青髪の少女は鏡の戦士   作:カΩズくん

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1話

「えー、なにそれ!?」

 

 ファーストフード店にて、青髪の少女、美樹さやかは素っ頓狂な声を上げた。

 

「あの後、あいつにそんなこと言われたの?」

 

「やっぱり変わった子ですのね……」

 

 さやかの言葉に緑髪の少女、志筑仁美も同意する。

 そんな二人に桃色の少女、鹿目まどかは苦笑いを零す。

 

「わけわからない……よね」

 

「文武両道にて才色兼備……かと思えば実はサイコな電波さん……かーっ、どこまでキャラ建てすりゃあ気が済むんだ、あの転校生は!?萌か?そこが萌えなのか?」

 

 さやかは天井を見上げながら叫び出す。

 三人の話題に上がっているのは通っている中学校に転校してきた転校生についてだ。

 黒髪の美少女、運動をさせれば高跳びの県内記録を出し、勉強では数学で難問を解いてみせる。

 更にミステリアスな雰囲気も合わさってその容姿は美少女といって差し支えないほどだ。

 だがそんな彼女はまどかに対してまるで訳の分からない、傍から見れば素っ頓狂な問いかけを投げ掛ける。

 まるで中二病、そんな人種という印象をさやかは受けていた。

 

「まどかさんは本当に暁美さんとは初対面ですの?」

 

「う、うん。常識的にはそうなんだけど……」

 

「なにそれ?非常識なとこで心当たりがあると?」

 

「あっ……えぇっと……」

 

 そう言うとまどかは自身が見た夢のことを話し始める。

 崩壊した街の中で怪物と戦う少女の夢……その夢の中に出てきたのが転校生、つまりその暁美ほむらその人であったのだ。

 

「「はははははははっ!」」

 

「わ、笑うなんて酷いよぉ」

 

 思わず声を大にして笑ってしまうさやかと仁美に対してまどかは恥ずかしそうに頬を赤くする。

 恥ずかしそうに身を縮めるまどかにさやかは涙を拭きながら彼女の肩をポンポン叩く。

 

「すげー、まどかもキャラが立ち始めたよ。つまりなにか?まどかとあいつは夢の中で逢ったってこと?あーもう決まりだ!それ前世の因果だわ、あんたたち時空を超えて巡り会った運命の仲間なんだわ!」

 

「私真剣に悩んでるのに……」

 

 まどかは小さく抗議をするがさやかは自分の思い付いた考えを笑いながら話していく。

 そんな二人に仁美が間に入る。

 

「でもまどかさん。こういう可能性もありますわ。もしかしたら本当は暁美さんと会ったことがあるのかもしれませんわ」

 

「え?」

 

「まどかさん自身は覚えていないつもりでも深層心理には彼女の印象が残っていてそれが夢の中に出てきたのかもしれません」

 

「それ出来すぎじゃない?どんな偶然よ」

 

「あら、前世の因果よりは筋が通った説明ですわ」

 

 仁美の考えにさやかはツッコむがすました顔で彼女がいる。

 話がどんどん現実離れをしていきそうになった時、仁美が腕時計が指す時間に気付くと鞄を持ち立ち上がる。

 

「ごめんなさい、お先に失礼しますわ」

 

「今日はピアノ?日本舞踊?」

 

 さやかは帰ろうとする仁美に尋ねる。

 

「お茶のお稽古ですの。もうすぐ受験だっているのにいつまで続けさせられるのか……」

 

「うはぁ、小市民に生まれて良かったわぁ……」

 

 仁美の言葉にさやかはため息交じりに漏らす。

 お嬢様である仁美は様々な習い事をしていてと毎日忙しそうにしている。

 

「私達も行こうか」

 

 まどかはさやかにそう声を掛ける。

 さやかはそれにおう、と応えると恥ずかしそうに尋ねる。

 

「あ、まどか。帰りにCD屋寄ってもいい?」

 

「いいよ。また上条君?」

 

「へへっ、まあね」

 

 照れくさそうにさやかは笑う。

 そのまままどかとさやかはフードコートを出てショッピングモールの二階にあるCDショップに向かう。

 二階に向かうエレベーターに中でまどかはさやかに話し掛ける。

 

「さやかちゃんは偉いね」

 

「なんだよいきなりー」

 

「だって、いつも自分のお小遣いを上条君の為に使って……」

 

 まどかの言葉にさやかは首を振るう。

 

「そんなこと……ないよ……私は……」

 

 無言がエレベーターの中を支配する。

 二人ともなんて言葉を口から出せばいいのかわからないのだ。

 それは上条君、上条恭介というさやかの幼馴染のことを考えていたからだ。

 

 上条恭介は将来有望な天才ピアニストの卵であった。

 しかし中学二年に上がった今年の春、彼はある事件に巻き込まれることになる。

 浅倉威、様々な暴力事件殺人事件を引き起こした凶悪犯罪者、上条はそんな犯罪者に襲われた。

 上条は全身をボロボロにされ、殺されなかったものの長期の入院を余儀なくされる程の状態で発見された。

 しかし、彼の一番の不幸は浅倉に襲われ、入院を余儀なくされる……そんなことではなかった。

 浅倉は天才ピアニストの左手を再起不可能な程に破壊したのだ。

 左手の喪失、とまではいかなかったが少なくとも完治したとしてもバイオリンの音を再度奏でることなど叶わない……そんな一生残る傷を残していった。

 

「んじゃ、まどかは好きなところ見てて」

 

 CD店に着くとさやかはまどかと別れ、クラシックコーナーに向かう。

 そしてなんとなくCDを物色しながら考える。

 右手はスカートのポケットに伸ばされ、その中には白いカードデッキがあった。

 

「浅倉……」

 

 思わずさやかはカードデッキを握る手に力が入る。

 浅倉威、その男の顔を思い出すだけでさやかの心にはどす黒い何かに満たされる。

 復讐、さやかにとって浅倉はまさに復讐の相手、上条の仇であった。

 

『俺は……俺は超人に……!!!』

 

「っ……!?」

 

 胃の中身が喉元までせり上がり、思わず右手を口元に当てる。

 脂汗が全身から吹き出し、めまいもする。

 倒れなかったのはこの感覚が初めてではなかったからだ。

 いや……日常と言ってもよかった。

 それはさやかが選んだ道、罪とも言っていい、。

 

 同族嫌悪、憎むべき相手である浅倉と同類の人間であるという意識がさやかを襲うのだ。

 

「っ!?」

 

 独特な耳鳴りがさやかの頭の中で響き渡る。

 それはさやかにとって慣れた耳鳴りであった。

 

「行かないと……!」

 

 さやかは耳鳴りのなる方へと駆ける。

 ショッピングモールの奥へと走り、寂しい倉庫へと入っていく。

 非常階段を上り、一番上の階へと上がる。

 扉を開け、中に入るとそこにはまどかと……黒とグレーの服を着た転校生、暁美ほむらがそこにいた。

 

「なんで……」

 

 思わずそう言葉が漏れた。

 当たり前だ、全く予想していなかった人物がそこにいるのだ。

 地面にへたり込むまどか、そして彼女に詰め寄るほむら……明らかに異常な状況だ。

 

「まどか!!!」

 

 状況を認識してさやかは迷いなくほむらにタックルを繰り出す。

 ほむら自身も全くな想定外だったようでさやかのタックルを驚いた様子で受けて吹き飛ばされる。

 

「こっち!」

 

 その一瞬の隙をついてさやかはまどかの手を取り走り出す。

 まどかの手の中には何か白い小動物のようなものが抱きかかえられていた。

 

「何よあいつ!今度はコスプレに通り魔かよ!それとその……何?ぬいぐるみ……じゃないよね?生き物!?」

 

「わかんない……わかんないけど、この子を助けなきゃ!」

 

 まどかはそう叫ぶ。

 そう彼女が言うならいいだろうとさやかは思う。

 それよりも……さやかの頭に響く耳鳴りはどんどん大きくなっていた。

 彼女にとってはそれの方が焦りを生み出している。

 早くこの場から離れなければ、そう考えとにかく非常口を目指し走っていく。

 走っているはずなのだ。

 

「さやかちゃん、こっちでいいのかな?」

 

「合ってる……はずだけど」

 

 地面を蹴る感触に違和感を覚えたのはいつからだろうか。

 僅かに弾力のある地面は明らかに先程いたはずの倉庫の床ではない。

 いや、周りの景色も歪んでいる。

 まるで世界が崩壊してしまったようにドロドロになり、黒い蝶が舞う。

 

「何よ……これ……」

 

 さやかはそう零した。

 困惑はある、しかし目の前の現実離れした景色に対しての混乱はなかった。

 何故なら肌から伝わるこの空気感、それはさやかにとって慣れ親しんだものであったからだ。

 

「やだ……やだよ……これ、何?」

 

 まどかがさやかに身を寄せる。

 それに気づき、思わずポケットの中のカードデッキを取り出そうとするがそれが外に出される寸前で手が止まる。

 

 本当にまどかに自分の持っている力を見せていいのか……?

 

 既にさやかの手は真っ白とは言えない。

 そして普通の少女であるさやかがそうなってしまったのは、手に持つ白いカードデッキの力の為であった。

 さやかの望みを叶えるならば必要な……しかしもしこの力を見せてしまえば心優しい友人はどう思うのだろうか……

 少なくともいい顔はしないはずだ。

 

 思わず躊躇してしまった。

 そしてその隙にさやかとまどかの周りには異形の何か達が囲んでいた。

 

「四の五の言ってる暇はないか……!」

 

 何故かはわからないが望めばカードデッキは力をこの場ですぐに与えてくれるだろうことは確信としてあった。

 で、あるならばこの危機的状況を打破するためには手段は選んではいられない。

 どこに行っても、戦わなければ生き残れない。

 

「変」

 

 身、そうして仮面ライダーファムに変身しようとしたとき二人の周りは眩く照らされ、光が周りを包み込んだ。

 異形の何かをその光は弾き、二人の身を守ってくれているのだ。

 

「危なかったわね。でももう大丈夫」

 

 後ろから声が聞こえる。

 声のする方を見るとそこには二人と同じ中学校の制服を身に纏う黄色い髪を二つに結んだ少女がそこにいた。

 

「キュゥべいを助けてくれたのね。ありがとう、この子は大切なお友達なの」

 

 少女は二人に微笑み掛ける。

 

「私、呼ばれたんです。頭の中に直接、この子の声が……」

 

 まどかは彼女にそう答えた。

 

「なるほどね。その制服、あなたたちも見滝原の生徒みたいね。二年生?」

 

「は、はい……あの、あなたは」

 

 さやかは一層カードデッキを持つ手に力を入れる。

 見ただけでわかる、目の前の少女は何かしらを知っている。

 故に油断することは出来ない。

 もしかしたらさやかの敵であるかもしれないのだから……仮にその時は、隣にいる友人だけは何とかして守らなくてはならない。

 

「そうそう、自己紹介をしないとね。でもその前に……ちょっと一仕事片付けちゃっていいかしら」

 

 そう言うと同時に少女は両手に待つ宝石を差し出す。

 すると宝石からあふれ出す光は少女の身体を包み込み彼女の姿を変えていく。

 黄色を基調とした、まるで魔法少女というような姿に少女は変わっていた。

 そして空中に大量の銃を出現させ、それから放たれる弾丸の豪雨が二人のまどかとさやかの周りを襲う。

 

「す、すごい……」

 

「も、戻った……」

 

 まどかとさやかは各々小さく呟く。

 少女が異形達を倒したことで周りの空間が元に戻ったのだ。

 だが、空間が戻っても彼女は臨戦態勢を崩さない。

 

「魔女は逃げたわ」

 

 彼女の視線の先、そこにはほむらがいた。

 

「仕留めたいならすぐ追いかけなさい、今回はあなたに譲ってあげるわ」

 

「……私が用があるのは」

 

「呑み込みが悪いわね。見逃してあげるって言ってるの。……お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいと思わない?」

 

 その言葉を受けてほむらは苦虫を潰したように顔を顰める。

 だがこの時の彼女にやれることはなく、彼女は三人の前から姿を消すことしかできなかった。

 

「ありがとうマミ、助かったよ」

 

「お礼はこの子達に、私は通りすがっただけだから」

 

 先程までまどかの腕の中にいた白い小動物が少女、マミの手から発される光を受け、傷が塞がっていく。

 そしてその小動物はマミにそう言われるとまどかとさやかの方にその紅い瞳を映す。

 

「どうもありがとう!僕の名前はキュゥべい」

 

 そうその小動物、キュゥべえは二人に話し掛ける。

 動物が自分に日本語で話しかけてくるのはおかしいと思いつつ、その想いをさやかは飲み込んだ。

 それよりも、いやな予感がしたからだ。

 

「キュゥべえ……?あなたが、私を呼んだの?」

 

「そうだよ、鹿目まどか。僕、君にお願いがあって来たんだ」

 

「お、お願い?」

 

 キュゥべえは切実にまどかに訴える。

 まどかはキュゥべえに聞かされたお願い、という言葉を反芻した。

 その様子を見て、さやかはこのやりとりを遮りたくなった。

 思わずこの場でファムに変身し、目の前のキュゥべえを八つ裂きにしてやろうかという考えが溶離を過る。

 

「僕と契約して、魔法少女になってよ!」

 

 それはまるで、さやかが仮面ライダーになった時のことと酷使しているように感じれらた。

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