うp主の妄想による、息抜きサブストーリー   作:天元突破クローズエボルハザード

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ハジメ
SAO(ソードアートオンライン)という名の、デスゲームと化した仮想世界≪アインクラッド≫にて、ハジメ・キリト・アスナの3人は、血盟騎士団を一時脱退し、ハジメは二人の新婚生活を見守ることにしたのであった。
そんなある日、3人は森の中で謎の少女、ユイと出会い、彼女の親を探しにはじまりの街へ向かうことに。
そして軍との衝突とユイの異変を経て、良識派のユリエールの依頼で、3人はユイと共に第1層地下へと向かったのであった。」
ユイ
「皆さん初めまして!パパとママの娘のユイです!」
ハジメ
「おぉ~、挨拶できて偉いね、ユイちゃん。」
ユイ
「はい!パパとママの娘、ですので!」
アスナ
「ユイちゃん~♡」
キリト
「ユイ……♡」
ハジメ
「はいはい、保護者のお二人さん、今回はユイちゃんの番だから下がった下がった。」
キリト
「ハジメ、お前のカメラ貸してくれねぇか?」
ハジメ
「……分かっているが、目的は?」
アスナ
「ユイちゃんの記念映像を撮っておくためよ!」
ハジメ
「……青春の次は親バカか~。」
ユイ
「?それでは、双剣19、どうぞ!」


双剣19:絆が繋ぐFamily~信じる限り、守るべきもの~

地下ダンジョンでそこそこ深い所まで来ている我々、その時、大量のカエル、スカベンジトートが出現した。

シンカーが閉じ込められたダンジョンというのは、驚くべきことにはじまりの街の地下にあった。

ユリエール曰く、道中のモンスターは60層レベルの強さがあり、なまじ中層プレイヤーレベルの軍では、ダンジョン奥に放逐されたシンカーを救出することは難しいらしい。

 

ハジメ・キリト「「せやぁぁぁぁぁぁ!!」」

ま!俺達最強パーティーにかかれば、赤子の手を捻るようなもんだがな!

ユリエール「なんだかすみません、任せっぱなしで。」

アスナ「いえ、あれはもう病気ですので、好きにさせればいいんですよ。」

随分失礼だな、オイ。

そんな事を言われながらも、モンスターを全滅させ、ダンジョン最奥に向かって歩を進める。

 

ユリエール「シンカーの位置は、この数日間動いてません。多分安全エリアにいるんだと思います。

そこまで到達できれば、後は転移結晶で離脱できますから……。

すみません、もう少しだけお願いします。」

ユリエールに頭を下げられ、キリト君と二人で慌てて手を振った。

 

ハジメ「なに、俺達にとっては野暮用序だ。この程度造作もない。」

キリト「そうそう、それにこっちも好きでやってるんだし、アイテムも出るから。」

いや、アレは流石に……もしかして、アスナちゃんに調理させる気か!?

 

アスナ「へー、なんか良いアイテムあったの?」

キリト「おう!」

そう言うと、キリトはとてもとてもグロテスクな肉片を取り出してみせた……そう、カエルの足の肉を。

 

アスナ「ひいっ!?な、何それ?」

キリト「スカベンジトードの肉。」

アスナ「って、さっきのカエル!?」

キリト「ゲテモノほど旨いっていうしな、後で料理してくれよ。」

いや、俺でも引くわ。何やらせようとしてんだコイツ。

 

アスナ「絶対イヤーーーーー!!」

当然、アスナは有無を言わさず、肉を取り上げ、投げ出した。

そして投げ捨てられた肉は、地面に落ちてポリゴン破片となった。

 

キリト「ああ!!何すんだよ!」

アスナ「ふんっ!」

キリト「くそっ!それなら……これでどーだ!!」

一体何がしたいのか、大量のスカベンジトートの肉を出現させ、両手いっぱいに抱えてみせるキリト。

アスナはまた悲鳴をあげてそれを投げつけていき、キリトはそれを制止しようとしている。

そんな二人を見て、こらえきれないといった感じでユリエールはお腹を抱え、くっくっと笑みを漏らした。

 

ユイ「お姉ちゃん、はじめて笑った!」

途端にユイちゃんが満面の笑みで嬉しそうに叫んだ。まるで、水晶の様だな。

昨日の謎の発作以降、ユイちゃんは更に感情に機敏で敏感になった。

誰かが笑みを浮かべれば、ユイちゃんは弾ける様な笑みを向け、暗い表情をすれば不安げにこちらの顔を覗き込む……

まるで、そう義務付けられたような……考えすぎか。そして、しばらく歩く事、数分。

漸く最奥が見えてきた。

 

アスナ「あっ、安全地帯よ!」

アスナが言うと同時に、索敵スキルで中を探ったのかキリトも頷いた。

キリト「向こうに一人、プレイヤー反応がある。グリーンだ。」

ユリエール「っ!きっとシンカーです!!」

ユリエールは嬉々として飛び出し、プレイヤー反応がある方へ向かって行く

 

ユリエール「シンカー!」

もう我慢できないという風にシンカーの名を叫んだユリエールが、アスナもびっくりの速度で駆けだす。

俺たちもそれに続き、駆け出すとやがて前方に十字路と、その先にある小部屋が目に入った。

部屋の中は光に満ちていて、暗いダンジョン内に慣れた目では入り口付近に立つ男の顔までは見ることは叶わなかったが、こちらに向かって大きく両手を振っている。

 

???「ユリエ―――――ル!!」

シンカーらしき男の声を聴いた瞬間、ユリエールは尚一層のこと速度を速める。

ユリエール「シンカ―――――!!」

涙混じりに駆ける声。その時だった。

 

ハジメ「ッ!」

ふと背筋に悪寒が走った俺は、即座に全速力で駆けだした。それと同時だったか。

シンカー「ユリエール!!来ちゃダメだ――っ!!その通路には……っ!!」

シンカーの絶叫が聞こえた。相当シンカーにお熱だったせいか、ユリエールが止まるのが遅かった。

 

そして彼女が十字路の中心に差し掛かろうとしていた時、奴は現れた。

部屋の手前の左通路の奥から、不意に黄色いカーソルが出現した。

素早く名を確認すると、表示には《The Fatal-scythe》とある――。

運命の鎌を意するであろう名を飾るように置かれた定冠詞。ボスモンスターの証だ。

 

『オーマジオウ』

ハジメ「変身!」

事前にベルトを装着しておいたので、後はウォッチの起動とセットだけで変身が可能だったので、即座に変身する。

 

『仮面ライダージオウ!オーマ!』

ハジメ「ッラァッ!」

何とかサイキョージカンギレードで、鎌を受け流し、ダメージを最小限に抑える。

 

ハジメ「早く行け!」

俺の叫びにユリエールは一気に部屋の中に入る。

アスナたちも続くかと思われたが、ユイだけ預けてこっちに来たようだ。

 

キリト「ハジメ、大丈夫か!?」

ハジメ「あぁ、でもコイツ、強いぞ……!おそらく90層レベルかもしれん……。」

キリト・アスナ「「…………!?」」

全員息を呑んで、死神のような姿のフェイタル・サイスを見やる。

フヨフヨと漂いながらも、死神の眼はこちらを捉え続けている。……やるだけやるしかないか。

 

ハジメ「二人はユイちゃん達と一緒に脱出しろ!俺はここで時間を稼ぐ!」

アスナ「!?でも!「ユイちゃんを一人にするな!」!」

そう言って俺は、冗談交じりにフラグを立てる。

 

ハジメ「ここは俺に任せて先に行け!なぁに、直ぐに帰ってくるさ!」

キリト「…何言ってんだよ……そんな冗談、聞きたくねぇよ…!」

そう歯噛みするキリト。だが、ここで全員犬死するよかマシだろう。

最悪の場合、オーマジオウでここを吹き飛ばすつもりだ。……茅場への切り札がなくなるのは痛いがな。

 

ハジメ「久しぶりに……湧いて来たぜ!」

そう言って俺は、平成ライダーの最強フォームたちを呼び出した。

ハジメ「来い、死神野郎!」

その挑発に乗るかのように、フェイタル・サイスは大鎌を振り上げてきた。

 

ハジメ「シッ!」

八重樫流刀術"霞穿・無明"。時間停止と共に鎌への一点集中攻撃を叩きこみ、武器破壊を狙うも……

ハジメ「!硬い……!」

後退して鎌を避ける。すると、驚異的速度で死神が突進攻撃のモーションに入った。

 

ハジメ「!?」

音速移動状態にもかかわらず、奴はこちらに正確に狙いをつけていた。

何とか鎌を未来予知でかわし、鎌を蹴り飛ばして突進を横っ飛びに避ける。

……危ねぇ、今の掠っただけでも3割は持っていかれたぞ。ノーガードならレッド確定だ。

しかも、死神の纏う瘴気に、微弱な麻痺属性が含まれているので、厄介この上ない。

さて、ここからどうするか。そう思ったその時。

 

アスナ「ユイちゃん!ダメ!!」

キリト「バカ!!ユイ!!逃げろ!」

なんと、何時の間にかユイちゃんがこちらに向かっているではないか。

そして確かな歩みで、真っすぐ巨大な死神と向き合っている。

 

ハジメ「ユイちゃん!」

俺は咄嗟にユイを庇おうと――

その時、未来予知が流れ出し、その衝撃の内容に、一瞬立ち止まってしまう。

 

その時、死神はユイちゃんにタゲを移し、その小さな命を刈り取ろうと、重々しいモーションで鎌を振りかぶる。

キリトとアスナが向かっているが間に合わない。

しかし、次の瞬間、信じられないことが起こった。

 

ユイ「だいじょうぶだよ、みんな。」

その言葉と同時に、ユイちゃんの身体がふわりと浮き上がる。

ジャンプじゃない。浮遊するかのように2mほども浮き上がると、死神に向かってその小さな右手を掲げた。

 

ハジメ「!アレは……!」

確実に命を刈り取る鋭利な一撃、それはユイに当たる寸前――

鮮やかな紫色の障壁に阻まれ、死神の鎌はいともたやすく弾かれる。

【Immortal Object】、ユイちゃんの右手に浮かんだシステムタグには確かにそう表記されていた。

不死存在――プレイヤーはいかなる理由があろうとも持つはずのない属性、システムからの保護だと!?

 

アスナ「…破壊不能オブジェクト…?どう言う事…?」

困惑する俺達をよそに、死神の攻撃を弾いたユイちゃんは次なる攻撃に出た。

ごうっ!!という大きな音とともに、ユイちゃんの右手に炎が巻き起こった。

炎はすぐに剣の形をかたどり始め、どこまでも伸び続ける。

死神は幾度も妨害するべく、鎌を振るうが、障壁に阻まれそれは意味をなさない。

 

――ユイちゃんは、やがてかたどられて身の丈以上の長剣を一回転させ、躊躇なく、死神に向かって剣を振り上げる。

死神はまるでユイちゃんを恐れるかのように大鎌を前方に掲げ、防御姿勢をとるが、振り下ろされたユイちゃんの火焔剣の前には無意味だった。

真っ二つに断ち切られた、死神は声にならない絶叫のようなものを上げると、ポリゴン片すらなく、炎に焼かれ、消滅した。

 

ハジメ「ユイ……ちゃん……。」

驚きのあまり硬直していた俺達は、とぼとぼとユイちゃんに歩み寄る。

それに気づいたユイちゃんはゆっくり振り向く。

その表情は微笑んでいるもののぎこちなく、瞳にはいっぱいに涙を浮かべていた。

ユイちゃんは、俺達を見上げたまま、静かに言った。

 

ユイ「パパ……ママ……おーさま……。ぜんぶ、思い出したよ……。」

 


 

黒鉄宮最奥の安全エリアはの中は、道中とは異なり白い光で満ち満ちていた。

中央には長方体の黒曜石風の石机が設置されている。

その石机にちょこんと腰掛けるユイちゃんを、俺達はじっと見つめている。

ユリエールとシンカーには先に脱出してもらったので、今ここにいるのは4人だけだ。

 

思い出した、と告げた後、ユイちゃんは沈黙を続けている。

その表情は記憶を取り戻したというのにとても悲愴で、どうにも言葉を掛けるのは躊躇われた。

が、いつまでもだんまりとはいかないので、意を決してアスナが尋ねた。

 

アスナ「ユイちゃん、思い出したの?今までのこと」

アスナが少し不安そうに尋ねるとユイは頷いた。

ユイ「はい。」

とどこか今までとは落ち着いた喋り方なユイ。

そして、泣き笑いのような表情のまま、ゆっくり……ゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

ユイ「はい……。全部、説明します――キリトさん、アスナさん、ハジメさん。」

先ほどまでの拙かった話し方から一転し、丁寧な口調になるユイちゃん。

それは今までの関係を拒絶するかのような冷たいものだったが、声音はどんどんと悲しげな雰囲気を纏っていく。

 

ユイ「《ソードアート・オンライン》という名のこの世界は、一つの巨大なシステムによって制御されています。

システムの名前は《カーディナル》、それが、この世界のバランスを自らの判断に基づいて制御しているのです。

カーディナルはもともと、人間のメンテナンスを必要としない存在として設計されました。

二つのコアプログラムが相互にエラー訂正を行い、更に無数の下位プログラム郡によって世界の全てを調整する……。

モンスターやNPCのAI,アイテムや通貨の出現バランス、何もかもがカーディナル指揮下のプログラム郡に操作されています。

――しかし、一つだけ人間の手に委ねなければならないものがありました。

プレイヤーの精神に由来するトラブル、それだけでは同じ人間でないと解決できない……

そのために、数十人規模のスタッフが用意される、はずでした。」

……俺もキリトもアスナも、認めたくはなかった。ユイちゃんが……プレイヤーではなかったことを。

 

キリト「ユイ、つまり君はゲームマスターなのか……?アーガスのスタッフ……?」

キリトがぽつりぽつりと尋ねると、ユイちゃんは数秒間沈黙したあと、ゆっくりと首を振った。

 

ユイ「……カーディナルの開発者たちは、プレイヤーのケアすらもシステムに委ねようと、あるプログラムを試作したのです。

ナーヴギアの特性を利用してプレイヤーの感情を詳細にモニタリングし、問題を抱えたプレイヤーの元を訪れて話を聞く……。

《メンタルヘルス・カウセリングプログラミング》、MHCP試作一号、コードネーム《Yui》。

それがわたしです。」

 

その発言に、3人それぞれに驚愕で息を呑む。

AI、それも自我を持ったNPCという形で、目の前に現れるとは……。

そんな思考を先読みしたかのようにユイちゃんが答える。

 

ユイ「プレイヤーに違和感を与えないように、わたしには感情模倣機能が与えられています。

――偽物なんです、全部……この涙も……。ごめんなさい……。」

といいつつも、目からはぽろぽろと涙が溢れ出る。

そんなユイちゃんを抱きしめようとアスナが手を伸ばすが、わずかに頭を振ってそれを拒否する。

そんなことない、いつもならそう言えるはずなのに、何故かその言葉がすぐには出なかった。

 

アスナ「……ユイちゃん。」

拒否を受け、行き所を失った手をゆっくりと下げる。

そんなアスナの表情は悲痛に歪むが、ユイちゃんの方もそんなアスナを見て更に涙を流す。

すれ違う親子の感情に思わずと、声が漏れた。

 

ハジメ「……なんで、ユイちゃんは記憶を失っていたんだ?」

ユイ「……2年前……。正式サービスが始まった日……」

そこで一息入れると、苦しげに、悔しそうに、全てが始まったあの日の出来事について語り出した。

 

ユイ「何故、何の為にかはわたしにも詳しくは解らないのですが、カーディナルが予定にない命令をわたしたちに下したのです。

プレイヤーに対する一切に干渉禁止……。

具体的な接触が許されない状況で、わたしたちはやむなくプレイヤーのメンタル状態のモニタリングだけを続けました。」

 

俺達は、その《予定のない命令》はSAO唯一のゲームマスター茅場晶彦によるものだと察する。

何故――それは解らない。

だが、茅場晶彦が悲嘆や絶望、そんな負の感情から逃れるためのすべをみすみす残しておくわけがない。

恐らくは、より《リアル》を追求するために……。

そんなGM側からの意図に関してなど、一切に情報を持たないユイちゃんは、その表情をさらに沈痛に歪めながらも、更に語っていく。

 

ユイ「状況は――最悪と言っていいものでした……。

ほとんどのプレイヤーは恐怖、絶望、憎しみ、怒りといった負の感情に常時支配され、時として狂気に陥る人すらいました。

わたしたちはそんな人たちの心をずっと見続けてきました。

本来であればすぐにでもそのプレイヤーのもとに赴き、話を聞き、問題を解決しなくてはならない……

しかしプレイヤーたちに接触することは禁止され……。

義務はあるのに権利がない矛盾した状況のなか、徐々にエラーを蓄積させていき、MHCP試作3号から9号までは蓄積値が基準を超えカーディナルによってデータを破棄され、残る2号もエラーに対して機能を自ら完全凍結することを選び、わたしだけが監視を続けました。」

……たった一人で、プレイヤーを見守り続けていたのか。それはさぞ、辛かっただろうに。

 

ユイ「ある日、いつものように監視を続けていると、他のプレイヤーとは大きく異なるメンタルパラメータを持つ3人のプレイヤーに気がつきました。

喜び……安らぎ……でもそれだけじゃない……。

この感情はなんだろう。そう思ってわたしはその3人のモニターを続けました。

会話や行動に触れるたび、私の中に不思議な欲求が生まれました。

そんなルーチンもアルゴリズムもなかったはずなのですが……。

3人のそばに行きたい……直接、わたしと話をしてほしい……。

すこしでも近くにいたくて、私は3人の暮らすホームから一番近いコンソールから実体化し、彷徨いました。

その頃にはもうわたしはかなり壊れてしまっていたのだと思います……。」

……それが俺達で、ユイちゃんはあの場所にいた、という訳か。

 

アスナ「それが、あの22層の森なの……?」

アスナの質問に、ユイちゃんはゆっくりと頷いた。

ユイ「はい…キリトさん、アスナさん、ハジメさん…私はずっと、皆さんに会いたかった…

森の中で、皆さんの姿を見た時……破綻した思考の中で、嬉しかった……。

おかしいですよね、そんなこと、思えるはずないのに……。わたし、ただの、プログラムなのに……。」

ハジメ「何もおかしくないよ。」

俺の言葉に、ユイちゃんは涙をいっぱいに溢れさせながら顔をあげた。

 

ハジメ「AIだからとか、壊れかけたからとか、そんなの関係ない。

たとえつくられた存在でも、その心は嘘なんかじゃない。

だってユイちゃんは……自分の気持ちを持っているんだから。」

そう言って俺は、キリトとアスナにバトンタッチする。ここからは、《パパ》と《ママ》の出番だ。

 

アスナ「ユイちゃん……あなたは、本物の知性を持っているんだね……。」

アスナ(ママ)がそっと手を握ると、それをじっと見ながら、ユイちゃんは僅かに首を傾ける。

ユイ「わたしには……解りません……。わたしが、どうなってしまったのか……」

――その時、今まで沈黙していたキリトが一歩進み出た。

 

キリト「ユイはもう、システムに操られるだけのプログラムじゃない。

……だから、自分の望みを言葉にできるはずだよ。」

娘を想う、柔らかい口調でキリト(パパ)は話しかける。

 

キリト「ユイの望みは、なんだい?」

ユイ「わたし……わたしは……」

ユイちゃん(2人の娘)は、溜まっていた飴玉の様な涙を、ぽろぽろと流しながら、細い腕をいっぱいに2人に向かって必死に伸ばした。

そしてぐずりながらも、自分の言葉を繋ぎ繋ぎに言う。

 

ユイ「私は…私は…ずっと…一緒にいたいです…!パパ、ママ、おーさま…!」

それを聞いたアスナは溢れる涙を拭うことなく、ユイちゃんの小さな体を力いっぱいに抱きしめる。

アスナ「ずっと、ずっと一緒だよ…ユイちゃん…!」

キリト「あぁ…ユイは俺たちの子供だ。一緒にあの家に帰ろう。みんなで暮らそう……いつまでも……。」

ハジメ「ユイちゃん。君は、ここに生きる大切な命だ。俺達も、君の傍にいるよ。」

キリトは、温かい笑みを浮かべながら、その腕でユイちゃんとアスナさんを包み込む。

俺も、ユイちゃんの手を優しく握った。

しかし、その腕の中でユイちゃんはか細いながら、そっと首を振った。

 

ユイ「もう……遅いんです……。」

その一言にキリトが、戸惑いの声を上げる。

キリト「何でだよ……遅いって……!?」

ユイ「わたしが記憶を取り戻したのは……あの石に触れたからなんです。」

そうやって視線を向けた先にあるのは、部屋の中心に鎮座する石机。

 

ユイ「あれは、GMがシステムに緊急アクセスするために設置されたコンソールです。

さっきのボスモンスターは、ここにプレイヤーが侵入しないようにカーディナルの手によって配置されたものだと思われます。

わたしはこのコンソールからシステムにアクセスし、《オブジェクトイレイサー》を呼び出してモンスターを消去しました。

その時にカーディナルのエラー訂正能力によって、破損していたデータの復元ができたのですが……

それは同時に、今まで放置されていたわたしをカーディナルが注目してしまったということでもあります。

今、コアシステムがわたしのプログラムを走査しています。

すぐに異物という結論が出され、わたしは消去されてしまうでしょう。

もう……あまり時間がありません……。」

何だよそれ……狂ってやがる。茅場、貴様という奴は……!

 

アスナ「そんな……そんなの……!」

キリト「なんとかならないのかよ!この場所から離れれば……!」

……そんなにリアルが見たいか、なら叶えてやる。リアルを超えた奇跡というものを!

 

ハジメ「……ユイちゃん、君の願いは、俺達と一緒にいたい、だったよね?」

ユイ「?……はい、でも「なら、よかった。」へ?」

ハジメ「ユイちゃんが最後まで諦めないで、それを強く願い続けられるなら、何とかできるかもしれない。」

キリト・アスナ「「!」」

その言葉に、キリトとアスナも反応する。

 

ユイ「……ほんとうですか?」

ハジメ「あぁ、茅場に教えてやるよ……家族の愛の凄さを、舐めるなよ!ってな。」

そう言って俺は、再度変身した。

 

『仮面ライダージオウ!オーマ!』

 

ハジメ「二人とも、ユイのことを強く思いながら、手をつないでやってくれ。」

キリト「わかった!ユイを頼む!」

アスナ「ハジメ君、ユイちゃんを助けて!」

ハジメ「あぁ、勿論だ!ユイちゃん、覚悟はいいかい!?」

ユイ「はい!お願いします!」

ユイの返事を聞いた俺は、ユイの額に手を当て、意識を集中させた。

 

ゴウッ!!!

 

瞬間、俺の背中から金色に輝く尻尾が無数に生え、ユイをキリトとアスナ諸共包み込んだ。

既に、リプログラミングは何回も使っているので把握されているだろう。

だが、創成の力はまだ対策されていない。それも歴史をも創り変えるレベルの力だ。

ユイを異物と認識して排除するならば、その判断を覆してしまえばいい。

 

瞬く間にユイのシステムを再構築、キリトとアスナの細胞から遺伝子情報を取り出し、ユイに組み込む。

言葉では簡単そうに聞こえるが、実際には極限の集中が必須となる。

データ一つ一つを現在の状態のまま残しつつ、異物判定をクリアしていく作業は、一歩間違えばデータの破損に繋がる。

 

それでも、俺達はこの作戦にかけた。たった一人の大事な愛娘の為、大切な仲間の笑顔を守るために。

だから俺は……私は、ここで止まるわけにはいかない!邪魔できるものならしてみるがいい、茅場!

私はこの世界を滅ぼしてでも、この親子を守って見せる!

――体感時間にして、数時間、いや、1日たった頃だろうか。3人を包み込んでいた尻尾が解けていった。

 

ユイ「パパ……!ママ……!」

そこには、確かにユイちゃんが立っていた。ジャミングなどは一切なかった。成功だ。

アスナ「ユイちゃん!!」

キリト「ユイ!!」

二人はユイを抱きしめ、その腕の中に確かな温もりを感じていた。

 

ハジメ「ハァッ……ハァッ……ざまぁ、みやがれ……茅場ァ……!」

一方で、俺は息も絶え絶えにその場で大の字に倒れていた。無理もない。

精神を極限まで集中し過ぎたせいで、まだ頭がクラクラしやがる。

それにしても、必要なリソースが、まさか俺のHPやスキルスロットだったなんて、知らなかった……。

とはいえ、必要最低限のスキル以外で何とか足りた。HPに関しては、ポーションわんこそばで耐えきった。

 

キリト「!ハジメ、大丈夫か?」

ハジメ「ようやっと、気づいたか……大丈夫に、決まってんだろ。俺ァ、魔王だぞ?」

アスナ「フフッ、そうですね。」

……この笑顔を守れて、本当に良かった。

 

ユイ「ありがとうございます!王様!」

屈託のない笑顔で、お礼を言うユイちゃん。だが、今回は俺だけの勝利じゃない。

ハジメ「俺だけのおかげじゃないよ。

ユイちゃんやユイちゃんのパパとママが、最後まで諦めずに頑張った結果だよ。」

そう言って二人を見る。アスナはユイを抱きしめ、頭を撫でた。

 

キリト「……ごめんな。」

ハジメ「あん?」

突然、キリトが申し訳なさそうな表情で、そんなことを言い出した。

 

キリト「デスゲームが始まったあの日からずっと、お前に助けてもらってばかりだしさ……。

何か、返せたらいいのにな、なんて思っててさ……。」

何だ、そんなことか。

 

ハジメ「もう貰っているよ、十分に。」

キリト「?」

ハジメ「仲間。この世界で、キリトが最初に仲間になってくれたから、最初の旅が楽しくて……

アスナちゃんとも会って、他にも色んな奴等とも会って、ユイちゃんにも会えた。

この旅は、俺一人じゃここまで鮮やかにならなかった。だから今でも、感謝しているんだよ。

"ありがとう、俺と仲間でいてくれて"、てさ。」

そう言って拳を突き出す。

 

ハジメ「これからも、俺達は仲間だ。たとえ異世界だろうと、3人の危機にはすっ飛んで見せるさ。」

キリト「フッ……確かにお前なら、やってのけそうだな。」

アスナ「フフッ、ほんとだね。」

ユイ「王様ならできます!だって、凄い王様ですから!」

そう言って笑い合いながら、俺達は拳を突き合わせたのであった。

 


 

後日、キリト達とユイちゃん復活記念のパーティーをした翌日、完全回復した俺は軍へと乗り込み、予告通りキバオウ一派を完膚なきまでに叩きのめしてきた。

勿論、デュエルでだ。ヒースクリフには事後承認で認めさせた。

今まで放置してきたんだし、これぐらいはいいだろ。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

今回はユイちゃんとハジメさんが大活躍の回でした!ユイちゃんを生存させた理由?
家族の笑顔が見たかったからだぁ!後悔も反省もなぁい!尊さこそ至高ゥ!
……すいません、思考が途中からゲンムに乗っ取られかけてました。
まぁ、でもハジメさんがいる以上、曇らせ展開は基本ナッシングと思っていただいても構いません。
だって魔王だもの、みつを。
さて、次回は最終決戦前の日常回です。お楽しみに!

P.S.風音鈴鹿さん、誤字報告ありがとうございました!

次回予告

ハジメ
「ユイを茅場の魔の手から引きはがして数日、ハジメたちは休暇を満喫していた。
そんなある日、釣り師ニシダからヌシ釣り大会を開くことを提案される。
しかし、そんな日常の裏で、刻一刻と終わりの時は近づいていた。
最後の戦いに向かう一行の運命、そして、ハジメの奇策とは!?

次回 ソードアートオンラインfeatジオウ
双剣19.5"釣りバカ日誌~迫る決戦、最後の作戦~"」
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