最強催眠種付けおじさんvs女魔族   作:アリマリア

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元魔族ペア vs 第二次試験

 

 

 

 一級魔法使い選抜試験、第二次試験。

 試験官はゼンゼ一級魔法使い。

 そして、試験会場は……。

 

 北側諸国、零落の王墓。

 

「それでは、第二次試験の詳細を説明する。

 迷宮(ダンジョン)攻略だ。君たちには零落の王墓の攻略を行ってもらう。

 合格条件はただ1つ、零落の王墓の最深部まで辿り着くことだ」

 

 

 

 迷宮(ダンジョン)

 それは、内部を巡る魔力によって天然のトラップが敷き詰められ、大量の魔物が生息する巨大構造体。

 迷宮という名の通り、内部は複雑な迷路状の通路が続き、至るところに感圧式や接触式の罠や、特殊な方法で施錠・隠蔽された宝箱、そして最奥に隠された金銀財宝と、ギミックとロマンが満載の危険地帯だ。

 

 ……ただし、迷宮(ダンジョン)の内の殆どは、内部の宝箱から貴重な魔道具や魔導書、武器などを産出するという都合もあって、80年以前の魔王討伐を目指す乱世の時代に攻略されてしまったらしい。

 数々の戦士や魔法使いたちが、そしてどこぞの寄り道大好きな勇者が、片端からクリアしてしまった……と、そう聞いている。

 

 けれど、未だクリアされていない、未踏破の迷宮(ダンジョン)がないわけではない。

 入り口に強力な封印を施されているものや、内部に特殊なルールが設けられているもの、奥底に続く通路が高度に隠蔽されてしまっているもの、そして性質上現代での踏破が困難なもの。

 そういったものはクリアが困難であり、未だ未踏破のままに残っている。

 

 そして今回の試験会場、零落の王墓。

 これもまた、未踏破迷宮(ダンジョン)の1つだった。

 

 

 

 表情すら変えないゼンゼの宣言に、元第19パーティのブライが「また合格者を出さないつもりか」と問い詰めたけれど……。

 

「何を言っている。君たちが目指しているのは魔法使いの最高峰だ。

 不可能を可能にするのが一級魔法使い。未踏破だろうが前人未踏だろうがねじ伏せて突き進むんだ」

 

 その言葉に、返す言葉を失ったみたい。

 

 実際それは、正論と言っていいものだと思う。

 一級魔法使いは、人類の魔法使いたちの頂点。

 つまり、人類の最高戦力の1つなのよ。

 

 未知のダンジョンを攻略し、魔族との戦線を押し上げ、この世に平和をもたらす。

 それこそが、彼ら彼女らが新たに踏み込む境地。

 未踏峰のダンジョンに一々臆するようではこの先やってはいられない。

 

 ……いえ、私も一級魔法使いを目指す以上、他人事ではないのだけれど。

 

 

 

 それから、いくつかの追加のルールの確認が行われた。

 

 最奥到達の確認に関しては、このダンジョン攻略にゼンゼが同行することによって行う。

 ただし、試験官であるゼンゼはただ最奥まで付いて行くだけであり、攻略に関しては一切手を貸さない。

 

 そして全員に1つずつ、小さな魔法生物が入った瓶が配布される。

 レルネン一級魔法使いが開発した、試作品の脱出用ゴーレムらしい。

 この瓶を割れば使用者は不合格にはなるが、中のゴーレムが巨大化し、ほぼ確実に迷宮(ダンジョン)からの脱出が叶うのだという。

 この瓶は明日の夜明けには自動で破壊されるようになっているので、それが実質的なタイムリミットとなるとのこと。

 

 以上が、私たちが聞かされた第二次試験のルール。

 チーム戦を強いられた第一次試験と違って、協力して戦うことも1人で戦うことも許された、良くも悪くも自由度の高い試験ね。

 

「それでは、試験開始だ」

 

 

 

 * * *

 

 

 

「……困ったわね」

 

 私は、同じように眉を寄せて考え込むリーニエの隣で、思わず頭を抱える。

 

 長い生涯を生きていれば、自然と知識は得られる。

 私はこの零落の王墓、その最大の特徴について、聞きかじったことがあった。

 

 この迷宮(ダンジョン)は、少なくともその前半においては、他の迷宮(ダンジョン)とそう変わりはしない。

 精々踏んだらほぼ即死のトラップや、魔法の通りにくい魔物がいるだけで、強い一級魔法使いであれば十分に突破が可能だと思うわ。

 

 けれど、ここは未踏峰のままに残された……つまりは、戦乱の時代に生きていた英雄たちですら攻略を諦めた迷宮(ダンジョン)の1つ。

 まさか、そんな簡単な内容で終わるわけがない。

 

 挑戦者がこの迷宮(ダンジョン)の後半に足を踏み入れた時……。

 まるで逃げ道を塞ぐようにして、零落の王墓は牙を剥く。

 

 私はこの迷宮(ダンジョン)の脅威を知っている。

 実際に来たことはないし、詳細に研究したこともないけれど……。

 もしもあの情報が真実なら、この迷宮(ダンジョン)は挑む者が強ければ強い程に、脅威は増す(・・・・・)はずだ。

 

 そして、それに対抗する方法はただ1つ。

 複数人が協力し、互いの穴を埋めながら互いの穴を突くしかない。

 

 

 

 けれど、そこで問題になるのが今回の試験の合格条件。

 

 第一次試験のそれが「隕鉄鳥(シュテイレ)を確保すること」「パーティ全員が健在であること」だったのに対して、第二次試験は「最奥に辿り着くこと」のみ。

 

 今回は、パーティでの協力が義務付けられていない。どんな選択肢を選ぶのも受験者次第だ。

 だからこそ、第一次試験で無理やり強制された分、そこで連携に失敗した者やそもそも他人を信じていないものは、これ幸いと言わんばかりに個人で動こうとするだろう。

 

 なんて、意地の悪い試験だろう。

 よりにもよって、この合格条件の試験の会場として、零落の王墓を選ぶなんて……!

 

 実際今、私の目の前では、一次試験でフリーレンに喧嘩を売って理解らせられたって噂の元第13パーティのデンケンが全員で協力する流れに持っていこうとしたものの、元第1パーティのトーンが拒絶。

 いつ捨て石にされるかもわからないという理由で、1人で迷宮(ダンジョン)の入り口に向かおうとした。

 

 だから……。

 

 

 

「待って頂戴!」

 

 私はそれを引き留める。

 そうして、ちらりと振り返ったトーンに対して、彼が足を止めるに足るだろう情報を告げる。

 

「……この迷宮(ダンジョン)には、神話時代の魔物がいるわ。

 私が知っている情報が正しいのなら、ソレはこの場にいる者の大半を……それこそ、一級魔法使いゼンゼすらも、不意打ちで一瞬の間に殺すことができるはずよ。

 半端な魔力制御も意味がないし、逃げようとしても不可能。当然、その手の瓶を使う余裕なんてない」

「は?」

 

 トーンは呆けたような目で、こちらを見て来る。

 

 それも当然だろう。

 私の言葉は、文字通りそれまでの全てをひっくり返す発言だから。

 

 

 

 トーンは、そしてここにいる殆どの受験生は、こう考えたはずだ。

 「試験官のゼンゼが合否の判定役として同行するということは、少なくともゼンゼはこの迷宮を踏破できるのだ」、と。

 

 そして恐らく、それは私たち……いえ、おじさまさえいなければ、正しい判断だった。

 

 考えるに、この受験生たちの中に、ゼンゼに対して相性の良い魔法を使える者がいるのね。

 もしくは、ゼンゼを越える魔力量・魔法技術を持っているフリーレンを正面から当ててもいい。

 恐らくは最後に待っているであろうフリーレンが最大の敵になるでしょうけれど……。

 それだって、フリーレンと他の受験生たちが同時に襲いかかれば……少なからず犠牲は出るかもしれないけど、確実に勝てはするでしょう。

 

 冷静で冷徹な判断さえ下せば、この試験は確実に合格することができる。

 そういう風に仕組まれ、そういう風にデザインされた試験なのよ。

 

 

 

 ……けれどそれは、私、アウラがいなかった場合の話。

 

 ゼンゼはおじさまの催眠耳飾りのおかげで、私やリーニエのことを魔族だと思考できなくなっている。

 故にこそ、こう思ってしまったのだろう。

 その漏れ出す魔力から類推するに、フリーレンという最大戦力や、あるいはアウラ自身を当てれば、『魔法使いアウラ』は簡単に撃破が可能だと。

 

 けれど、それは違う。

 何故なら、私は元魔族で……人類にはとても使えない規模の魔法を使えるから。

 

 その魔法技術を、完全に人を殺すことに向ければ……。

 自分で言うのもなんだけど、魔族の殺害に特化しているらしいフリーレン以上の、人間にとっての脅威になってしまうでしょう。

 

 ……それこそ、一級魔法使いさえ何の抵抗もさせないまま、葬り去ることが可能な程の。

 

 

 

「だから、お願い。せめて私か、フリーレンのどちらかと一緒に動いて欲しいの。

 私か彼女と、他に2人以上の魔法使いがいれば……そうそう手は出して来ないはず」

「私?」

 

 自分の名前が出るとは思わなかったのか、フリーレンは小首を傾げた。

 

「……今は細かく語る時間がないから省くけれど、相手はある程度こちらの実力を測って、手を出す相手を考える……はずよ。

 だから、孤立していない私やフリーレンには喧嘩を売るなんてことはしない……はず」

「不確定な情報が多くない?」

「それは……ええと、何と言うか。

 フリーレンにはわかるように言うと、オラッ催眠関係の話なのよ」

 

 その言葉にピクリと眉を動かしたのは、フリーレンとフェルンだけ。

 リーニエの正体を知っているっていうエーデルという魔法使いでさえ、小首を傾げるばかりだ。

 

 ……流石はおじさまの催眠ね。

 エーデルが知っているのは、「リーニエがオラッ催眠されて人間堕ちした元魔族である」というところまで。

 私までが元魔族だということは知らない……というか、この耳飾りを外しでもしない限り、決して知りようがないのよね。

 

 一級魔法使い選抜試験に挑める精神魔法の専門家、つまりは人類最高峰の精神の専門家に対して、明らかにわかるはずの言い回しで発言しても、違和感を覚えさせることすらなく認識を誤らせるなんて……。

 魔法による精神防壁を破ることすらなく、痕跡1つ残らず認識を乱すっていうんだから、やっぱり最強の精神干渉と呼んでいいでしょう。

 

 ……本当に、おじさまがこの試験に参加していなくてよかった。

 

 もしあの人がここにいて、私がこの迷宮(ダンジョン)について何も知らなかったら……。

 私たち受験生も、一級魔法使いゼンゼも、迷宮(ダンジョン)に一歩足を踏み入れた時点で、その首を掻き切っていただろうから。

 

 

 

「うーん、アウラの言ってることが事実だとすると、今回はちょっと覚悟しないといけないかな。

 困ったな、強い相手との戦いは好きじゃないんだけど」

 

 私の必死さが伝わってくれたのか、フリーレンは……その表情からはあまりそうとは思い難いけど、どうやら気合を入れ直してくれたらしい。

 

 ……よし。

 今のフリーレン相手なら、なおかつ周りに協力関係にある魔法使いがいるのなら、私だってそうそう手を出そうとはしないはず。

 

 

 

 最後に、私はこちらを窺ってきている彼に、改めて声をかける。

 

「元第1パーティ、トーン、だったわよね。あなたの気持ちは、わかるつもりよ。

 本来魔法使いは、自身で魔法を極めていくもの。誰かと協力するというのはそもそも本分から離れるし、相手が信頼できるかどうか常に気を配らなければならない。

 それよりは信頼できる自身の魔法だけで攻略しよう、というあなたの意図は、決して間違ったものではないと思うわ」

 

 無論、多少の感情は入っているだろうけれど、そこは言わない。

 たとえそれが感情論の決定だったとしても、正しい行動であれば何1つ否定すべきことはない。

 

 ……ただし、それが本当に正しい行動であれば、の話だけれど。

 

「けれど、今回の試験は例外よ。相手は神代の魔物であり、試験官側が用意した命綱すら通用しない可能性が高い。

 1人で動けば……それこそ私やフリーレンでさえ、一瞬で命を落とす可能性がある。

 だからどうか、他の人間と一緒に動いて欲しいの。協力しろとは決して言わない。ただ横を歩き、利用できる時に利用するだけでいい。

 そうするだけで、あなたも、他のメンバーも、生存率が上がるから」

 

 だから、お願いします、と。

 そう言って、頭を下げる。

 

 

 

 ……なんとなく、視線を感じる。

 リーニエ以外の魔法使いたちから向けられる、どうしてそこまでするのかっていう、不思議そうな視線。

 

 私たちはあくまで、受験生という非常に緩い繋がりしか持っていない集団だ。

 言ってしまえば、相手が目の前で死にかけていても、助けなきゃいけない道理はない。

 なんなら、トーンが言ったように、誰かを捨て石にして合格しようと思う者もいるかもしれない。

 

 あるいはそれが、人間としてあるべき姿なのかもしれない。

 私は、より多くの人類を救うため、黄金郷のマハトを殺さなきゃいけない。

 それによって救われる将来的な人数は、今年一級魔法使い選抜試験に参加した人数よりずっとずっと多いはずだ。

 理論的に考えれば、一級魔法使いになるために、なりふり構わず行動すべきなのかもしれない。

 より多くを救うために、より少なくを切り捨てなければならないのかもしれない。

 

 

 

 けれど……。

 

 ……私は、もう、おじさまに理解らされてしまったの。

 

 愛を。

 人を愛し、救うということ。

 それの持つ、何よりの尊さと輝きを。

 

 だから、見捨てない。

 私は、私の手の届く範囲で、全ての人を救う。

 

 それが、元魔族の魔法使い、アウラの……。

 大切な人から教えてもらった、新たな生き方だから。

 

 

 

「……俺を引き留める意味がわからないな。お前のような魔法使いからすれば、俺がいるかいないかに大きな違いなどないだろう」

 

 トーンは私の奥底を見通そうとするように、瞳をじっと見て来て……。

 

 深く、ため息を吐いた。

 

「……だが、そんなお前であれば俺を捨て石になんてする必要もないのも事実だ。それ程、第一次試験で見たお前の魔法は桁違いだった。

 そして、そんな魔法を使うヤツがここまで言うんだ。それが俺を気遣った真であれ、あるいは俺を己の策に使おうとする嘘であれ、この迷宮(ダンジョン)はお前からしても厄介と感じる程なんだろう」

 

 トーンは、そこまで言って数瞬まぶたを閉じた後……。

 改めて、私の目を見て来た。

 

「……いいだろう。俺だって無駄に死にたいわけじゃない。

 背中を預けはしないが、保険が万全でない可能性がある以上、最低限同行だけはしよう。

 一級魔法使い選抜試験は3年後にも開催されるが、俺の命は1つしかないからな」

「ありがとう、トーン」

 

 魔法使いは、偏屈な者や感情的な者も決して少なくない。

 正直、彼がここで足を止めてくれるかは賭けだったのだけれど……。

 なんとか集団行動で事が運べそうで、一安心ね。

 

「ただし、条件がある。お前の知っている情報をここで吐け」

「ええ、こちらもそのつもりよ」

 

 トーンが足を止めてくれた以上、実質的には時間制限がなくなったと言っていい。

 これで、この迷宮の危険に過ぎる魔物について、情報共有することができる。

 

 どうにか望んだ展開通りになってくれたことに、私とリーニエは安堵の息を吐くのだった。

 

 

 







 この先の迷宮は、おじさんが二次試験に参加していると、入場次点で受験者全員が自害してしまいます。
 だからおじさんを置いて行く必要があったんですね。

 アニメフリーレン、ことここに至って急にアニオリとか知らない設定とかぶち込んでくるから痺れる。
 ドゥンストは思ったより数倍渋い喋りしてたし、エーデルは……オラッしたりしてごめんね……。



(追記)
 誤字報告をいただき、訂正させていただきました。ありがとうございました!
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