うp主の妄想による、息抜きサブストーリー 作:天元突破クローズエボルハザード
「
しかし、やはりシステムアシストにより、あと一歩のところで敗北してしまう。
その後、入団した矢先に、変態ロン毛ストーカークラディールの凶刃が迫るも、危機を察知したハジメとアスナによって、それは打ち砕かれた。
そして、キリトとアスナは、互いに愛を誓いあい、新婚生活を満喫中なのであった……。」
アスナ
「キリト君。」
キリト
「何だいアスナ?」
アスナ
「呼んでみただけ。」
キリト
「なんだそりゃ。」
ハジメ
「お~い、おめぇ等。いちゃつくなとは言わんが、せめてあらすじ紹介だけでもやっとくれ。」
アスナ
「そうは言っても……足腰が立たなくなっちゃって……テヘッ☆」
キリト
「俺も……水分が……。」
ハジメ
「ハイハイお熱いこって。さて、どうなる双剣18。」
事件から一夜明け、キリトとアスナの二人は一時退団を申請してきた。
理由はギルドへの不信とのこと、まあ当然だ。俺も同じ理由で一時休暇を申請した。
副団長2人が組織への不信を抱えていると知られれば、組織崩壊の危険もあるだろう。
ヒースクリフは暫し瞑目すると退団を了承した。
しかし、最後に「だが君たちは、すぐに戦場に戻ってくるだろう。」と予言していた。
ぜってぇ、呼び戻す気満々だよアイツ。
まあ、それはそれとして、その後、2人は結婚、22層に小さなログハウスを買い、新婚生活を送っている。
俺もたまたま近所にあった別荘を購入した。
幸いにも、ソロ時代にたんまり稼いだ金に加えて、これまでのマッピングデータや余った素材、そしてマネーラッシュクエストで、財布はウハウハ状態だ。
キリトとアスナの新居も、折角なので負担してあげた。序に、農作用スキルも身に着けることにした。
そうして俺が作物を栽培し、アスナがそれを料理、キリトは狩りや釣りでメインをとってくる。
尤も、作物を渡して飯を食ったら、即座に退散しているが。2人の時間を削るわけにもいかんしな。
とはいえ、流石に1日1バーストストリームはやり過ぎだと思う。
日を重ねるごとに萎びていくキリトを、毎朝見かけるし。とまぁ、そんな他愛もない生活を送っていた。
そんなある日、二人は何時ものように出かけた。俺も二人のデート隠し撮りの為に尾行を開始した。
何でそんなことをって?結婚式の時に渡そうかなって。
この世界は、二人の馴初めや初めての思い出が一杯詰まった場所だし。
しかも、今回のお出かけは一味違う。理由は、キリトの悪戯だ。
なんでも、この層には幽霊の目撃情報があるらしく、お化けが苦手なアスナを驚かせようと、キリトがそこへ向かうことにしたそうだ。
まぁ、俺も調査しておこうと思ったので、都合がいいが。
さて、二人の様子はっと……。
アスナ「ねっ!肩車してっ!」
キリト「か、肩車?」
アスナ「だって~、いつも同じ高さから見てたらつまんないよ~。
キリト君の筋力パラメーターなら余裕でしょ?」
キリト「そ、そりゃそうかもしれないけどさ……お前いい年こいて。」
アスナ「年は関係ないもん♪」
……朝っぱらから何をやっとるんだ、あのバカップル。
アスナ「いいじゃん、だれか見てるわけでもないし♪」
ガッツリ見ているんだが。
キリト「……はぁ、いいけどさぁ。」
そう言ってキリトはしゃがむ。するとアスナがスカートをまくろうとしたので、一旦視線を外した。
アスナ「ハッ!後ろ見たら、ひっぱたくからね!」
キリト「……なんか理不尽じゃないか?」
そんなやり取りをしつつ、アスナはキリトの肩に乗った。
そしてキリトの頭をつつけば、キリトはアスナを肩車して立ち上がった。
アスナ「わぁ……!ほら!ここからもう湖が見えるよ!」
キリト「……俺は見えないよ。」
アスナ「じゃあ、後で私もやってあげるから!さぁ、出発進行!進路、北北東!」
キリト「へ~い……。」
疲れたように返事をしたキリトは、そのままアスナと共に前進した。さて、追いかけるか。
そして木の足場で出来た通路を通る途中、釣り師さん達に見られましたとさ。
キリト「……誰も見てなくないじゃん。」
アスナ「アハハ……人、いたね。」
そう苦笑いしつつも、手を振っている釣り師の人に、手を振り返すアスナ。俺はって?透明化状態だけど?
アスナ「ほら、キリト君も手を振りなよ。」
キリト「絶対嫌だ。」
キリトの態度に、流石にアスナも気づいたか。
アスナ「……降りた方が、いい?」
キリト「……ちゃんと捕まってろよ!」
アスナ「へ?きゃあぁぁぁ~!」
でもなんだかんだで、結局は仲睦まじいバカップルなのでした。
肩車状態でスピードを上げるキリト。アスナは叫びつつも楽しそうだ。さて、そろそろ例の地点につくか。
二人が入って行った薄暗い森。そこには……。
キリト「……昨日、村で聞いた噂なんだがな……。」
ふと、キリトが突然語りだした。例の噂をするつもりだな。
キリト「この辺の森で深くなっているとこ……出るんだってさ。」
アスナ「え?何が?」
あっ、キリトの奴、悪い笑みを浮かべてやがる。このドSめ!
キリト「……幽霊。」
アスナ「!?そ、それって……アストラル系のモンスターってこと?」
キリト「違う違う、本物さ。」
アスナ「へ!?」
アスナ、アストラル系苦手だしな……。その点じゃ、香織に似ているな。
何だろう、雫とガッチャンコして2で割った感じだな?…いや、雫成分の方が強そうだ。
キリト「狩られまくったモンスターの怨念が、夜な夜なフィールドを彷徨っているとか……。」
少しの沈黙、それを破るように、突然大きな物音が……!
アスナ「ヒッ!?」
アスナ、ビビりやなぁ~。
キリト「……で、そろそろなんだよ。」
アスナ「その、噂の場所が?」
アスナがオドオドした様子で聞けば、キリトは更に怖がらせるような情報を出してきた。
キリト「1週間位前、ウッドクラフトのプレイヤーが、木材を取りに来たんだ。
夢中で集めている内に暗くなっちゃって……すると、ちょっと離れた木の影に……
ちらりと、白い物影が……。」
すげぇな、リアリティ感あるわ。キリト、お前怖い話の言い聞かせでオファー貰えそうだな。
なんて思っていたその時。
アスナ「ヒィッ!?」
肩車されてるアスナがその高い視点から何かを見つけ、慌てふためく。
キリト「モンスターなのかなんなのか、白い影がゆっくりと木立の中に歩いていく……。」
が、当の本人はアスナを怖がらせようとしている途中で、全然聞いていない様子。
アスナ「ち、ちょ、ちょっと!」
キリト「?」
漸く気づいた様子。
アスナ「ヒッ!?ヒィ――ッ!!ちょちょちょ、ちょっと、下ろして!」
すると突然、大慌てで肩車から降りようとするアスナ。
キリトが手を離せば、そこから綺麗に後転で着地し、即座にキリトの後ろに隠れた。
キリト「ど、どうしたんだ?」
困惑するキリト、するとアスナはキリトの後ろから、震えながら前方を指さした。
アスナ「キ、キリト君、あそこ…!」
それじゃあ、俺も行きますか!
ハジメ「ミィツケタァァァ!!!」
そう言って木の上から宙づりになって飛び出す。
アスナ「キャアァァァ!?」
キリト「うぉわぁっ!?」
アスナはパニくってその場にしゃがみこんだ。キリトも思わず後退る。ククク、ドッキリ大成功だな!
キリト「ハジメ!おどかすなよ!」
ハジメ「ハハハ、悪い悪い。あんまりにもアスナちゃんが怖がりだったのが、幼馴染に似ていて、つい。」
そう言って苦笑いで、降り立つ。そして周りを見渡すと……。
ハジメ「……ん?あれは?」
キリト「うん?なっ!?」
どうやら、噂というのは本物だったようだ。見た目は明らかに女性、しかも年端もいかない少女に見える。
が、その直後、その少女の霊らしき何かが突然倒れた。
ハジメ「……罠かもしれないから、俺が見てくる。キリトはアスナちゃんをお願いな。」
キリト「はいはいっと。大丈夫だぞ、アスナ。ハジメの悪ふざけだ。」
アスナ「ふぇ…?ハジメ、君…?」
そんな会話を耳にしつつ、俺はその場所へと向かった。
ハジメ「こりゃあ、一体どういうことだ……?」
少女を見て一言。追いついたキリト達も不思議がっていた。
アスナ「ぷ、プレイヤー……?」
キリト「にしては妙だな、カーソルが出ない。」
ハジメ「あぁ、クエスト発生の通知や俺が抱き抱えた時点でのハラスメント警告も出てない。
NPCでもない可能性もあるな。」
とはいえ、このまま放っておくわけにもいかないので、キリトの家に連れて帰ることにした。
俺も、薬や果物、お菓子にお人形といったものを揃えることにした。
それにしても……何処か腑に落ちないな。確か、この層は迷宮区を除きモンスターがPOPしない中立の層だ。
アイテム等はまったく持っていなかったし、転移結晶でテレポートしてきた可能性も薄い。
考えられるのは転移門からテレポートしてきたというものだが、幼い子供というのはこのSAOではかなり目立つ。
誰にも見られずに森の奥まで行ったという可能性も低い。
ということは最初から森にいたとしか考えられないのだが、それはそれで不自然だ。
と、そんな考察をしながらも、俺達は森を脱出した。
そして翌日、キリトから連絡が入った。漸くあの子が目を覚ましたみたいだ。良かった。
命に別条がないなら、取り敢えず一安心だ。そう思い、昨日準備したものを持っていくことにした。
早速二人の家を訪ねると、昨日の少女はアスナに抱き着いていた。
???「ママ、パパ、その人だぁれ?」
……。
ハジメ「二人とも、育休とってくるからちょっと待ってろ。……この世界でも、子供作れるんだな……。」
アスナ「ちょっ、ちょっと!?今、何か言ってませんでしたか!?」///
キリト「お前何か勘違いしていないか!?」///
若いうちからの火遊びがこうも実を結ぶとは……青いな。そんな冗談はさておき。
ハジメ「見たところ、記憶喪失だと思うが……合っているか?」
アスナ「えぇ…きっと、本当に辛い事があったんじゃないかって……。」
ハジメ「そうか……。」
とはいえ、暗い表情のまま話し続けるのもなんだ。取り敢えずは、この子と仲良くならなければ。
ハジメ「こんにちは、俺はハジメだ。君は?」
俺はお人形とお菓子を取り出し、少女に近づいてみた。
すると少女は、二つとも受け取りながら、名乗ってくれた。
???「…ユイ…。はいめ……。」
ハジメ「……まぁ、難しいなら好きな呼び方でいいよ。おにぃとか。」
キリト「いや、こんなデカい息子いた覚えないんだが。」
ハジメ「だまらっしゃい。」
ジト目でキリトにツッコミを入れる。
するとアスナから説明を受けたのか、ユイちゃんはこう呼んでくれた。
ユイ「……おーさま。」
ハジメ「……あぁ、おーさまだ。」
そう微笑んで、肯定する。
それからちょっと後、取り敢えずこの子の両親の捜索(仮)に行く前に、昼食をとる事にした。
キリトは激辛サンドイッチ、俺は自作のハンバーガー擬き、ユイちゃんは俺特製のフルーツタルトだ。
すると、ユイちゃんは何故か、キリトの持つ激辛サンドイッチに釘付けになっていた。
キリト「ユイ、これはなスーゴク辛いぞー?」
ハジメ「そうだぞ、ユイちゃん。流石にユイちゃんにはまだ早いよ。」
そう二人で忠告するも、ユイちゃんは両手を広げて言った。
ユイ「パパとおんなじのがいい。」
……クッ、これが若さか!結局、その可愛さに根負けした俺とキリトは、サンドイッチを渡してしまった。
キリト「そうか…そこまでの覚悟なら、俺はとめん。何事も経験だ。」
アスナが「あっ……。」という表情になっているが……
スマン、幼子のおねだりには、さしもの俺でも勝てんのだよ。
ユイ「はむっ!」
しかし、咀嚼を続けるうちにその顔が険しくなって行く。やはり辛すぎたようだ。
ユイ「おいしい…。」
キリト「中々根性のある奴だ。」
ハジメ「どう見ても無理しているでしょうが。ほら、口直しのケーキだよ。」
そう言ってユイちゃんのお口にタルトを運んであげる。
すると、それを美味しそうに食べ、いい笑顔を見せた。
ユイ「おいしい!」
ハジメ「でしょ?でもね、ユイちゃんのママの方が、もっとおいしいものを作れるんだよ?」
ユイ「そうなの?ママ凄ーい!」
アスナ「そ、そんなでもないよ!」///
そうは言いつつも、娘に褒められて嬉しそうなアスナママ。家族っていい絵になるねぇ……。
ユイ「パパのサンドイッチも美味しい!」
キリト「お!じゃあ、今晩は激辛フルコースに挑戦しような!」
ハジメ「いやいや、ここはスイーツパラダイスで……!」
アスナ「もう!二人とも調子に乗らないの!そんな物作りませんからね!」
キリト「だってさ?」
ハジメ「だってさ?」
ユイ「だぁってさ!」
そんなやり取りで、皆笑い合うのだった。
その後、折角なので検査も兼ねたテストを行ってみた。
数学から国語、理科から社会と見た目年齢+2の小学5年生なら解けるであろう問題に、一応と中学生レベルのものも付けておいたものだ。
ユイ「う――……。」
随分悩んだようだが……結果は驚くものだった。
なんと、殆どがほぼ0点にも関わらず、数学のみ完璧に解けていたのだ。
ハジメ「……ふむ。」
そこが気になったので、高校や大学、はては人工衛星並みの演算処理問題まで混ぜた問題を解いてもらった。
ハジメ「……やはりか。」
結果、全問正解だった。正直、外れて欲しかった予想なんだがな……。
尚、キリトやアスナにもついでに解いてもらったが、アスナは高校2年、キリトは中学生卒業と、それぞれのレベルの数学の学力があると解った。
その後、お洋服を買うという名目のもと、俺達ははじまりの街へと向かうのであった。
ハジメ「そんなわけでやってきたわけだが……。」
俺達はユイちゃんを連れて、第1層《はじまりの街》広場に降り立った。
ラフコフ討伐後の対応以来の来訪なので、数か月ぶりだろうか。
キリトは何か感慨にふけるように辺りを眺め、アスナは痛ましげな表情で上を見上げている。
が、そうやって呆けている場合でもないので、俺はキリトに抱かれるユイちゃんを覗き込むように聞いた。
ハジメ「ユイちゃん、見たことある建物とかある?」
ユイ「う―……。」
ユイちゃんは顔をしかめて、辺りの建物を見つめるするが、覚えがないらしくやがて首を振った。
ユイ「わかんない……。」
キリト「そうか……。まあ、はじまりの街は恐ろしく広いからな。」
キリトがユイちゃんの頭をなでながら言った。
キリト「あちこち歩いてればそのうち何か思い出すかもしれないさ。
とりあえず、市場とかいろいろ行ってみようぜ」
キリトの提案にアスナ共々頷き、ここから近い市場へ向かった。しかし……。
ハジメ「やはりおかしい……。2000人はいるはずなのに、幾らなんでも静かすぎる。」
そう、数か月前に降りてきたときは、もう少し人通りがあったはずだ。
しかし、今は人っ子一人見かけない。それは道中だけではなく、市場でも同じだった。
店舗や屋台の立ち並ぶ市場エリアに差し掛かっても、いるのはNPCの店員キャラだけ。
街は相変わらずと閑散としていた。まいったな……聞き込みをしようにもこれではどうしようもない。
それでもどうにか、市場の中央から少し外れた通りの中央で街路樹の中でも一番大きなものの下に座り込む男性プレイヤーを見つけられたので、声を掛けに行く。
ハジメ「失礼、少しお聞きしたいことがあるのですが……。」
男性プレイヤーは、その木を注視したままに答えるのも億劫な感じで口を開いた。
男性「なんだよ?」
ハジメ「迷子になっている子がいまして……何処かにそう言った子を預かる場所とかありませんか?」
そこでようやく男はこちらに顔を向けると、じろりと見まわし、キリトの腕の中にいるユイちゃんに気付いたようだ。
男性「……迷子かよ、珍しいな。
……東七区の川べりの教会に、ガキのプレイヤーが集まって住んでるから、行ってみな。」
ハジメ「ありがとうございます。」
思いがけず、有力な情報に出会えた。
感謝の意を頭を下げることで表しつつ、物はついでと気になっていたことを質問する。
ハジメ「そういえば、はじまりの街って、かなりの数のプレイヤーが残っていたはずなんですが……
その人たちは今どちらに?」
男性「人がいない理由?別にいないわけじゃないぜ。皆、軍の徴税から逃げるのに宿屋に籠ってるだけさ。」
その話を聞いて、俺は内心で怒った。あのイガグリ野郎、今度は装備全部剥いでやる、と。
その後、男性に礼を言い、東七区にあるという教会に向かって歩き始める。
アスナ「それにしても……軍の暴走具合も酷いわね。」
キリト「始まりの層周辺だと、その場暮らしの狩りでプレイヤーたちはカツカツだろうに。
酷いもんだぜ。」
歩きながら、遂にうとうとと眠りに落ちてしまったユイちゃんを起こさないように小声で話す。
先日の74層の一件といい、ここのところの軍の行動は目に余る。
KoBのように、人数が膨れ上がりすぎて、まともに統制が取れていない可能性もあるが、それを差し引いても酷すぎる。
そう思いつつ、3人で軍の件への対応を検討しつつ、教会に向かうこと数分。
どこからか、「子供たちを返して!」という女性の叫び声が聞こえてきた。
キリト・アスナ「「……!?」」
ハジメ「!」
SAOの街中での叫び声など、滅多なことで聞くものではない。何か問題が起こったことは明白だ。
3人頷き合い、街中で出せる最高速で声の方向へ向かう。
路地をいくつかすり抜けて進むうちに奥の方に前方の細い路地を塞ぐ集団を見つけた。
10人はいるだろうか。黒鉄色と灰緑で統一された装備は間違えようのなく軍のものだ。
???「子供たちを返してください!」
軍のプレイヤーたちの前には簡素な濃紺のプレーンドレスを身にまとった眼鏡の女性が変わらず声を張り上げていた。
兵1「人聞きの悪いこと言うなって。
ちょっと子供たちに社会常識ってもんを教えてやってるだけなんだからな」
兵2「そうそう。市民には納税の義務があるからな。」
わははは、と男たちが汚い笑い声を上げた。女性の肩が、硬く握られた拳がぶるぶると震える。
更に付け加えて、男たちは税金が払えないなら装備を含めた全てを置いて行けと言う。
その瞬間、俺の中で何かがキレた。
ズオッ!!!
ハジメ「さっきから黙って聞いていれば……ラフコフとさして変わらん下衆共が……!」
『!?』
自分でも驚くほどにどす黒い殺気が漏れ出るのを感じた。でも、今はそんなことどうでもいい。
ただただ、目の前の雑種共が、気に食わない。
たとえヒースクリフが相手の弁護に立とうとも、絶対に退かない。退いてなるものか。
兵1「なっ、なんだt「誰が話していいっつった?」ヒィッ!?」
ハジメ「どこまでも腐りきった姦物共が……そんなに血の気が多いなら、俺が相手になってやるヨォ!!!」
俺はドライバーを装着、不意打ち対策に逢魔を帯刀、完全フル装備で"威圧"を発動した。
兵1「そ、そのドライバー…もしかして……!」
兵2「《仮面魔王》……攻略組!?」
雑種共が腰を抜かす。そしてその刹那の間に……一陣の風が通り過ぎた。
ハジメ「……もう切った。」
兵1「……へ?」
雑種共の背後に回り込んだ俺は、逢魔をゆっくり鞘にしまい、スキル名を口にする。
ハジメ「"歌謡一節……常世斬り"!」
納刀の瞬間、雑種共の装備、武器・鎧の両方が一気にポリゴンと化した。
『!?!?!?』
何が起こったのか、一同はわからずじまいだったが、それに関係なく、俺は雑種共に言い放った。
ハジメ「失せろ。」
『す、すんませんでしたー!!!』
その圧倒的なオーラに恐れ慄き、奴等は逃げて行った。所詮は下級戦士、無様なもんだ。
そう思いながら、俺は逢魔をしまった。そして漸く気づいた。うっかりやってしまったと。
後ろから俺へのドン引きの視線が突き刺さる。これはやってしまったなぁ……。
一応、子供達には圧の影響がないように外しておいたんだが……どうしたものか。
しかし、当の子供たちはというと、怯えなどクソ喰らえといった様子で、目を輝かせ叫んだ。
子供1「すげえ……すっげえよ兄ちゃん!!初めて見たよあんなの!!」
反応に困り、乾いた笑みが出るが、子供たちは何のそので飛びついてくる。
女性は近くで腰を抜かしており、へなへなと座り込みながらも両手を峰の前で握りしめ、泣き笑いのような表情を浮かべている。
取り敢えず、子供達の質問に答えようと思った、その時だった。
ユイ「みんなの……みんなの、こころが。」
いつの間にやら起きていたらしいユイちゃんが、虚空に向かって手を伸ばしていた。
ユイ「みんなのこころ……が……!」
キリト「ユイ!どうしたんだ、ユイ!!」
キリトが叫ぶが反応はない。
そこでキリトはユイちゃんを下ろし、顔を覗き込むように再度問うが、ユイちゃんの視線はただ虚空をさまようばかりで安定しない。
ユイ「……あたし……あたし……!」
そこでアスナが慌ててユイちゃんの元に駆け寄り、その手を握る。
アスナ「ユイちゃん……何か、思い出したの!?」
肩を抱き、問うがやはり反応はない。
ユイ「あたし、ここには……いなかった……。ずっと、ひとりで、くらいとこにいた……!」
顔をしかめ、唇を噛む。と、突然――
ユイ「うあ……あ……あああ!!」
身体を仰け反らせ、その細い体からは想像もつかないような高い悲鳴が迸る。
ハジメ・キリト・アスナ「「「……!?」」」
悲鳴とともに『ジ……ジジ……ザ……ザザザッ……』という、思わず耳を塞ぎたくなるようなノイズ地味た音も聞こえてきた。
直後、強張っていたユイちゃんの身体のあちこちから崩壊するようにぶれが生じ、倒れ込んだ。
アスナ「……ユイちゃん!?」
地面に落ちるユイちゃんをアスナさんが落ちる前に支える。
ユイ「ママ……こわい……ママ……!!」
先ほどとは打って変わってのか細い悲鳴を上げるユイちゃんを抱きしめると、数秒ほどでノイズは収まり、硬直した身体から力が抜ける。
……今のはまさか、ユイちゃんの生い立ちに関することか!?そうとしか、俺には思えなかった。
「ミナ、パンひとつ取って!」
「ほら、よそ見してるとこぼすよ!」
「あーっ、せんせー!ジンが目玉焼き取った!」
「かわりにニンジンやったろー!」
翌日、礼も兼ねて教会で一泊させてもらった。そして、子供達は元気いっぱいだった。
キリト「これは……すごいな……。」
アスナ「そ、そうだね……。」
ハジメ「元気そうでいいじゃないか。ユイちゃんも楽しそうだし。」
2人は眼前で繰り広げられる戦場さながらの朝食風景に、呆然としている。
そんな二人をよそに、子供たちからは少し離れたテーブルで朝の光景を見守る年長組(+ユイちゃん)は、揃ってお茶のカップを口許に運んでいる。
サーシャ「毎日こうなんですよ。いくら静かにって言っても聞かなくて。」
そう言いながらも、子供たちを見る女性――サーシャさんの目は心底愛しそうに細められている。
アスナ「子供好きなんですね。」
アスナが言うと、サーシャさんは照れるように笑う。
サーシャ「向こうでは、大学で教職課程を取ってたんです。
ただ、勉強するのと実践するのとじゃ何もかもが大違いで……。
ああじゃない、こうじゃないって毎日悩んでます。」
ハジメ「子育てってそういうもんだすよ。
毎日、悩んで迷って、それでも子供達と笑顔で接することが出来れば、きっと大丈夫だって思えるようになりますよ。」
俺も昔は、代行番長でいろいろ苦労したしなぁ……。すると、アスナが俺の言葉に反応した。
アスナ「ハジメ君……一体何歳なの?」
ハジメ「たしか、こっちの世界に来たのが2年前で16くらいだったから……18じゃね?」
キリト・アスナ「「えっ。」」
おや、てっきり同年代かと思ったかい?残念だったな、トリックだよ。
ハジメ「それで、少なくともユイちゃんはこの街にいた子では無い、と?」
サーシャ「えぇ、長い事この街にいますがユイちゃんの様な子は…。」
そう、彼女はこのゲームが始まった日以来、心に傷を負った子供達を教会に集めて面倒を見ているのだそうだ。
それ故に、2年間ほぼずっとこの街で暮らしているのだ、その中でやはりユイちゃんの様な少女は見た事がないのだそうだ。
とその時。
キリト「!誰か来るぞ。一人……。」
ハジメ「しかし、敵意は感じないな……誰だ?」
教会の入り口に、何者かがやってきていたようだ。
サーシャ「え……。またお客様かしら……?」
サーシャさんの言葉に重なるように、館内にノックの音が響いた。
ノックの正体は長身の女性プレイヤーだった。
銀髪を長めの髪をポニーテールに纏め、そのキリッとした表情には、思わず怜悧という言葉が頭に浮かんだ。
と、まあ印象はともかくとして失礼ながら彼女を観察させてもらう。
装備は鉄灰色のケープで隠されているが、ちらりと見えた濃緑色と黒鉄色の金属鎧は、間違いなく《軍》の装備だ。
子供たちもそれに気がついたようで、一斉に押し黙り警戒の視線を惜しげもなく浴びせかけている。
だが、サーシャさんが子供たちに向かって笑いかけると、安心させるように言った。
サーシャ「みんな、この人は大丈夫よ。食事を続けて。」
その言葉に安心したか、即座に食事に戻る子供たち。
その喧騒の中を縫うように歩いてきた女性プレイヤーは、サーシャさんに椅子を勧められると一礼して腰かけた。
???「はじめまして、ユリエールです。ギルドALFに所属しています。」
ALF……軍の略称だったか?
ハジメ「……血盟騎士団、ハジメ。2人はキリトとアスナ、同じ血盟騎士団所属、今は一時脱退中だがな。
こっちの子はユイちゃんだ。それで?昨日の事で文句でもいいに来たのか?」
前例もあるからな、安心は出来ん。
キリト「…お、おい。ハジメ……。」
ユリエール「いえ、講義などとんでもない。
寧ろその逆で、よくやってくれたとお礼を言いたいほどなのです。」
ハジメ「……ふむ。」
軍にしては、少しはまともなようだな。
そして、ユリエールとやらの関心は既に血盟騎士団の名の方に向いているようで、その空色の眼を見張った。
ユリエール「それにしてもKoBだったなんて……。なるほど、連中が軽くあしらわれるわけだ。」
するとユリエールは姿勢を正し、頭をテーブルにぶつけんばかりの勢いで下げ、言ってきた。
ユリエール「今日は、お三方にお願いがあって来たのです。」
?
ハジメ「……成程、事情は分かった。」
別室で聞いた、彼女の話を要約すると、こうだ。
元々、軍は徴税などと頭のイカれた組織ではなかったらしい。
元となったギルド(以前会ったディアベルがリーダーだったらしいが、既に故人の為、壊滅。)を日本最大のネットゲーム総合情報サイト《MMOトゥデイ》の運営者であったシンカーが設立し、情報や食料等のリソースの共有を理念に活動してきたそうだ。
が、MMORPGというのは本質的にリソースの奪い合いであり、デスゲームとなったSAOではそれはより顕著なものとなった。
故に、その理念を実行するためにはそれなりの規模とそれをまとめ上げる強力なリーダーが必要なのだが、現生存者の約2割、1000人が所属する軍はあまりに巨大すぎた。
アイテムの秘匿、それに対する粛清や反発が相次ぎ、リーダーであるシンカーは徐々に指導力を失っていった。
そこに台頭したのは、第一層にいた厄介者、イガグリ野郎のキバオウだった。
奴は、シンカーが指導力を失い始めたと同時に、自身に同調する幹部プレイヤーたちとともに体制の強化を打ち出し、ギルドの名称も《アインクラッド解放軍》と変更、方針として犯罪者狩りや狩場フィールドの独占を打ち出した。
前者に関しては大歓迎だったのだがやり方が過激で、後者に際しては収入の大幅増加でキバオウ派の権力をより強める結果となった。
結果、シンカーはさらに指導力を失い、最近ではほとんどお飾り状態だったという。
そこに調子に乗ったキバオウ派のプレイヤーは《徴税》と称して恐喝まがいの行動を始めたらしい。
権力を不用意に手にした者が、その力に酔いしれ溺れるのはよくあることだが……ここまで酷いとはな。
最早呆れてものも言えん。
が、そんな簡単に上手くいくわけもなかった。
資材の貯蓄にばかり目を向け、ゲーム攻略をないがしろにし続けた結果、批判が殺到。
幹部にまでその風潮が広がったのを焦ったのか、以前の74層への部隊派遣を行ったそうだが……
結果は何も言うまい。ただリソースを無駄に消費しただけだった、と言っておこう。
その件でキバオウは強く糾弾され、シンカーらは後少しのところで軍から追放といったところまで追いつめた。
しかし、追い詰められたキバオウは暴走。
シンカーに会議を求め、第1層の地下まで呼び出し、彼を罠にかけ、ダンジョン奥深くに放逐。
シンカーもシンカーでいい人すぎたのか、丸腰で話し合おうと言うキバオウの言葉を鵜呑みにし、転移結晶を持たずに行き、3日も身動きが取れなくなり、今に至るという。
ユリエール「全ては副官である私の責任です!
でも、私のレベルでは到底突破は不可能ですし、キバオウが睨みを利かせる中で軍の協力を得るのは不可能です…。
でも、そんな時、とってもお強い皆様が現れたと聞いて、いてもたってもいられずにこうしてお願いに来た次第です!
無理なお願いだと言う事は重々承知しています!でも…!でも…!
今頃、彼がどうしてるのかと思うと、気がおかしくなりそうで…!
お会いしたばかりで厚顔極まるとお思いでしょうが、お願いします!!
どうか、私と一緒にシンカーを助けてはもらえないでしょうか!?」
ユリエールが泣きながら頭を下げ、そう懇願する。……仕方がないか。
ハジメ「……わかりましたよ。受けましょう、その依頼。」
ユリエール「!ほ、ホントですか!?「ただし!」!」
ハジメ「これが終わった後、キバオウ一派は俺が必ずぶちのめすつもりなので、協力お願いしますね!」
そう言って笑顔で手を差し出した。
ユリエールは若干苦笑いしつつも、「ありがとうございます!」と、手を握り返してくれた。
アスナ「ちょ、ちょっとハジメ君!」
キリト「……いいのか?」
ハジメ「いずれ軍の体制には、メスを入れにゃあならんと前々から思っていたんだ。
ちょうどいい機会だろ。」
すると、その時。今までご飯に夢中だったユイちゃんが、ふとスープカップから顔を上げ、言った。
ユイ「大丈夫だよ、パパ、ママ…この人、嘘ついてないよ。」
先日までのたどたどしさとは打って変わっての流暢さをもって、嘘はないと断定して見せたユイちゃん。
アスナ「ユ……ユイちゃん、そんなこと、判るの……?」
驚きを隠せずにアスナが訊くと、ユイちゃんはこくりと頷いた。
ユイ「うん。うまく……言えないけど、わかる……。」
キリト「そっか……なら、信じるしかないな。」
その言葉にキリトはユイちゃんの頭をくしゃりと撫でた。そしてこちらを見て、ニヤッと笑う。
ハジメ「……決まりだな。」
アスナ「もう。呑気なんだから…。」
アスナはそれを聞いて呆れながらも微笑み、ユイちゃんの頭に手を伸ばす。
二人に撫でられたユイちゃんは相当にうれしそうだ。
そんなユイちゃんの頭をもうひと撫でしてから、アスナはユリエールに向き直り、微笑みかけながら言った。
アスナ「……微力ながら。お手伝いさせていただきます。
大事な人を助けたいって気持ち、私にも良く解りますから……。」
ユリエール「ありがとうございます!!」
その言葉に、ユリエールは涙を浮かべながら、深々と頭を下げた。
……もしかしてこの人も、どぅえきてるぅ~?なぁんてな。
キリト「じゃあ、ユイはここでお留守番してくれ。」
ユイ「いや!ユイも一緒に行く!」
サーシャ「ユイちゃん、私と一緒にお留守番してよ?」
これは困ったな。急にユイちゃんが駄々をこねだしてしまった。
ユイ「いや!ユイも行く!!」
キリト「おぉ…これが反抗期ってやつか。」
アスナ「バカな事言わないの!」
ハジメ「はぁ……わかったわかった。俺が護衛するから。
オーマフォーム使えば、何があっても大丈夫だろ。」
と、ユイを連れて行くことが決定した。……それが、運命の始まりとも知らずに。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
今回もキリアスがハッスルしておりましたwハジメさんも張り切っちゃいました。
技の元ネタは某海賊王の鼻歌骸骨です。でも一回でいいから使ってみたいんですよね、あの技。
そしてようやくユイちゃんが登場しました。
因みに、このシリーズは残すところ後5話ですので、皆様カウントダウンのご準備を。
さて次回、ユイちゃんの真実が明らかに!?こうご期待!
次回予告
ハジメ
「ユリエールの依頼で第1層地下のダンジョンに挑むことになったハジメ一行。
その最深部で、彼らは信じられない光景を目にするのだった。
そして、今まで明かされなかったユイちゃんの正体が今、判明する!
果たして、ハジメたちは依頼を達成できるのか!?そして最強王者が、一つの家族を守らんと動き出す!
次回 ソードアートオンラインfeatジオウ
双剣19"絆が繋ぐFamily~信じる限り、守るべきもの~"」