聖文字Rのゼブラさん   作:捕獲レベル1

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思い付きで書きました。続くかどうかは分かりません…


ある日、森の中

「ビートパンチ!!!」

 

 草木が豊かに生い茂る森の中、辺りに爆音が響き渡る。爆弾が爆発したようにも思えるほどの轟音は森中の鳥たちを一斉に空へと放り出した。数多の生物が散り散りに逃げていく中、爆心地の中央には3mはあろうかという巨大な熊が佇んでいた。しかし、その熊はほどなくして身体をグラリと傾かせると、その身を地面にうずめた。

 

「チッ、熊風情がチョーシに乗ってんじゃねぇ」

 

 熊の陰からその身を露わにしたのは、一人の少年だった。燃えるように逆立つ赤い髪、瞳は猛禽類のように鋭く、あちこち擦り切れ血が滲んだ衣服は、少年の苛烈さを十分に物語っていた。

 少年は倒れ伏した熊に目を向けると、喉を擦りながらつまらなそうに呟く。

 

「そろそろココも潮時かねぇ。ドイツもコイツも近づくだけで逃げていきやがる」

 

 そうボヤキながら熊を片手で持ち上げた少年は、何の気なしに辺りを見渡す。辺り一帯は爆撃でもされたかのような傷跡が残り、樹木は一本残らずなぎ倒されていた。周囲に生物の気配はなく、先ほどまで頭上を飛び回っていた鳥たちも完全にその姿を消している。

 

「……テメェは誰だ」

 

 少年が振り返らぬまま背後に声を飛ばす。爆心地の端の端、木々が連なり暗がりとなった場所に男はいた。漆黒の外套を身に纏い、すべての生物を支配するかのような威圧感を放つ紅の瞳。少年は鋭い眼光で男を睨みつけると、緩慢な動きで男へと向き直った。

 

「…お前は私を知っているはずだ。我が息子よ」

 

「息子だァ?おっさん、そりゃ人違いだぜ。オレには親なんざいやしねぇよ」

 

 少年は皮肉気に口元を吊り上げながらそう吐き捨てた。男は何も言わず、静かに少年を見詰めるのみ。しばらくの間、その場を沈黙が支配する。

 

「いいや、お前が知らずともお前は私の息子なのだ。そして私はお前の父であり、母である」

 

 男は言葉を続けながら少年へと歩み寄る。少年はその眼を男から一切逸らすことなく、距離を詰められるがままに静かに佇んでいた。そして男の足が止まる頃、二人の距離はすでに幾分もないほどにまで迫っていた。男は少年の目と鼻の先に立ちはだかると、その手を少年へ差し伸べる。

 

「さあ、共に行こう。我が息子よ」

 

 少年は何も応えぬまま、静かにその手を見ていたが、やがてニヤリと牙を剝き出しにして不敵に笑った。

 

*****

 

 オゥ、小松のみんな。トリコだ!(気さくな挨拶)

 というのは冗談。俺はトラックに轢かれ、いわゆる異世界転生をしたしがない一般人だ。生まれた村が焼き討ちされちまったので、今は野生動物を狩りながらその日暮らしをしている。

 あわや人生ハードモードかと思ったが、異世界転生の特典なのか俺は超人的な力を手に入れていた。

 少年漫画「トリコ」。「食」をテーマとしたバトル漫画で、主人公である美食屋トリコと料理人の小松が様々な食材を求めて世界中を冒険する物語だ。その中の主人公のライバルポジションである「ゼブラ」に俺はどうやら転生してしまったらしい。

 ゼブラの得意技は「音」を利用した攻撃だ。音を弾丸にして発射したり、爆弾にしたり、カッターにしたりと少年漫画らしい無茶苦茶な技を使う作中でも屈指の実力者である。

 もっとも現在の俺はショタ状態であり、彼の巨体には到底及ばない。眉間にしわが寄ったマイフェイスは何となく覚えがあるものの、まだまだ子どもらしい。似ているだけの別人かと思ったこともあったが、見様見真似でボイス技が撃てたので恐らく本人だろう。ちなみにボイスデーモンさんにはまだお目にかかっていない。

 

 いつも通り森で狩りをしていると、大きな熊さんに出会った。熊は俺を睨みつけると、立ち上がって威嚇をする。どうもコイツは力量の差が分からない愚か者らしい。こちらを完全に舐めている目だ。音の振動を腕に伝え、熊のどてっ腹に拳を叩きこむ。爆音が周囲に轟き、熊はグラリと身体を傾かせると、そのまま地面に倒れ伏した。

 しかし、この熊もそうだが周りの動植物が普通すぎて少々つまらない。トリコの世界なら、動植物はなんでもかんでもトンチキな食材に置き換わっているはずだ。どう見ても普通なこの熊もトリコの世界なら「ビグマ」とかいって、豚と熊を掛け合わせた美味しい動物になっているだろう。転生してからというものの、そうした食材との出会いがさっぱりないのだ。

 狩場の移動を思案しながら、声を使ってエコーロケーションのように索敵をかける。狼とかの不意打ちが怖いからね。おや、人間の生体反応が1つあり。珍しいな。

 

 熊が重くて振り返るのが面倒だったので後ろ向きで声をかける。やたらダンディな声の男が言うことには、俺のパパらしい。いや、パッパは天国にいてますけど…

 熊を降ろせばいいことに気付いた俺は、熊を傍らに放り投げて声の方を見ると、真っ黒のマントを羽織った大男がそこにはいた。不審者やんけ。

 俺が黙り込んでいると、男は茂みからこちらに歩き出した。なんかパパでありママであるとか言ってる。えぇ…怖い…新手の誘拐犯か?ボイスミサイルぶつけてやろうかしら。

 男が近づいてくるにつれて段々とその全貌がハッキリしてくる。あれ…?なんかどこかで見た気が…?

 

「我が名はユーハバッハ。さあ、共に行こう我が息子よ」

 

 あ、これトリコじゃなくてBLEACHだわ。

 うっかりラスボスに殺されないよう、俺は最大限の笑顔で微笑むのだった。

 

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