鋼の竜騎士   作:バイス

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 お待たせしました。
 今回からグリムロックも物語に本格参戦です!


召喚されしは炎の町

 

 『座』の中にいる彼は声を聞いた。

 自分を呼ぶ声を。自分を求める声を。

 

 「……なるほど、これが英霊召喚というやつか」

 

 彼は納得したように呟く。

 もちろん彼はそれを元から知っていた訳ではない。死した後英霊の座へと辿り着いた彼は、自身の知り得ない様々な知識が付与された。古今東西のあらゆる英雄豪傑について、サーヴァントについて、そして聖杯戦争について。

 故に彼は理解していた。

 これから自分はサーヴァントとして召喚されるのだと。そして自分を召喚するであろう魔術師と共に戦うのだと。

 

 「ロクでもない奴だと良いんだがな……」

 

 そんな事を呟きながら、彼……英霊グリムロックは現世へと召喚された。

 

 

 

 

 「サーヴァント、バーサーカー。召喚に応じ参上した」

 

 召喚されたのは、「地獄のような」としか形容しようがない場所だった。あたり一面が炎に包まれ、建物のほとんどが倒壊している。まるでこの町全体が何かで焼き尽くされたかのようだ。

 兎にも角にも、まずは自分のマスターを確認しよう。状況はその者に聞けば良い。そう思ったグリムロックは、視線を少し下げ、

 

 「問おう、お前が俺のマスター……か……!?」

 

 マスターであろう者の姿を確認した途端、しかしグリムロックは驚愕にオプティックを丸くした。

 

 それは少女だった。歳はおそらく十七ぐらいだろうか。この現代の名残が残った廃墟ではあまりに不釣り合いな、袖の余った空色のローブを着用している。

 しかし、グリムロックが驚愕したのは少女の格好ではなかった。

 整った美しい顔立ち。翡翠色に輝く瞳。そして頭頂部に生えた癖っ毛。これらの要素を持った者は、グリムロックが記憶している人物の中ではたった一人しかいない。

 

 「……アーサー王?」

 

 そう、その少女は、アーサー王に瓜二つなのだ。自身を騎士として受け入れ、多くの苦楽を共にした彼女に。

 

 

 そうしてグリムロックが驚愕と戸惑いのあまりに硬直していると、不意に少女の方から口を開く。

 

 「えっと、どうかした?」

 

 その一言で我に帰ったグリムロックは、首を横に振りながら答える。

 

 「あ、いや、すまない。お前があまりにもアーサー王にそっくりだったから、つい」

 

 そう言いながら改めて少女を観察すると、アーサー王とは違う部分もあった。

 確かに顔立ちと瞳の色はアーサー王にそっくりだ。しかし、唯一違うのが髪の色だった。アーサー王の髪は美しい金色だったのに対し、彼女の髪は柔らかいクリーム色だった。強いて言えば、その髪色はギネヴィア妃のそれに似ていなくもないが……。

 

 「……まあ良いわ。て、それより貴方今、アーサー王って言ったわよね⁉︎」

 

 と、少女は何かに気付いたらしく、顔を上げてグリムロックの顔を見る。

 

 「それにその姿……ひょっとして貴方は……!」

 

 どうやら彼女は自分の真名に気付いたようだ。もっとも、自分ほど真名を予測しやすい英霊もそう多くはないか、とグリムロックは内心排気する。とはいえ、ここはしっかりと名乗らなければ。

 

 「では改めて名乗ろう。俺の名はグリムロック。鋼の竜騎士、グリムロックだ」

 

 騎士らしく堂々と、自らの真名を口にするグリムロック。

 そして束の間の沈黙の時間が流れたかと思うと、不意に少女の身体がプルプルと震え出し……

 

 「す……」

 「ん?」

 「凄いッ!!ホントに、ホントに貴方はグリムロックなのね!?アーサー王伝説に登場した、あのグリムロックなのねッ!?」

 

 自らの興奮を隠す事もなく、その目を輝かせながら訪ねてくる少女。その雰囲気に若干気押されつつ、グリムロックが「ああ、そうだ」と答えると、少女の目の輝きは一層強くなる。まるで憧れのヒーローに直接会えて喜ぶ子供のようだ。

 

 「ま、まさかかの有名なグリムロック卿を召喚するなんて……凄いですアリシアさんッ!」

 

 そう言ったのは、薄紫色の髪をショートにした、十字型の盾を持った少女だった。

 彼女の顔も興奮の色に染まっていたが、自分のマスターのそれとは違うものだ。恐らく自分を召喚した彼女に向けたものなのだろう。

 

 「まさかこんな大当たりを召喚するなんてね……もう彼女の事を馬鹿にできなくなってきたわね」

 

 そう言ったのは、外ハネの銀髪が特徴的な、いかにも気の強そうな雰囲気の少女だった。その口調には、喜びと悔しさが入り混じっているのが感じられる。

 

 『な、なんてこった!まさか序盤でこんな大物サーヴァントを召喚するなんて!これは幸先が良いかもしれないぞッ!』

 

 そう言ったのは、モニターに映ったふわふわの髪をポニーテールにした白衣の男性だった。グリムロックはその顔立ちから、彼の穏やかな気質を感じ取っていた。

 

 「……えっと、すみません。グリムロックって一体どういう英雄なんでしょうか?」

 

 恐る恐る手を挙げながらそう言ったのは、白のジャケットに黒のパンツに身を包んだ黒髪の少年だった。顔立ちからして、恐らく日本人だろう。

 

 「ええッ!立香、貴方グリムロックを知らないのッ⁉︎」

 

 そう言いながら、信じられないといった表情で少年を見るローブの少女。

 

 「ご、ごめん。俺、歴史とかそういうのはあんまり得意じゃなくて……」

 「全くしょうがないわね……いい?グリムロックは『アーサー王伝説』に登場する円卓の騎士の一人で……」

 

 ゴホンッ!!

 

 アリシアが立香にグリムロックの事を話そうとした時、当のグリムロック本人が大きく咳払いした。その咳払いを聞いて、この場にいる全員がグリムロックの方を見る。

 

 「俺の講義をするのは後にしてくれないか?気持ちは嬉しいがな」

 

 そう言うグリムロックは、内心面映ゆい気持ちだった。

 英霊の座に登録されているという事は、すなわち自分は後世の人々に『英雄』として認められている証拠である。実際、彼女達の反応などからも、自分は余程有名な騎士として語り継がれているようだ。

 しかし、自分は元々英雄などとは程遠い一般人。それが死後たまたまグリムロックとして転生して、たまたまアーサー王に仕えていただけにすぎないのだ。そんな俺が、果たして英雄扱いされて良いものか、とグリムロックは考えていた。このグリムロックとしての姿も、この力も、本当は自分のものではないのだから。勿論、多少は嬉しい気持ちもあるが。

 

 「それよりも、まだ聞いていなかったな。お前が俺のマスターで間違いないな?」

 

 取り敢えず気持ちを切り替え、グリムロックは先程中途半端で終わった契約の儀式を続ける。

 なるべく彼女の目線に入るように、膝立ちになり、顔を少し近付けて。

 それを見て、ローブの少女もすぐに真面目な表情となり、

 

 「ええ、私が貴方のマスター、アリシア・ウィンドネラよ」

 

 ローブの少女……アリシアの堂々とした名乗りを聞いて、グリムロックは微笑みながらゆっくりと頷いた。

 

 「アリシアか。うん、良い名前だな。それじゃあ、これで契約は完了だな」

 

 そう言ってグリムロックは膝立ちを解いて立ち上がると、炎に包まれた周囲を見回す。

 

 「それじゃあ、状況を説明してもらえないか?」

 

 

 

 

 まずはアリシアを除く彼らの簡単な自己紹介から始まった。

 盾の少女の名は『マシュ・キリエライト』と言い、銀髪の少女の名は『オルガマリー・アニムスフィア』。そして黒髪の少年の名は『藤丸立香』、モニターの男性は『Dr.ロマン』こと『ロマニ・アーキマン』だと言う。

 彼らは『人理継続保障機関 フィニス・カルデア』と呼ばれる場所から来た者達であり、人理の歪みを修正するのが目的らしい。その歪みの発生源がここ、日本の『冬木市』らしい。

 そして、マシュは人間と英霊を融合させた『デミ・サーヴァント』と呼ばれる存在であり、そんな彼女のマスターが立香だという。

 

 「なるほど」

 

 話を聞き終えた後、グリムロックはゆっくりと頷く。

 どうやら事態は自分が想像していた以上に深刻らしい。まさか人類の生存が確認できるのが2015年までとは。確かに一大事だが、それとは別にグリムロックには一つ気になる点があった。

 

 「お前達の事情は大体把握できた。しかし、分からない事がある」

 「分からない事?」

 

 グリムロックの言葉に、アリシアが首を傾げる。

 

 「お前達がここに来るきっかけとも言える、管制室の爆破。それを仕掛けたのは誰なのかと思ってな。お前達、心当たりはあるか?」

 

 そう、それがグリムロックが気になっていた点だった。マシュが瀕死の重傷を負い、46人のマスター候補が生死不明の状態になったという管制室の爆破。それを仕組んだのは一体誰か?話からすると、恐らくカルデアの内部の者の仕業だというのが分かる。分かるが故に、分からない。そんな事をして、一体何の徳があるのだろうか。カルデアが崩壊すれば、自分自身の未来を救う手段を失うというのに。

 

 「……ごめんなさい、心当たりはないわ」

 「私もです……」

 『すまない、僕もだ……』

 「俺も来たばかりだから……」

 「……」

 

 そんなグリムロックの疑問に、しかし答えられる者は誰もいなかった。それを見て、グリムロックは諦めるように排気する。

 

 「……まあ良い、いずれ分かる事だ。それよりもマシュ、盾を構えろ。いつでも戦える準備をしておけ」

 「え?あ、あの、グリムロックさん、それはどういう……?」

 

 突然のグリムロックの一言に戸惑うマシュ。気が付けば、グリムロックの右手には専用のメイス……ドラゴントゥースメイスが握られている。

 

 「それはな、俺達のマスターを狙う不届きものがいるという事だッ‼︎」

 

 言うや否や、グリムロックは空いた左手からサッカーボール並みの火球を生み出す。そしてメイスをバットのように振るい、火球を打ち飛ばす。打ち飛ばされた火球は少し離れた所にある瓦礫に向かって飛んでいき、着弾した瞬間、中規模の爆炎を巻き起こす。

 

 「うがあぁぁぁッ!!」

 

 その時、爆炎の中から何者かの叫び声が聞こえて来た。声や炎の中から見える影から、恐らく女性と思われる。自身の身体を燃やす炎に苦しみもがいているのが、シルエット越しに分かる。

 やがて炎が消えると、そこから姿を現したのは、黒を基調とした服装に身を包み、細身の鎌を握りしめた、紫色の髪を腰まで伸ばした妖艶な女性だった。

 しかし、その者がただの人間では無い事は、内包する魔力が示していた。

 

 「あれは……サーヴァントッ⁉︎」

 

 いつの間にか近くにいた敵の存在に驚くマシュ。しかし、その顔はすでに警戒心に満ちたものとなっており、グリムロックに言われた通りに盾を構え、すでに戦闘準備を整えていた。

 

 「上手く隠れていたつもりだったろうが、残念だったな」

 

 挑発的な言葉をかけながら、敵を睨みつけるグリムロック。

 しかし、内心彼は疑問に思っていた。あれは本当にサーヴァントなのだろうか。いや、確かにサーヴァントなのだろうが、通常の英霊にしては何かおかしい。まるで黒い影のようだ。あえて呼ぶとすれば、『シャドウサーヴァント』と言ったところか。

 それでも、やる事に変わりはないのだが。

 

 「そういう訳だ。アリシア、お前も下がっていろ。奴は俺とマシュが倒す」

 

 そう言ってマシュと共に前に出るグリムロック。しかし、アリシアは下がる事はなく、逆にグリムロックと共に前に出る。

 

 「アリシア?何をしている、俺は下がれと言ったはずだ」

 「ええ、勿論聞こえたわよ」

 「じゃあ一体……」

 

 グリムロックがそこまで言うと、アリシアはグリムロックの顔を見ながら……

 

 

 

 

 「私も一緒に戦う、という事よ」

 

 グリムロックの耳を疑う一言が、自身のマスターの口から発せられた。




今回はここまでです。

今後の一話における文字数は?

  • もう少し短く
  • これくらいで良い
  • 作者の自由に
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