鋼の竜騎士   作:バイス

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 ちまちまと書いていたら、またしても大幅に遅れてしまいました。本当に申し訳ありません!
 という訳でお待たせしました!第7話です!


望まぬ再会

 

 スケルトンの群れを蹴散らしながら、グリムロックは前進する。

 あるいはその足で踏み潰し、あるいはその鋭い牙が生えた顎でスケルトン達を噛み砕き、あるいは口から吐き出す炎で焼き尽くし、まるで虫を蹴散らすかの如くの勢いでスケルトン達を蹂躙する。

 

 そして、そんな彼の背に乗っているアリシア、立香、マシュの三人は、それぞれ違う興奮を覚えていた。

 

 「凄い……本当にあのグリムロックの背中に乗っている……!」

 「は、はい……!過去の英雄の背中に乗るなんて、何だか不思議な気分ですが、物凄く光栄に思えます!」

 「うん、何だか漫画の主人公になった気分だよ!」

 

 彼らの言葉を耳にしながら駆けるグリムロックは、ふと先程のクー・フーリンの言葉を思い出していた。

 

 『アーチャーの野郎はともかく、セイバーの方はオタクらにとってはかなり面倒な相手になるかもな……』

 

 あの言葉には、一体どういう意味があるのだろうか?セイバーのサーヴァントは、それほど手強い英霊なのだろうか?それとも、もっと別の意味があるのだろうか?

 クー・フーリンに聞けば分かる事なのかもしれないが、彼は明らかにこの件を誤魔化していた。素直に話してくれるとはとてもじゃないが思えない。

 それにグリムロック自身、その答えを聞く事に、僅かながらの躊躇いがあった。故にグリムロックは、ひとまずこの件は頭の隅に追いやる事に決めたのだった。

 

 そうしてしばらくすると、グリムロックはスケルトンの群れを突破する事に成功。そのまま目的地の洞窟まで進み続けるのだった。

 

 

 それから少しの時間が経過した頃、グリムロックのオプティックに、いかにもな寺院が確認できた。グリムロックは後方から追いかけてきているクー・フーリンに声を掛ける。

 

 「クー・フーリン!あれがアンタの言っていた寺か?」

 「おう、あれで間違いねぇ。あの寺の地下の洞窟にセイバーがいるはずだ」

 

 

 そう会話を交わした後、目的の洞窟まであと数十メートル付近まで来たところで、グリムロックは足を止めてアリシア達を降ろした後に人型へと戻る。

 

 「ここに……セイバーがいるんですね」

 

 少し離れた先にある洞窟を見据えながら、マシュがポツリと呟く。後から追いついたクー・フーリンが、そんな彼女の肩をポンと叩きながら言う。

 

 「ああ、まだここに留まっていればな。ま、アイツの性格を考えると、ふらふらどっかへ行くような事は無いだろうけどな」

 「分かった、それじゃあ今すぐ行こう」

 「ええ、そうですね」

 

 そう言って洞窟へと足を踏み入れようとする立香やマシュ達。グリムロックも後に続こうとした、その時だった。

 不意に背後からの鋭い殺気を感じ取ったのは。

 

 「危ないッ!」

 

 叫ぶや否や、グリムロックは咄嗟にアリシアや立香達の前に立つと、メイスを実体化させ、渾身の力でこちら目掛けて飛来してきた『何か』を弾き飛ばした。

 正体は一本の矢だった。グリムロックによって弾かれたそれは宙を舞い、やがて地面へ深々と突き刺さった。

 

 「えッ!?」

 「そんな、攻撃ッ!?」

 

 突然の奇襲に息を呑む立香とオルガマリー。アリシアは一瞬で戦士の顔になり、すぐさま光の武具を見に纏う。マシュもまた手にしていた盾を構える。

 

 「ハッ、やっぱり現れたか、アーチャー」

 

 杖を実体化させ、挑発するような口調で言うクー・クーリン。それに応えるかのように、一人の男が、明確な敵意を放ちながら姿を現した。

 白髪に浅黒い肌。上半身には黒いボディアーマーを見に纏い、下半身を真紅の外套で覆っている。そしてその手には『弓兵』のサーヴァントに相応しい、黒い洋弓が握られていた。

 

 「当然だろう、セイバーに近づく者を始末するのが私の役目なのだからな」

 「やはりこの奥にセイバーがいるんだな」

 「そう言う事だ。最も、君達が彼女に会う事は無いだろうがな」

 

 冷淡な口調で話しながら、しかしアーチャーは新たな矢を弓に番え、第二撃の準備を進める。

 グリムロック達も迎撃の構えを取るが、それを制するようにクー・フーリンが前に出る。

 

 「コイツの相手は俺がやる。お前らはセイバーの元へ行け」

 「クー・フーリン、しかし……」

 

 クー・フーリンの言葉に、グリムロックは戸惑いと不安の入り混じった声を出す。

 腐っても相手は三大騎士クラスの一人。それに対し彼のクラスはキャスターだ、ランサーではない。いくらクランの猛犬として名を馳せた彼と言えど、呪いの魔槍無しで相手取るにはとてもじゃないが厳しいはずだ。

 

 そんなグリムロックの気持ちを見透かしたのか、クー・フーリンはニヤリと笑う。

 

 「あのアーチャーとはちょいとばかし因縁があってねぇ、ここらで決着をつけてぇのさ。心配すんな、むざむざと負けるつもりはねえ。コイツを片付けた後、すぐにお前らの後を追うからよ」

 

 そう言うクー・フーリンの口調から、恐らく譲るつもりはないのだろうと考えたグリムロックは、小さく排気した後に口を開く。

 

 「……分かった。そこまで言うのならば、ここはアンタに任せる」

 「へ、任せておきなッ!」

 「それじゃあ、私達はセイバーの所へ行きましょう!」

 「うん、お願い、クー・フーリン!」

 

 アリシアの言葉に立香達も頷き、洞窟へと駆け出すのだった。

 

 

 

 

 「本当に彼らを行かせて良かったのかね?」

 

 カルデア一行が洞窟の中へと消えていったのを見届けた後、アーチャーはクー・フーリンにそう言い放つ。それを聞いて、クー・フーリンは不愉快そうに眉を潜めて返す。

 

 「ああ?どういう意味だよ?」

 「いや何、本当に君一人で私と戦うのかという意味さ。ここは彼らと一緒に戦った方が、勝率は大幅に上がるはずだが」

 

 アーチャーの言葉に、一瞬ムッと顔を歪めるクー・フーリン。が、すぐにその顔には挑発するような笑みが浮かぶ。

 

 「ま、確かにテメェの言う通り、確実に勝つのならアイツらと一緒に戦うのがベストだろうなぁ。盾の嬢ちゃんの方は兎も角、鋼の竜騎士グリムロックはこれ以上ない戦力だ」

 

 それを聞いて眉を顰めるアーチャー。それが分かっているのなら、何故一人で自分に挑むという選択肢を選んだのだろうか。

 そんな彼の疑問に応えるように、アーチャーが何かを言う前にクー・フーリンが口を開く。

 

 「けどな、それじゃあ俺自身が満足しねぇんだよ。俺はな、どうしてもお前とサシで決着を付けたいんだよ」

 

 ま、言ってしまえば俺個人の意地って奴だな、と笑いながら言うクー・フーリンに対し、アーチャーは呆れたように苦笑する。

 

 「そのために、確実な勝機を捨てて私に挑むというのかね?」

 「ああ、でも負けると決まった訳じゃねぇ、だろ?」

 「そうだな……最も、それは私にも当てはまる事だがな……!」

 

 言うや否や、アーチャーは常人離れした速度で弓に矢をつがえ、クー・フーリン目掛けて放つ。それに対し、クー・フーリンは指を虚空をなぞるかのように動かす。すると指の軌跡に合わせてルーン文字が出現、そこから複数の火球が放たれ、自身目掛けて放たれた矢を次々に相殺していく。

 

 「さぁ……始めようかッ‼︎」

 

 この一言が、両者の戦いの開始を告げる合図となった。

 

 

 

 

 

 「クー・フーリンさんは大丈夫なのでしょうか……?」

 

 洞窟を進みながら、そうマシュがポツリと呟く。その声には確かな不安の色がある事を、その場にいる誰もが感じ取っていた。

 

 「大丈夫よ。だって彼はケルト神話随一の英雄なんですもの。例えクラスがなんであろうと、彼は絶対に負けない、少なくとも私はそう信じてるわ」

 

 そんなマシュを安心させるようにそう言ったのはアリシアだった。彼女の言葉は、しかしマシュだけでなく、グリムロックは勿論、立香やオルガマリー、そしてロマンの心にも、何か不思議な安心感を与えた。

 

 『……そうだね。だからこそ僕達はアーチャーの相手を彼に任せる事が出来たんだ。信じよう、彼を……彼の力を……!』

 

 ロマンの言葉に立香やマシュ達が頷く中、グリムロックは別の事を考えていた。

 

 (本当に彼女は不思議な存在だ)

 

 グリムロック自身、クー・フーリンがアーチャーに勝てるかどうか分からないという状態だった。しかしアリシアは、自分のマスターは信じているのだ、彼の勝利を。

 根拠があるとは思えない。しかしその言葉には、先程のランサーと戦う前のと同じ、言葉では説明出来ない信用のおける『何か』があるのだ。

 それはもしかしたら、一種のカリスマ性と呼べるものなのかもしれない。生前のアーサー王がそれを持っていたように。そのカリスマ性によって名のある騎士達を束ねていたように。

 

 (もしかしたら俺は、とんでもないマスターに召喚されたのかもしれない)

 

 そんな事を考えながら洞窟の中を進む内に、広大な地下空洞へと足を踏み入れいてた。辺りは不気味な光に照らされており、異様な雰囲気を放っていた。恐らくここがこの洞窟の最深部なのだろう。

 

 「ねえ、見て!」

 

 立香が指差した方へ目を向けると、そこには光り輝く何かがあった。美しく、そしてこれ以上ない程の神秘を宿した黄金の盃。生前ある一人の騎士が見つけ出したという『ソレ』の名はーー

 

 「……聖杯」

 

 自然と、ポツリとその名を口にする。『彼』が長き探索の末に見つけたあの盃を、このような形で目にする事になろうとは。グリムロックが束の間感慨深い思いを抱く中、オルガマリーは信じられないといった表情で呟く。

 

 「これが聖杯……超抜級の魔術炉心じゃない……なんで極東の島国にこんな物があるのよ……」

 『資料によると、この大聖杯はアインツベルンの一族が生み出したそうです』

 

 と、ロマンがオルガマリーに対して説明していると、

 

 「……来たか、漂流者達よ」

 

 突如、声が聞こえた。氷のように冷たく、人の心を畏怖させるような、それでいて確かな威厳を感じさせる声が。

 見れば、大聖杯を背に何者かがこちらに近づいて来る。しかしそれが誰なのか、ここにいる誰もが分かっていた。

 

 「!やっぱりここにいたんだ……!」

 「セイバーの……サーヴァント……ッ!」

 

 声の持ち主……セイバーの出現に対し、警戒しながら身構える立香とマシュ。アリシアもまた剣を構えるが、不意にグリムロックの方へ視線を向けると、どこか様子がおかしい事に気付く。

 真紅の眼に動揺の色を浮かべ、金属の顔には分りづらいが、戸惑いや驚愕といった感情が露わになっていた。

 

 「……グリムロック?」

 

 

 

 そんなまさか。

 最初にセイバーの声を聞いた時、グリムロックは気付いた。気付いてしまった。この冬木の聖杯戦争において、セイバーのクラスで召喚された英霊が一体誰なのか。

 

 まさか、まさか……彼女だというのか。

 

 グリムロックの動揺に応えるかのように、セイバーは歩を進め、やがてその全貌を露わにする。

 その姿を見て、グリムロックは確信した。

 

 輝きの無い金色の髪。黄色く澱んだ瞳。血を思わせる真紅のラインが走った黒い甲冑。そして同じく漆黒に染まった一振りの剣。

 

 生前の自分が知っている姿とは大きく異なっているが、間違いない。

 

 

 ブリテンの騎士王、アルトリア・ペンドラゴンがそこに立っていた。




 今回はここまでです。
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