※12/16 グリムロックの大きさに関する描写を変更しました
『転生』という言葉がある。簡単に言えば、死後、別の生き物として再びこの世に生を受けるというものだ。
俺は最初、それは物語の中だけの概念であり、実際には存在しないものだと思っていた。だが今はそれを認めている。
何故なら俺自身が転生した身だからだ。
しかし俺が転生したのは人間ではなかった。普通の動物でもなかった。
俺の体は金属で出来ていた。人間よりも倍の背丈だった。角付き兜を思わせる頭部に、竜の上顎の形をした両肩、真紅の瞳。その姿は一言で表すなら、竜を模した鎧を身に付けた騎士といった風貌だった。
そう……俺は映画『トランスフォーマー ロストエイジ』に登場したダイナボットのリーダー、グリムロックに転生していたのだ。しかし、本編のグリムロックとは一つだけ異なる点があった。それはサイズだ。映画本編のグリムロック達ダイナボットはオプティマス達通常のトランスフォーマーよりも大きかった。しかし俺の身体はあれよりも大きくない。むしろオプティマス達よりも小さいように思える。それでも、普通の人間より遥かに大きい事に変わりはないが。
だが、サイズに関してはこの際どうでも良かった。問題は、今自分がどこにいいて、どういった状況にあるのかだ。
最初は他のダイナボットを探したが、スコーンも、ストレイフも、スラッグも、どこを探しても見つからなかった。それでもと俺は彼らを探し続けた。
……今思えば、俺はこの時点でこの世界がトランスフォーマーの世界ではない事を、薄々勘付いていたかもしれない。
そうして他のダイナボットのメンバーを探す内に、俺はとある光景を目にする。それは戦の最中だった。銀色に輝く甲冑を纏った騎士達と、どこか野蛮味を感じる姿をした者達とが戦っていた。戦局は一見互角に見えるが、僅かながら蛮族風の者達が押しているようだった。
俺は居ても立っても居られず、戦場へと身を躍らせた。どちらに味方すれば良いかは、もう分かっている。俺は騎士達の前に立ち、蛮族達目掛けて咆哮を上げる。
得体の知れない者の突然の出現に、両軍共に目を丸くする。そんな彼らを尻目に、俺は蛮族達へと突っ込んでいく。手にした巨大なメイス『ドラゴントゥースメイス』を、モーニングスター状に変形させた右手を振るい、蛮族達を次々と叩き潰していく。
やがて、蛮族達は戦局を不利だと察したのだろう、蜘蛛の子を散らすように散りじりに逃げていった。
そうして奴らの姿が完全に撤退したのを確認し、俺は騎士達の方へ向き直る。彼らの顔を見ると、やはりというべきか、戸惑うような表情を浮かべて俺を見ていた。どうしたものかと内心悩んでいた時、騎士達が左右に別れたかと思うと、そこに一人の騎士がこちらに歩み寄って来る。
それは見目麗しい少女騎士だった。光を受けて輝く金色の髪、翡翠色の瞳。青いドレスの上に、他の騎士のそれよりも見事な造りの鎧を身に付けいていた。
少女騎士が口を開く。ゆっくりと、それでいて威厳のある口調で。
「我が軍を救ってくれた事、感謝します」
そして彼女は続ける。
「私はアーサー。アーサー・ペンドラゴンです。貴方のお名前は?」
それが俺と、この世界のアーサー王...アルトリア・ペンドラゴンとの出会いだった。
その後紆余曲折の末、俺は円卓の騎士の一員として迎え入れられた。
もちろん、それは決して簡単な事ではなかった。当然だ、何しろ今の俺は人間ではないのだから。初めてアーサー王が騎士達に俺の事を紹介した際、誰もが俺の加入に難色を示した。
しかし、アーサー王が彼らを取りなしてくれた事や、彼らとの交流を続けるうちに、徐々に彼らも俺の事を受け入れてくるようになった。特にガウェインの妹ガレスは、いつも親しげに俺と接してくれる。そして……アーサー王も。
その後、俺はアーサー王の騎士として多くの戦いや冒険に参加した。色々大変な事もあったが、なんだかんだ俺はこの頃が一番楽しかったと思っている。円卓の仲間達と共に戦い、時にいがみあい、笑い合ったこの頃が。
俺が初めて彼らの前でティラノサウルスの姿にトランスフォームした時は、皆目を丸くして驚いた。しかし、ランスロット卿やガウェイン卿、パーシヴァル卿にベディヴィエール卿辺りは目を輝かせいてたな。男のロマンというのは、こんなに大昔の時代から存在していたのだなと、俺は思った。
それ以降、俺はアーサー王をその背に乗せて戦う事が多くなった。阻むものをその顎で噛み砕き、踏み潰し、口から吐く炎で焼き尽くし、王の道を切り開いた。
そんなある時、突然ランスロット卿から決闘を申し込まれた。どうやら純粋に一人の騎士として、相手をしてみたいのだそうだ。
少し戸惑いはしたが、俺はその決闘を受諾した。ここでそれを拒否したら、それこそランスロット卿に申し訳が立たないと思ったからだ。
そして、俺とランスロット卿の決闘が始まった。
結果だけ言えば、勝負は引き分けに終わった。とはいえ、俺としてはかなりギリギリの所だったが。やはり円卓最強と謳われたその実力は伊達ではなかった。
「この私を引き分けに持ち込むとは、もしかしたら私より貴方の方が円卓最強の称号に相応しいのかもしれない」
朗らかな顔で言ったランスロット卿の言葉に俺は驚いた。だが、同時に嬉しかった。あのランスロット卿が、『アーサー王伝説』の中でも最も有名な騎士である彼が、俺の事を認めてくれたのだから。
だからこそ、それに恥じないように俺ももっと強くなろう。俺は心からそう思った。
兎にも角にも、俺はそうした、充実した人生を送っていた。
だがそれが長続きする事は、決してなかった。
俺は『アーサー王伝説』についてはある程度把握していた。故に、ここブリテンが最終的にどのような運命を辿るのかも知っていた。だからこそ、それを変えたいと思い、自分なりに足掻いてみた。しかしダメだった。
一体何がダメだったのか俺には分からない。俺の力が足りなかったのか、それとも、そもそも運命そのものを変える事自体、不可能なだったというのだろうか。
ただ一つ言えるのは、俺は結局、何もできなかったという事実だけだ。唯一の救いは、ガレスの命を救えた事ぐらいだろうか。それも気休め程度にしかならないが。
そしてカムランの丘の戦いの後、俺は生き残ったベディヴィエールとガレスと共に聖剣エクスカリバーを湖の貴婦人に返却し、アーサー王の最期を看取った。
それから俺はアーサー王の墓を守り続けるようになった。それがブリテンの運命を変えられなかった俺の、せめてもの償いだと思って。
アーサー王の墓を暴こうとする心無いもの達を、次々と返り討ちにしていった。俺の存在が知られると、墓荒らし達は剣や槍で武装してやってくるようになった。だが、中途半端な武装しかしてない、円卓の騎士の実力にも満たない者達に、円卓の騎士にしてトランスフォーマーである俺に勝てるはずがなかった。俺は彼らを一人残らず返り討ちにした。
そうしてしばらくすると、「アーサー王の墓を守護する鋼の騎士」の噂が流れ始めるようになると、墓荒らしにやって来るものは徐々に減っていき、やがてアーサー王の墓に近付くものはいなくなった。
それから本当に気の遠くなるような長い年月が過ぎた。俺の身体はまるで錆びついたかのようにまともに動かなくなり、歩くのがやっとの状態だった。やはりトランスフォーマーでも老いには勝てないらしい。
それからまた数百年の時が流れた。もう本格的に身体が動かなくなった。意識も徐々に薄れてきた。どうやらそろそろ俺にもお迎えが来たようだ。
今際の際、ふと俺は思う。もしも、もしも第三の生があったらどうしたいかと。
そしてその答えはすぐに出た。
もしも第三の生があったら………その時は、もう一度アーサー王と共に戦いたい。
その願いを最期に、俺の、グリムロックとしての人生は終わりを告げた。
今回はここまでです。
一応、この転生グリムロックはちゃんと喋れるという設定です。
今後の一話における文字数は?
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もう少し短く
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これくらいで良い
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作者の自由に