ありふれていない魔女は世界最強   作:クラウディ

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最近は筆がよく乗って嬉しい





魔女の起源

――『私』みたいな人間がこんなところで生まれたのは何故だろう。

 

 そう自身に問いかけたのはどれくらいだったのか……もうそれすら分からなくなった。

 

 自分を抱き上げ、あやしてくれる母親が本当の母親である気がしなくて、お前はお前だと笑いながら頭をなでてくれる父親の言葉が心に軋みを作って、自分が自分であることに違和感しか持っていなかった。

 

――『私』はあの時死んだはずなのに。

 

 ……そうだ、『私』は死んだんだ。

 

 前の人生……前世というべき記憶で『私』は確実に死んだと、おぼろげながらも覚えている。

 朦朧とする意識、血が少しずつ抜けていく感覚、なによりも体が氷のように冷たくなっていく。

 そんなものが、頭で覚えているのではなく、魂が記憶しているであろう()()()にあったのだ。

 

 だから私は、自身を"死んだはずの人間"だと定義しているのである。

 

 そんな自分が、なぜ生きているのかが分からない。

 それに……そう思って俯いていた顔を上げれば、大通りを行き交う人達の姿が見える。

 自身がいるのは大通りの脇にある裏路地、人が来るようなところではない。

 

 そこから大通りを行き交う人達を観察すれば、自分の常識との相違に眩暈がしてきた。

 自身の記憶にある、天を突くほどの摩天楼が立ち並ぶ街並みではなく、乾いた粘土で作られた家屋が並び、人々は装飾などない、もはや布のような衣服を纏って生活している。

 

 まるで、はるか昔……それこそ、神話の時代の光景を見てしまい、自身の足元が崩れるような感覚に陥った。

 

――私は「異物」だ。

 

 こんな言葉すら、何度問いかけたのかはもはや分からなくなっていく。

 なんだ、夢でもみているのか? そうでないなら転生をしたとでもいうのか?

 

 どうでもいい……もう、どうでもよくなっていた。

 

 なぜこうも今の状況に恐れている……それすらも分からなくなったが、きっと、前世の私は疲れ切っていたのだろう。

 

――『生きる』ということに……。

 

 それが「今」になっても後を引いてるだけ、それにしては面倒なものだったが……。

 

 「ならば今すぐ死ねばいいだろう」そう考えたのは何度もあった。

 だが、ことあるごとにあの「死」へ向かっていた感覚が足を竦ませてしまう。

 

 "死にたくても死にたくない"。

 そんな相反する思考が心の均衡を削り続けていた。

 

――もう、疲れたんだ……。

 

 しかし、それももうすぐ終われるかもしれない。

 自身の首もとに盗んだ刃物を構える。

 

 突き立てる力は入らない。

 だが心は限界。

 見上げた空は快晴。

 

 覚悟は決まった。

 

 なら、きっと死ぬには良い日だろう。

 

 これで死ねなかったら、もう諦めよう。

 生きることが死ぬことよりも辛いとしても、生きていなきゃいけないんだ。

 

――きっとそれが「()()」なんだから。

 

「……さようなら……」

 

 誰に向けての謝罪か、自分が()()ではないことへのせめてもの贖罪か。

 

 

――だが、『神』はまだ私を見捨てようとはしなかったようだ。

 

 

「君、なにしてるの?」

「ひっ……!」

 

 喉を貫こうと力を込めかけたその時、すぐそばから声をかけられ思わず刃物を投げ捨ててしまう。

 カランッと音を立てて刃物が路地裏の奥へと転がっていった。

 「またか、また私は死ねないのか」そんな怒りを、声をかけてきた誰かにぶつけるように私は睨み付けようとする。

 

――そこには『神』がいた。

 

 いや、正確には「今」の私と同じ程度の歳の少年がいた。

 

 煌びやかな黄金をそのまま細く引き伸ばしたかのような髪に、宝玉のごとく輝く紅い瞳。

 まるで、神が創った精巧な作品と見まがうほどの姿。

 

 しかしその纏う雰囲気が、明らかに私のような「人間」ではなかった。

 

「どうしたんだい? なにか言おうとしてたみたいだけど? あっ、もしかして、僕に見惚れてしまったのかな?」

「あっ……えっ……?」

 

 世界の上位者――『神』。

 それが目の前にいたのだ。

 

「ところで君は、あの刃物を使ってなにをしようとしてたのかな? もしかして……自殺?」

「えっ、あっ、そ、そうです……」

「へぇ~! 僕の民が僕の許可も受けずに勝手に死のうとしてるなんてね~」

「民……? あっ……」

 

 『僕の民』、そんな傲岸不遜な言い方をするなんて、まるで自身が「王」であるかのような……そこであることに気がついた。

 

「ギ、ギルガメッシュお……!?」

「シー。僕は今、お忍びで抜け出してるんだ。あんまり騒がれちゃうと城に連れ戻されちゃう」

 

 そう言って、私の口を抑える目の前の少年。

 そうだ、見覚えがある。忘れられるわけがない。

 「今」の父と母が連れて行ってくれた祭事にて、主役となっていた人物だったからだ。

 

「な、なんのようですか……? ギ、『ギルガメッシュ王』……?」

「お、僕の名前くらいは流石に知っていたみたいだね」

 

――"ギルガメッシュ"。

 

 『今』の私が生きている国、その『"現"国王』がそこにいた。

 あまりにも『上』の存在に怯え切っている私の様子を見て、ギルガメッシュ王は不満げな表情で口を開く。

 

「そんなに怯えなくてもいいんじゃないかな? 流石の僕も傷つくんだけど」

「も、申し訳、あ、ありません……」

「ふーん、まっ、それはいいや。でも僕にはそれよりも()()()()()()があるんだよね」

「き、気になること……ですか……?」

 

 精神的にも不安になっていた私は、ギルガメッシュ王から告げられる言葉の一つに自身の『死』を幻視していた。

 

 あまりにも切望していた『死』の瞬間。

 それなのに、今の私は罰せられる罪人のように『死』を恐れていた。

 

「うん、君のような子供がなんで『僕の許可も取らずに死のうとしている』のかな?」

「…………え……」

「父の代からこの国はとても満たされていた。僕の代だって皆が幸福に暮らしている。それなのに君は苦しんでいる。それが僕にはとても気になってね」

「え……あ……その……」

「落ち着いて。少しずつ話してくれればいい。これは僕の未熟が故に起きたことなんだから」

「………………」

 

 しかし、ギルガメッシュ王からはとてもやさしい言葉をかけられたことに、私は先程の恐怖すら忘れて呆然とする。

 

 「自分は王として民の一人すら幸福にして見せる。それができてないのは自身の責任だ」と、あまりにも人としては傲慢で尊大な言葉を、ギルガメッシュ王はためらわずに告げてきた。

 

 だからこそ……

 

「わ、私は疲れていたんです……生きていることに……」

「……うん、君は確かに少し『歪』だ。『魂』と『体』に"ズレ"が起きているのが分かるよ。そのせいで起きた『自滅衝動』……とは言い切るのは難しいね」

 

「ま、『前』の自分は疲れていたから……ら、楽になろうとして……っ」

「『君』は追い詰められていた。君の中では楽になろうとして『死』を選択するという道しか見えていなかった」

 

「で、でもっ、『今』になってもまだ生きていてっ……も、もうっ、い、いいんだって、諦めたかったのにっ……!」

「『前』と比べて『今』があまりにも幸福すぎていて、でもそれがここではそれが『普通』で」

 

「み、皆、ふ、『普通』なのにっ……自分はっ、自分"だけ"が『異物』でっ……!」

「『普通』ではありえない『死』を感じた。その一つの要素だけがまるで君の瞳を霧の中に迷い込んだ旅人のように曇らせていた」

 

「し、『死』が、お前だけ幸せになるなんて許さないっ、って言ってくるみたいでっ……!」

「『死』んだものは二度と戻らない。それは『今』でも変わらない。だけど、『今』の自分だけが"ズル"をしているみたいで、『前』の自分が追い詰めてくるようだった。『前』の自分も『今』の自分も変わらないというのにね」

 

「ギ、ギルガメッシュ王……わ、私は……」

 

 

 

 

 

「生きてもいい。『(オレ)』が許そう」

 

 

 

 

 

「あ……あぁ……!」

 

 初めて、楽になれたような気がした。

 初めて、心から救われたような気がした。

 

 

 初めて、『今』の自分に追い付けた気がした。

 

 

 これが、私の『運命(Fate)』だった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「――――――――――――――――――――ハッ!? っ! つぅ……!」

 

 誰かの記憶を覗いたかのような微睡からユエは目を覚ます。

 上体を起こし、周囲を見回せば、広大な草原で横になっていたことが分かった。

 

 いまだに鈍い痛みの走る頭を押さえながらユエはなぜこうなったかについて、自身の憶えている限りの記憶を思い返そうとする。

 

 そこで、自身の傍から誰かに声をかけられた。

 

「おや? 目を覚ましたかい、吸血少女?」

「……メアリー……私はどのくらい寝てた……?」

「んー、おおよそ25分34秒かな」

「……不覚……」

 

 声をかけてきたのはユエの想い人であるハジメの師であり、ハジメの想い人である女性。

 "ご都合主義の魔女"こと『メアリー・スー』がそこにいた。

 

 そんな彼女を見て、ユエは思い出す。

 自身とハジメは、メアリーと模擬戦をしていたのだと。

 

 事の発端はこうだ。

 

 

 

 あの後、互いに自己紹介()を終えたユエとメアリーは、体調の回復したハジメを伴ってこの最深部の空間を探索し始めた。

 

 ハジメの寝ていたベッドルームの外に出て、まず目に入ったのは"人工の太陽"というべきものが辺り一帯を照らす最深部。

 その空間の奥には、天井近くの壁から水が流れ出したことで一面が巨大な滝となっており、滝つぼにつながる川には魚も泳いでいる。

 川から離れた場所には大きな畑も存在し、畑の周囲には様々な種類の樹が生えていた。

 

 そして、ベッドルームに隣接された石造りの建築物は、ベッドルームのような神秘的な空間に比べるといささか"作業場"といった印象を受ける。

 

『まるで誰かが作った"魔術工房"のようだね。ここまで巨大なものを造り上げるとは相当な人物だろう』

 

 これはそれらを見てメアリーが最初に呟いた言葉だ。

 メアリーほどの人物が評価するとは相当なのだろう。

 

 石造りの住居は3階建てで構成されていて、それらにも清潔感があり、まるで誰かが住んでいたかのような雰囲気を纏っていた。

 近い感覚でいうならば……そうだ、旅行から帰ってきた際の自宅の空気、これが一番近いだろう。

 そんな石造りの建築物には開かない部屋(メアリー曰く「魔術的、物理的な封印が施されているね。無理に開けない方が良い」)も多く、それらは後回しになった。

 

 それから風呂場もあったが……割愛させてもらう。

 

『少年、後で一緒に入るかい? 昔のように話でもしながら入りたいのだが……』

『!?』

『……先生、それはまた今度で……』

『むぅ……仕方ない。少年の言うことだ。無理にはしないよ』

『……つ、強い……!』

 

 ……ユエが人知れず敗北していただけだからだ。

 

 それから最後に残った部屋にたどり着いて……この世界の真実を知った。

 

『試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?』

 

 最後の部屋――三階の奥の部屋には直径7、8メートルの精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた。

 まるで芸術作品かのような魔術式だったが、それよりも目を引かれるものが魔法陣の奥にあった。

 

『こ、れは……』

『ふむ、死体か。それもこの場所を造り、そして住んでいた人物の死体だね』

 

 豪奢な椅子に座った(むくろ)である。

 既に白骨化しており黒に金の刺繍が施された見事なローブを羽織っている。

 「まさかあれが動き出すのでは……?」と若干の警戒をしながら、メアリーの解析を待つ2人。

 

 結果として、トラップの類は見られなかった。

 魔法陣自体にもおかしいところはない。

 ならば足を踏み入れてもいいだろう、そう判断したハジメは何があっても対応できるようにとメアリーとユエを待機させ、魔法陣へと足を踏み入れた。

 

 それが、自身を反逆者と言う人物――『オスカー・オルクス』の記録映像であった。

 

『ああ、質問は許して欲しい。これはただの記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを』

 

 彼の残した記録には、この世界"トータス"の神――"エヒト"という神の正体について語られた。

 

 "トータス"での神代……その少し後の時代、世界は争いで満たされていた。

 人間と魔人、様々な亜人達が絶えず戦争を続けていたが、争う理由は様々だ。

 領土拡大、種族的価値観、支配欲、他にも色々あるが、その一番は"神敵"だから。

 

 今よりずっと種族も国も細かく分かれていた時代、それぞれの種族、国がそれぞれに神を祭っていた。その神からの神託で人々は争い続けていたのだ。

 

 だが、そんな何百年と続く争いに終止符を討たんとする者達が現れた。

 それが当時、"解放者"と呼ばれた集団である。

 

 彼らには共通する繋がりがあった。

 それは全員が神代から続く神々の直系の子孫であったということだ。

 そのためか〝解放者〟のリーダーは、ある時偶然にも神々の真意を知ってしまった。

 

 何と神々は、人々を駒に遊戯のつもりで戦争を促していたのである。

 

 "解放者"のリーダーは、神々が裏で人々を巧みに操り戦争へと駆り立てていることに耐えられなくなり志を同じくするものを集めたのだ。

 

 彼等は、"神域"と呼ばれる神々がいると言われている場所を突き止めた。

 "解放者"のメンバーでも先祖返りと言われる強力な力を持った七人を中心に、彼等は神々に戦いを挑んだ。

 

――しかし、その目論見は戦う前に破綻してしまう。

 

 何と、神は人々を巧みに操り、"解放者"達を世界に破滅をもたらそうとする神敵であると認識させて人々自身に相手をさせたのである。

 

『……下衆が』

 

 その過程にも紆余曲折はあったのだが、結局、守るべき人々に力を振るう訳にもいかず、神の恩恵も忘れて世界を滅ぼさんと神に仇なした"反逆者"のレッテルを貼られ"解放者"達は討たれていった。

 

 最後まで残ったのは中心の七人だけだった。

 世界を敵に回し、彼等は、もはや自分達では神を討つことはできないと判断した。

 

 そして、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り潜伏することにしたのだ。

 試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願って。

 

『君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを』

 

 そして、オスカーの記録映像は途切れ、ハジメの頭に何らかの情報が刷り込まれた。

 

『少年、大丈夫かい?』

『あ、あぁ大丈夫だ先生。とりあえず、やっぱ神ってのは大体クソだってのは聞いてたけどここまでクソとは思わなかったな……』

『……ん、思っていた100倍酷かった……』

『でも、やることは変わんねぇよ』

 

 この世界の真実を意図せずして知ってしまったものの、目標に関してはブレていない。

 

『"家に帰る"。それだけだ』

『……ん! ……でも、メアリーなら私達を連れて今からでも帰れるんじゃないの?』

 

 目標の再認識ができたものの、最短で目標を達成するならすぐ傍に最適解が存在するため、この再認識もどうかと思ってしまうユエ。

 しかし、メアリーの考えはそうではなかった。

 

『んー、正直に言うならこのまま帰ってもいい。吸血少女の戸籍を用意することだっておどゲフンゲフンッ! ……交渉すれば簡単に用意できるさ』

『……今、脅すって』

『君の聞き間違いではないかな吸血少女?』

『………………ん』

『……まぁ、実際帰ろうと思えばすぐに帰れる。少年の実家の座標も設定していたからね』

『でもやらないってことは……"あいつら"ですか?』

『……"あいつら"?』

 

 またもや2人の間でしか通じない会話に首を傾げるユエ。

 またいつもの調子で話してしまったと、メアリーはすまなそうに口を開く。

 

『あぁ、私には少年以外にも生徒がいてね。それも全員少年と同じ学校、同じクラスにいるんだ』

『!?』

『そして、俺と同じくこの世界に召喚されてる。だからそいつら見捨てて帰るわけにはいかない、ってわけなんだよ』

『……初耳……』

 

 そう、メアリーにはハジメ以外にも魔術を教えている生徒がおり、ハジメにとってあのクラスの中では珍しい『親友』と呼ぶべき存在である。

 しかも、ハジメと同じ学校のクラスメイトとは何たる偶然か。

 そんな彼らを見捨てて逃げ出すほどハジメは人の道を外れているわけではない。

 

『……ん、それなら仕方ない。それに……私にもまだ帰りたくない理由がある』

『ユエの『()()』さんのことか?』

『ん!』

 

――そして、ユエにも今すぐには帰りたくない理由が存在した。

 

 ハジメがユエと出会ったのは、この迷宮の中でもハジメが落ちた階層を含めて50階層目の空間だった。

 

 そこで封印されていたユエをハジメは助け出したのだが、その際、ハジメとユエはあることを知ったのである。

 

『……おじ、さま?』

『おいおいマジかよ……』

 

 ユエが拘束されていた部屋、そこに施されていた仕掛けをハジメが『解析』及び『解体』したことで入手した記録用アーティファクト。

 そこに記録されていた映像が2人にとっては衝撃だったのだ。

 

『……アレーティア。久しい、というのは少し違うかな。君は、きっと私を恨んでいるだろうから。いや、恨むなんて言葉では足りないだろう。私のしたことは…………あぁ、違う。こんなことを言いたかったわけじゃない。色々考えてきたというのに、いざ遺言を残すとなると上手く話せない』

 

――まず、ユエの過去について話さなければならない。

 

 ユエはおよそ300年前まで存続していた吸血鬼族の姫だった。

 しかしその300年前に起きた大規模な戦争のおり、吸血鬼族は滅んだとされている。

 

 その生き残りがユエだ。

 しかし、突如として家臣が裏切り、その筆頭であった自身の叔父にオルクス大迷宮の深部に封印されたそうな。

 それらをユエが封印されていた部屋から脱出しようとしたときに襲って来た魔物を解体しながら、ハジメは聞いていたのである。

 

 『解析』をした際に何かしらの仕掛けがされていることが気になったハジメは、自身の魔術を用いて仕掛けを無理矢理解除したのである。

 

 そして、仕掛けの奥から出てきた記録用アーティファクトには、ユエが考えていたこととは全く違うことが記録されていたのだ。

 

『……叔父様は裏切ってなかった……私のためを思って……っ……!』

『……ますますこの世界がきな臭くなってきたな……』

 

 ユエ――『アレーティア』の叔父――『ディンリード・ガルディア・ウェスペリティリオ・アヴァタール』は、アレーティアの体を乗っ取ろうとしていた"エヒト"から彼女を逃すためにわざとそのようなことをしたのである。

 

『……だから、私はまだハジメ達の故郷には行けない』

『ふふっ、君の叔父は良い人だったみたいだね。吸血少女』

『なら、決まったな』

 

 

『『『クソ野郎をぶっ飛ばす』』』

 

 

『そのためには強くならなければね。2人とも、強くなりたいかい?』

『はい!』『ん!』

『ふふっ、それでは明日から私と一対一で模擬戦をしようか』

 

『……はい!』『ん!』

 

 

 ……と、長々と語ったが、これが彼らが模擬戦をやることになった経緯である。

 

「……もうちょっと手加減してくれても良かった……」

「手加減しては強くなれないだろう? 最初のうちに理不尽を知っておくことで何が起こっても平気になるんだ吸血少女よ」

「……理不尽すぎる強さ」

 

 いくら何でも一歩も動かせずに負けるとは思わなかった……そう思いながらも、ユエはふとあることが気になり、メアリーに声をかけた。

 

「……ところで、さっきあなたの過去を――」

 

 

 

「シー……あれは私の黒歴史なんだ。あまり触れないでくれ」

 

 

 

「……謎が多い……ミステリアス系美女……また属性が増えた……!」







メアリー・スー
「……あの頃の私、思い返すと流石に痛いな……なんだ生きることに疲れてるって……」

ユエ
「……強敵すぎる」

ハジメ
「うおらぁああああああああああああああああああ!!!!」(豪雨のように降り注ぐ魔術を全力で回避もしくは迎撃中)


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