「ん…ここは?」
目を開けると見知らぬ天井、横には男の子の寝顔。状況が掴めない、ここは...?
――そうだ、この男の子は、三波圭。我々がメカトリックの大規模な攻撃を受けてからCANONに入ってきた子だ。私の姉が興味を持つほどの力を秘めている。私なんてろくに可愛がってもらえなかったのよ。羨ましい気持ちもあるけど...
「気になる...」
この子がどんなに凄い力を持っているのか、気になって仕方がない。さっきの戦いでも彼は体術を使ってた戦っていた。しかし、すごい力を持っているようには見えなかった。隠しているのだろうか。なんのために...?
「ん、ん...お母さん...」
!
お母さん?急にどうしたのだろう...泣いて、る?圭くんが、泣いてる。寝ながら...寝言を呟きながら。そういえば圭くんの家庭についてなんの話も聞いてないな、それどころか全然話をしてくれない。...そうだ、確か姉さんから聞いた話によると、彼はメカトリックに父親を殺されたらしい。最初この話を聞いた時、彼が物凄く心配になった。自分の父親を亡くしたのにも関わらずこうして奴らと戦おうとしている。多分、仇討ちをするつもりなのだろう。でもいつか、怒りで我を忘れて、その隙を突かれて...なんてことがあれば...
「私は何を考えて…」
圭くんはただの男の子、どこにでもいる…いや、違う。圭くんは私なんだ。大切な人のために怒り、仇を討とうとする。私は5年ほどメカトリックにいる。私なんかとも仲良くしてくれた人が何人かいた。私は嬉しかった、こんな冷酷な私とも仲良くしてくれる。戦う勇気も貰った。だけど、みんな死んじゃった。私は、仲良くしてくれた人達を奪った、メカトリック共を強く憎み、怒った。たくさん殺した。彼も同じ気持ちなんだ。だから私は彼の事がずっと気になってる。怒りが原動力になりうるけど、時に注意力を妨げるものとなってしまう。その事を彼に伝え無ければ。
そういえば彼に膝枕をしてあげていた事を忘れていた。まあい…
もにゅ
「ひゃん!」
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ここは、どこだ……僕は寝てしまっていたのか?そうだ、第2部隊のみんなは…そろそろ起きないと……
もにゅ
ん、なんだ…この感触……
「ひゃん!」
「はっ!……あれ、奏音さん?どうして…」
もにゅもにゅ
「圭…くんっ!」
ん?
「あ、あわ…あわわわわわわわわわわわ!」
「ごめんなさいぃぃぃぃぃ!」
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「なるほど…」
「良かった、みんな無事なんですね」
「うん、それも圭くんのおかげでね」
奏音が笑ってる。今までのピリッとした雰囲気と違って、柔らかく、丸くなってるような…
「いえ、大したことはしてませんよ」
「…」
「…」
気まずいな…2人っきり。隊長あたりが起きてくれたらなぁ……
「あ、もう少しでCANONの救急隊が来るみたいだよ」
「あ…そうですか……」
「…」
うう、早く来てくれ…
「…ねぇ」
「は、はい」
「その…さっきの……」
「あ、ああ!先程はすみませんでした…本当に」
「いや、違うの…」
「そのね…さっきの続き……しなくていいの?」
「は、……はい?」
「さっきの続き?えぇっと…それはどういう……」
「あ…そ、そそそその!」
「は、はい」
「さっきの言葉…無しで」
「はい?」
「聞かなかったことにして…」
「え、あ…はい」
どういう意味なんだ……やっぱり怒ってるのかなぁ。
「第2部隊のみなさぁーん!大丈夫ですかぁー!」
「あ、来たん…」
「こっちです!」
ふぅ、助かったぁー
「今は多分、疲れて寝てるだけです」
「そうですかぁ、皆さんがご無事で何よりです!」
「三波圭さんはいらっしゃいますか!」
「ん?は、はい!」
なんだ…?小さい女の子の声?
「なるほど、あなたが圭さんですか!」
「…なんだ?このちびっこ」
「思ったことそのまま口に出さないでください!」
「私はちびっこではありません!」
「はい?」
「あぁ、救急隊長!第2部隊の方々を一通り診ましたが、命に別状はなく、軽傷のようです!」
救急隊長?この子が?こんなに小さいのに…
「ご苦労さまです、西野さん」
「では寝ている第2部隊の方々を叩き起してください」
…は?
「し、しかし!」
「叩き起してください!」
「は、はいっ!」
叩き、起こす…?
「あの、」
「ん、圭さん、どうかしましたか?」
「あの人たち…疲れて寝ちゃってるっぽいんですけどぉ」
「叩き起すなんて可哀想だと思いませんか…」
「思いません!」
「即答!」
「ほ、本気ですか」
「本気です!」
えぇ…この子、真剣に叩き起こそうとしてるよ………
「では、私はまだまだやることがあるので!失礼」
大丈夫なのか――救急隊。にしてもあの子、見覚えが…
いや、今はそんな事を考えてる場合じゃない。軽傷とはいえみんなが心配だ、見に行ってみよう。
「ふん!…ふん!……ふん!」
なんだ、この声。
「ふ…あれ、三波さん?どうされましたか?」
「えと、西野さん…でしたっけ」
「はい、お気軽に西野とお呼びください」
「西野さん、良ければ手伝いましょうか?」
「え!?よろしいのですか?ぜひ!」
「よっと」
僕は軽々しく第2部隊の面々を運んだ。意外と運べるもんだな、力が強くなってる気が…
「よし、全部運び終わりました」
「あぁ、ありがとうございます三波さま!」
「それにしても三波さま、随分と力が強いですね」
「いやいや、大したことないです」
「それにさま付けなんてしなくていいですよ」
「…情けないですよね、私」
「救急隊員のくせに、病人のひとりも運べやしない」
「元々私は、清掃員をやっていました」
聞くと、西野さんは生まれつき体が弱くて力があまりつかないみたいだ。
「それで、いつも通りビルの掃除をしていたんです」
「するとビルが突然崩れ始めたんです」
「ビルの崩壊が落ち着く頃には、私は瓦礫に埋もれ死にかけていました」
「そこを、救急隊長に救われたんです」
「私ははじめ、自分を救助するのを拒否したんです」
「こんな体の弱いおじさんなんて助けても何もならないと言って」
「すると、救急隊長は救助をやめるどころか一瞬で瓦礫を退かして私を助けたんです」
「そしてこう言ってくださいました」
『私のところにこないか、君を必要としている』
あの子、心は案外大人なんだな。
「…私、そんな言葉をかけられて、思わず泣いちゃいましたよ」
「大の大人が情けない」
「そんなことないですよ、泣いたっていいんです」
「泣いて人は強くなるんです」
「それが悲しい涙でも、嬉しい涙でも」
「人を強くします」
しばらく西野さんを慰めると、思い出したのかまた泣いてしまった。でもそれでいい。強くなって、辛い出来事を乗り越えるんだ。僕みたいになってほしくない。
「ありがとうございました、三波さんに出会えて本当に良かった」
「こちらこそ、西野さんの話を聞いて僕も頑張ろうも思いました」
「お互い、頑張りましょう」
「はい、救急隊として、あなたたちを全力で支援します!」
「ではまた」
「はい、また生きて会いましょう」
「うわあああ!メカトリックだあああ!」
「えっ」
行かなければ、目の前で人を死ぬのは、嫌だ!
「大丈夫ですか!」
「死ぬぅ!死ぬぅ!」
出ろ、黒いやつ!
「…は?」
出ない、第2部隊のみんなを運んだ時みたいに、黒い影が!
「ぎゃっ!」
救急隊員の鮮血が散る。
出ろ!出ろ!頼む出てくれっ!
「ギィィィ!」
「あ"ああああああ!」
「おおおおお!」
ゴン!
「ギィ!」
メカトリックがバランスを崩し、倒れた。
「はぁ、はぁ」
「西野さん!?」
「はぁ…ははっ、間に合ってよかったです」
「ギギ、ギィイ」
メカトリックが起き上がろうとする。西野さんは気づいていなさそうだ。
「ギィィィィ!」
「西野さん危ない!」
「はぁ!」
西野さんがメカトリックに向けて拳を振るった直後、メカトリックは吹き飛ばされた。どうなっている、お世辞にも西野さんにメカトリックを吹き飛ばす力があるとは言えない。
「三波さん」
「は、い」
「私ならもう大丈夫です」
西野さんを見ると、腕が太くなっていた。腕だけじゃない、ガタイが良くなってる。…まさか、アレなのか!?
「まずは一体、やってやりましたよ!」
確かに、西野さんに吹き飛ばされたメカトリックはもう動きそうにない。西野さんはメカトリックを倒した。生まれつき体の弱かった西野さんが、力で。
「ギギィィ!」
「ギィィゴ!」
二体…片方は少し大きいな。でも、西野さんと二人なら倒せそうだ。
「行きますよ西野さん!」
「はい!三波さん!」
「はぁ!」
地面から帯状の黒いものが出る。
ギギュウ
そしてメカトリックの身体に絡め動きを止める。
「せい!」
そこを西野さんが渾身の一撃を確実に当てる。
「ギィ…」
メカトリックが倒れた。後は大きい方…
「ギィゴォ」
ドゴォ!
「なっ」
大きいメカトリックが腕のようなもので岩を粉砕した。物凄い力だ。それほど多くのメカトリックを見てきたわけじゃないがわかる。こいつはとてつもなく強い。今までのメカトリックの比じゃない。
「ギィゴォ!」
「おおおお!」
ゴォォン
メカトリックと西野さんの拳がぶつかり合う。
「ぎゃあっ!」
「西野さん!」
「う、うう…」
西野さんの腕はとても人間のものとは思えないほどバキバキに折れ曲がっていた。おまけに紫色に変色いる。恐らくもう右腕を振るうのは無理だろう。
「西野さん、後は僕に…」
「いえ…まだ、戦えます!」
「でも、」
「私はね、役に立ててるようでとても嬉しいんです」
「中途半端な役はもう嫌なんです!」
「だから、私は戦う!」
「おおおおおお!」
ゴン!
「ギィィィィ…」
なんだ、この違和感。
「や、やりましたよ!三波さん!」
メカトリックは吹っ飛ばされるとまではいっていないが、西野さんに殴られてから動かない。
「さ、帰りましょう三波さ─」
「ゴォォォォォ!」
…何が起こった。メカトリック火が出て、それで…
「大丈夫ですか!西野さ…」
さっきまで西野さんが居たところには、一メートルと七〇センチほどの黒く焦げ臭い物体があった。
「あ、あああ!」
真っ黒に焦げた西野さんだった。肉が焼け骨が見えている。もう顔も判別がつかないがわかる。それは確かに西野さんだ。弱々しい腕。ガリガリの体。アレが出る前の姿だ。
「ギィゴォォォ!」
あぁ、もういい、もう僕も殺してくれ。
「圭くん危なああい!」
巨大な氷塊がメカトリック目掛けて落ちた。これは――
「大丈夫!?圭くん!」
奏音さんだ、奏音さんが助けに来てくれた。
「ギィィィィゴォ」
あの氷塊が当たってまだ動けるだなんて…
「奏音さん、行きますよ!」
「ゴフッ、ゴボ…」
「奏音さん?」
奏音さんが四つん這いになって血を吐いていた。
「どうしたんですか!?」
「ゴボッ、このヂカラを、無理にづかいすぎちゃっだ…かな……」
「そんなっ、どうしてそこまでして…」
「…ふぅ」
「あなたはね、私なの…」
「え?」
「大切な人のために怒り、仇を討とうとしている」
「ギィゴ」
「奏音さん、そこ…離れないとメカトリックが……!」
「圭くん、これだけは忘れないで」
「どうか怒りで我を忘れないで─」
「ギィゴォォォ!」
グシャ
あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、あああああああああああああああああああああああああああああああ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ああああああああああ!
「奏音さあぁぁぁぁぉぁぁぁん!」
「ギィゴォ!」
「貴様あぁぁぁぁぁ!」
「ぐちゃぐちゃにしてやるうううう!」
ゴボゴボゴボ
黒いものが地面から大量にでてくる。
それがメカトリックの全身を包み込む。
「消えろおぉぉぉぉぉぉ!」
「このゴミクズがあああああああ!」
「ギィゴオオオオオオオ」
バシュッ
「は?」
黒いものの拘束が解けた…
「ギィゴォ!」
ザシュ
「ギィ、」
ボォォォォン!
突如、メカトリックが爆散した。
「圭くーん!」
「はぁはぁ…」
「渚、隊長…」
「はぁ、無事?あれ、かののんも来たはずだけど…」
「…死にました」
「…へ?」
「奏音さんは、…僕を助けるために来てくれて、それで…無理して…」
「…そっか」
「第2部隊副隊長、柊奏音!」
「第2部隊隊長、西野渚より告ぐ」
「これにて、お前の任務は終了とする!」
「大変、ご苦労であった!」
そういうと、隊長…いや、渚さんは敬礼した。僕もそれに見習う。
「奏音さん、お疲れ様でした!」
「…」
「さ、帰ろっか、圭くん」
僕は無視して敬礼を続ける。
「…隊長命令だよー圭くん」
「…」
「ぐっ、ふぐっ…!」
「渚さぁん、僕、また目の前で…!」
「大切な人を……!」
「よーしよし、おねーさんが優しく抱きしめてあげる」
ギュウウ
「辛いよね…私もだよ……」
「奏音ちゃんは、大切な仲間だからね……」
「…もう僕、死んじゃいたいです」
「……でもね、君も大切な仲間なの」
「君にも死んで欲しくないの」
「だからそんなこと"言わないでっ!」
「私だっで辛いよおおおお!」
お互い泣きながら、強く抱きしめあった。
第四話、如何でしたか?もうすこし文章力鍛えたいです…そして投稿頻度ももう少し上げないと読んで頂いたあなた方に忘れ去られるかもしれませんし…頑張ります