キヴォトスではゴリラ力こそ正義   作:砂巴羅

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結成!覆面水着団+ゴリラ!!─弍─

 

 銀行を襲う。

 さも当然かの様に砂狼シロコは宣言した。

 

 

 裏社会に名を馳せる闇銀行が、そう易々と集金のデータを渡してくれる訳がない。しかしそのデータは必要不可欠……となると、もう強行突破を敢行するしかない。

 成る程。そう考えれば、これが最適解の様に思えてくる。

 ───犯罪という点に目を瞑れば。

 

 

 

 だが、ここにいるのは『アビドス』だ。

 犯罪だから、という程度の理由で止まるような日和見主義者はアビドスにはいない。

 

 

 ……そんな理性的な生徒は、とっくにアビドスを出ているとも言う。

 

 

 ただ一人反対するヒフミを無理やり連行し、彼女達は闇銀行へと向うのだった。

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

 決意を新たにしたアビドス一行は、逸る気持ちを抑えられず、もう既に覆面(作:シロコ)を被っていた。

 もし他の自治区でそんな物を被っていたら、即ヴァルキューレ警察学校に通報されていただろうが、ここはブラックマーケット。

 ヘルメット団をはじめ、顔を隠している者など大勢いる。覆面をしていても通報しようとする馬鹿真面目な者はブラックマーケットには存在しない。

 よしんば通報しても、ここではヴァルキューレなど役に立たないし、次は自分に火の粉が降りかかるやも知れないからだ。

 

 そして何より、覆面集団の隣には、“あの”伏黒トウコがいた。

 それが、如何にも怪しいアビドス一行が通報されない最大の理由だった。

 

 

 そんな状態で歩き続けて数時間、彼女達は遂に闇銀行の眼前へと辿り着いた。

 車などを使わなかったのは、その車が原因で足がつくのを避ける為である。

 当然、トウコを除いて疲労困憊になってしまう一行だったが、そんな時、ノノミがある物を発見した。

 

「あら!あそこにたい焼き屋さんが!折角ですし、あそこで一休みしませんか?」

「ホントだー。こんな所にも屋台があるんだね〜」

「たい焼き、私がご馳走します!ほら、腹が減っては戦はできぬ〜とも言いますし♪」

「"いいね。私が奢ろうか?"」

「ううん、私が食べたいからいいんです⭐︎」

「"そっか……。それなら、お言葉に甘えようかな"」

 

 ノノミはネフティスのご令嬢だ。彼女の持つカードには、それはもう大変な額が入っている。たい焼きなど、何十枚買っても問題ないくらいには。

 

 いきなり現れた覆面集団を見たたい焼き屋の店主に、すわ強盗か、と誤解され戦闘になりかけた一幕もあったが、なんとか無事購入し、ありがたくノノミのご馳走になる一行。

 伏黒トウコも、少し離れたベンチに腰掛けながら、ノノミの購入したたい焼きを口に運んだ。

 

「美味ぇな。それに、多分毒も入ってねえ」

「ど、毒!?なんて事気にしてんのよ!」

「あはは……ブラックマーケットじゃ有り得ない話ではないんですよね……」

 

 どうやら、セリカは耳が良いらしい。トウコのこぼした呟きも聞き取り、即座にツッコミを入れてくる。

 まぁ俺には毒なんざ効かねえけどな、等と思いつつ、トウコは談笑する面々に目を向ける。

 やれ「後でアヤネちゃんにも奢る」やら、やれ「この紙袋ならヒフミちゃんの顔を隠せる」やら……

 この後銀行を襲おうと画策しているとは到底思えない、ほのぼのとした空間がそこに広がっていた。

 

 そしてトウコは、手に持ったたい焼きに目を移した。

 実のところ、打算や下心を抜きにして誰かに奢られたり施されたりするのは、トウコにとって初めての経験だった。

 

 

「青春、ねぇ……」

 

 

 

 十数年前に、もしブラックマーケットに辿り着くことなく、どこか別の学校に入学していたら……

 もしかしたら、あんな青春の輪の中に、自分の姿があったのかも知れない───なんて、そんな風に思ってしまう。

 

 

 

「"隣、いいかな?"」

「先生か、好きにしろ」

「"ありがとう"」

 

 暫しの沈黙の後、先生が問うた。

 

「"皆の所には行かないの?"」

「……」

 

 まるで、心の中を読まれているかのような質問だった。

 隣に座るこの大人は、トウコも会ったことのないタイプの人間だ。自らを先生と名乗り、生徒達を見守る。

 今もそうだ。トウコを気にかけ、声を掛けてきた。

 この大人といると、どうにも調子が狂う。それが、トウコは気に食わなかった。

 

 

 

 

「俺が行っても、何にもならねぇよ」

 

 

 青春。慌ただしい日々。そして───満たされた自分。

 

 そんなIFを、トウコは下らない妄想だと吐き捨てる。

 彼女の小さな呟きは、今度こそセリカ達の耳に届く事なく……先生の心に悲しさだけを残して、消えていくのだった。

 

 

 

 

 

『お取り込み中失礼します!そちらに武装した集団が接近中!まだこちらに気付いてはいない様子です!』

「あれは……!」

「あ、あれはマーケットガードです!」

 

 マーケットガード。ブラックマーケットの治安機関において、最上位の組織。それが、こちらに接近している。

 慌てて身を隠す彼女達だったが、マーケットガード達は彼女達を探す事もなく、すぐに通り過ぎていった。

 

「パトロールでしょうか?何か護衛中のようですが……」

「あのトラックだ。あれは……現金輸送車だね」

「あれ、あっちは……闇銀行?」

 

 どうやら、彼女達に接近しているのではなく、すぐ近くの闇銀行に向かっているようだった。

 シロコ達がそう考察している内に、マーケットガード達が闇銀行に到着した。

 停止した車の中から細身のロボットが降りてくる。

 闇銀行の入り口には、恐らく警備員であろうヘルメットを被った少女。

 その少女と細身のロボットが数回言葉を交わした後、現金輸送車が闇銀行へと入っていった。

 

「見て下さい、あの人……!」

「あ、あいつは……毎月うちに来て利息を受け取ってるあの銀行員……?」

「あれ、ホントだ」

「え、えぇ!?」

『それにあの車……!あれはカイザーローンのものです!』

 

 カイザーローンと闇銀行。トウコの言った通り、この二つには繋がりがあった。更には、アビドスに毎月やってくる銀行員の姿。

 

「"と、いうことは……"」

「クロだな。だが、まだ決定的な証拠がない」

「……」

「……」

「集金の記録なら、決定的な証拠になる……。で、でも……あうう……やっぱりやるしかないんですか?」

「ん、ここまで来たんだからやるしか無い」

「うへ〜、私達とヒフミちゃん達はもう一蓮托生だからね〜」

 

 

 覚悟を決める時が来たようだ。

 

 シロコが、先程買ったたい焼きの紙袋に目出し帽のような穴を開けていき、額には5の数時を書き込む。

 それをヒフミの頭に被せるだけであら不思議!

 一瞬にして、不審者の出来上がりである!

 

「ん、完璧」

「良いね〜。見た目だけならこの中で1番の悪者だね〜。いや、トウコちゃんの方が僅かに上か……」

「何の評論家よ……」

「ちゃん付けやめろチビ」

「うへへ〜」

 

 まるでホラー映画に出てくる悪役のような見た目になったヒフミ。

 「ナギサ様に合わせる顔がありません……」と項垂れる彼女を尻目に、次はトウコをどうするか相談するアビドス一行。

 しかしトウコはそれに断りを入れた。

 

「顔隠した程度じゃ、武器と戦い方でバレんだよ」

「な〜んだ、残念」

「って、バレちゃダメじゃない!どうすんの!?」

 

 トウコは今、腰に巻いたベルトの右側に三節棍と拳銃、左側に刀とナイフを装備している。

 更には180cmを優に超える身長と、とんでもない身体能力。

 これを隠すのは至難の業と言えるだろう。

 

「ま、俺はバレた所で困る事もねえ。依頼を受けたって言やぁ、ここらの連中は黙るか黙って戦うかしかねえからな」

「え、えぇ……」

 

 天与の暴君の名は伊達ではない。ブラックマーケットで長い間好き放題やってきたトウコは、周りの人々から天災のようなものだと思われている。

 我を貫く力を持って生まれ、その力を好きに使う彼女は、まさしく暴君と言えるだろう。

 他のメンバーは、そんなトウコに一周回って頼もしさを覚えるのだった。

 

「ん、準備は整った。それじゃあ先生、例のセリフを」

「"え、何それ!?……え、えーっと、よし……覆面水着団!ファイヤー!!"」

『「「「ファイヤー!」」」』

「ファ、ファイヤー?」

「な、何よそれ!?えっとえっと……ファ、ファイヤー!!」

「馬鹿なんじゃねぇの?」

「アンタも乗りなさいよ!私だけ馬鹿みたいじゃん!」

 

 恥ずかしそうに掛け声を叫んだセリカが、顔を真っ赤にしながらトウコにツッコんだ。




 トウコの身体は、『透き通った世界フィルター』を通しているため、パパ黒のような筋肉ゴリゴリマッチョではありません。
 サオリのケツとタッパと胸と筋肉を2回りほど盛ったスタイルだと思って下さい
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