聖文字Rのゼブラさん   作:捕獲レベル1

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ゼブラさんは問題児

「クソッ…気に入らない!ぽっと出の新入りのくせに頭に乗りおって…」

 

 男はカツカツと神経質に靴を踏み鳴らしながら廊下を歩いていた。男の名はヒューベルト。ユーハバッハが治める「光の帝国」の騎士団に所属し、若手のホープとして活躍していた。彼は騎士団の中でも指折りの実力の持ち主であり、若くして部隊長を務めるなど華々しい功績を挙げていた。

 

「命令は聞かない、単独行動は当たり前、あまつさえ訓練をサボって……」

 

 ヒューベルトは怒りのままにバタンと食堂のドアを開けた。

 

「――飯のつまみ食いとはな!ゼブラァ!!」

 

 テーブルには料理が山もりに盛られており、その横には2mはあろうかという大男がまるで吸い込むかのようにして料理を次々と平らげていた。

 

「よう、ヒューベルト。どうした、つまみ食いか?」

 

「たわけが!貴様こそ今が何の時間か理解しているのか!」

 

「決まってんだろ、訓練の時間だろうが」

 

 まるで自分は何も間違っていないとでも言うかのようにゼブラはあっけらかんと言ってのけた。まるで悪びれた様子がない目の前の男にヒューベルトはこめかみをヒクつかせる。

 

「つまみ食いの訓練なぞあってたまるか!毎度毎度、貴様はどこまで騎士団の品位を貶めれば気が済むのだ!」

 

 ヒューベルトが怒りのままにテーブルを叩くと、料理が皿に大きく揺れ動いた。ゼブラはチラリとも目を向けることもなく黙々と料理を食べ続ける。

 

「貴様…部隊長である私を無視するとはいい度胸だな。それでも誇りある我が師団の団員か!」

 

 ゼブラはヒューベルトの言葉に耳を傾けることなく水瓶からガブガブと水を飲み、面倒くさそうに言ってのけた。

 

「ハッ、忘れたのか?俺たち聖章騎士は訓練だって好きにしてイイんだ。大好きな陛下の御言葉だぜ?」

 

 「聖章騎士」、陛下から聖文字を与えられた騎士に与えられる称号だ。そしてそれが与えられた者には莫大な特権が与えられる。騎士団でも屈指の実力を持ち、周りからも次期聖章騎士とまで噂されていたヒューベルトは、ただでさえ鼻持ちのならないこの野獣が自分を超えた力を敬愛する陛下から与えられていることに苛立ちを隠せなかった。

 

「クッ…神聖弓もロクに作れない貴様のような猿がなぜ……」

 

「あぁ?なんか言ったか部隊長サマ。暇なら戻って雑魚共を鍛えてやったらどうだ?」

 

 ヒューベルトの怒りは頂点に達した。腰に帯びた剣を抜き放つとゼブラに切っ先を突きつける。

 

「誇り高き我が部下たちを愚弄するとはもはや我慢ならん!今すぐその性根を叩き直してやる!」

 

 ゼブラは手に持っていた皿の料理を勢いよくかき込むと、ニヤリと笑いながら立ち上がった。

 

「良いぜ。腹ごなしの運動だ、付き合ってやるよ」

 

*****

 

 オウ、小松のみんな。トリコだ!(気さくな挨拶)

 

 陛下に拉致られて数年たった俺は、陛下の治める光の帝国の騎士になっていた(絶望)。ここが原作何年前かはわからないが、俺は遠くない将来に護廷とは名ばかりの殺戮集団とかち合い、運よく生き残っても聖別という名の一斉解雇で命を落とすことになるだろう。もう逃げられないゾ。

 

 しかし、俺も黙ったまま過ごしていたわけではない。裏を返せばこの2大イベントを乗り越えれば、明るい未来が待っているはずなのだ。俺はそんな淡い希望を抱きながら生き残るために色々と試行錯誤していた。

 

 1つは生まれ持ったこのマイボディの強化である。トリコの世界では「グルメ細胞」という概念があり、簡単に言えば旨いものを食べたら色々パワーアップできるというビックリシステムだ。主人公のライバルポジションであるゼブラも例に漏れずグルメ細胞を体内に宿しているため、作中ではバンバンパワーがインフレしていった。ということで筋トレならぬ食トレに日々励んでいるわけだが、どうもイマイチ強くなっている実感がない。いや、身体は人間にあるまじきスピードで成長しているのだが、こう「細胞が喜んでるぜ…」みたいな感覚があんまりないのだ。やはりあちらの世界の食材を食べないと意味がないのだろうか…

 

 2つ目は、陛下からプレゼントされた聖文字である。文字の名前はって?「R」ですけど何か?

 聖文字「R」The Roar の能力は「咆哮」である。原作ではゴリラみたいな人がゴリラみたいになって、剣ちゃんに1コマで斬り殺されていた。いわゆる噛ませキャラの能力であり、ぶっちゃけ外れである。しかし、この力はこのゼブラボディには多大な恩恵をもたらしてくれた。

 実は、ゼブラにはいくつか弱点が存在する。その1つが「技を使いすぎると喉が潰れてしまう」というものだ。喉が潰れるとインターバルが必要になるためため、むやみやたらと技を使うことができないという制約が存在する。

 世界観が変わってもその設定は生きているようで、今まではあまり派手に音技を使えなかったが、聖文字を得てからというものの喉が潰れることがなくなったのだ。たったそれだけかとも思うかもしれないが、クールタイムを気にせず使えるようになったのはかなり大きいと思う。早く死音が使えるようになりたい。

 

 そんなこんなで、今日も今日とて食堂にてトレーニングに励んでいたところ、勢い良く食堂のドアが開かれた。

 

「ゼブラァ!!」

 

 入口に立っていたのは七三分けのイケメン、ヒューベルトくんだった。彼は俺とほとんど変わらない年齢にもかかわらず、部隊長と言う立場を任されているエリートであり、俺の上司でもある。しかし、生真面目なヒューベルト君が訓練をサボってつまみ食いとは珍しい。

 

「たわけが!貴様こそ今が何の時間か理解しているのか!」

 

 ヒューベルト君がツカツカとこっちに詰め寄ってくる。えっ、今って訓練の時間じゃないの?なんか別の予定入っていたかしら。

 

「つまみ食いの訓練なぞあってたまるか!毎度毎度、貴様はどこまで騎士団の品位を貶めれば気が済むのだ!」

 

 ヒューベルト君が机をドンと叩く。あっ、ちょっと料理落ちちゃうって、勿体ない。机を叩いた衝撃で山盛りに積まれた料理のタワーが今にも崩れそうだったので急いで口に運ぶ。

 

「貴様…部隊長である私を無視するとはいい度胸だな。それでも誇りある我が師団の団員か!」

 

 夢中で料理を食べていたらヒューベルト君を無視していると思われたらしい。いや無視してるわけじゃないって。ヤバ、ビックリしたら食べ物が喉に詰まった。水、水。

 

 どうもヒューベルト君は俺が訓練をサボっていると勘違いしているようだ。もちろん、普通の騎士団の団員は訓練を受けなくてはいけないが、聖文字付きの人は特殊な人が多いので、訓練とかも割と自由にしててもいいというルールが他ならぬ陛下によって作られているはずだ。部隊長やってるヒューベルト君が知らないはずないと思うんだけど…

 

「クッ…神聖弓もロクに作れない貴様のような猿がなぜ……」

 

 うぐっ、それを言われると耳が痛い。

 そう、光の騎士団として滅却師の末席を埋めているものの、俺には滅却師の才能があんまりなかった。光の帝国に入って数年は経ったものの、滅却師の象徴でもある神聖弓も未だにヘボいのしか作れない。うぅ…血装だったらいい線いってるのに…。すいません部隊長、どうかこんな僕は捨て置いて、他の人たちを訓練してあげてください……

 

「誇り高き我が部下たちを愚弄するとはもはや我慢ならん!今すぐその性根を叩き直してやる!」

 

 どうもヒューベルト君は俺の態度がお気に召さなかったらしく今から訓練だそうだ。うぬぬ、やるしかあるまいか。

 




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