黒服になったのでキヴォトスが滅びないようどうにかこうにかする話。   作:しゃけ_缶

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ところどころ忘れてる部分があってストーリーを見直しながら書いてるので初投稿です。


敵に捕まってるはずの人が暴れまわってたら当然混乱するよね

『貴様……これはいったいどういうつもりだ!』

 

 耳をつんざくような怒号が先ほどまで静寂に包まれていた実験室に響き渡る。

 あまりの声量に頭が痛くなった黒服は思わず耳から──耳があるのかないのかは不明だがとにかく耳があるであろう場所からスマホを遠ざけた。

 

「どういうつもり……とは?」

『とぼけるな! なぜ小鳥遊ホシノがここにきている! アビドスの生徒会がまだ機能してるとはどういうことだ!?』

 

 向こうは相当な修羅場になっているらしく、電話の向こうでは銃撃音と爆発音が鳴り響いていた。どうやらホシノが盛大に暴れまわっているらしい。

 一人でそこまで暴れまわられるとは……と黒服は先ほどまで彼女に銃を突きつけられていたことを思い出し胃が痛くなった。

 通話相手であるカイザーPMC理事も当然その状況に焦りを抱いているらしい。なぜホシノを解放したのか、生徒会は事実上の解散になったのではないのかと怒鳴り散らしながらまくしたてた。

 

「ふむ、そのことですか。私としても彼女を解放するのは遺憾でしたが……そうも言っていられない状況になりました」

『御託はいい! さっさと説明をしろ!』

「簡単に説明しますと──私たちは嵌められたという事です」

『な……ッ!?』

 

 退学届は提出していたみたいだが、それは受理されてはいなかった。受理されていないのだから当然契約は無効となる。そのことを利用して、こちらを生徒を誘拐した犯罪者に仕立て上げようとするとは思ってもいなかった。所詮子供だと相手を軽んじて、一杯食わされた。

 何食わぬ顔をしながら、黒服はそう告げた。

 もちろんそうなるように誘導したのは黒服だ。二枚舌もいいところである。ユメがこの場にいたならば大人の汚さに顔を盛大にしかめていたことだろう。

 

「私はこの件からは手を引きます。貴方も早く対策委員会を解放したほうが賢明かと。……連邦生徒会を敵に回したくはないでしょう?」

 

 このことが連邦生徒会の耳に入れば、彼女たちの重い腰も上げざるを得なくなる。

 大きな事件でもなければ基本的に介入することのない彼女たちだが、生徒の危機とあらば話は別だ。知らぬ存ぜぬを貫こうとしても、耳に入ってしまった以上は生徒を見捨ててしまえば信用問題になりうる。介入しないという選択肢はなくなる。

 彼女たちに介入されてしまえば、PMC理事は破滅の道をたどることになるだろう。

 だからこそ、連邦生徒会がこのことを嗅ぎつける前に手を切るのが今できる最善の行動なのだ。

 

『金も時間も膨大にかかったというのに……撤退するしかないということか。クソッ!』

 

 PMC理事も馬鹿ではないのでそれは理解している。

 正当性がこちら側からなくなってしまった以上、これ以上続ければ自分の首を絞めることになる。現状でも責任問題から免れることはできないだろうがこのまま続けて再起不能になるよりははるかにマシというものだ。

 とはいえ理解してはいても納得はできない。激情のまま物に八つ当たりでもしているのか電話先からは何かを蹴り飛ばしたような音が聞こえ、あまりの音に黒服は再度スマホから頭を離した。

 そうしている間にもどうやら話すことはなくなったようで、ブツっという音を最後に通話は切断されてしまった。

 

「……なんとか収拾はつきましたね」

 

 そうぼやいて、黒服はこの日二桁回目の溜息を吐いた。今日は特に物事が上手く運ばない日だった。

 入念に準備をしたとはいえ、一歩間違えれば破滅の危機に陥る現状に胃がキリキリと痛むような錯覚を覚える。

 

「ホシノさんは本当にうまくやってくれました……」

 

 とはいえ捨てる神あれば拾う神あり。悪いことばかりだったが良いこともあった。

 生徒会が機能していることをPMC理事に伝えたのは彼女だろう。彼の慌てようからして、誘拐犯に仕立て上げるぞと脅迫でもしたのかもしれない。

 こちらの意図を汲んでくれたようでなによりと、黒服は彼女への評価を上方修正する。

 

 最悪ホシノが捕まってもリカバリーできた。連邦生徒会が動くことを恐れている以上PMC理事は彼女らを解放するしか選択肢はないのだ。

 それならば、彼女にやらせなくてもどうにかなったのではないかと思うだろうが、そんなことはない。あくまであそこで彼女が止めることに意味がある。

 協力したわけじゃない。あの状況では逃がすしかなかった。今連邦生徒会に目を付けられるのは避けなければならない。悩みの種暫定一位(ゲマトリア)にそんな建前を作るために彼女を単騎で突っ込ませたのだ。鬼畜の所業。

 

 これでアビドス対策委員会の話は終わり。これから始まるのは彼女らのエピローグだ。

 この先で起こるであろう事件からはいったん目を逸らしつつ、なんとかなってよかったぁと黒服は肩の力を抜いた。

 

 

 

 

「今回は本当に骨が折れました。……これ以上は過労で死ぬ」

 

 頼むから世界の危機はもう少し余裕を持ったスケジュールで来てくれ。黒服は思わず自分の口調を忘れるほど切実に願った。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 事の大きさに対してこの物語はあまりにもあっけない終幕となった。

 拘束されて軍用トラックでどこかに連れ去られそうになっていた対策委員会は、なにやら焦った様子のカイザー兵によって突然解放された。そのままカイザー兵は彼女らを砂漠のど真ん中に放置したまま尻尾を巻いて逃げて行ってしまった。

 呆気にとられているところに、突然ホシノが乱入。逃げ遅れたカイザー兵をなぎ倒し、あたりを地獄絵図に変えながら突き進んできた。

 突然の展開に対策委員会の表情は絶望から困惑に変わり、やがて思考を放棄した。助けようとしていた対象が何故か鬼のような形相で暴れながら出向いて来たのだから無理もない。

 

 とにもかくにも、危機を脱することができたらしい。彼女たちはとりあえずアビドス高等学校の校舎へと向かうことにした。

 

「カイザーを出し抜くなんて。やるね、ホシノ先輩」

「そういうことならそうとちゃんと言いなさいよ!」

「心配したんですからね……本当に」

「うへぇ、そういうつもりじゃあなかったんだけどなあ……」

 

 よくも騙してくれたな、などと数分前に聞いたPMC理事の負け惜しみともいえる恨み節を思い出しながら、彼女らは口々にホシノへと文句を垂れた。砂狼シロコだけはなにやら尊敬のまなざしを向けているみたいだが。

 当のホシノは本当に偶然なんだよ~と、ちょっと困った様子だ。

 とはいえまさか黒幕に助けに行ってこいと言われて解放された、なんて言っても信じられないだろうから、あまり反論できずにいるのだが。

 ああ、黒幕といえば──

 

 ──本当にどういうつもりなのだろう。

 

 ホシノは黒服の一貫しない行動に疑問を抱いていた。

 解放されてからというもの、ホシノは罠であるかもしれないという事に最大限の警戒を払いつつ対策委員会の救出に向かった。しかしながら道中に罠などなく救出はあっけなく終わっってしまった。

 黒服から受け取った『アビドス対策委員会が捕らえられているトラックの位置情報』が嘘で、罠がある可能性も考慮した。いや、そもそも対策委員会が捕まったことも嘘かもしれない。

 そう考えたホシノはとりあえず近くにいたPMC兵を締め上げて尋問した。

 その結果分かったのは彼が嘘をついていなかったという事だけだ。

 だからこそ分からない。自分が目的だったのではないのか。一体何を考えている。

 

 ……まあ、それはまた会った時に問いただせばいいか。

 

「まさか退学したフリをして誘拐犯に仕立て上げるなんて。さすがです☆」

「それはそれとして心配させたことは後でお説教」

「当り前よ! 本ッ当に心配したんだから!」

 

 思考にふけっているうちになにやら自分への処遇が決まっていたらしい。ホシノはこれから受けるであろう後輩たちからのお説教を想像して、うげっと顔をしかめた。

 勘弁してほしいと伝えるが、どうやらすでに決定事項らしく、覆る事がないことを悟ったホシノは早々に説得を諦めた。

 

「それにしても、よく一人で私たちのところまで来られたわね。PMCの兵士が山ほどいたと思うんだけど」

「あ~、ちょっと協力してくれた人がいたんだ」

「?」

「今連絡するからちょっとまっててね~」

 

 そう言ってホシノはスマホを取り出した。そのまま誰かに連絡をつなげ、全員に聞こえるようスピーカーモードにした。

 通話は1コールで繋がった。

 

「この子が協力者ちゃんだよ~」

『あ、えと。わ、私です。あはは……』

「あ、ヒフ──」

『ち、違います! ヒフミじゃなくてファウストです! この件に関してトリニティは一切関与してません!』

「ご自分で名前も所属も言っちゃってますね☆」

『あっ』

 

 果たして協力者は阿慈谷(あじたに)ヒフミだった。

 話を聞くと、援護しようとして出向いたはいいがすでに対策委員会がカイザーに捕まっていて、途方に暮れていたところで暴れまわっていたホシノと偶然合流できたらしい。

 それから彼女たちは協力して対策委員会を救出することになった。

 ヒフミの援護射撃のおかげでなんとかあそこまでたどり着けたとホシノが疲れたような顔でこぼす。

 

 それを聞いたシロコ達は思わぬ協力者がいたことに驚きつつも、ヒフミに感謝を伝えた。

 そうして事のあらましをヒフミに伝え、最後にもう一度ありがとうを伝え通話を切る。

 

「とにかく! これで一件落着ッ! ってことでいいのよね?」

「ん。借金は減ってないけど」

「土地の所有権も依然としてカイザーのものですね……」

 

 シロコとアヤネの言葉を聞いたセリカは「何も解決してないじゃない!」と頭を抱えた。

 

 

 ……そうだ。まだ解決じゃない。わからないことも腑に落ちないことも、たくさんある。

 

『都合が合えば明日の夜にでも話しましょう』

 

 連絡先を教えたわけでもないのにいつの間にか黒服から来ていたメッセージを思い出し、ホシノはみんなに気づかれないよう顔をしかめた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

「そういえば、まだみんなに伝えてなかったことがあったなあ」

「?」

「うへ、ちょっと恥ずかしいけど……うん、これは言わなくちゃいけないよね」

 

 

 ──ただいま。




 戦闘シーンを長引かせてもダレるからカットだカット!

 アビドス対策委員会編は黒幕が黒服自身だから、原作からそれることを決意してしまえば解決は簡単だと思うんですよね。
 黒服君にホシノを反転させる気は当然ないので。

 ただし次からは地獄な模様。がんばれがんばれ♡



 さすがに名言を潰すのは罪悪感がマッハで命に関わるのでおじさんのただいまには急遽生き返ってもらいました。
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