精霊の寵愛を受けた才禍の怪物が神に挑むのは間違っているのだろうか   作:子猫猫猫

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テストが終わったら投稿ペースも上がります。
本作で、発展アビリティ『魔防』は攻撃魔法や弱体化魔法をその身に受けた者ほど発現しやすいです。


妖精憤怒

レフィーヤは激怒した。

 

必ず、かの無礼千万の魔女を除かねばならぬと決意した。

 

レフィーヤにはオラリオがわからぬ。レフィーヤは【ロキ・ファミリア】の新参者である。『学区』で学び、『詠唱(うた)』を歌いながら暮らして来た。けれども無礼者に対しては、人一倍に敏感であった。

 

きょう早朝レフィーヤはダンジョンから帰還し、メインストリートを歩き、少しはなれた此の『黄昏の館』にやって来た。

 

レフィーヤには強大な力も、豊富な知識も無い。Lv.2の、よわよわな冒険者だ。

 

レフィーヤは、ファミリアの或る律気な団員に、近々、【ロキ・ファミリア】について教わる事になっていた。新団員の歓迎式も間近なのである。

 

レフィーヤはそれゆえ、都市最大派閥の一員としての自覚を持ち、日々、ダンジョンで勤しんでいた。

 

レフィーヤには尊敬する御方があった。リヴェリア・リヨス・アールヴである。今は此の【ロキ・ファミリア】で副団長をやっている。

 

その御方に、本日呼び出されているのだ。入団時しかお話出来ていなかったから、訪ねていくのが楽しみである。

 

歩いているうちにレフィーヤは『黄昏の館』の様子を怪しく思った。

 

ひっそりしている。

 

まだ朝日が上がって少し経った時間帯とはいえ、そろそろ朝食だ。けれども、なんだか、朝のせいでは無く、『黄昏の館』周辺も、やけに寂しい。

 

るんるんのレフィーヤも、だんだん不安になってきた。

 

路で逢った先輩をつかまえて、何があったのか、昨日此のホームを出たときは、少なくない人たちの声が響き、神ロキの嬉しそうな雰囲気が『黄昏の館』全体を包んでいたはずだが、と質問した。

 

先輩は首を振ってこたえなかった。少し歩いてラウル・ノールドに逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。

 

「どうしてこんなにも静かなんですか?」

 

ラウル・ノールドは答えなかった。レフィーアは両手でラウルのからだをゆさぶって質問を重ねた。

 

「ど・う・し・て、こんなにも静かなんですか⁉」

 

ラウルは、あたりははばかる低声で、わずか答えた。

 

「話すんで、声を荒げないでくださいっす!」

 

「あっ、すみません…」

 

「………いま『黄昏の館』にある人が来てるんす。その人は喧騒が特に嫌いで、五月蠅くすると魔法が飛んで来るっす。だからみんな殺されないためにも普段より大人しくしてるんすよ」

 

「えっ?ここって【ロキ・ファミリア】ですよね?都市最大派閥なのにそんなことあるんですか?」

 

「そんなことあるんすよ…あの人はLv.8っすからね。上には上がいるんす……うぅ、もうあの魔法は喰らいたくないっす…」

 

「Lv.8…魔法…そんなに危ない人が何の用事で来ているんですか?」

 

聞いて、レフィーヤに疑問が浮かんだ。

 

「あぁ、そういえばレフィーヤはこの都市に来たばかりだったっすね」

 

一瞬、キョトンとしたラウルは、レフィーヤが【学区】出身だったことを思い出し、納得がいった様子を見せる。

 

「その人は【ロキ・ファミリア】に恋人が居るんすよ」

 

オラリオじゃ有名な話っす、とラウルは付け加えた。

 

「えっ、そんな話初めて聞きました!お相手は誰なんですか!?」

 

齢12歳、レフィーヤ・ウィリディス絶賛思春期に突入していた。

 

「狼人のベートさん?頼れる団長?もしかして意外とガレスさんだったりして!」

 

「違うっす!!それと、主に1名の逆鱗に触れそうだから辞めるっす!」

 

その言葉にレフィーヤは不満そうに頰を膨らませた。

 

ちなみにレフィーヤはフィンともガレスともベートとも話したことが無い。しかし、有名な人と聞き及んでいたので3人の誰かだと勝手に当たりをつけたのだが── ──

 

ラウルの忠告から察するに、どうやら誰も当たっていなさそうである。

 

では誰なのだと食いかかるが、その質問に答える前に2人の会話は中断を余儀なくされた。

 

 

 

 

静寂に包まれていた館の入り口が開かれる。

 

 

 

 

「やはり、愚者(バカ)には体で覚えさせるしか無いようだな」

 

 

 

 

静か。怒気を孕む声調に反して、纏う魔力や気配は静かとしか言えない。

 

しかし──────────

 

面倒を嫌う女王が、声を発した。

 

それだけで、途轍もない重圧が2人に襲いかかる。

 

自分達のホームであるはずなのに、脳裏によぎるのは『死』の一文字。

 

『静寂』のアルフィアが灰色の長髪を靡かせながら佇んでいた。

 

「ア、アルフィアさん…ち、違うっす!決して騒ぐつもりは無くてっ!」

 

五月蠅い(ゴスペル)

 

静寂の調べが告げたのは一言(ワンワード)

 

たった4文字の詠唱で放たれる規格外の魔法。レフィーヤの隣に立っていたはずのラウルは吹き飛ばせれて遥か後方に。

 

レフィーヤは「えっ?」と事態を把握することが出来ないまま呆然としていた。

 

「案ずるな、小娘。殺しはしない」

 

未だに何が起こっているのか理解できない。

 

「奏でるべきは、葬歌ではなく、帰還を祝福する鐘だ」

 

さらにアルフィアが告げた。

 

理解できない。

 

もはや足腰は立たず、自分を見下ろす絶対零度の視線に耐えられず、両の瞳からは涙が溢れ出す。

 

迫り来る女王を前に、恐怖で身体が硬直してしまった。

 

「だが、冒険者ならばさっさと『未知』を『既知』に変えろ。早死にするぞ」

 

自分はもう終わりなのかもしれない。

 

「やだ…」

 

脳を駆け巡る過去の記憶。走馬灯なんてもの、見たくも無い。

 

まだ、やりたいことが沢山ある。知りたいことが山程ある。

 

「なに……?」

 

違和感を感じながらも、自身に反抗してきた妖精に眉を顰めるアルフィア。

 

「おい貴様っ!入ったばかりの新人にも手を出しているのか!!」

 

先の轟音に弾かれて駆け出して来たのは、緑髪の美女。

 

世界中のエルフから尊敬の念を集めるハイエルフの王女。かつての最強達が君臨していた時代からオラリオで活動している超一流の冒険者。

 

長年をかけて昇華させてきた恩恵はLv.7。

 

妖精の耳を震わせる怒声。レフィーヤが敬愛する人物の声だ。

 

「来たか、年増」

 

敬愛する人物を侮辱した目の前の無礼者に啞然とした表情を浮かべるレフィーヤを他所に、妖精の王女と静寂の女王の喧嘩────第一ラウンドが始まった。

 

「誰が年増だ!私はまだ90代だ!」

 

「十分、ババアではないか」

 

「……ッ!黙れ!」

 

レフィーヤが敬愛する人物──リヴェリア・リヨス・アールヴは顔を真っ赤に染めて叫ぶ。

 

そんな様子の彼女を見てアルフィアは目を細め、吐息と共に言い放った。

 

「更年期か」

 

瞬間、訪れたのは圧倒的なまでの魔力の奔流。

 

今まで扱っていた魔力など赤子同然だと知らしめるように莫大な量がそこに渦巻いていた。

 

アルフィアとリヴェリアの喧嘩はとうとう実力行使の第二ラウンドに移行した。

 

「アルフィア…分かっているな」

 

「ふっ、物忘れが激しくなるほど歳をとった覚えはないぞ?」

 

聖王樹の繊維が編み込まれ、高い魔力耐性を持つ『妖精王の聖衣』の裾をまくり、拳を構えるリヴェリア。

 

対峙するは、アルフィアは漆黒のロングドレスをたなびかせ、白磁の如き細腕を無造作に組んで佇む。

 

──―この二人、過去に何度も衝突している。そのたびに『黄昏の館』やオラリオが被害を被り、10年以上も昔から『喧嘩の際は己の拳のみ』というルールが課されていた。

 

殺気と殺気のぶつかり合い。

 

慣れている【ロキ・ファミリア】の団員や、周辺の住民ならいざ知らず、この喧嘩が初めてのレフィーヤは腰を抜かして恐怖で身を震わせる。

 

体全体から冷や汗をかき、目尻には涙が浮かぶ。

 

極限状態に耐え切れず、意識を手放す寸前──―

 

倒れこむレフィーヤの視界に映るのは。

 

地を砕きながら駆け出した二人の美女と

 

ぶつかり合う寸前の拳を掴み、見惚れるほどの柔術を披露する、黒髪のヒューマンの姿だった。

 




Tips2 【ロキ・ファミリア】に昔から所属している団員は、そのほとんどが『魔防』を発現しているぞ!それに『耐久』の上昇速度がほかの基本アビリティの比ではないらしい。一体何故だろう…

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