両手を出し、こちらに刺し伸ばすリズ。。

しっかりとその手を取り、両方の手の暖かさを確かめるように強く握るリズに全てを委ねつつ、恐らくは3人同時に目を閉じ、夢の世界へと旅立っていった。

 


 

ハジメ「いびきはガ行が似合うものだ。」

寝起き一発、今日の格言。……手、繋ぎっぱなしになっとる。

取り敢えず、リズを起こさないよう繋いだ手を解き、ベッドロールの中に戻しておく。

ついで朝の用意もしたいので、キリトを叩き起こす。

 

ハジメ「キリトー、アスナちゃんが包丁持ってやってきたぞー。」

キリト「待ってくれアスナぁ!?」

耳元でこっそり脅しじみたことを言えば、それに反応して起きるキリト。

よし、後で報告……したら、俺も殺されそうなので今回だけは見逃しておいてやる。

早速起きようとしたキリトは、右手を持ち上げようとして違和感に気付いた。

 

キリト「……へ、ほえ?」

どんどんと覚醒していったのだろう。顔が面白いように羞恥の色に染まる。

キリト「ど、どないしたらええんやろ……?」

いや、似非関西弁で言われても。

 

ハジメ「とりあえず、リズの左手ベッドの中に入れておこう。」

キリト「う、うん。」

思春期か!いや、思春期だった。

そんなキリトは、1分くらいかけてリズを起こさぬように慎重にベッドに戻す。

 

ハジメ「とりあえずキリト、調理器具その他諸々頼む。朝の用意するから。」

キリト「あ、すまん。」

流石の手早さで調理器具諸々を出すと、雪を放り込んだ。

そこへ俺は、麻袋からミント系のハーブとお茶にすると鎮静効果のある花を一緒に火にかける。

 

キリト「……なあ。」

ミントの香りが辺りを包む頃、唐突に口を開いたキリト。まぁ、言いたいことはわかるが、慣れだ。

キリト「俺たち、なんて恥ずかしいことやってたんだ?」

ハジメ「慣れろ、その内いい思い出に出来るかもしれん。」

キリト「俺はそんなにメンタル強くないぞ……。」

情けない声で答えるキリトをサクッと無視すること暫し、漸くリズが目を覚ました。

 

キリト「おはよう。」

ハジメ「おはよう。」

リズ「……おはよ。」

言って跳ね起きたリズにちょうどできたお茶を渡す。

皆々一口二口とゆっくり口にすると、サッと脱出準備を開始する。

 

キリト「なぁ、ハジメ。お前、予知とかで見つけられないのか?」

ハジメ「いや、もしもボックスじゃな……あ!」

キリトがとんでもないことを言い出したのでツッコもうとしたその時、まさかのフラグだった。

 

ハジメ「そろそろ来るぞ!全員、戦闘準備だ!」

キリト「お、おう!」

リズ「へ!?ちょっ、ちょっと待って!?」

そうして慌ただしくも待つこと5分、漸くその時が来た。

 

遥か高みに位置するであろう穴の入り口付近の光の中に、黒い影が生まれた。

それは見る見るうちに大きくなっていき、その姿がはっきりと見えるようになってきた。

二枚の大きな翼に、長い尾、鉤爪を備えた大きな両腕、番かは分からんがやっぱり来た。

高速で飛来してきた白竜は、侵入者に勿論ながら敵意ありありの視線を向けてくる。

雄たけびを上げる竜は、牽制のように翼と尻尾を打ち、雪を舞い上がらせる。

 

ハジメ「作戦は昨日のあれで行くぞ。リズはキリトにしっかり捕まっておくように。」

リズ「え、えぇ。」

キリト「よし、行くぞ!」

その掛け声とともに、リズを抱えたままでも、普段とあまり変わらぬ速度で駆けるキリト。

俺も変身してすぐに追いつき、秘密兵器を呼び出す。

 

ハジメ「タイムマジーン!」

その瞬間、何処からともなく表れたタイムマジーンが、ドラゴンを取り押さえる。

自動操縦なのであまり時間は長く持たないが、俺達には十分すぎる時間だ。

サッと白竜の視界から外れ、ドラゴンの背中に飛び移る。それと同時に剣を突き立て、重心を下に寄せる。

すると、途端に白竜は甲高い叫び声を上げ、両の翼を広げると、凄まじいスピードで急上昇を開始した。

 

ハジメ「コイツは……効くな!」

振り落とされたタイムマジーンをサッと収納しながら、そう呟く。

凄い速度に強烈なGと空気抵抗が、体を打ち付ける。それでもどうにか耐える。

 

みるみると、穴底が遠ざかり、どんどんと加速するGに「マズい」と思っていると、急に目の前が明るくなり、穴の底に出たのだと確信する。

ようやくと目が光に慣れた辺りで、周りを見回すとそこはもう次層のそこ近くの階層の天も極みだった。

そんな場所の景色は勿論綺麗なわけで、思わず三人とも反応する。

 

リズ「わぁっ……!」

キリト「イェ――!!」

ハジメ「ひゃっふーい!」

さすがにそんな空中の暴風吹き荒れる中で声までは聞こえないが、何か反応を示しているのは明白だ。

そこで白竜の背中から剣を抜き、落下に入る。

 

リズ「――リト、―――ぇ!!」

リズが何か思いっきり叫んでいる様子だが、未だ暴風吹き荒れる上空のためまるで聞こえない。

キリトも思いっきり叫んで聞き返したようだが、やはり聞こえない。

本当は聞こえているんじゃないのかって?……それは秘密だ。

 

リズ「――し、――の――――き!!」

キリト「な――て!?――――いよ!!」

リズ「―――で――――い!!」

二人とも、はしゃいでいるようで悪いが……これ、着地考えているのか?

 

キリト「――あ、これ着地どうすんだ!?」

ハジメ「だと思った。」

なのでこの後、飛行系ライダー達に何とかしてもらったのは言うまでもない。

後、ドラゴンもしっかり倒した。

 


 

リズ「たっだいま~!」

漸くリンダースに戻ってきた。

たった一日弱だというのにもう懐かしい《リズベット武具店》のドアを開け、店内へと入る。

 

NPC「お帰りなさいませ。」

出る際に設定していたらしい店番NPCの少女が丁寧に挨拶してくれた。それに「いつもお疲れ様。」と返す。後キリト、もうお昼も近いんだし、ホットドッグ的な何かで済ますなよ。

 

キリト「その前に、ハジメの剣の修理と俺の剣作るの、どっちも終わらせようぜ。」

パパっとウインドウを操作し、インゴットを実体化させる。

それをリズにひょいっと渡すと、リズは――出自を思い出したのか若干微妙な表情をしつつ――頷いた。

 

リズ「そうね、やっちゃおうか。じゃあ二人とも工房に来て。」

と、カウンターの奥に引っ込むリズを追いかけるように奥の工場へ入る。

「炉に火をつけて」と、指示を受けたのでふいごを動かして炉に風を送る。

すぐに炉が真っ赤に焼け始めたのでリズを呼び、細かい調整を頼む。

 

リズ「まずはハジメのからかしらね。」

ハジメ「……あぁ、直るといいなぁ。」

こちらも出自が出自なため、直るかどうか微妙なのだ。まぁ、ここはリズの腕を信じよう。

そう思い、先ほどドラゴンの背にぶっ刺したこともあり、残り耐久値が1の愛刀をリズに渡す。

リズは剣を受け取ると、既に炉に放り込んでいたインゴットと合わせ叩き始める。

 

すでに形あるものなのでそこまで多く叩く必要はないが、それでも200回を超す量を叩く必要があるらしい。

カン、カン、と小気味よい音が工場を包み、剣を熱心に叩くリズ。様になっているなぁ……。

赤熱していた剣の刀身が打たれ、冷めて鈍く輝きだしたころ、リズの手が止まった。

 

リズ「……修復、完了。」

その一言とともに、先ほどまでボロボロだった刀身が今までの輝きを取り戻す。

リズが剣の耐久値を確認するついでに、鑑定スキルで武器のスペックを確認したらしい。

それでか驚いた声を上げる。

 

リズ「……武器の強化値が上がってる。」

ハジメ「!そりゃあ嬉しいな。」

そう返すと、リズはウインドウを可視モードにしてくれた。

見てみると、修繕前まで+3だった強化値が+5にまで上がり、全体のスペックがかなり上がっている。

その中で特に目を見張るのが、新たに追加された武器スキルの《チェーン加速》だ。

技のチェーン速度の加速だろうか?いずれにしろ実験のし甲斐がありそうだった。

 

ハジメ「サンキュー、リズ。」

そのままトレードウインドウを出して、それなりの金額を入力してリズに渡そうとしたのだが、それはリズによって止められた。

 

リズ「いいわよ、お代は。命助けてもらったんだし、これからもうちを贔屓にしてくれるだけで。」

成程、商魂逞しいものだ。これが初来店のお客さんだったら、がっちり心をつかまれることだろう。

そう思いながら、「そうさせてもらうよ。」と笑みを浮かべ、後ろに下がる。

 

キリト「さ、次は俺だな。」

工場の丸椅子に腰かけていたキリトがぴょんと立ち上がり、リズにもう一つのインゴットを渡した。

リズ「片手用直剣でいいのね?」

炉に受け取ったインゴットを放り込みながらリズが問う。

 

キリト「おう、よろしく頼む。」

万感の信頼を込めて頷くキリト。

再度丸椅子に腰かけると、ゆっくりインゴットが灼ける様子を眺め始める。

 

リズ「――言っとくけど、出来上がりはランダム要素に左右されるんだから、あんまり期待しないでよ。」

キリト「失敗したらまた取りに行けばいいさ。今度はロープ持参で。」

リズ「……長いやつをね。」

……今度はアスナから調味料のレシピでも聞き出して、持っていくか。そう思った。

 

そんな会話が終わるころにはインゴットも十分に灼けたようで、ヤットコで金床の上に移す。

ウインドウを出しスキルを発動させると、いよいよ作業開始だ。

先ほどのように、カン、カンと小気味よい音が工場を包み、それを真剣に眺める。

 

そのうち、200から250の間を叩き終わったその時だった。

カン、と最後一際高い槌音を響かせたインゴットが眩い白光を放った。

潰れた長方形のインゴットが、じわじわとその姿を変えていき、剣をかたどっていく。

 

ハジメ・キリト「「おお……!」」

これには声を漏らさずにはいられず、キリトに至っては座っていた椅子を離れ、リズの隣で剣が形成され鵜様子を注視する始末だ。

 

やがて数秒して、剣のオブジェクトデータの読み込みが完了し、白光が止む。

美しい、ただ一つ思ったのはそれだけだ。やや華奢な刀身は薄く、レイピアほどでないにしろ細い。

又、元のインゴットがそうであったように微妙に半透明なその刀身は僅かに反対側を映しているように見える。

3人、息を呑みじっと出来上がった剣を眺めていたが、流石にそれをずっと続けるわけもなく、先に回復したリズが様々情報を見ていく。

 

リズ「えーと、名前は《ダークリパルサー》ね。

あたしが初耳ってことは、今のところ情報屋の名鑑には載ってない剣だと思うわ。

――どうぞ、試してみて。」

キリト「ああ。」

 

キリトはゆっくり頷くと、右手を伸ばし剣の柄を握った。

左手を振り、ダークリパルサーを自身の装備フィギュアに登録すると、左手に持ち替えヒュヒュン、と音を立てて数回振った。

 

リズ「――どう?」

感想を待ちきれないといった様子でリズが尋ねると、キリトはしばらく剣を見つめた後で、ニコリと笑った。

 

キリト「重いな。……いい剣だ。」

リズ「ほんと!?……やった!!」

リズはグッと右手でガッツポーズをすると、握ったままのその拳を突き出し、キリトと打ち合わせた。

少年漫画っぽい、熱い展開のように。それにしても、ダークリパルサー、か……。

キリトにピッタリなネーミングセンスだな。

 

リズ「……心の問題、だね……ぜんぶ……。」

キリト「?」

心……夏目漱石かな?(すっとぼけ)

リズ「う、ううん、なんでもないよ。――それより、どっかで乾杯しようよ。あたしお腹空いちゃった。」

そう言って、ぐいぐいと俺とキリトの肩を押すリズ。だが、工場を出る直前でふと疑問を呈した。

 

リズ「……ねえ。」

キリト「ん?」

リズ「キリト――あんた最初、エリュシデータと同等の、って言ってたわよね。

ダークリパルサーは確かにいい剣だけど、それとそんなに違うとも思えないわよ。

なんで似たような剣が必要なのよ。」

それは、多分ユニークスキルか何かだろう。恐らく、二刀流と見た。

 

キリト「ああ……。」

キリトは迷うような表情を一瞬見せるが、じっと俺とリズを一瞥すると、ふっと破顔した。

キリト「全部は説明できない。それ以上聞かない、って条件付きなら話してもいい。」

リズ「何なのよ、もったいぶって。」

キリト「ちょっと離れて。」

言って、俺とリズを窓際にまで下がらせると、キリトは自身の装備フィギュアを操作し、右手にエリュシデータを装備した。

 

リズ「…………?」

あっ、これ完全に二刀流だわ。そう思う俺とは反対に、リズはキリトに戸惑いの表情を見せている。

それを横目にキリトは左右の剣を構える――、次の瞬間。

青のエフェクト光とともに、15、16と剣を振り、()()()()()()を発動させた。

空打ちも終わり、若干気恥ずかしげなキリトはそれを誤魔化すようにリズにこう言った。

 

キリト「とまあ、そういうわけだ。――この剣の鞘、適当に見繕ってもらえないか?」

リズ「あ……う、うん。」

成程……俺の直感はこれを待っていたのかもしれない。この二刀流こそが、次のボス戦にてカギとなる。

そう、確信した。こりゃあ、さっさとキリトのレベル上げてアスナと一緒にボス部屋に行くっきゃねぇ!

 

とはいえ、キリトが今まで黙っていたのは自身がユニークスキル持ちだと知られないためだろう。

今までソロを貫いていたとはいえ、ユニークスキル持ちではどこからかの勧誘もすさまじいこととなるだろうし、どんな嫉妬の矛先が向くかもわからない。

リズから黒皮仕上げの鞘を受け取り、ダークリパルサーを収めたキリトはストレージにそれを格納した。

 

キリト「……さて、これで依頼完了だな。剣の代金を払うよ。幾ら?」

リズ「お金は、いらない」

キリト「……ええ?」

あ、コレ落ちてるな……そして続く言葉が正妻様に遮られる未来も、俺は知っていた。

 

リズ「代わりに、あたしをキリトの……」

――その時だった。工場のドアが勢いよく開いた。二人が驚いて反応して見た先にいたのは……。

アスナ「リズ!!心配したよー!!」

半ばタックルのような勢いでリズに抱き付いたのは、長い栗色の髪の似合うソプラノボイスの持ち主。

 

キリト・リズ「「あ、アスナ……。」」

ハジメ「おや、アスナちゃん。」

そう、俺にここリズベット武具店を推してくれた、血盟騎士団副団長のアスナだった。

呆然と三人立ち尽くす中、アスナはリズを至近距離で睨みながら猛然とまくし立てる。

 

アスナ「メッセージは届かないし、マップ追跡もできないし、常連の人も何も知らないし、いったい昨夜はどこにいたのよ!

わたし黒鉄宮まで確認に行っちゃったんだからね!」

リズ「ご、ごめん。ちょっとダンジョンで足止め食らっちゃって……。」

アスナ「ダンジョン!?リズが、一人で!?」

リズ「ううん、あの人たちと……。」

指と視線で斜め後ろにいる俺達を指すと、くるりと振り向いたアスナは、こちらを見て、数秒のフリーズ。

 

キリト「……おーい、ラグってるのか?」

アスナ「き、キリト君!?……と、ハジメ君!?」

キリト「うお!」

普段よりワンオクターブほど高めの声に驚くキリト。……説教はまた今度にしておくか。

 

キリト「や、アスナ、久しぶり。」

アスナ「う、うん。……びっくりした。そっか、早速来たんだ。言ってくれれば私も一緒したのに。」

いや、あそこは流石にアスナは嫌がるだろ……あの金属の成り立ちからして。

そんな俺の心の呟きも知らず、はにかむように笑いながら、キリトを見るアスナの姿は、傍から見ても恋する少女なわけで……。

それに対しリズは、今ので親友のアスナの想い人がキリトであることに気付いたようだ。

呆然と立ち尽くすリズにアスナは気付いた様子なく、屈託なく言った。

 

アスナ「この人、リズに失礼なこと言わなかった?」

それ、キリトの不実に繋がっているんだが……。

リズ「あ……あのね……。」

少しどもると、リズはアスナの手を掴み売り場の方へ出ていく。

 

リズ「少し待っててくださいね。すぐに帰ってきますから。」

妙によそよそしい態度のリズに何を思うか、チラリと隣を見てみると――。

キリト「……ど、どうしたんだ。リズのやつ……?」

もうお前、いっそのこと押し倒されちまえよ。

そんなことを思いながら待つこと少し、戻ってきたのはアスナ一人だった。

 

キリト「あれ、リズは?」

聞けば、仕入れの約束どうこうで急に出て行ってしまったとか。

十中八九失恋のショックから立ち去ったとしか思えないのだが、この唐変木は……。

 

ハジメ「キリト、手伝ってこい。剣作ってもらったんだし。」

キリト「……まあ、そうだな。」

流石のキリトもリズの様子の異変には気づいていたらしい。

割にすんなり提案を受け入れ、リズを追いかけるべく工場を出た。

残された俺達は、適当に店番でもして時間をつぶそうということとなり、売り場にいた少女NPCに代わり、店に出た。

 

アスナ「――へえ、そんなことが……。」

ハジメ「あぁ、キリトへの説教はまた今度にしてやってくれ。今回は俺も疲れたしな。」

アスナ「ふふっ、そういうことにしておくわ。」

時間は昼過ぎ程、武具店等の店が混み始めるのは基本夕方からなので、客足は少ない。

なので、暇つぶしに昨日からの出来事を話した。……インゴットの成り立ちについては流石に躊躇したが。

 

アスナ「それにしても、リズがそんなことを……。」

――『そんなこと』というのは、リズが抱いていた飢えのことだろう。

この仮想の世界では誰もが抱きかねない飢え、アスナも似たようなことを思ったことがあったのか、表情が暗く沈む。

 

ハジメ「まぁ、別に飢えることは卑しいことじゃない。欲望は生きるエネルギーにもなるからな。

大事なのは、それを受け入れて前に進むことだ。」

アスナ「……前に、進む?」

ハジメ「あぁ、それが今を生きる、俺達全員ができる、最大限のことだ。」

失ったものを取り戻すため、去って行ってしまった者の遺志を継ぐため、前を向いてひたすら手探りで進んでいく。

それが、人の強さだと、俺は思う。

 

アスナ「――ハジメ君も、そうゆうことあったの?」

ハジメ「そうだなぁ……この世界に来て最初っから考えてはいたさ。

ま、別に真剣に考えなきゃダメってわけじゃない。明日の朝ご飯の献立くらいに思っておけばいいさ。」

そのくらいが、人にはちょうどいい。

 

アスナ「……ふふ、そんなことでいいんだね。」

ハジメ「そういうもんさ、悩みなんて。」

そうして、2人ひとしきり笑うと、店のドアが開かれた。

咄嗟に「いらっしゃいませ」と声を掛けると、現れた姿はリズとキリトだった。

 

リズ「……ただいま。」

ちょっと照れくさそうにただいまを告げるリズに、それを軽くはにかみながら見つめるキリト。

どうやら、色々折り合いはついたようだ。

 

ハジメ「おかえり。」

そうして、そこから談笑から始まり、そのまま皆で一晩明かしたのは言うまでもない。

後日、アスナにキリトがこってり絞られたことも、言うまでもない。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

漸くダークリパルサーと二刀流が登場しました。これで74層でのストーリーイベントが解放されます。
寝起きの一言は、分かる人には分かるネタですw
そして次回、ハジメさんがラフコフアジトに乗り込んじゃいます!
相手は卑怯を得意とする殺人犯共、魔王ハジメさんの審判や如何に!?


次回予告

ハジメ
「デスゲーム開始から猛威を振るっていたレッドギルド、〈ラフィン・コフィン〉。
開始から2年、遂にラフコフ討伐の為の作戦が立案された。
しかし、スパイによる情報漏洩を危険視したハジメは、たった一人で敵陣へと乗り込むことに。
果たして、ハジメの考えた作戦とは!?今ここに、魔王の本領が発揮される!

次回 ソードアートオンラインfeatジオウ
双剣13" 恐怖のShow time!~少女の叫び、逃走の果てに~~」

この先の物語は、何がいいですか?

  • SAO編の続き
  • 推しの子二次創作
  • ISギーツクロス
  • 次はFATEに行ってみようぜ!
  • このすばにぶっこんでみようや
  • ワンピいこうぜ
  • じゅじゅつだいじに
  • ジョジョにまかせろ
  • ブロリーMAD
  • ヒロアカがんばれ
  • ギアスつっこめ
  • あくまのがっこう
  • はめつのおうこくなんてなかった…
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