黒服になったのでキヴォトスが滅びないようどうにかこうにかする話。   作:しゃけ_缶

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解説シーンを追記。本当は次の話に入れる予定だったけどまとまりが悪いので一緒にぶちこんで再投稿です。

リアルがちょっと忙しくなってきたのでちょっとおやすみします。


vol2.機械仕掛けの花のパヴァーヌ編
ん、RTAなら会話スキップは基本のキ(追記)


 ──ミレニアムサイエンスクール。

 歴史が浅いにもかかわらず、トリニティ、ゲヘナと合わせてキヴォトス三大学園の一角を担う巨大な学園。

 曰く「最新鋭」。曰く「最先端」。そんな名を欲しいがままにする学校にて──、

 

「──貴女が神かッ!?」

 

 ゲーム開発部。なにやら複雑な事情を抱えているらしい。そんな部活のメンバーである桃色の少女にホシノは崇め奉られていた。

 あまりに必死で大袈裟な態度に、ホシノはちょっと引いていた。

 

「急に変なしゃべり方しないでよ……」

「うへ、おじさんはそんな大層なものじゃないよ~」

「……おじさん?」

 

 なんかすごいキャラ付け(おじさんキャラ)の人が来たーッ!? と叫び、自分もなにかキャラ付けをした方がいいのではないかと悩み始める桃色の少女──シナリオ担当の才羽(さいば)モモイと、そんな彼女を諫める緑色の少女──グラフィック担当の才羽ミドリ。

 

「どんなキャラ付けが印象的かなあ……うぅん……」

「……とにかく!! 規定人数を満たせてなかったので本当に助かりました」

 

 このまま放置すると、姉が勇者の腹違いの親友(前世は母)が闇落ちした死の魔王デスモモイとなって世界を滅ぼしてしまうことになる。そう危惧したミドリは、コホンと咳払いし話を進めることにした。

 

「改めて歓迎します。ようこそゲーム開発部へ、ホシノ先輩」

「よろしくね~」

「へへっ、これで廃部の危機は免れた!!」

「……今は良くても一月後にはまた逆戻りだよ。現実見ようよ、お姉ちゃん……」

「うっ……部員探しはまだまだ続行かあ」

 

 ミドリの言葉にクリティカルダメージを受けたモモイは、「そんな現実は聞きたくなかったーッ!」と天井に突き上げたこぶしをだらんと垂れ下げてイヤイヤと頭を横に振る。

 ホシノはそんな彼女の様子に若干の微笑ましさを覚えて、そして同時に、

 

 ──思ってたよりも、普通の子たちだなあ。

 

 そんなことを考えて、ここに来たいきさつを思い出す。

 

 ユメとホシノのミレニアムへの短期留学。それは『ほとんど活動実績のないアビドス生徒会の研修』を目的としたものである。

 要は「お前ら一年以上活動してなかったんだから、うち(セミナー)で経験積んでけよ。機密にかかわることはさせられないけど雑用くらいならさせてやるから」というものだ。

 ……いや、自分がここにいる理由を思うに、それは建前なのだろうけど。

 

 セミナーに研修に向かうのは、どうやらユメだけらしい。自分はあくまで『生徒会所属』であるからおまけで留学させられただけで……というのもどうせ建前だ。

 留学の前に、彼女は黒服から今後の動向について指示を受けている。彼女はそれを回想し──

 

黒服『留学期間中、貴女にはゲーム開発部に所属してもらいます』

ホシノ『????????????』

 

 ──思い出したことをちょっとだけ後悔した。

 ゲーム開発部に入ってどうしろというのだ。それはキヴォトスの危機と何か関係あるのか。

 彼女たちがこれから起きるであろう事件のキーパーソンになる、黒服はそう言っていたがあまり納得できそうにもない。

 ……自分の代わりになるアビドスの警備やらなにやら用意してたようなので、まったくのウソというわけではないのだろうけど。

 

 いや、別にここに入って世界を救うだなんて与太話を信じたわけではない。騙すにしろ、もう少し信憑性の伴った話をして欲しいということだ。

 

 『戦力増強と、万が一の時にアリスを抜けさせても廃部にされないための保険。あとできれば仲良くなってきてくれると嬉しい』なんて黒服の思惑に、ホシノは当然気づいてもいない。

 

「それにしても、私たち以外にもレトロゲームに興味がある人っていたんですね……」

「……おじさんくらいの歳になるとね、流行りのモノについていけなくなっちゃうんだよねぇ」

「かなり消極的な理由だった!?」

 

 ガーンと衝撃を受けたような顔でモモイがそう叫ぶが、当のホシノは涼しい顔である。

 おじさんと自称するホシノにいやいやほぼ歳は変わらないですよねとツッコもうとしたが、なんだか触れてはいけないような気がしてミドリは深く追求するのをやめた。

 閑話休題(それはさておき)

 しばらく話していると、ゲーム開発部が廃部の危機に陥った経緯が話題に上る。

 

 話を聞くに、どうやら部員数も活動実績も足りない彼女たちはこのままだと部室も部費も取り上げられる上に廃部にされるらしく。

 口では本気で活動してると言う彼女たちに、一体どんな活動をしているのか尋ねる。

 資金調達のために学校の敷地内にカジノを作ったり、レトロゲーを追い求めて古代史研究会を襲撃したり──、

 

「──それで、とうとう生徒会の魔王ユウカに最後通牒をたたきつけられちゃってさあ……」

「うへぇ……まあそれは仕方ないんじゃない?」

「えっ!?」

 

 心外だと言わんばかりのモモイの反応に、ホシノは苦笑を浮かべる。

 廃部の危機というものに若干の親近感が沸いたのは、果たして気のせいだったらしい。それは自業自得ってやつだと思う。

 普通の子たち、という評価も改める必要があるみたいだ。彼女たちはシロコと同類(やべえ奴)だ。

 かく言うホシノ自身もアビドスの廃校を免れるために生徒の拉致を計画したことはあるのだが。しかし本気で実行しようとしたわけではないので、彼女たちと比べれば情状酌量の余地はあるだろう。

 

「で、でも実績ならちゃんとあるよ! 私たちが開発した『テイルズ・サガ・クロニクル』はコンテストで受賞してるし!」

「──そうね」

 

 モモイがホシノに対して必死に言い訳の言葉を並べていると、ゲーム開発部の扉が開かれる。そこには菫色の髪をツーサイドアップにした、仁王立ちの少女が一人。

 モモイとミドリは、油の切れた機械のようにギギギと音をならしながら振り返る。

 

「クソゲー・オブ・ザ・イヤー大賞。それを実績だと言えるのなら、ね」

 

 生徒会四天王が一角。冷酷な算術使い、早瀬ユウカ降臨。

 

 

 ユウカの いてつくしせん!

 こうかは ばつぐんだ!

 モモイは めのまえが まっくらになった。

 

 ミドリは にげだした!

 しかし まおうからは にげられない……

 ミドリは しんでしまった!

 

 ホシノは パーティを りだつした。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 ──全部、結果で示す。

 

 『ミレニアムプライス』──どうやらそれぞれの部活が成果物を出して競うあうコンテストらしい──に自分たちの開発したゲームを出して、受賞する。

 ユウカとの激しい口論の末にモモイが決意の灯った顔でそう宣言したのを思い出し、なんだか大変なことに巻き込まれちゃったなあとホシノは苦笑する。

 ……冗談でもなんでもなく、とんでもなく面倒なことに巻き込まれている。

 

 現在位置は──『廃墟』。ミレニアム近郊の、謎の荒廃した領域。

 こちらを殺さんとばかりに攻撃してくる謎のロボットがどこからともなく湧いてくる、そんな物騒極まりない場所に来た目的はどうやらG.Bibleというものらしい。

 

 曰く、『読めば最高のゲームを作れるようになるゲームの聖書』。

 

 そんな胡散臭い話に光明を見出し、立ち入り禁止を破ってまでそれを手に入れたい。新たな戦力(ホシノ)を手に入れたモモイは、即行動を開始した。

 どうやらそれは正解で、ロボットたちは次々とホシノによって破壊されている。むしろこちらの活躍がなさ過ぎて、モモイとミドリが不完全燃焼を感じるくらいには順調だ。

 

 そうこうしているうちに一同は廃工場にたどり着いていた。 

 

「ええと、こっちだっけ?」

 

 そう疑問を漏らしながらモモイは地図を取り出し、逆さまにしたり裏返したりしながら首をひねってうんうん唸っている。

 右に曲がって、左に曲がって。歩けども歩けども、ずっと同じような光景しか目に入らない。

 

 そんなだから、彼女たちは少しずつ不安を感じてきていた。

 

「やっぱりそんな都合のいい話はないんじゃ……」

「……おじさんも、騙されてるだけだと思うな」

「ある! 絶対あるって! ……もしなかったら私たちの部、廃部だよ!? うわああああん!」

 

 梃子でも帰らない。その決意を胸に必死に柱にしがみつくモモイを見て、せめて目的地に着くまでは付き合ってあげようと考えを改めた。

 そんなこんなで目的地まで目前といったところまで到達した。

 道中ロボットもなにも襲撃しに来なかったので、思ったよりもあっさり来られた。

 

「それにしても、紙の地図なんてめずらしいね。ヴェリタスならデータで送ってきそうだけど……」

「ん……? 私()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 この場所について言及した明星ヒマリなる人物も詳細は知らない様子で。それならば姉が頼ったのはヴェリタスだろう。なにかのデータだとか、そういう探し物で頼るならあそこが最適だとミドリは考えた。

 今度文句言いに行ってやろうと思っていたが、モモイの素っ頓狂な声から察するにどうもヴェリタスが関与しているわけではないらしい。

 しかし、それなら一体姉にあらぬことを吹き込んだのは誰なのだろう。

 

「……それじゃあ、誰を頼ったのさ?」

 

 そんなミドリの疑問を、ホシノは代弁した。

 しかし彼女にはどうやらなにやら心当たりがあるらしく、少々苦い表情をしている。

 

「うーん……知らない人?」

「知らない人を頼ったの!? それでここまで来たの!? なんで!?」

「頼ったっていうか……教えてくれたっていうか……?」

 

 G.Bibleについて調べ廻っているときに偶々教えてくれたのが、その『知らない人』なる人物らしく。

 

 ──確かに廃部の危機だったけど、知らない人を信じてここまで来たんだ……

 確かに昔から姉は行動力のある人だったが。そのせいであのロボットたちに襲われることになったことに気づいたミドリは、このときばかりは姉の行動力の高さを恨んだ。

 

「確か──」

 

 モモイが、その『知らない人』について言及しようとして、

 ──突如、体が浮遊感に包まれた。

 

「え?」

「うわわわわっ!?」

「……うへぇ」

 

 数秒ほど思考が停止して、先ほどまで立っていた床が抜けていることに気づく。その先は、深い暗闇だった。

 自分が真っ逆さまに落ちていると認識した彼女たちは悲鳴を上げることしかできず、そうしているうちに地面にたたきつけられた。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

  ──黒服は、保険に保険を幾重にも重ね、それでも足りないとばかりにまた保険を重ねる男だ。

 よく言えば慎重。有体もなく言えば極度の臆病。

 そんな生存戦略によっていままで生き延びることのできた彼は、当然『機械仕掛けの花のパヴァーヌ編』についてもいろいろ考えを巡らせて対策を講じてきていた。

 

 干渉するにあたって、まずこの事件の絶対避けねばならない敗北条件を挙げるとするならば。

 アリスが破壊されること、ゲーム開発部が彼女と接触しないこと、そして彼女が『王女』と変貌すること。ほかにもいろいろあるが、現状リカバリができなくなるのはこの三つ。

 

 原作前に連邦生徒会長によってアリスを破壊される可能性については、連邦生徒会が廃墟をほぼ放置している状態であることから無いと判断。おそらく連邦生徒会長は『王女』によって引き起こされる一つの結末を知らない。

 王女への変貌については──アリスもケイも必要なのでケイを抹消するという選択肢は無しだ。これに関してはゲーム開発部に頑張ってもらうしかない。綱渡りをすることにはなるが、そのためのできうる限りの『保険』も施した。

 というわけで、最初の鬼門がゲーム開発部が確実にAL-1Sに接触するよう誘導することだ。

 

 この世界線では廃墟の立ち入り禁止は解除されていない。……どうやら危険であるからという理由以上のものはないみたいなのだが、それでモモイが尻込みして廃墟の探索に乗り出さない可能性がある。先生が来ないという可能性が高い以上──やはり尻に火をつける必要がある。

 

 というわけでだ。

 ゲーム開発部には、少しだけ『原作』以上の危機に陥ってもらった。廃部までの猶予が短くなるようにミレニアムの財政危機を少しだけ調整して。

 『原作』でも、廃部の危機とあらば危険な『廃墟』へと出向いた彼女のことだ。妹と仲良くなれたきっかけである部活というのは、これ以上ないほど大切なもの。急に廃部を言い渡されれば、当然躍起になって解決法を探し出す。躍起になるからこそ、当然視界は狭まる。

 そしてそれは、『一時的に部員が入った』程度では治るわけもなく。

 

 ──そこに救いの手が差し伸べられたら?

 

 当然手を取る以外の選択肢はない。

 ユメにはG.Bibleの噂を流してもらい、そしてそれに釣られたモモイに廃墟の話をしてもらった。そして部外者の胡散臭い話にすぎないそれの信憑性を、『キヴォトスから消えて忘れ去られたものが集まる場所』という身内(ヒマリ)の言葉に担保させる。

 可能性があるならそれに賭けたい。そう思わせることで、彼女を危険な廃墟へと出向かわせたのだ。

 

「罪悪感が……きつい、ですね……」

 

 黒服は自分でやったことに自分でドン引きしていた。これはひどすぎる。

 いや、しかし。それでもこれ以上の方法は思い浮かばなかったのだ。

 

 ミレニアムを『原作』以上の財政危機に陥らせたのにはもう一つ理由がある。

 セミナーを財政危機への対応に縛り付けてほかの事に目を配れない状況にすることだ。彼女らを今回の事件に介入させないようにために。

 ……連邦生徒会長はこれから起きるであろう事件を知らない。それは自由に動くには都合のいいことでもあるが、同時に非常に都合が悪い側面もある。

 

 ──もしアリスの正体について彼女に悟られでもしたら、それは一巻の終わりを意味する。

 

 もし王女について知られたら──連邦生徒会長は確実に先生とSRTを引き連れてアリスの破壊に動く。そうなってしまえばアリスが破壊されるにせよ連邦生徒会が敗北するにせよ、その時点で確実に詰みになる。

 

 連邦生徒会長がアリスの正体に勘づくことがあるとすれば、それはおそらく調月リオ経由。『原作』では一人で解決しようとしていた彼女だが連邦生徒会が機能しているなら話は別だ。

 彼女は連邦生徒会を頼るべきだと合理的に判断するだろう。

 

 つまるところ。

 この二人相手に王女の存在をごまかせているうちに、どうにかしてアリスを無害化する必要がある。時間をかけすぎればそれは命取りとなる。

 

 ……既にアリスはゲーム開発部の手に渡った。

 セミナーもヴェリタスも、ミレニアムの組織は頼れない。しかし彼女たちには事件を通して絆を深めてもらわなければならない。

 事件を起こさないと言う選択肢はない。そしてセミナーにも連邦生徒会にも介入させない以上──調月リオの代わりを用意しなければならない。

 勇者の英雄譚にはわかりやすい悪役が必要不可欠。

 

 だからこそ──黒服は『機械仕掛けの花のパヴァーヌ編』の悪役を演じることにした。

 

「……さて。そろそろ動かなければなりませんね」

 

 彼は胃薬片手にデスクから立ち上がる。




絶対匿名さんからまたまたファンアートをいただきました!!!!

【挿絵表示】

デフォルメの四人、めちょかわ!!!!!!!
やめてくれカカシ。ミドリの呆れ顔はオレに効く。


 会話も出番もスキップされて存在を抹消された資格認証AIちゃんかわいそう。もう二度と出番ないね♡

 原作で世界滅ぼすAIに先生しか接触できないようにするために扉に身元確認の機能を付けるのって、まぁ連邦生徒会長しかいないよね。
 無名の司祭にそんなことする理由ないしね。

 この世界の彼女、「またしても何も知らない連邦生徒会長」なので……まぁ……。

 連邦生徒会長にアリスの正体を知られる→即死。
 調月リオに知られる→連邦生徒会長に伝わる→即死。
 地獄かな?


 悪役を無理やりやらさえれる羽目になった黒服君、かわいそうでかわいいね♡
 キヴォトス救済ハードモードRTA、がんばろうね!
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