最強催眠種付けおじさんvs女魔族   作:アリマリア

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 ちょっとだけ黄金郷編のネタが入ってるのでご注意を。
 少しでもネタバレは嫌という方は、今すぐ原作を買って読もう! 黄金郷編はすごく良いから読もう! 読もう!!!!!





『繋げる』少女 vs 隕鉄鳥(シュテイレ)

 

 

 

 杖は、魔法使いにとっての武器。

 戦士で言うところの剣や槍、斧なんかと同義だ。

 

 自分の魔力を馴染ませた杖は、魔力の制御と魔法の発動を効率化してくれる。

 自分の杖を持ってる魔法使いと持っていない魔法使いでは、戦力に少なからぬ差が出てしまう。

 

 だから人類の魔法使いは、彼女たちの杖を持ち運ぶ。

 ただ普通に持ち運んだりすれば、取り落すとか盗まれるとかのリスクが発生してしまう。

 それを避けるために、収納魔法とか携帯魔法とか色々な魔法を用いて運び、必要な時だけ取り出すようにするわけだ。

 

 

 

 対して魔族は……そもそも、杖を使わない。

 何故かと言えば、あくまでも補助具である杖を使うのは、自らの未熟を露わにすると思われているからだ。

 

 魔族はその長い寿命をかけ、自らの魔力と魔法を鍛え続ける。

 そうして続けた鍛錬の量と質、そして選んだ魔法の性質こそが、その魔族の強さを決める。

 まぁ、この場合の強さっていうのは、大半が魔力量とイコールになるんだけど。

 

 そして魔族は、極まった実力主義。

 人間のように複雑な能力や経緯、血筋などは一切関係なく、ただ純粋に強い者こそが権力を持つ。

 

 だからこそ、魔族間で杖を使うという行為は、「それだけ自分の実力に自信がないのだ」「魔力の制御に不安があるのだ」と受け取られる。

 つまりは、舐められてしまうんだ。

 

 故に、魔族は杖を使わない。

 もっと正確に言えば、使う意味を見出せない、と言うべきだろう。

 

 イメージとしては……そうだな。

 人間は、稼いだお金を投げ捨てたり、作り上げた権力基盤を放棄したりはしない。

 勿論、おかしくなっちゃったり、複雑な理由がある時は別だろうけど、それは別として……基本的にはあり得ないんだ。

 だって、そうする意味がわからないもん。わざわざ自分が得たものを捨てるなんて、何の意味もない。

 

 それと同じだ。

 魔族が杖を使うというのは、自らが積み上げてきたものにケチを付ける「何の意味も感じられない行為」。

 だから、そんなことをする者はいない。

 戦闘開始時には空手で、使う得物なんかも魔法で作り上げることが多い。 

 

 

 

 ……けど、私みたいな元魔族になれば、話は別だ。

 

 私たちに、プライドなんてものはない。

 魔族としてのプライドなんてものはおじさんにオラッされた時にボッコボコに理解らせられてしまったし、人間としてのプライドを持てる程高尚な存在にはなれないし。

 

 だから、使えるものは使うし、必要とあらば品性の欠片もないことだってする。

 杖だって作るし持ち運ぶし取り出すし、他魔族の生涯の結集である魔法だって盗むし、それを勝手にくっ付けたり離したりと好き勝手もする。

 

 全ては、おじさんを守るため。

 そしておじさんによって救われる人間と元魔族を、1人でも多く増やすためだ。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 そして、今回こそがその機会だ。

 

 おじさんやアウラと旅する中で作った木製の杖を、空間収納魔法から取り出す。

 樹齢500年程……つまり大体アウラの同年代くらいの樫の木から彫り出した、多分人間基準で見るとかなり良い杖だ。

 半年近くかけて私の魔力を慣らしたから、すっかり体の一部のように使うことができる。

 

「さて……」

 

 体に魔力を循環させ、脳内に魔術式を並べながら、私は遠くを見やる。

 

 そこには、やっとの思いで見つけ出した隕鉄鳥(シュティレ)と、そのまた向こうで機を待つ私のパーティメンバー、エーデルとドゥンストが杖を構えていた。

 

 

 

 今回の作戦は、こうだ。

 

 まず、ドゥンストが『魔力の弾丸を放つ魔法』を、隕鉄鳥(シュティレ)の足元に撃つ。

 当然ながら、魔力に極めて敏感で警戒心マックス状態の隕鉄鳥(シュティレ)は、魔法が放たれるよりもなお速くその場から飛び去ろうとするだろう。

 

 そしてその瞬間、エーデルが彼女の魔法を放つ。

 彼女の精神魔法は対人類に特化したものだけど、他種族に対しても通りが悪いってだけで一切無効なわけじゃない。

 隕鉄鳥(シュティレ)はそこまで知能が高くないこともあって、殆どタイムラグなしで、簡単な命令を聞かせることくらいはできるらしい。

 

 今回エーデルが隕鉄鳥(シュティレ)に下す命令は、「リーニエ(わたし)がいる方向を向くこと」。

 飛翔する準備の整った隕鉄鳥(シュティレ)は、強制的に向きを変えられ、飛び立つ方向を私の方に限定されるわけだ。

 

 そして、飛んできた隕鉄鳥(シュティレ)を私が撃墜することで、この作戦は完了。

 無事に第一次試験突破、というわけだ。

 

 

 

 ……言葉にすると簡単に聞こえるけど、特にエーデルと私にかかる負担はめちゃくちゃ大きい。

 

 エーデルは隕鉄鳥(シュティレ)が魔法を感知してから飛び立つまでの瞬間に、的確に精神魔法を放たねばならないし……。

 私は音速で飛んでくる竜並みの防御力を持った小鳥を堕とさねばならない。

 しかも、どっちも試しもなしで、一発で確実に遂行せねばならないんだ。

 どっちがよりハードかは、議論の余地アリだね。

 

 ドゥンストだけは、役割が簡単な魔法を放つことだけでかなり楽なんだけど……。

 その分、本人はあまり役に立てないことを悲しく思ってたっぽい。

 「役立たずですみません……」と、地面に座り込んで杖で落書きまで始めてしまった。

 

 でも、彼がいなければ私の危険性を隕鉄鳥(シュティレ)に悟られたり、エーデルが2つの魔法をほぼ同時に行使するという難行をこなさなきゃいけなくなるわけで。

 彼の存在は、私たちの勝利にとって必要不可欠だ。

 

 

 

「……いけるかな」

 

 私たち第17パーティで導き出した作戦。

 正直、とても確実とは言えない……それどころか、かなり不安定で不確実なものになってしまった。

 

 けど、それぞれができることと、得意なことと、苦手なこと。

 それらを突き合わせ、怒鳴り合いになる直前の激論を交わし、1時間という時間を使って、「結局これしかなくない?」と出した結論だ。

 

 だから、これでやる。

 必ずやり遂げるんだ。

 

 元魔族である私を信じてくれたエーデルと、事情は知らずとも重要な役割を託してくれたドゥンスト。

 そして、彼と彼女を信じる私。

 

 私たち第17パーティで、この試験に合格するために。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ……術式の構築が完了。

 あまりに複雑な工程だから時間はかかってしまったけど、後は起動さえすれば『過去を繋げる魔法(フェアビンデン)』が私の全身に魔力を回し、放っておいても魔法の行使を強制してくれる。

 ……当然ながら、私がそれに耐えられれば、の話だけど。

 

「さぁ、やろう」

 

 こちらを見ているエーデルとドゥンストの視線を感じながら、私は杖の底を地に付ける。

 それが、作戦開始の合図だ。

 

 2人は顔を合わせて頷き合う。

 

 ここからは、一瞬だ。

 

 ドゥンストとエーデルがそれぞれ魔法を放とうとし。

 隕鉄鳥(シュティレ)がその気配を感知した。

 

 数秒後、隕鉄鳥(シュティレ)狙い違わず、私の方に飛んでくるだろう。

 

 次は私の番だ。備えないと。

 

 

 

 今一度、整理しよう。

 

 隕鉄鳥(シュティレ)の速度は、音速すら上回る。

 瞬きの間に湖1つを横断し、そのあまりの速度に轟音すらも発生する、圧倒的な速度。

 まっとうな手段でこれを捉えるのは、非常に困難と言わざるを得ない。

 

 例えばだけど、人類の間で普及してる一般的な防御魔法でその進路を塞ごうとしても、とても防ぎきれないだろう。

 アウラ曰く、どうやら人類の防御魔法は『人を殺す魔法』……改め『一般攻撃魔法(ゾルトラーク)』を中心とする魔法攻撃を防ぎ逸らすことに特化しているようで、物理的な防御は比較的薄い。

 そのため、隕鉄鳥(シュティレ)の立てる爆発的な衝撃波と暴風(ソニックブーム)に簡単に打ち破られてしまうんだ。

 

 でも、何らかの攻撃魔法で撃墜しようとしても、それもまた難しい。

 音速を越える飛翔体なんて追尾効果のある魔法でなければ直撃させることも困難だし、仮に直撃したとしても竜並みの魔法防御に阻まれてまともなダメージにはならないもんね。

 

 つまり、纏めると、だ。

 まず私は、音速を越える小さな飛翔体に対して、魔法を命中させねばならず。

 次に、その非常識な速度によって発生する衝撃波と暴風を、貫通せねばならず。

 更に、竜並みの防御を貫通して、隕鉄鳥(シュティレ)に飛行が困難になるダメージを与えるか、拘束せねばならないわけだ。

 

 流石は一級魔法使い選抜試験、なかなかな難行を強いて来るよね。

 

 

 

 ……ただし、それが難しいのは、あくまで「まともにやれば」、の話だ。

 

 時に魔法は、常識も困難も覆してしまう。

 

 それこそ、あのあまりに堅固に思えた結界すらも破った、フリーレンのように。

 

 

 

 目を見開く。

 

「……『過去を繋げる魔法(フェアビンデン)』!!」

 

 術式、起動。

 全身を魔力が巡り、杖を基点として魔法の展開が始まった。

 

 瞬間、脳の中で情報が氾濫する。

 ……私の魔法による模倣は、少なくとも魔法の発動において、脳における思考処理を必要としない。なにせただ魔力の流れを真似ているだけだからね。

 

 けれど、その魔法のコントロールには、少なからず思考処理が必要になる。

 そして今回やろうとしてることは……私の処理能力の限界に挑戦するような行為だ。

 

 この杖がなければ、まず不可能だっただろう。

 なんなら今、まだ魔法発動の準備中だというのに、脳が沸騰するようだし。

 

「…………ッ!」

 

 更には、全身に鮮烈な痛みが走る。

 攻撃された……わけじゃない。

 ただ、頭の使いすぎで、痛覚がおかしな形で働いちゃってるんだと思う。

 

 

 

 やっぱりこれは、私の手に余る魔法だ。

 ただ使おうとしただけで、この反動。

 完全再現なんてできるはずもなく、猿真似でさえも難しい。

 

 私はなんら特別な存在じゃなくて、ただ偶然おじさんに出会えただけのどこにでもいる元魔族。

 こんな超常の魔法なんて、扱えるような度量はない。

 

 ……けれど、それでも。

 

 エーデル、ドゥンスト。

 2人の期待は、裏切れないから。

 

 

 

「…………取った!」

 

 なんとか、私は魔法の支配権を握った。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 ……魔法は、イメージの世界だ。

 自分でイメージできることは叶えられるし、逆にイメージできないことは叶えられない。

 そういう意味において私は、少なくとも真っ当な手段では、あの魔法(・・・・)を再現できない。

 

 どれだけ考えても……いいや、あるいは考えるからこそだろう。

 おじさんでも、アウラでも、あの男(・・・)でもない私には、万物を黄金に変える(・・・・・・・・・)なんていう、大それた想像はできないんだ。

 

 けれど……大丈夫。

 

 今必要なのは、そこじゃない。

 

 あの小鳥を捉えるために必要なのは、黄金化の能力ではなく、同一化の力だ。

 

 

 

 100年前に一度だけこの目で見た、七崩賢最強と言われた大魔族……。

 現在アウラが最大の討伐目標としている、黄金郷のマハト。

 

 ヤツの魔法、『万物を黄金に変える魔法(ディーアゴルゼ)』は、ハッキリ言って桁違いだ。

 

 アウラの魔法も大概化け物だけど、マハトの魔法はそれ以上。

 『服従させる魔法(アゼリューゼ)』の最大の弱点である魔法の起動から効果が発されるまでのタイムラグは、万物を黄金に変える魔法(ディーアゴルゼ)には殆どない。

 マハトがその気になれば、ほんの瞬きの間に、相手はただの黄金の像になってしまう。

 

 しかも現状、人類はこの魔法の原理を解き明かしておらず、対抗策を持っていない。

 単純な魔力による防護は勿論、防御魔法も結界魔法も護身魔法も、全てが無意味に貫通される。

 更には魔法原理の解明が成されていない以上、一度黄金化されればその解除は不可能という不可逆性まであるんだ。

 

 現状において、『万物を黄金に変える魔法(ディーアゴルゼ)』以上に人類の排除に向いた魔法を、私は知らない。

 そして同時、その原理の難解さ、複雑さ、要求される魔力量……その全てにおいて、アレは世界最高峰の魔法と呼んで差し支えないだろう。

 ……勿論、人類にも魔族にもとても解明できない、女神様の魔法を除いての話だけど。

 

 

 

 私があの魔法を見たのは一度きり。

 魔王直下の七崩賢の集会。

 そこで、不死なるベーゼとの魔王御前の模擬戦で使われるのを見た限りだ。

 

 人類に対しては極めて有効な『万物を黄金に変える魔法(ディーアゴルゼ)』だけど、魔族に対しては人類程に絶大な効果を発するわけじゃない。

 七崩賢ともなれば、その魔法の解析と解除や対策も可能だからだ。

 

 ……ただ、それでも、黄金郷のマハトは「七崩賢最強」だった。

 その背にかけているマントを黄金に変化させ、決して壊れぬ得物として振るい……。

 果てには魔法の解析合戦に勝利して、相手の結界すらも細かい黄金片に変えて取り込み、嵐のように吹き荒れさせた。

 

 

 

 あの日に見た、あまりに精緻な、いっそ芸術的とすら呼べる魔力の流れ。

 エーデルのおかげで、今私の脳内には、それが鮮烈に焼き付いている。

 

 ……とはいえ私には、それを完全に再現することはできない。

 そもそも万物を決して破壊できない黄金に変えるなんて、その時点で私には荷が重い。

 単純に研鑽が足りないんだ。私の魔力操作精度ではその精緻な魔法を再現できないし、その魔法原理を理解しきることもできない。

 それこそ、アウラに私の魔法を伝えたって難しいかもしれない程に、それは飛び抜けて高度なんだ。

 

 けれど……。

 難しいのは、破壊不可能な黄金化というところであって、その後のことは決して不可能じゃない。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 私を中心とした周囲の地面に、魔力が巡る。

 そうして次の瞬間、魔力の通った土がボコッと持ち上がり、宙を舞った。

 感覚を接続。土はそれぞれ私と同一化し、私の手足の延長となる。

 

 マハトの魔法、その黄金化は、私には難しい。

 けれど……ただ、周囲の物体を魔術的に自分と繋げ、操ることくらいなら……私にもできる。

 

 精神を集中させ、懸命にあの魔力の流れを思い浮かべる。

 より正確には、その一部、同一化した物体をコントロールする魔力の流れを。

 

 そうして……。

 杖に更に魔力を流し込み、一気に私の周囲を待っていた土くれを、一斉に動かす。

 

 あの日見た、途轍もない黄金の奔流。

 それを、色あせた無価値な土くれで、その上何分の一何十分の一という規模になってしまうけれど……。

 この、なんら特別でない身でも、再現してみせる!

 

 

 

 瞬間。

 私の周りを飛んでいた何百という土が、その形を変える。

 土くれとしか言いようのない何の変哲もない塊から、1つ1つが薄く鋭く尖った、刃へと。

 

「……ふっ!」

 

 そうして、更に魔力を注ぎ込めば……。

 その刃が、私を中心とする半径5メートルの半球状の範囲を、亜音速で飛び回り始める。

 

 

 

 高い魔力防御を持つ隕鉄鳥(シュティレ)に、魔法による直接攻撃は通用しない。

 勿論、莫大な魔力を持つアウラみたいな例外的な存在であれば、その守りすら貫けるかもしれないけど……私はそんな特別な存在じゃない。

 

 エーデルのような特殊な魔法で攻めるにしても、私の模倣はどうしたって精度が下がる。

 試しもなしで隕鉄鳥(シュティレ)に撃つのは、失敗のリスクが高すぎる。

 

 アイツらを撃墜するには、やっぱり物理攻撃で撃ち落とすしかない。

 しかし、私の魔法はあくまで模倣。かつての英雄の武技を、完全には使いこなせない。どうしてもその質が劣化してしまう。

 その状態で隕鉄鳥(シュティレ)に攻撃を命中させられるかは、これまた微妙なところ。

 最強の戦士の一撃(せんてんげき)を以てすればあるいは、というところだけど……そんな危険な賭けにパーティメンバーを巻き込むわけにはいかない。

 

 けど、この小鳥にも欠点がないわけではない。

 隕鉄鳥(シュティレ)はその初速が速い分、簡単に曲がるようなことはできないと推測できた。

 自分が飛び立った後に、目の前に吹きすさぶ危険地帯があったとしても、行先を変更することはできないはずだ。

 私はただ、隕鉄鳥(シュティレ)が来る位置に、攻撃を置いておけばいい。

 

 

 

 だから、必要なのは……。

 隕鉄鳥(シュティレ)の発生させる爆風すら貫通する、亜音速の速度を持ち。

 小さな的に命中させられるだけの精緻さか、あるいは避けられる隙間がない攻撃範囲を持ち。

 その上で、隕鉄鳥(シュティレ)を確実に撃ち落とせる、単純な物理攻撃だ。

 

 その意味において、この魔法はこれ以上なく有効と言えた。

 黄金ならざる土くれの破片による、嵐のような乱撃。

 

 その速度は亜音速、その攻撃は無尽。

 この周囲5メートルに入った者は、決して逃れ得ずに攻撃を喰らうことになる。

 

 これなら、必ずあの小鳥を捉えることができる。

 

 これなら、きっと第17パーティを合格させられる。

 

 

 

「ぐっ……!」

 

 問題があるとすれば、それは私の脳と魔力。

 

 頭には鈍痛が走り、全身から急速に魔力が失われていく感覚が背筋を凍らせる。

 

 ……クソ、なんて魔法だ。ふざけてる。

 黄金郷のマハトめ、どれだけ複雑な原理、どれだけ緻密な操作を要する魔法を使ってるんだ。

 流石はアウラをして「私ではまず勝てない相手よ」とまで言わせる化け物。

 積んだ研鑽と才能は、アウラをすらも遥かに超えている。

 

 たかだか150年鍛錬を積んだだけの私は、ただ魔力の流れを模倣するだけで、その最低限の質を維持するだけで既に手一杯。

 下手をすれば鼻血が出そう……いや、多分、もう出てるな。

 

 もはやあちらの様子を窺う余裕もないけど、エーデルとドゥンストが隕鉄鳥(シュティレ)を誘導してくれてるはず。

 あの小鳥がここに飛び込んでくるまで、あと何秒だろう。

 私が魔法を維持しなければならないのは、その翼なり体なりに多少の傷でも付け、飛行不可能な状態に追い込むまで。

 

 大丈夫……そこまで持つ。

 持たせて、みせる。

 

 目まぐるしく、もはや周りの景色すら窺えない程の速度で跳び回る、鋭く尖った土の刃。

 私は大地に突き付けた杖を頼りに、私は必死に魔力を通わせ続け……。

 

 

 

 意識を飛ばしかける程に長かった、数瞬の後。

 

 私の一部として感覚できる土の刃が、確かに、隕鉄鳥(シュティレ)に直撃するのがわかった。

 

 

 

 ……やった。

 確かに、土の刃は獲物を捉えた。

 

 あの、あまりに緻密で綺麗な、奇跡のような魔法には到底届かなくても……。

 私は今、確かに……成し遂げたんだ。

 

 

 

 土くれの刃は、隕鉄鳥(シュティレ)の体を貫き、撃ち落として……。

 

 ……貫い、て。

 

 …………あれ?

 

 

 

 魔力が切れて同一化が解け、どちゃどちゃと土くれが落下していく中……。

 綺麗に私の胸の中に飛び込んで来た、隕鉄鳥(シュティレ)

 

 

 

 その体は、首から上と下に、2つに分離してしまっていた。

 

 

 

 ……これ、もしかして、終わった?

 

 

 







 そら(土とはいえ極めて鋭利に尖らせた物体を亜音速でほぼ隙間なく跳び回らせてれば)そう(少なくとも一か所はスッパリ切断)よ。

 ちなみに土くれのままではなく尖らせたのは、元ネタに寄せざるを得なかったからです。
 あくまで模倣なので、あまりにオーバースペックな魔法な今回は元ネタと違うことはできなかったわけですね。



(追記)
 誤字報告を射ただき、訂正させていただきました。ありがとうございました!
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