オーバータクヤ   作:イグヴァルジ

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※淫夢要素があります。
原作2巻からスタートです。


生かさず殺さずのアインズ様

 

 

 三重の要塞に囲まれた都市、エ・ランテル。その最内部にある市民のためのエリアは、いつも通り活気に満ちていた。並んだ露天商や行き交う人々によって、中央の広場は特に騒がしく、昼特有の活気はいつまでも続くと思えた。

 

 

 だが、広場に隣接して立ち並ぶ建物の一つ、五階建であり一際立派な建物―――冒険者組合から出てきた二人組によって喧騒は終わりを迎える。

 

 

一人は、漆黒に輝き、金と紫の紋様が入った絢爛華麗な全身鎧に身を包んだ偉丈夫。屈強な外見に相応しく、二本のグレートソードを背負っていた。

 

 彼一人であれば、街の人々も然程驚きはしなかっただろう。見事な鎧とはいえ、冒険者組合から出てきた者だ。武装に対する警戒心や恐怖といったものは無く、見慣れてすらいた。それに目端の利くものは、首から下げた銅のプレート――最下級の冒険者ということにも気がついていたのだから。

 

 

 しかし、もう一人を目にした瞬間、街の人々は目を大きく見開き、驚きに表情を歪め、身体を硬直させた。

 

 

 

 四〇代くらいに見える顔は、黒く塗りつぶされた眼鏡ような装飾品に隠されている。しかし――――欠けたような頭部、パンパンにパンプした胸筋、酷すぎる乳首、そして、あまりにも貧弱な下半身。マジで美観を損ねた異形の姿には、周囲の人間全員が言葉を失った。

 

 その男――いや、もしかしたら淫乱マッチョ売春婦おばちゃんかもしれない――は、機嫌良さそうに周囲を見渡すと、漆黒の戦士を連れ立って広場を後にした。

 

 

 数十秒後、目撃者たちは何とか硬直から抜け出し、遠ざかっていく二人組を目で追いながら口々に噂した。

 人ではなくゴブリンなどの異種族なのではないか――――冒険者組合の規則にある魔獣登録というものではないのか――――蒼の薔薇のガガーランにそっくりよね――――ガガーランには全く似ていません―――

思い思いに感想を述べる人々は、数日後―――エ・ランテルに、新たなアダマンタイト級冒険者が生まれたことを知る。

 

 

 同時刻、漆黒の戦士―――アインズは、人選を致命的に間違えたことを悟り、内心で大いに頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 ナザリック第六階層―――ナザリック最大の敷地面積を誇り、大半を鬱蒼と茂る木々が支配している樹海ともいうべき場所だ。そんな樹海の北には湖がある。第四階層にある地底湖と比較すれば小さいが、ギルドメンバーが手間をかけた甲斐あって、中々の面積を誇っている。そんな湖にアインズはいた。

 

 

 アインズは、ちらりと不安げに後ろに控える女性に目をやる。後ろには白いドレスを着たアルベドが、困惑の思いを美しい顔に浮かべていた。

 

「アインズ様。こちらにアインズ様の供回りに相応しい者がいるのでしょうか?」

 

「そうだ。この湖の底にいる...はずだ。」

 

 

 カルネ村での騒動が終わったアインズは、次の手として、人間社会での情報収集を考えていた。しかし、ナザリックは異形種の集団だ。人間社会に溶け込めるような外見を持つ者は、幻術という手段を用いてもごく僅かだ。加えて、その者の戦闘能力、諜報に使えそうな特殊能力というところまで考え出すと、選択肢はかなり限られ、供回りの部下を誰にするかに頭を悩ませた。

 

 

 その際、ナザリック内の全NPCを、玉座の間のコンソールで確認していたところ――――一人だけナザリック内に人間種がいたこと思い出したのだ。正確には人間種はもう一人いるが、その者はギルド武器の管理という最重要の任務についているため、供回りとしては不適当だ。

 

 

「アルベド、お前は全てのNPCのことを知識として持っている。そうだな?」

 

「はい。管理上、名前と姿、その務めは全て把握しております。ただ、アインズ様がおっしゃる "拓也" という者は初めて伺いました。」

 

「ふむ...」

 

どこから話すべきか、アインズは少しの間、頭を悩ませた。

 

「拓也という者は、特殊な創造によって生まれた者だ。...複数人の至高の存在によって作り出されたのだ」

 

アインズは朧げな―――ただ確かに輝いていた過去を思い出す。

 

 

 

 100年以上前、同性愛者向けのアダルトビデオが発売された――――そして、それは様々な紆余曲折経て、ネット上での大流行を見せたのだ。しかし次第に流行は廃れ、アインズ...モモンガの時代では、極々一部の者達が楽しむ、小さなコンテンツとなっていた。

 

 

 しかし、何の因果かギルド、アインズ・ウール・ゴウンのメンバーの内数人が、そのコンテンツ―――「淫夢」に熱中し出したのだ。女性メンバーを始め、人権侵害や性的な内容を多分に含む淫夢を毛嫌いする者もいた。しかし、全員が社会人であったアインズ・ウール・ゴウンのメンバーは、ギルドの内の和を保つため、表立って文句を言うことはなかった。

 

 

 だが、ある日淫夢を好むメンバーが、ある男優を元ネタとしたNPCを作成したいと言い出した。これに同調した数人のメンバーによって「拓也」が作成された。ただ、当然のことではあるが、NPCはギルドの防衛としての役割があるのだ。つまり、外部のプレイヤーにその姿が公開されることとなる。

 

 

 ギルド、アインズ・ウール・ゴウン全体の恥として晒されるばかりか、人権を侵害し、人の容姿を馬鹿にするような集団だと思われる―――そんな悪評は受けたくないというメンバーから、拓也を抹消するように声が上がったのは当然だろう。結果、多数決によって拓也の抹消は決まった―――たが、淫夢を好むメンバー達の嘆願によって何とか、消去は免れ―――ただ、人目に晒したくないという理由で―――ユグドラシルのサービス終了まで、湖底ブリッジ3000年という刑罰を受けることとなったのだ。

 

 

 淫夢というものに良い感情を持っていないアインズは言葉を濁すことに決める。

 

「...まあ、奴はギルドの最初期によって作成され、存在を隠されていた者だ。お前が知らずとも無理はない。....さて!」

 

 アインズは湖に近づき声を張り上げる。

 

「拓也よ! 命令だ、姿を現せ!」

 

 拓也は、作成者の設定によって湖底でのブリッジを厳命されている。NPCが設定に強く縛られてるのはアルベドを見れば明らかだ。そのため、NPCやシモベが相手では、拓也は命令を聞かないかもしれないと思い、アインズ自らが出向いたのだ。ナザリックの恥を出来るだけ隠したいという思いもあったが―――

 

 

それなりの広さをもつ湖を探すのは非常に手間だ。だが、拓也の職業レベルは水中での活動に特化したものによって構成されている。そのため湖底にいても、地上の感知は容易だ。作成したメンバーによれば、拓也は水上歩行騎士団に所属していたらしい。恐らくそれの再現なのだろう。

 

(能力が限定的過ぎるだろ)

 

 やはり連れて行くのは止めようか、そう考え出したとき、水飛沫をあげながら水中から飛び出す影が見えた。

 

 影―――拓也は、ぶるりと身を震わし、水滴を落とすとアインズに向かって深々と頭を下げた。

 

「ウッス!モモンガ様、お久しぶりでっす!」

 

「うむ...久しいな。」

 

(乳首酷過ぎるだろ)

 

 拓也の服装は、所謂競パン――競泳用の男性水着のみだ。そのため、酷すぎる乳首やアンバランスな体型がはっきりとわかる。微かに後ろのアルベドが息を呑んだような気配がした。

 

「今日は、お前に命令したことがあって来たのだ―――」

 

 

 

 

 生かさず殺さずのアインズ様 投稿者 ビルダー拓也

 

 「至高の御方々からの仕事は大量にあるといいんだよね。だってさぁ、休暇取らされるメイドのオンナの子とかいっぱいいてかわいそうじゃん!」なんて言っていながら、アインズ様からご命令を頂けるかどうかやっぱり気になる。アインズ様は決して絶対に約束なんかしてくれない。だからオレはグレまくってウリなんかやっている。それに絶対決して「好きだ」なんて言ってくれない。単なる「ペット」として愛してくれているだけだ。

 なんて思ってたら、アインズ様が突然オレに命令したいことがあるって来て下さった!マジ?!それってお誘い?やったぜ!何でも人間の街に行くときの護衛としてついて来て欲しいみたい。アインズ様と一緒に過ごせるなんてマジウレシイ!(^^)v

 

 

 

 

 

 

 漆黒の戦士とサーフ系ボディビルダー、二人は通りを黙々と進む。その間も周囲の人間からは、驚愕の視線や悲鳴があがる。耳をそばだてれば、ゴブリンだの亜人だという言葉すら聞こえてくる。

 

 

 完全に失敗した。アインズは内心で大きく顔を歪める。確かに拓也の容姿は人目を引くが、それでもこれ程とは考えていなかった。この世界は美形が多い。それはカルネ村や陽光聖典の生き残り達から知ってはいた。鈴木悟の容姿もここでは三枚目から五枚目に格下げだろう。しかし、幾ら何でも北京原人からゴブリンにランクダウンとは考えていなかった。

 

 

 服装もまた問題だ。拓也は全裸が制服だよな!というギルドメンバーの設定により、競パン以外の装備を身に付けられなかったのだ。ただ、陽光聖典からの情報によるとバハルス帝国には半裸の冒険者がいるそうなので、ギリギリ許容範囲かもしれない。

 

 

 とはいえ、当然メリットもある。拓也はレベル90という高レベルのNPCだ。職業構成が最適化されていないため、然程強くはないが、修行僧のクラスを持ち、一応は前衛職ということで、アインズより遥かに高いHPと物理防御力を備えている。―――そしてもう一つ、アインズにとっては最低な、だが最大のメリットがある。

 

 

 それは―――

 

 

 アインズが思案に耽っていると不意に声が掛かる。

 

「センパイ!もうすぐで宿屋に着きまっす!」

 

「わかった...」

 

 拓也は、アインズのことを何故か「センパイ」と呼ぶ。「モモン」と人間として偽名で呼ばせると時折「モモンさーーん」と間抜けな呼び方になるので、それよりはマシかと許可を出した。

 

(それにしても...随分上機嫌だな)

 

 拓也の表情を盗み見ると口元は緩み、「フフフン 」と可愛らしい笑い声さえ聞こえる。

 

―――久しぶりの地上だものな。

 

 罪悪感が、ちくりとアインズの心を蝕む。

 

 拓也を連れて行く最大のメリット、それは―――例え死んだとしても、悲しくないからだ。

 もし、プレイヤーと遭遇したとき―――そして戦闘になった時のため―――アインズには盾となるものが必要だった。

  NPCはアインズとって大切な思い出だ。だが、拓也は面白半分で創られた存在、そしてその思い出もアインズとっては楽しいものではなかった。だから、死んでも心を痛めないで済む。

 

 身勝手な理由で生み出され―――除け者にされ―――いざ呼び戻されたら都合良く使われる。

 

 蘇生が可能かわからないこの世界で死ぬことは絶対に避けなければならない―――指揮を執る者が死ぬことは組織のためならない―――様々な言い訳が浮かぶが、アインズの罪悪感が薄れることはなかった。

 

(捨てられる辛さは知っていた筈なのにな)

 

「...拓也よ。言うまでもなく、我が身を守るというお前の任務はとても重要なものだ。」

 

「ウッス!」

 

「だからこそ、私もお前の働きに見合う褒美をやりたいと思う。何か望む物はあるか?」

 

 拓也は少し考え込むと口を開いた。

 

「でしたら、もっとセンパイと一緒にいたいっす」

 

 普段のアインズであれば、言葉の裏を勘繰ったり、アルベドが時折見せるような気配を感じただろう。だが、ノスタルジックな雰囲気になっていたアインズはその気配に気づかずに言葉を続ける。

 

「そうか...宿屋に戻った後は、ナザリックに戻ろうかと思っていたが、少し街でも回ってみるか?」

 

「ウッス!」

 

乾燥途中の干し柿みたいな顔を、より一層皺くちゃにして拓也は笑った。

 

―――アインズは知る由もない。 

 悪ノリしたギルドメンバーが、拓也の設定文の最後に、「モモンガを愛している」と書き込んだことを―――

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やばい。拓也がウッスとしか言っていない。次はもっと台詞増やしまっす。

ほぼ初投稿なので、改行や句読点、ルビなどわからない事だらけです。要望や意見、問題などございましたら連絡を宜しくお願い致します。
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