うp主の妄想による、息抜きサブストーリー 作:天元突破クローズエボルハザード
「
そこでS級食材の調理を依頼されたアスナは、自分の部屋にキリトを招き入れることに。
その翌日、ストーカーのロン毛野郎クラディールをキリトが見事に撃破、ハジメが制裁を下した。
そして3人は、74層のボス部屋に挑戦すべく、ダンジョンに足を踏み入れるのであった!」
エギル
「ラグーラビット……食いたかったなぁ……。」
ハジメ
「いつまで引きずってんすか、エギルさん……折角のあらすじ初登場なのに。」
エギル
「いや、俺の知り合いに料理できる奴なんていねぇからよぉ……羨ましいぜ。」
ハジメ
「そういうと思って、アスナちゃん直伝フロストワイバーン肉料理のレシピをもらってきたんですけどねぇ……
この調子じゃ無理そうか。」
エギル
「さぁ、どうなる双剣16!」
ハジメ
「切り替え早いなオイ。」
さて、色々あったが、そこは第1層以来の俺達最強パーティー。
道中現れる難敵たちも、それこそ余裕で駆逐しながら確実にこの荘厳な迷宮区タワー内を突き進んでいく。
既にマッピングは完了しているとはいえ、茅場のことだ。
何やら鬼畜じみた変更もあるやもしれん。なので警戒全開で進んでいく。
そうして進んでいく内にマップデータの『密度』といったものが変わってきた。
SAOは基本超高画質なのだが、イベントマップや迷宮区のボスマップ付近、ボス部屋などの重要マップは特に高画質処理が為されている――ような気がする。
マップの空白部分も見る限りではここが最後だ。ということは――
回廊をただひたすら真っすぐ突き進み、その突き当たりには予想通りのものがそびえていた。
言わずもがな、階層ボスのボス部屋である。
アスナ「……これって、やっぱり……。」
キリト「多分そうだろうな……ボスの部屋だ。」
アスナ「どうする……?覗くだけ覗いてみる?」
割に強気なその言葉とは裏腹に、その声には不安が色濃く反映されている。
最速剣士アスナちゃんでも、やはりボスは怖いか。そう言えば、お化けも苦手だったな。
まぁ、あんなタイプのボスはもういないだろうから大丈夫だと思うが……。
キリト「……ボスモンスターはその守護する部屋からは絶対に出ない。ドアを開けるだけなら多分……
だ、大丈夫……じゃないか。」
自信なさげなキリト。やれやれ、俺も背中を押すか。
ハジメ「取り敢えず、何があっても即逃げられる準備だけしておこう。」
キリト・アスナ「「了解。」」
そこで二人ポケットから転移結晶を取り出し、俺はライドストライカーでダッシュできるようにする。
キリト「いいな……開けるぞ……!」
と、キリトが一度その鉄扉を押すと連動して左右の扉が滑らかに動き始める。
同時、演出として部屋の奥から、松明の何故か青白い炎が灯され、ボボボボボ……と連続して燃え上がってく。
扉が開き切るとともに、全ての松明が灯し終わり、部屋の構造が明らかとなっていく。
円形と思しき内部は相当広く、マップの残り空白部分はここだけで埋まるんじゃないかというほどだ。
だが、大事なのは部屋の構造ではない。部屋の奥、炎に照らされその巨大な姿が露になっていた。
俺達の3倍はありそうな巨大な青の体躯に、盛り上がった筋肉はそれ相応の筋力値があることを見ただけで理解させる。
遠目から見える頭は、山羊のものか。
その横からはねじれた太い角がそそり立ち、眼は不気味に青白く光る。
下半身は濃紺の長い毛に包まれ、全容はわからないがそれでもわかるほど隆起した筋肉に背中の冷や汗を禁じ得ない。
要約して悪魔のような巨人を前にして、俺たちは本能的恐怖からまるで動けずにいる。恐る恐る巨人のHPバーを見てみれば、三本あるバーの上にカーソルが出てきた。
《The Gleameyes》、それが目の前の悪魔型巨人ボスの名なのだろう。名前に定冠詞がつくのもその証だ。
偵察戦、攻略戦は後々に控えるにしろ、最低限の情報は仕入れねばとここまで読み取ってきたが、目の前の悪魔が自分の領域に入ってきた者たちをそう長く届ませてくれるなど優しい真似をするはずなどあろうはずもなく、突然轟くような雄叫びを上げたかと思えば、巨大な剣片手に地響き立てながら猛スピードで走り寄ってきた。
キリト「うわあああああ!!」
アスナ「きゃあああああ!!」
ハジメ「いや、早いなオイ!?」
三者三様に一斉に逃げ出した。悲鳴を上げながら、回れ右で猛ダッシュのキリトとアスナ。
俺は殿だったので、即座にライドストライカーをフルスロットルで飛ばし、二人に追いついた。
そして、ボスにビビッて、見事安全エリアまで逃げ出した俺達。
……よくよく考えたら、ボスは部屋の外には如何なる理由があろうとも出ることはないし、安全エリアまで逃げ出す必要なかったな。
そう思いながら壁際にへたり込み、三人顔を見合わせると、
「……ぷっ。」
誰からともなく笑いがこみあげ、馬鹿みたいだと笑いあう。
ひとしきり笑い、数分ほどしてようやく笑いを収めると、
ハジメ「……あれは少々不味いかもしれんな……。」
と表情を引き締めた。
キリト「あれはなあ……絶対火とか吐いてきそうだしな。」
アスナ「あの大型剣も厄介そうだから、盾装備の人たちには前衛で壁役やってもらわないと。」
ハジメ「いや、あの件も一撃がえぐいかもしれん。パリィ失敗して直撃したら、間違いなく死ぬって。」
その後もボス攻略についてあれこれと考えていると、時間も忘れて話し込んでしまっていたようで、そのうちキリトの腹の虫が盛大に鳴った。
アスナ「あ、もう三時だ。ちょっと遅いけど、お昼にしましょうか。」
キリト「なにっ!!」
おい、どんだけ食い意地はってんだお前は。
そんなキリトに苦笑いしつつ、アスナは小ぶりのバケットを一つ実体化させる。
その中から大きめの紙包み三つとSAOでは珍しい保温容器を取り出し、包みを全員に、容器の方を俺に手渡す。
アスナ「包みの方はサンドイッチで、ハジメさんには追加で昨日の残りのシチューです。」
キリト「……え、俺そっちの方が……。」
アスナ「キリト君は昨日充分食べたでしょ。」
すげなくそう言われ、項垂れるキリトだが、ひとたびサンドイッチを齧ると様子も一変。
バクバクとかぶりつきあっという間に全てを胃の中に収める。
キリト「う……美味かった……。」
ハジメ「そうか……おぉ、これは旨い!流石はアスナちゃん!」
これがラグーラビット……キリトめ、これの出来立てを頂けるとは、どれだけ幸せ者なんだお前は!
サンドイッチの方は正に現実世界のファーストフードを思い起こさせる味だった。
ハジメ「アスナちゃん、この味どうやったんだ?それと、ドラゴンのお肉はどうしたんだい?」
アスナ「一年間、スキル上げと同時並行で色々試してたんです。
アインクラッドで手に入る数百の調味料の組み合わせで現実の調味料と同じ味感覚がするように、味覚再生エンジンのパラメータをぜ~~~んぶ解析して。」
そう言いながら、バスケットの中から小瓶を二つほど取り出す。
俺達に手を出すように促し、差し出して手の上に小瓶の中身を一滴たらす。
アスナ「舐めてみて。」
言われて、手のひらの一滴を舐めとる。そして、二人顔を見合わせながら驚愕の表情をアスナに向ける。
ハジメ「これって……!」
キリト「……ああ、マヨだ!!」
呆然とする俺達にアスナはもう一つの小瓶の中身を出すから手を出せと言う。
それはもう即座に手を出す俺達、垂らされた調味料も即座に舐めとると、またまた驚愕の表情を浮かべた。
キリト「……マジか!?」
ハジメ「醤油まで再現したとは……神か。」
そのまま「アスナ様~」と言わんばかりの称賛を送る俺達。
その様子にアスナは気恥しそうな笑みを浮かべる。
アスナ「それと、ドラゴンのお肉は先日、ステーキにしてみたの。とっても美味しかったわ!」
ハジメ「それはアスナちゃんの料理の腕前だろう。なぁ、キリト?」
キリト「あぁ、もうアスナ無しの一日は耐えられない。そう思えるほどだった。」
アスナ「もう!二人ともほめ過ぎだって!」///
……いや、キリトへの愛もそこに加わったのもあるか。
ハジメ「アスナちゃん、これの材料や調合配分、教えてもらえない?
俺も余った素材とか、レア食材とかあげるからさ!」
これは俺にとっては重要案件だ。ボス攻略なんかよりも。
アスナ「ハジメ君ならある程度料理スキル上げてるみたいだし、大丈夫だよ。」
ハジメ「おぉ、マジか!助かる!」
思わず再び「ありがたや~。」と拝み倒したくなった俺であった。と、その時。
隣のキリトが、俺にご飯をたかる計画でも建てているのか、えらく真剣な表情をしていると思ったら、不意に下層側の入り口から鎧をガチャガチャ言わせて入ってきた、幾人かの集団を警戒していた。
クライン「おお、キリト!ハジメもいるじゃねェか!しばらくだな!」
まぁ、その正体は、クライン率いる風林火山の面々だったが。
キリト「まだ生きてたか、クライン。」
オイオイ、いくら人当たりがいいクラインさん相手だからって、流石にそりゃねぇだろ~。
ハジメ「久しぶり、クラインさん。元気そうで何よりです。」
クライン「おう、この前のボス戦以来だな。にしてもキリト、オメェ……
もうちょい愛想ってもんをだ……な……。」
昼の荷物を手早く片付けて同じく立ち上がったアスナを見てか、目の他に口まで丸くして固まるクラインさん。
キリト「おーい、何とか言え。ラグってんのか?」
キリトが肘で脇腹をつつきながら尋ねてやるとようやく口を閉じ、ものすごい勢いで妙なことを口走り始めた。
クライン「こここっ、こんにちは!!じじっ、自分は、くくクライン24歳独身現在彼女ぼsy――」
キリト「アホか!!」
見事制裁にキリトの拳が鳩尾にヒットし、システムにより痛みこそはないであろうが、その衝撃に倒れ伏す。
いや、緊張しながらそんなこと言われても……。そんな呆れの視線をクラインさんに向ける。
メンバーの皆はこれに怒るかと思えば、クラインさんそっちのけ、というか踏みつけながら、我先にとアスナに自己紹介し始める。
そんな彼らを抑えつつ、キリトはアスナに向かって言った。
キリト「……ま、まあ、悪い連中じゃないから。リーダーの顔はともかく。」
一言余計なんだよなぁ……。
無論、先ほどの件も込々で反撃として足を思いっきり踏まれたのは言うまでもない。
――そんなこんなで和やかに談笑していると、先ほどクラインさんたちがやってきた方向から新たに幾つもの足音と金属音が聞こえてきた。
全員がそちらの方を注視してみると、現れたのは重装の部隊だった。
12人程が二列縦隊で行進してくる様はどことなく軍のようで「まさか?」と思えば、先頭の一人――
恐らくは隊長クラス――の鎧の胸部分にアインクラッドの全景を意匠化したような紋章が見えた。
ハジメ「……《軍》か。」
よりによって面倒な奴等と鉢合わせしてしまった。俺は正直言って、軍とは仲が悪い。
軍は25層のクォーターボス戦の際に部隊がほぼほぼ壊滅してしまったこともあり、攻略から組織強化に注力するようになっていたはずだ。
そのはずの軍が約50層ぶりに攻略に赴いたのには理由がある。
アスナ「……やっぱり噂は本当だったんだ。」
アスナがぼそりと独り言のように漏らす。
何でも、軍の内部で現在の組織強化に重点を置く組織体制に不満が出たらしく、軍の上層部がプロパガンダ的な意味を含めて、精鋭部隊を前線に派遣し、成果を見せることで不満を解消、ゲームクリアの意思を示す。
その第一陣というのが、こいつ等だろう。軍のトップは確か……イガオウとか言ったか。
以前諍いを事前に止めたDKBとALSについても関係あるので、ここで解説しておこう。
まず、ある日のことだが、攻略組のリーダー格にあった…ディアボロ?とかいう奴が、不慮の事故で亡くなったのが事の発端だった。
そこからさっき言ったDKBとALSに分かれ、現在ここに来ているのは、25層で壊滅したALSを前身とした《軍》だ。
DKBは以前出会ったシュミットがいい例だろう。と、その部隊の隊長格の男がこちらへ歩み寄ってきた。
男はたまたま一番前にいた俺の前で立ち止まると、口を開いた。
???「私はアインクラッド解放軍所属、コ―バッツ中佐だ」
いや、ここファンタジーだけども、国とかないぞ?まぁ、専用機とかは気になるけどさ。
内心、そんなことを思いながら、「血盟騎士団、副団長ハジメだ。」と短く名乗り返す。
コ―バッツとやらは俺の名乗りに軽く頷くと、そのまま横柄な口調で訊いてきた。
コーバッツ「君らはもうこの先まで攻略しているのか?」
ハジメ「まぁな、ボス部屋の手前までのマッピングならほとんど埋まってると思うが?」
コーバッツ「うむ。ではそのマップデータを提供して貰いたい。」
さも当然だ、と言わんばかりの台詞に驚くキリト達。
が、コイツ等にはさっさと行ってもらいたいので、以前のマッピングデータを直ぐに渡す。
今回のはって?知らん、自己責任だし。それに、《軍》とは確執がある。
《はじまりの街》で圧政を行っているこいつ等に、素直に安全なものを渡すと思ったら大間違いだ。
そんなことも知らず、中佐(笑)は表情一つ動かさないまま、「協力感謝する」と感謝のかけらもないような口調で告げた。
ハジメ「偵察戦やろうっていうなら、やめておいた方がいいぞ。」
その忠告に、中佐(笑)は少しばかりだが、こちらを振り向き反応した。
部隊人数が12人と少し多めなのはボスに挑み、情報を得ることで後々に合流することになるであろう攻略組においての立場を有利にしておきたいという腹積もりもあるのだろう。
だが、見てみれば部隊のほとんどは慣れない遠征に疲弊しているし、軍は25層以来ボス戦の経験もない。
そんな調子でボスに挑もうものなら死人が出かねない。
コーバッツ「……それは私が判断する。」
そんな譲らない中佐(笑)を、キリトも窘め始める。
キリト「さっきちょっとボス部屋を覗いてきたけど、生半可な人数で走行できる相手じゃないぜ。
仲間もだいぶ消耗してるみたいじゃないか。」
コーバッツ「……私の部下はこの程度で値を上げるような軟弱ものではない!」
苛立ったようにいう中佐(笑)だが、当の部下本人たちは首を横に振る始末。
コーバッツ「貴様らさっさと立て!」
という中佐(笑)の声でのろのろと立ち上がり、再度二列縦隊を組むと進軍を再開した。
やがてガシャリガシャリといった足音も消えた頃、クラインさんが不安げな声を上げた。
クライン「……大丈夫なのかよあの連中……。」
それはこの場にいる全員の総意でもあった……俺以外の。
キリト「……一応様子だけでも見に行くか……。」
キリトがそう言うと、皆一様に首肯する。やれやれ、全く世話の焼ける……。
そんなことを思いつつ、手早く装備を確認すると、急いで奴等を追いかけるのだった。
途中、リザードマンの大群にあったものの、即座に蹴散らした。
しかし、俺達が最上階のボス部屋についたのは、安全エリアを出て30分程経過してからのことだった。
「うあぁぁぁぁぁ…………」
かすかにだが聞こえてきたそれは間違いなく悲鳴だった。俺達は顔を見合わせ頷くと、一斉に駆け出した。
この中では最速のアスナと俺が、キリトやクラインさんたちを少しばかり引き離してしまうことになってしまっているが、この際気にしている余裕はない。
すぐにボス部屋とこの回廊を仕切る大扉が見えてきたが、既にその扉は左右に大きく開き、内部の青い炎に照らされ、少し前に見た青い悪魔が軍の部隊を薙ぎ払う姿が見て取れた。
ハジメ「チッ!迷っている暇はないか!」
そう言ってベルトとウォッチを準備し、変身する。
ハジメ「変身!」
『グランドタイム!祝え!仮面ライダーグランドジオウ!』
変身が終わると、瞬時に移動。今まさにぶった切られそうな部隊の一人を、即座に救出する。
しかし、このグリームアイズ、間違いなく強い。俺にオーマフォームを使わせるための茅場の策か!?
そう思わざるを得ない強さだった。そんな考えを一旦頭の隅に置き、倒れ伏す軍の連中に向かって叫ぶ。
ハジメ「何してる!早く転移結晶を使え!!」
だが、何人かの手にはすでに転移結晶が握られている。そして一人が絶望に満ちた表情で言ってきた。
軍1「だめだ……!ク……クリスタルが使えない!!」
ハジメ「マジか……!」
とうとう実装か。とはいえ、グランドジオウでならギリギリ持ちこたえられるレベルだ。
キリト達が隙を見て軍の連中を部屋の外まで救出して回っている。が、KYはここにもいた。
コーバッツ「ええい、悪魔め!私が貴様を!!」
突然の叫び声に全員が声の方を注視する。
なんと、あの中佐(笑)、抜刀しボスに突撃しようとしているではないか。
無謀というか、馬鹿というか……。
ハジメ「行くな、この死にたがり!!」
キリト「馬鹿!止めろ!!」
アスナ「止めなさい!!」
クライン「死ぬ気か、手前ェ!!」
4人各自、それを止めようとするも、距離もあり一瞬の判断ではどうにも動きようがなかった。
背後からの中佐(笑)の一撃は、当然HPバーを減らすことはほとんどなかった。
援護に向かおうとするが、今の攻撃で怒りゲージも溜まったのか狂乱状態で思わず耳を塞ぎたくなるような雄叫びとともにやみくもに剣を振り回し始め、まともに近づけたものじゃない。
コーバッツ「部下の仇、討たせてもらう!!」
狂乱状態に陥ったグリームアイズの攻撃をどうにか捌いていると、そんな声が聞こえてきたような気がした。
狂乱状態が終わり、ようやくと少し落ち着くと、見えたのはHPバーが消滅し倒れ伏す中佐(笑)だった。
――有り得ない。それが奴の最後の言葉となった。プレイヤーの消滅は実にあっけない。
死体が残ることもなければ、血も出たりはしない。
ただ、現実では病気でにしろ外傷でにしろ、命は静かに終えていくものである。
しかし、SAOではそうはいかない。それこそ、有り得ないほど幻想的に消えていく。
だが、それを見て「綺麗」と答える者はまともなプレイヤーには一人としていないだろう。
本当に趣味の悪い男だ、茅場晶彦。
アスナ「もう、だめよ……これ以上は……もう……」
ハジメ「ッ!キリト!」
ふと、絞り出すように漏れたアスナの声に、俺は咄嗟にキリトを呼んだ。
キリトも意図を察したのか、カバーに入ろうとした。
アスナ「だめ――――ッ!!」
絶叫とともに突撃するアスナ。
しかし、細剣の一撃程度ではグリームアイズのHPを目に見えて減らすことなど出来はしない。
しかも、今までグリームアイズを囲み消極的な攻撃を繰り返すことで混乱させ、攻撃回数そのものを減らさせることで維持してきた戦線がこれで崩れた。
言わずもがな、タゲはアスナに移り、驚異的速度でその大剣が振り下ろされる。
アスナは咄嗟にそれをかわすが、その余波に巻き込まれ大きく吹き飛ばされる。
そこに次弾の攻撃が容赦なく振り下ろされる。
キリト「アスナ――――ッ!!」
が、その攻撃自体はキリトがアスナを庇い立ちすることで防げた。
しかし、筋力値の差で受けるだけでもHPの一割ほどが削りで減らされている。
タゲがキリトへと移り、さらなる追撃は俺が背面から攻撃することで防ぐが、背面からの一撃でもそれほどHPを減らせた印象はない。
これは不味いな……そう思っている暇もなく、敵の攻撃は続いた。
しばらく、俺とキリトがグリームアイズの攻撃を引き受け、クライン達が全員を回収する時間を稼ぐが……
長くは持ちそうにない。
圧倒的ステータス差による攻撃密度の差はタンクでもない俺たち二人では捌き切れるものではない。
それでもなんとかHPを減らしていき、残りHPは二人とも6割ほど。
そこで、流石に見てられなくなったのかクラインさんが参戦してくるが、それでも大して変わりはしない。
そんなじり貧の状況が続くかと思われたその時、キリトが唐突に叫んだ。
キリト「三人とも!10秒……10秒だけ持ちこたえてくれ!!」
無理矢理パリィしてクラインさんと入れ替わると、キリトは左手を振り準備に入る。
二刀流――あの技か!キリトの意図を察した俺は、平成主役ライダー一斉召喚を行い、防御に入った。
アスナの細剣とクラインのカタナは総じて速度重視で重さに欠けているため、グリームアイズの攻撃をまともに受けてはHPなぞ即座に吹き飛んでしまうからな。
キリト「いいぞ!!」
キリトのその声に即座に反応し、大きく振りかぶったグリームアイズの大剣を、瞬間移動で避け、背後からの攻撃で隙を作った。
ハジメ「スイッチ!!」
そして叫んで横に飛び、密かに忍ばせておいたエナジーアイテム《高速化》《マッスル化》をキリトに投げ与えた。
それによって強化されたキリトは、すぐさま敵の懐に突撃した。
すぐに硬直から回復したグリームアイズが剣を振るが、それはキリトの右手の剣に弾かれる。
そのまま間髪入れず
ようやくとまともに入った一撃で、グリームアイズのHPが目に見えて減少した。
「グォォォォォ!!」
叫びとともに振り下ろされた一撃も、両手の剣を交差して防がれ、逆に弾かれる。
キリトの両手の剣がソードスキルの光を纏い、以前リズの工房でも見たあのソードスキルが放たれる。
キリト「……スターバースト・ストリーム!!」
スターバースト・ストリーム――二刀流スキルにおいても上位に位置する、16回連続切りソードスキルだ。
それをまさか、こんな土壇場で放つとは……これもアスナを思っているが故、か。愛、凄いなぁ……。
そして、技名の宣言とともに始まった高速の連撃はその名の通り、星屑のように舞う白光に彩られ、とても幻想的だ。
しかし、ソードスキルの発動により、全ての動きがモーションで制限される。
当然防御などできるわけもなく、モーションを無理矢理制御することでの回避くらいしかできない。
なので、キリトが全力でグリームアイズを斬り刻めるように、俺も新スキル"チェイン加速"を生かすことにした。
グランドジオウ状態でも、難なく使えるようで、とてもありがたかった。
『オールトゥエンティタイムブレーク!!!』
高速移動能力を持ったライダー達と共に、キリトの攻撃の合間合間に追撃を入れていく。
すると、ヘイトはこちらにも向き、キリトへの反撃が最小限になる。
更に、エナジーアイテム《挑発》のおかげで、キリトへの注意が散漫になっていった。
キリト「もっと…!もっと早く!」
一撃毎に更に素早さの上がるその攻撃、時々攻撃を受けるもキリトは止まらない。
キリト「はあああああああぁぁぁあああああっ!!!」
絶叫とともに、キリトの最後の一撃が、グリームアイズの胸の中心を貫く。
「ゴァァァアアアアアアアア!!!!」
絶叫はグリームアイズからも放たれた。
少しのダメージ判定時間の後、グリームアイズのHPバーは全て吹き飛び――
膨大な青い欠片となって爆散した。
ボス部屋の中に欠片がキラキラと降り注ぎ、そこでボス戦が終わったのだと実感させられる。
アイツ、やりやがった……ホントにお前ってやつはすごいな、キリト。……?
ハジメ「……キリト?」
息も絶え絶えに、剣を収めながらキリトの名を呼ぶ。
――しかし反応が全くないので、試しに近寄ろうとしたその時。
キリト「……。」
アスナ「キリト君!?」
ハジメ「キリト!」
クライン「キリト!」
キリトが、極限の緊張からの解放による、自律神経の乱れからくる脳血流の低下で、意識を失ったようだ。
そのまま無言でその場に倒れこんでしまった。
その後、倒れたキリトをアスナが介抱、膝枕をしていた。
一分もたたない頃、漸くキリトが目を覚ました。
まだ頭がぼんやりしているのか、目が虚ろなキリトにアスナはもう泣きそうな勢いでキリトに抱き付きながら叫ぶ。
アスナ「バカッ……!無茶して……!」
キリトは抱き付かれた事実に目を白黒させるが、すぐに冗談めかして言う。
キリト「……あんまり締め付けると、俺のHPが無くなるぞ……。」
青春もといラブコメしてんなー、ま、向こうのバカップルはそのままにしておくとして……。
軍の様子を見に行っていたクラインさんもこっちにやってきた。
その足音に反応したキリトが顔を上げると、遠慮がちにだがクラインさんが声を掛ける。
クライン「生き残った連中は回復させたが……コーバッツとあと2人死んだ……。」
ハジメ「自業自得でしょう。とはいえ、今後もこう言った死に急ぎが出ないことを祈るしかないですね。」
クライン「あぁ、全くだ。コーバッツの馬鹿野郎が……。死んだら何にもなんねえだろうが……!」
憤るクラインさんだったが、やがて切り替えるように頭を振ると、努めて明るめの声音でキリトに訊いた。
クライン「そりゃそうと、オメエなんだよさっきのは!?」
キリト「……言わなきゃダメか?」
クライン「ったりめぇだ!二刀流なんて見たことねぇぞ!」
そこでキリトは説明するのがめんどくさいと言わんばかりに、目で俺にぶん投げようとしてきたが、この場の全員はキリトによる説明を待っている。
そう同じく目線で伝えると、諦めたのかため息一つつくと、ぽつりぽつりと話し始めた。
キリト「……エクストラスキルだよ。名前はそのまま《二刀流》。」
スキルには二種類あり、片手剣や細剣、曲刀などの通常のスキル。
それに特別な条件を満たすことで習得できる《エクストラスキル》がある。
その中でも個人でしか習得できないものを一般的に《ユニークスキル》と呼ばれる。
ヒースクリフの神聖剣、俺のオーマジオウなどがその例である。
またクラインさんの使う《カタナスキル》なんかも、習得は簡単ながらエクストラスキルに分類されるものだ。
当然、興味を覚えない内容ではないためクラインさんによる追及が入る。
クライン「しゅ、出現の条件は!?」
キリト「解ってりゃ公開してる。」
やはり、ユニークスキルか。
クライン「ったく、水臭ぇなあキリト。そんなすげえウラワザ黙ってるなんてよう。」
キリト「……こんなレアスキル持ってるなんて知られたら、色々あるだろ……しかも、俺はビーターだぞ?」
言わんとしがたいことは解る。こういう事関連は非常にデリケートな部類だ。
ヒースクリフのような人望ある者ならともかく、キリトはベータテスター達への悪評を自分に向けさせているのだ。
事情も知らない奴等からすれば、キリトのユニークスキルは嫉妬ものだろう。
クライン「ネットゲーマーは嫉妬深いからな。オレらは人間出来てるからともかく、妬み嫉みはそりゃああるだろうなあ。
それに……」
そこで一旦言葉を切ると、クラインさんはキリトに抱き付いたままのアスナを見やり、人の悪い笑みを浮かべるのだった。
クライン「……まあ、苦労も修行のうちと思って頑張りたまえ、若人よ。」
キリト「勝手に……。」
クラインさんはそのまま反転、軍の生存者たちの方に向かって歩く。
クライン「おうお前ら、本部まではちゃんと戻れるか?」
頷くのはまだ若い、20代はいっていないであろう男のプレイヤーだ。
ハジメ「なら、今日のことはしっかり上に伝えておけ。二度とこんな無茶な真似しないよう止めさせろ。」
軍2「は、はい。……あの……有り難うございました。」
ハジメ「礼ならキリトに言え。」
そう言うと、軍の生き残り達は立ち上がり、キリトに向かって深々と頭を下げると、ボス部屋を出て結晶アイテムで転移していった。
それを見送ってから、さて、と振り返り言う。
ハジメ「キリト、アスナちゃん、報告やっとくから、今日は二人とも休んでおきな。
方や精神的に、方や肉体的に疲れてんだし。オーバーワークで倒れられたら、俺が困るし。」
キリト「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうか。後は頼む。」
ハジメ「おう、アスナちゃんもウチの別荘使ってもいいから。防音室あるし。」
アスナ「なっ、なんでそんなこと言うんですか!?」///
ふっふっふっ……若いっていいねぇ。そんなことを思いながら、俺達はボス部屋を後にするのであった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
今回ようやくキリト君のターンが回ってきました!スターバースト・ストリーム、炸裂ゥ!
そしてフロストワイバーンくん(仮)もおいしいおにくに早変わり!流石SAOの台所の女神、アスナさん!
ハジメさん?今回はキリアスのターンなので見せ所は少なめです。
後クラインさんも出番は少なめです。軍の奴ら?ちょっと何言ってるかわかんないっすね。
さて、次回はキリト君の騎士団加入、そして脱退&婚約へ……です。お楽しみに!
次回予告
ハジメ
「アスナの一時休暇を認めさせるため、急遽ヒースクリフと戦うことになるキリト。なんかデジャヴ……。
二人のユニークスキル使いの対決に、誰もが目を離せないでいた。
しかし、既に陰謀の凶刃が動き出しているのを、未だ誰も知らない。
果たして、キリトの運命や如何に!?そして、想い合う二人は、この世界で愛を叫ぶ!
次回 ソードアートオンラインfeatジオウ
双剣17"愛を誓うLovers~長の剣技・王の裁き~"」