精霊の寵愛を受けた才禍の怪物が神に挑むのは間違っているのだろうか 作:子猫猫猫
オラリオの平均を上げすぎた疑惑あるけど、その分相手もぶっ壊れにしちゃうよ
ライバル枠のオリキャラも作った
【ロキ・ファミリア】ホーム『黄昏の館』は、長邸とも呼ばれる別称が表すように、高層の塔が集まってできている。最も太く、巨大な中央塔を都合七基の尖塔が取り囲んでいた。
高さや形がそれぞれ異なる尖塔は下部がつながっており上部では石造りの渡り廊下が他塔に伸びて、行き来できるようになっている。
それぞれの塔は男性用三基、女性用四基と別れており、書庫や大食堂といった共同施設は一纏めではなくバラバラに配置されていた。
言ってしまえば、相当の無秩序、混沌を極めている。
そんな中で、フィンの私室、および執務室は真北の塔にあった。
「おかえり、総司。3年ぶりかな、大神からの依頼お疲れ様」
フィンの私室にも繋がっている執務室――――【ファミリア】の首領の部屋は、相応の広さがあった。内装は壁一面を埋める本棚、色鮮やかな花冠を彷彿させる絨毯、縦長の大型時計。
主に茶色を基調をとして落ち着いた趣のある部屋の中でも、白い石造りの暖炉はよく映えている。
フィンは室内の奥、その小柄な体格には不釣り合いなほど大きな執務机に隣接している椅子に座っていた。
話しかけた先には、一人のヒューマン。漆黒の髪に黒曜石の如き瞳を併せ持つムラクモ・総司が佇んでいた。
「大変だったさ。カイオス砂漠に潜んだり、極東まで逃げる個体のせいで大分時間がかかってしまった」
「あはは…僕たちが不甲斐無いばかりに、総司一人に任せてしまってすまない」
申し訳ないように謝るフィン。
彼、総司は世界三大秘境の一つ、『竜の谷』から世界中に流出した竜種の怪物を討伐する依頼を大神ウラノスより直々に指名されていた。
達成条件は『学区』が『竜の谷』からモンスターを出さないための結界を敷設するまで。
「良いさ、フィン達には『大抗争』の後処理があっただろ?これは『黒竜』を討伐できなかった俺たちの責任だからな」
悲嘆するような、あるいは自嘲するように総司は天井を仰ぎ見る。
「Lv.9、アルフィアと同じ『才禍の怪物』と謳われた君でも、か」
「……」
無言の肯定。
【ロキ・ファミリア】を率いる団長にして二大派閥の一つ、『勇者』の二つ名を持つ小人族の第一級冒険者【勇者】フィン・ディムナは呟く。
『陸の王者』を討ち、Lv.9に至った『才禍の怪物』でさえ、古より絶望と恐怖の象徴として語り継がれる『隻眼の黒竜』に敵わなかったのだと。
「それでも果たさなければならない。『三大冒険者依頼』の達成は
「必ず次で終わらせる」
断言する総司。
「下界の安寧、神々が望む『救界』、そんなことは関係ない。【英傑】達が命を懸けて繋いでくれた時間を決して無駄にはしない」
独白するように、天井を仰いだまま総司は言葉をこぼす。そこに宿るは確固たる覚悟。もはや微塵も揺るがない決意だった。
「その時は僕たちも一緒だよ。苦渋を飲んで、仲間を送り出すなんてこと、何度も経験させないでくれ」
「あぁ、その時は共に戦おう」
決意は決まっている。あとは整えるだけだ。
戦力を、装備を、戦術を、治安を、情勢を。
オラリオを一つに束ね、世界勢力と綿密な連携を取り、不安要素を悉く消し、万全の体制を確立する。
もう二度と失わないために。もう二度とあの絶望を繰り返さないために。もう二度と友を悲しませないために。
そして――――――
その想いが、総司の瞳をより鋭く研ぎ澄ます。
「そういえば、恩恵の更新はしたのかい?」
ふと思い出した様に、総司へと質問した。
「いや、今夜にでもロキに頼むつもりだ。」
「Lv.9だとしても、三年間積み重ねた経験値はかなりの量になるんじゃないかな」
総司の返答に、フィンは微笑む。
『神の恩恵』は昇華させるごとに、次の領域に辿り着くまでの経験値が莫大なものになっていく。
例えば、【勇者】フィン・ディムナはLv.2になるまで2年かかっているが、Lv.5からLv.6に至るまでに約5年かかっている。
これでもかなり早いほうなのだ。第一級冒険者が恩恵を昇華させようとしても、10年以上かかることも珍しいことではない。
Lv.9ともなると一体どれだけ経験値が必要なのか、想像がつかなかった。
その時、コンコン、と扉をノックする音が響く。
総司は無言で頷いて入室を促した。この動作を扉で隔てられた向こう側から感知しているらしい彼女にフィンは幾度も驚かされている。
扉を開けて執務室に入ってきたのは灰色の髪の美女。目を開けるのも億劫と、普段は閉じているオッドアイの瞳を見開いたアルフィアが入室してきた。
「驚いたよアルフィア。普段はノックもせずに入ってくるのに、どういう風の吹き回しだい?」
「黙っていろ【勇者】。これから私達は3年ぶりの逢引を堪能する予定だ。邪魔をするというならお前を【怒蛇】の前に縛って放り出すぞ」
「あーーー、そういえばまだギルドに提出する書類が残ってたんだ。僕はこれから仕事をしなきゃいけないから、二人は出てくれないかな?」
降参とばかりに両手を上げて出ていくように促すフィン。
「悪いなフィン」
全く音を立てずに、アルフィアは総司の腕に自らの腕を絡め執務室から出ていく。
手を振りながら、二人を送り出すフィン。
「一層、賑やかになりそうだね」
静寂が支配する空間の中でぽつりと呟いた勇者は、過去を追想するように目を瞑った。
晴天の空に輝く太陽が都市を照らす中、数えきれない冒険者が行き交う北西のメインストリート、『冒険者通り』。
この通りでは連日、性別・種族を問わず、多くの人々が喧騒が響いている。
今日もダンジョンに潜ろうとする冒険者たちを前に、通りは賑わいに満ちていた―――――はずだった。
「「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」」
道行く人々が総司達の姿を認めると、通りを避けるように左右に割れた。
それは畏怖の感情からだ。
片や、Lv.8の元【ヘラ・ファミリア】幹部。【静寂】の二つ名を冠し、『海の覇王』リヴァイアサンを屠った、オラリオの次点最強、アルフィア。
片や、『陸の王者』を討ち、Lv.9へと至った人類最強にして迷宮都市オラリオの頂点に君臨する【ロキ・ファミリア】のムラクモ・総司。
人の身に過ぎた強さを持ち、神々の領域に最も近い二人の存在に、周囲はその凄みに身を固くすることしかできない。
「せっかくの逢引で有象無象が視界にチラつくのは不愉快極まりないが、3年越しの総司を堪能できると思えば、我慢できなくもない」
周囲の露骨な畏怖や困惑の感情など意に介さず、アルフィアは総司へと体を密着させ腕を絡める。
「あぁ、これで水を差すやつがいなかったら最高だったな」
そう呟いた二人の少し離れた場所には、魔石灯に惹かれる羽虫のように、
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「最強が帰ってきた!!」
「ウホッ、いい男…うっ」
「あいつになら、俺の尻を任せられる…うっ」
「お前らぁぁぁぁぁ‼‼」
一般人と遜色ない神々の眼では到底捉えることの出来ない速度の手刀。史上類を見ないほど手加減された最強の一撃により、崩れ落ちる超越存在たち。
「私じゃなきゃ見逃しちゃうわね!フフンっ、さっすが私!!」
周囲に響く活発な声。
野次馬たちの間から出てきたのは、赤髪緑眼の少女。
都市を守護する【ガネーシャ・ファミリア】と双璧を成す正義の派閥である【アストレア・ファミリア】の団長、アリーゼ・ローヴェルが立っていた。
「久しぶりね!お兄様」
「久しぶり、アリーゼ。元気にしてたか?」
花束を彷彿とさせる満面の笑みを浮かべ、飛びつくようにアリーゼは総司へと抱き着いた。
「勿論!団長としてしっかり働いているわよ」
満面の笑みから一転、悪戯を成功させた子供のような表情で答えるアリーゼ。
「離れろ小娘」
「んむっ!?」
抱き着いたまま離れないアリーゼの頭を掴んで、強引に引きはがすアルフィア。そのまま流れ作業のように、自分の頭を総司の頬に擦り付けた。
「いった~~!私の頭が割れちゃうじゃない!?」
「喧しい。とっとと失せろ私たちはデート中だ」
無理矢理引きはがされてアリーゼは頭を抱えていた。そんな姿に懐かしさを感じながらも総司は話を進める。
「そういうことだ。積もる話は後日にしよう」
アルフィアの機嫌が限界に近付いていることを察した総司は、早々にアリーゼとの会話を切り上げて、その場を去った。
なお、後でアルフィアの機嫌を直すために苦労することになるのだが、それはまた別の話である。
Tips3 【アストレア・ファミリア】は現存しています。???「私の望む世界が今目の前にある‼」