いわゆる幕間的なヤツ。
「そんなわけで、第一次試験は合格したよ」
一級魔法使い選抜試験の会場の1つである、魔法都市オイサーストの片隅。
我輩たちが取った宿屋の一室、その隅に置かれた大きめのベッドの中で、リーニエ君は我輩の首に手を回したまま、パタパタと足を揺らしてそう言った。
まぁ、第一次試験から帰って来たアウラ君もリーニエ君も、懸命に隠そうとしてはいるものの、その表情からは仄かに自慢げな色が滲んでいたので、合格はしたのだろうなと察しは付いていた。
付いてはいたけれども……。
……おかしいな。
我輩、『そんなわけで』というのは、前述した内容を以て後述の内容に繋がる説明が終わったことを示す言葉だと思うのだけれど。
リーニエ君の話では、さも落第してしまったような感じに聞こえたんだけどね。
察するに、これは「さぁ、どういうことか聞いてくれ」というフリなのかな。
リーニエ君、こういうところでは結構かまってちゃんなところもあるからね。
最近になって徐々に見えて来た、彼女の魅力の1つだ。
「うーん……話では、結局
ラストチャンスの時も、リーニエ君の魔法で誤って殺してしまった、と」
そして、彼女のパートナーとしては当然、そういった需要にお応えせねばなるまい。
ただオラッ催眠種付け! するだけのおじさんは、催眠種付けおじさんとして二流三流。
一流の催眠種付けおじさんは、アフターケアまでバッチリの安心安全仕様なのである。
そうして予想通り、リーニエ君は「求めていた相槌をもらえた」という喜びの表情で頷いてくれた。
「うん。正直、私も『終わったかも……』って思った。あんまりな結末に青ざめてた第17パーティの2人には必死に頭を下げたんだけど……。
結局、合格にしてもらえたんだ。
『今回の合格条件は、規定時間に
「そうか……。うん、良かったねリーニエ君、頑張ったからこその勝利だ」
「えへへ。うん、頑張った」
頭を寄せて来るので、ゆったりとなでなで。
リーニエ君は基本的にいつも、クールで無気力系な雰囲気を漂わせているのだが……。
こうして大変なことがあったりした後は、甘えたモードに突入する。
生涯孤独な境遇から来る寂寥感からか、あるいは単にそれを口実として甘えたがってるのか、精神的に幼児化して褒めたり慰めたりしてほしがるんだ。
これがいわゆる、クーデレというヤツだろうか。
……いや、クールな時も我輩に対してはデレてくれるし、ちょっとジャンル違いだろうけども。
気持ちよさそうに撫でられ、やめようとすれば露骨にしゅんとするリーニエ君に乗せられ、よーしおじさんあと8時間くらいはなでなでしちゃおうかなー、なんて思っていると。
ふと、リーニエ君とは逆、我輩の左手側に横たわっていたアウラ君が声を上げた。
「……あ、あの、おじさま。私も……頑張ったのだけれど」
改めて彼女に視線を向けると、アウラ君は一瞬だけこちらを見て、しかしすぐに恥ずかしそうに視線を逸らしてしまった。
自分もリーニエ君のように甘えたいが、彼女の姉的なポジションに付くことの多いアウラ君としては、素直に求めるのも恥ずかしいのだろう。
しかし、それだけの恥ずかしさすら越えて、声にまで出して我輩に甘えてくれたのだ。
なんといういじらしさ。これは応えずして、何が純愛系催眠種付けおじさんか。
とはいえ、いきなり相手を切り替えるというは、リーニエ君に失礼にあたる。
ちらりとリーニエ君に視線を戻すと、彼女はパチリとアイコンタクトで『私はいいから、アウラの方をよろしく』と伝えてくれた。
既に甘えたモードは抜けきって、姉のことを気にする優しい妹としての顔になっていた。
本当は彼女だってまだまだ甘えたいだろうに、アウラ君の心を優先してくれた形だ。
それも、仕方なさそうにするわけではなく、むしろそれが当然というように自制してくれている。
リーニエ君、本当に良い子に育ったなぁ……。
我輩、前世では何かと女性間の感情に悩まされたので、その温かな善性が心の底からありがたい。
まぁ、彼女の善性に関しては、我輩がオラッする時に善なる人間性を基盤としてコンバートを行った、という部分は確かにあるのだが……。
その善性は、あくまでもきっかけに過ぎない。
言うならば、ようやく土から顔を出した萌芽のようなもので、彼女自身の心の中でしっかりと育てなければ、このように優しい善性にはならないのだ。
……うん。
リーニエ君も、当然アウラ君も、2人とも。
心配せずとも、今は確かな人間としての善性を、その心に宿している。
善いことだ。
このまま、彼女たちが彼女たち自身を救えるようになるまで、しっかりと支えよう。
それが、悲しき孤独な悪役に催眠で無理やり救いを与えてイチャイチャする純愛系種付けおじさんとしての誠意、あるいはアフターケアである。
さて、そんなわけで、今度はアウラ君甘やかしタイムに突入。
我輩は改めてアウラ君の方に向き直り、彼女の頭……ではなく、頬を両手で挟む。
「アウラ君も頑張ったね。よーしよし」
「あふ……おひはま、はふかひい……」
語るまでもないことだけれど、アウラ君とリーニエ君の間には、趣味嗜好や性癖の違いがある。
どちらも魔力の鍛錬や魔法の探求は未だに好きなようだが、その他で言えばリーニエ君は食や戦闘、アウラ君は料理やおしゃれを好んでいるようだ。
ちなみに性癖もまた異なっていて、リーニエ君は甘えたり愛されたりすることを好み、アウラ君は尽くしたり愛したりすることを好むと見える。
我輩、催眠種付けおじさんだからね。この辺りの観察眼は人一倍鋭いのである。
さて、そういう事情もあって、ファッションにはあまり関心のないリーニエ君に比べ、アウラ君は結構なおしゃれさんだ。
思えば初めて会った日、彼女がまだ魔族だった頃も、三つ編みを6つも結った、かなり凝った髪型だったものね。
彼女はその日の気分(と本人は言っているが、恐らく本当は我輩へのアピール)で、日毎に魔力で構成した全く違う服を身に着けたり、髪の編み方や纏め方もそれに合わせて変えたりする。
今は生まれたままの姿ということもあり、髪は下ろして絹のようなさらさらのストレートだ。
……この前の村で依頼の報酬としてもらった『髪をサラサラにする魔法』はこの上なく十全に機能しているらしい。
本当にすごいね、魔法。
そんな綺麗な髪に、我輩がべたべたと触るわけにはいかない。
いや、今は髪をセットしているわけでもないし、彼女は気にしないかもしれないが……。
女性が大切にしている宝物に、あるいはその子が誇れる武器に、勝手に触るというのはどうしても気が引けるんだよね。
故に、我輩は前世からずっと、女性の髪にはあまり触れない主義だ。それが必要だったり、「どうしても」と言ってくるリーニエ君のような子の場合は触るけども。
いやぁ、つくづく乱暴系の催眠種付けおじさんじゃなくてよかったと思うよ。
女性の髪を掴んで引っ張るとか、想像するだけで悲鳴を上げそうになる。
我輩はどこまでも純愛系催眠種付けおじさん。相手がそういう性癖を持ってでもいない限り、そういった行為はご免被る。
そんなわけで、アウラ君に対しては頭ではなく、両の頬をわふわふと撫でる、愛玩スタイル。
リーニエ君は触れ合いに父性を求めて来るけど、アウラ君はどちらかと言えば対等or上からな態度で愛情を返してくれることを望むタイプだ。
そういう意味でも、彼女の褒め方はこれでいいのだと思う。
あと、アウラ君のほっぺ、ぷにぷにしてて触り心地良いんだよね。
それと、いつもは静かで落ち着いた雰囲気を出しているアウラ君だけど、この時ばかりはむぎゅってなって喜色に溢れ、可愛い系になるのも魅力の1つだ。
忠犬アウ公、一生撫でていたいところではあったが……。
残念ながら、このじゃれ合いは時間制限付き。
ずっとむにむにとほっぺを挟んでいると、恥ずかしさが爆発したアウラ君が「もうっ!」とこちらの両手を掴んで引き剥がしてきた。
くっ、魔力で強化された腕力には勝てない……!
催眠種付けおじさんとしては、少女の腕力に負けることにちょっとばかり尊厳破壊を感じてしまう。まぁ我輩のジャンルでは誰かと腕力勝負になることは滅多にないのだが。
さて、そろそろ気を取り直して、試験の話を聞いてみようか。
「アウラ君の方は、試験、どうだったんだい?」
「ん……まぁ、なんというか、あまり語れることもないのだけれど」
「開幕から『
「リーニエ! ……いえ、まぁ、事実なのだけれど、言い方!」
第一次試験開始前、アウラ君は試験区域の上空に危険な魔物がいることを察し、試験開始と同時に『
また、その時慌てて飛び立とうとした近くの
アウラ君は、我輩にサボったと受け取られてないかと思ったのだろう、少し早口で釈明するように口を動かした。
「し、仕方のない措置なのよ、これは。受験者の実力に思っていたよりバラつきがあって、
人が自分の意志で誰かを押しのけ、結果として殺してしまうのならばともかく、魔物によって人間が殺されるのは看過できない。その惨劇を避けるには、ああするしかなかったのよ。
それに、自慢じゃないけれど『
「わかってる。アウラ君はみんなのことを考えて、最善の手を取ろうとしてくれたんだね」
彼女の真面目極まる弁明に、思わず笑みが漏れる。
リーニエ君もアウラ君も、今回の第一次試験に対して、すごく真摯に取り組んでくれたようだ。
彼女たちは、元から人間である魔法使いたちに比べて、遥かに強力な魔法が使える。
やりようによっては、もっと簡単に、あるいはもっと蹂躙する形での試験合格も狙えただろう。
しかし2人は、自ら育てた善性に基づき、面倒だったり退屈だったりする、けれど誰も害さない道を選んだ。
アウラ君に至っては、自分の正体がバレる危険を背負ってまで、誰かを救う選択をしたんだ。
……彼女たちはこの旅の最中、ずっと我輩と一緒にいて、我輩の意思を尊重してくれた。
しかし、この一級魔法使い選抜試験は、純然たる彼女たちだけの挑戦。
そこで選んだ選択肢、やろうとした思惑は、その過程も結果も全てが彼女たちにのみ帰結する。
故にこそ。
きっと彼女たちにとって、この試験は有益なものだったのだろう。
他者の意思を介さない自分の判断で、確かな善の道を選べた。
その経験は、彼女たちの人間としての自尊心を高めてくれるはずだ。
我輩としては、第二次試験でも彼女たちに得るものがあることを祈るばかりだね。
「二次試験も、応援しているよ。とはいえ、無理はしないようにね」
「ええ。必ず合格してみせるわ、期待、していてね?」
「ま、アウラがただの試験なんかで失格になるとか想像できないしね。
……それこそ、あのフリーレンが敵にでもならない限り、99%合格するって言ってもいいでしょ」
……リーニエ君、フラグ建てるの上手いなぁ。
まぁ、フリーレン君は魔族でない者に対しては、決して好戦的でない性格だ。
あの街での一件で、リーニエ君とアウラ君はしっかりと「元」魔族として認識されているはず。
バトルロワイヤルとか勝ち抜き戦でもなければ、戦うことはない……と、思いたいね。
* * *
さて、それから再び、頑張ってきた彼女たちをたくさん労い。
気付けば、既に日は高く昇っていた。
「ん……少し寝過ぎたかな」
「おはよう、おじさん」
我輩の右腕の中から、ぴょこりとリーニエ君が顔を出す。
いつものツインテールを解いた髪は少し乱れ、それが余計に艶めかしさを醸し出している。
「うん、おはよう、リーニエ君。もしかして、待たせたかな」
「ううん、今起きたとこ」
……いやしかし、よく見れば目やにも一切ないし、汗なども見られないし、その目からは一切眠気を感じられない。
これさては、ずっと早くに起きて、こそっと身だしなみ整えてたな?
その上で我輩へのアピールとして、見た目を酷く害さない程度に髪の乱れを残したか。
リーニエ君、結構こういうとこ乙女チックというか、恥ずかしがりかつもアピールを欠かさないようなしたたかさがあるよね。
アウラ君もそうだけど、本当に多面的な魅力を持つ子たちだ。非常に愛しがいがあります。
ふと、右腕にはリーニエ君の柔らかさと温かさを感じるものの、左腕の方には感触がないことに気付く。
朝になるとアウラ君がいなくなるのは毎日のことだし、察しは付くけど、一応確認しておこうか。
「アウラ君はどうしてる?」
「魔法の鍛錬。『彼方に声を届ける魔法』でおじさんが起きたって伝えたから、今頃朝ごはん作りにシフトしてると思う」
「毎朝のことだけれど、アウラ君にはいつもお世話になってるね。やっぱり2日に1度は我輩が料理を担当した方が……」
「いや、そんなことしたらアウラ陰で泣いちゃうよ? 最初の頃『おじさまに少しずつ恩も返せるし、人類の文明も学べるし、将来的に胃袋を掴む準備もできるし、おじさまの美味しそうに食べる姿は素敵だし、料理は最高ね! こればかりはリーニエにも譲らないわよ』って張り切ってたんだから」
「…………それ、我輩に直接言って良かったヤツかい?」
「……おじさま、私が殺されかけたらアウラのことオラッして助けてね」
まぁ、流石にアウラ君もそこまではしないと思うけど。
あの子、すごく優しいし、今はもう殺害に忌避感を持ってるし……何より、リーニエ君に激甘だしね。
……と、そんな我輩の目論見は当たっていた。
主に「殺すまではしないと思う」という部分が。
どうやら魔法で我輩たちの会話を盗み聞いていたらしいアウラ君は、静かにキレ散らかした真っ赤な顔で、リーニエ君に腹ごなしと第二次試験対策として模擬戦を提案した。
真っ青になったリーニエ君は必死に逃げる言い訳を探そうとしたようだけど、「下手な言い訳をしたら
朝食を取った後、お互い自分の杖を握っての、模擬戦が始まったのだけれど……。
結果から言うと、僅か15分で100戦100勝、アウラ君はリーニエ君をボコボコにした。
アウラ君の主力の魔法である『
なおかつ、アウラ君はその場から動いてはならないっていうハンデもあったんだけど……それでもなお、アウラ君は強い。強すぎる。
彼女は既に、魔族であった頃のクソみたいな驕りと慢心を捨て去っている。
その上、500年という膨大な時間で培った有り余る魔力量と、魔族由来の極めて高度な魔法技術体系が行使可能。
更には、未だ脳が魔族のものであるが故に、人類では肉体構造上不可能な魔法行使の高速処理を行える。
もはや彼女は、少なくとも魔法戦においては、地上最強にすら近しい存在……らしい。
この前オラッした元魔族の子が、尊敬の眼差しでアウラ君を見つめながら言ってた。
我輩は魔法戦や魔法使いに詳しいわけじゃないけど、確かに、こんな天変地異みたいなカオスを引き起こしてる彼女が弱いとは到底思えない。
リーニエ君が死なないように手加減している──なお、魔族魔法で欠損した部位を生やすことができるので、四肢の欠損程度は可とする──とはいえ、並みの人間なら抵抗の1つもできずに即死してるよこれ。
なんともはや、乙女の恥じらいとは恐ろしいものだ。
あの時は我輩、聞こえないフリをするのが正解だったかもしれない。反省しなければな。
すまない、リーニエ君。骨は拾うからね。
……あ、骨が左腕ごと飛んで来た。
よし、有言実行、拾っておこう。
欠損部位をモリモリ生やすのと千切れた部分を繋げるのだと、やっぱり後者の方が燃費良かったりするのかな?
今度アウラ君にでも聞いてみよう。
* * *
模擬戦終了後、リーニエ君が「お、おじさん、血とか出ちゃったし……もしかして、引いた? ちょっと引いた?」と怒られる気配を察した子犬のように訊いて来たので、左腕を渡しながら首を振る。
実は我輩、女性のどんな性癖も受け止められるよう、自己催眠によってエログロ系の不快感を感じないよう調整している。
腕の1本2本では引いたりなんかしないよ。唐突だとビックリはするけどね。
一流の催眠種付けおじさんは、欠損フェチやリョナ性癖の方にも対応できるものだ。
こうしたフェチとシェアの拡大が、催眠種付けの質と量を向上させる第一歩なのである。
マンネリやスランプで困っている催眠種付けおじさんがいれば、是非とも参考にしてみてほしい。
さて、リーニエ君は体の回復を済ませると、我輩の体に抱き着いて来た。
ちょっとした恐怖体験になってしまったか、それともこれを甘える大義名分としたか、彼女はまた甘えたモードに入ってしまったらしい。
流石にアウラ君もやり過ぎたと思ったようで、2人でリーニエ君全肯定体勢。
リーニエ君を左右から2人で挟んで、耳元で「やりすぎてごめんなさい♡ リーニエ、前よりずっと強くなってたわね♡ これも日々の頑張りの成果よ♡」とか「諦めずに戦う姿、格好良かったよ♥ 戦いの中で成長してたね、えらいえらい♥ 今日はリーニエ君の好きな赤ちゃん催眠しようね♥」と、リーニエ君が腰をガクガク震わせ立っていられなくなるまで褒め殺した。
その甲斐あって、リーニエ君は正午頃には無事復活してくれたのであった。めでたしめでたし。
……ただ、今回の件以降、彼女は時折我輩とアウラ君に「あれ! 耳元で囁くの、もう1回!!」とねだってくるようになった。
リーニエ君……生まれてくる文明が違えば、ASMRにドハマリしていたのだろうね。
残念なことにこの中世~近世くらいの文明では配信サイトなど夢のまた夢。
なので、我輩が定期的に催眠音声を手作りすることによって、彼女の需要を満たしていくこととなった。
ふふふ、我輩、こっち関係であれば基本なんでもできるからね。催眠なら任せろーバリバリ!
* * *
さて、午後になると、それぞれが本格的に行動開始する。
リーニエ君は、宿にまで遊びに来てくれた第一次試験のパーティメンバーたちと遊びに出かけた。
我輩はその2人と顔合わせし、リーニエ君に「私の仲間で、大切な人」と説明してもらったのだが……。
少しばかり老けて見える男性魔法使いドゥンスト氏からは不審の目を、幼い外見をした少女魔法使いエーデル君からは最大級の警戒の目を向けられてしまった。
ドゥンスト氏の視線は、さておくとして……。
エーデル君は、我輩の正体を知っているらしいからね。警戒はやむなしだ。
しかし我輩、むやみやたらに催眠をばら撒くタイプではないので安心してほしい。
なにせ、悲しき孤独な悪役に催眠で無理やり救いを与えてイチャイチャする純愛系種付けおじさんだからね。
リーニエ君のことを信じてくれるような善人との不合意での性交渉はお断りしております。
そして、このリーニエ君の所属していた第17パーティ、共に
リーニエ君は興味のあるなしでガラッと態度を変えがちなので、きちんと集団行動ができるか少し不安だったのだけれど、どうやら杞憂であったらしい。
一行を引っ張っていくエーデル君に、その隣を歩いて何かを話しかけるリーニエ君、そこから一歩引いて保護者のように2人を見守るドゥンスト氏。
3人の後ろ姿を見ながら、我輩はリーニエ君に人間の友人ができたことに、思わず口角を上げてしまったのであった。
一方、アウラ君の方は、第二次試験や将来のマハトとの決戦に備え、魔法と戦闘の研究に没頭。
リーニエ君と戦っている時の彼女も、だいぶ鬼神じみた戦闘力を持っているように思えたのだが……どうやら彼女はそれでもまだ納得していないらしい。
「魔術の探求に果てはないのよ。あのマハトと戦うのであれば、どこまでも上を目指さないと」
ああ……その気持ちは、よくわかる。
我輩も若い頃は、胸の大きさや尻の大きさ、脇やへそなどといったわかりやすい性癖を探求し、それを以て全てを知った気でいた。
しかしながら、様々な性癖と催眠を探求する内に、気付いたのである。
女性の容姿や性格、催眠種付けの時刻や方向性、シチュエーションに応じて、性癖と催眠のバリエーションは千変万化、無限大に広がっていく。
そこには決して果てはなく、一見して極みと思える地点は、むしろ新たな可能性の出発点に過ぎない。
アウラ君の探求する魔法も、またそのようなものなのだろう。すごく親近感が湧くね。
もしかして、魔法って実質催眠なのではあるまいか? 我輩、これからは魔法使い種付けおじさん名乗っていい?
で、我輩はと言えば、2人が頑張ってる中で何もしていないというのも悪いので、試験期間中に引き続き、街角でお店を開いて路銀稼ぎに専念する。
まぁお店と言っても、椅子と机を置いて「オラッ路上占い!」と看板を掲げてるだけなのだけれど。
そう、我輩が営んでいるのは、占い屋だ。
勿論、我輩に未来予知などできようはずもないが……そこに関しては、問題にならない。
占いにかかる人の大半は、何かに悩む人間である。
そしてそういう人の悩みを振り切らせることにおいて、我輩以上の適任者はいないのだから。
そんなわけで臨時占い屋「オラッ路上占い!」、特に占いは当たらないけど、不思議と勇気が湧いたりスッキリしたりすると評判です。
皆さんも、オイサーストに来た際には、是非一度お立ち寄りくださいね。
……いやしかし、冗談抜きで評判になってるみたいなんだよね、これが。
最初は遠巻きに嫌な目を向けられるばかりだったんだけど、何度もお客さんの悩みを聞いてオラッして背中を押している内、ここ数日でそこそこお客さんは増えてきた。
今日なんて、「あれ、今日はいないのか……?」みたいな感じで出待ちのお客さんまでいたくらいだ。
なんなら昨日だって、フリーレン氏のパーティメンバーのシュタルク君も来てくれたんだ。
「同世代の女の子との付き合い方がわかんねぇ……」と落ち込んでいたので、催眠抜きで普通に異性との付き合い方をレクチャーしました。
まずは意思の尊重と、仕草や視線を観察し、ちょっとしたサインを見逃さないこと、そして言葉尻に乗る感情に注意。
この辺りを守っていれば、まぁそこまで失敗することもないだろう。
そう言うと、「竜倒すより難しいじゃねーか!」と涙目で逃げ出してしまった。律儀にお代を置いて。
……フェルン君に春が来るのは、もう少し先のことになるかもしれない。
* * *
と。
そんな感じで、思い思いの休日を過ごした日の夕方。
我輩たちの宿に、伝書鳩ならぬ伝書烏が、大陸魔法協会からの手紙をもたらした。
そこには第二次試験の会場と日時、試験官の名前が記載されており……。
それを見たアウラ君は、顔を真っ青にしてしまったのだった。
アウラ君が青ざめた理由は、「この試験は合格できない」と思ったからではなく、「1つ状況が違えば、自分たちは皆死んでいたかもしれない」と思ったからです。
何故そう思ったかは……待てアニメ最新話と次回。