手に入る前はあんなにも執着していたものが、手に入った途端に興味が薄れる。
そんな経験、誰しも一度はあるのではないだろうか。
隣の芝生は青いとはよく言ったもので、人は慢性的に何かを羨んで生きていると言っていい。
外見を羨み、性格を羨み、才能を羨み、身分を羨み、境遇を羨み、時には自分自身の過ぎ去った過去すら羨み―――そして、この世界では個性を羨む。
転生、だとか。
チート、だとか。
漫画やアニメの世界、だとか。
ライトノベル等各種媒体で腐る程散見されるありふれた題目、ジャンル、若しくは憧れ。
現実にはあり得ないであろうそんな眉唾の話が、然して実際にこの身に起こっている。
ふざけた話だ。
平穏と退屈という土台の上に立っているからこその意見だろう。
刃物なんて包丁が精々の一般人が特異な能力を貰ったとして、いきなり殺し合いを始められるかと言われればその殆どは否である。
そういう意味では、能力を貰って即座に異世界でブイブイ言わせている様な野郎共はそこらの凡百とは違う、類稀なる才能を持ち合わせた
時計を見る。
針は丁度2時を指した辺りで止まっている。
蛍光灯に照らされていても尚、薄暗い。
どこか病院を思わせる造りになっているこの建物内には、人の気配を感じない。
実際、俺が目覚めた時にはもう誰も居なかったのだろう。
生きている人間は、という注釈が付くが。
寂れた研究室。
ドアを開けると同時に異臭が鼻を突くが、無視して中に入る。
思っていたより広い。
丁度学校の教室と同じ程度の広さだ。
配置された機器と大量のモニターだけは手入れが行き届いており、部屋の隅に無造作に積まれた旧型と思わしきものは埃を被っている。
足元に転がる、おおよそゾンビとスケルトンの中間といった有様の、人間の成れの果てを避ける。
恐らく、この研究施設に最後に残っていたであろう人物。
服装及び持っていた資料から推察するに、博士だったのではないだろうか。
誰にも看取られずひっそりと死んだ肉塊に、暫し手を合わせる。
南無阿弥陀仏。
自己満足、なのだろう。
だが、こういう些細な行為によって罪悪感という名の精神的負担を軽減するのは必要な事でもある。
それも気休めと言われればそれまでかもしれないが。
手に入れた資料の内容を頭の中で反芻する。
暫しの間、考える。
夢か現かも分からない様なこの世界で。
死ぬ以前よりも遥かに危険が身近になったこの世界で。
近い未来に終わりがやってくるこの世界で。
創作の写身でしかないこの世界で。
考えて。
考えて。
考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて―――
「よし」
目標は決まった。
挑戦する価値は十分にあるだろう。
「やってみるか」
きっとそれは、この歪んだ世界で、俺にしか成せない事の筈だから。
―――
明確に目的を定めておく事は良い事だ。
何も分からないまま、只々闇雲に走るよりは余程良い。
さて。
良い感じに決意も固めたところで、再度資料に目を落とす。
先程確認した情報。
他に気になる事も多々あったが、先ずは自身についてだろう。
曰く、ソレは数十年掛けて秘密裏に造られた人造生物の最高傑作。
曰く、ソレは自由自在に動く粘性生物。
曰く、ソレは魔王も英雄も、悉く全てを下す為に造られた。
曰く、ソレは喰らった人間の全てを奪う事が出来る。
曰く、ソレの名は■■■■■■と云う。
「ふむ」
やたら難解な言い回しで書かれたそれを判りやすく纏めると、こんな感じだろうか。
なんというか、あれだ。
転生したらスライムだった件、みたいな。
いや、もっと適切な例えがあるのかもしれないが、現状を一言で表すなら、それがしっくりくるのではないだろうか。
そしてこの博士、どうやら全盛期のオールマイトと梅干しの激突を間近で目撃してしまい、その異次元の戦闘に魅入られて
随分と迷惑な奴である。
世界線が違えば夏映画とかのボス枠になっていたのだろうか。
ちょっと有り得そうで嫌だ。
まぁ、そのおかげで俺が生まれた訳だから、その点は感謝か。
掠れた名称部分の文字。
その爛れた筆跡の跡から俺に付けられた名になんとなく当たりを付け、それを鼻で笑う。
まぁ、半分は願掛けの様なものだろう。
ただ、そんな生き物はきっとこの世に存在しない。
生きている以上、何かしらの欠陥は生まれるものだ。
運動、食事、呼吸、睡眠、繁殖、思考―――いや、そもそも
これから生きていかねばならないこの世界の事を考えると、余計にそう思える。
でも、だからこそ―――
・・・。
話を戻そう。
件のスライム物語と似ているとは言ったが、間違いなく違う部分も当たり前だがある。
一番の明確な違いは、俺が転生者か否か、という部分。
俺は転生者ではない。
まだ赤児の転生者を丸々喰らい、その記憶と個性と人格とその他諸々を奪っただけの一般人造生物に過ぎない。
今ある「俺」という自我も、転生者の人格を
故に性格が少し変わっている、というか
俺にとっての
それは御免被る。
俺は転生者ではない。
だから好きにやらせてもらう。
「原作」の事を考えると、残された時間は長いようで短いのかもしれないが。
まぁ、着実にやっていこう。
辿り着く場所が決まっているのなら、後はもう、進むだけだ。
―――
人類の総人口の約八割が何らかの特異体質であるとされる、超常の時代。
混乱の世代、嵐のような時が過ぎ去り、人々は異能を片手に日常を闊歩する。
然し、それも次の嵐の前の静けさ、束の間の平穏に過ぎない。
時計の針は平等に進む。
魔王と英雄達の闘いは、未だ終わっていないのだ。
それは謂わば、「次代」を探し、育てる為の
何世代にも渡る闘いに終止符が打たれる、激動の年が近付いていた。
・転生したと思ったらそうじゃなかったしそもそも人ですらなかった俺はどう生きるかマン
君たちはどう生きるか。
自身に問い掛ける事で間接的に読者にも問い掛けているのです...
嘘です。はい。
オリ主。喰った乳児が偶然にも転生者だったせいでしっかりした自我が生えてきちゃった一般通過人造スライム。餌くれるはずの博士が死んでるので本来ならこいつも餌不足でそのうち死んでた。
・急に生えてきたオールマイトともAFOとも全く関係無い野良天才博士。
元凶。二人の戦い目撃して脳焼かれた人。
研究に没頭し過ぎてオリ主完成直後に睡眠不足と栄養失調で倒れてそのまま天に召された。
迷惑度合いならダークマイトさんと同等かもしれない。知らんけど。
・元主人公(故)
特典貰って転生したからといって雄英行くまでなんだかんだ死なないと思ったら大間違いなんじゃよ新一...
転生できると聞いて内心ウッキウキだったけど寝てる間に食われた哀れな奴。
孤児院前に捨てられていた所を職員に見つかる前に博士に攫われた。記念すべきオリ主の最初の餌にして人格の型。
この話を投稿する数時間前まではこいつ主人公で書いてたから元主人公なのは間違いないのだ。どうしてこうなったのだ...
そんなこんなで特にこの後の展開とか何も考えずに思いついた事を書き連ねるだけのSSですが、そんなのでも良ければ次回も生暖かい目で見てやって下さい。