最強催眠種付けおじさんvs女魔族   作:アリマリア

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 アニメの複製体戦、あまりにもモルトラークされすぎて思わず全部書き直そうかなって思いました。





元魔族ペア vs 水鏡の悪魔(シュピーゲル)

 

 

 

 つい30分程前。零落の王墓の最奥に入る前のこと。

 私は他の皆から離れて、フリーレンやリーニエと共に、これからの打ち合わせをした。

 

 私は私の複製体の相手をフリーレンに託し、また彼女の複製体はリーニエと共に相手をする。

 だからこそ、互いの戦力や戦略について、情報を共有する必要があったのよね。

 

 で、その中で出た結論としては……。

 

 

 

「……アウラ、なんてはた迷惑なヤツなんだ……」

「うっ、そう言われると全く以て否定できないのだけれど……」

 

 フリーレンの言葉に、私は思わず俯いた。

 

 実際のところ、この迷宮(ダンジョン)攻略において最も貢献度が低い……というか、差し引きのマイナスが大きいのは、私でしょう。

 

 いや、我ながら色々と貢献はしてると思うのよ?

 思う、のだけれど……。

 

「本体は切り札が使えなくなって大幅に弱体化しておきながら、複製体は魔法の相性が噛み合い過ぎて最大級の脅威になるとか、そうそう起こることじゃない。

 その上、単純な魔力量の多さで脅威度を判別するから、最奥で待ち構えるボスじゃなく自由に歩き回れて不意打ちもできる脅威になってる。

 一方で本体は迷宮との魔法の相性の悪さで、本気で戦うと5分そこらで魔力枯渇。

 ……アウラがいなかったら、この迷宮(ダンジョン)の難易度2回りは下がったんじゃない?」

「うぅ……」

「あの、アウラってすごく真面目でこういうのは落ち込んじゃうから、その辺りで……」

「あ、ごめんね」

 

 リーニエが仲裁に入ってくれて、フリーレンは口を止めてくれた。

 

 わかってる……私がめちゃくちゃ足を引っ張ってることはわかってるのよ、本当……。

 

 

 

 言い訳をさせてもらうと、私はこの迷宮(ダンジョン)に入って実際に観測するまで、水鏡の悪魔(シュピーゲル)のことはただ小耳に挟んだだけだった。

 だから、複製体の特性を理解できていなかったのよね……。

 

 自律して稼働するのなら魔法生物かもしれないし、それなら『服従させる魔法(アゼリューゼ)』も効くかもしれない。

 ただの複製体なら、私が五分五分で殴り合っていれば、少なくともフリーレンが複製体を仕留めるまでの時間稼ぎくらいはできる。

 そう、思っていた……のだけれど。

 

 まさか複製体が、魂を持っていないから『服従させる魔法(アゼリューゼ)』も効かないし、迷宮(ダンジョン)と繋がっていて『物を動かす魔法』とここまで相性が良いなんて、思いもしなかった……と言うと、嘘になってしまうけれど。

 そこまで私に都合の悪い場所だっていうのは、最悪な想定だったのよ。

 

 

 

 でも、それも所詮は言い訳に過ぎない。

 何を言おうと、本来皆を助けるべき私が足を引っ張ってしまっている、ということだけが真実だ。

 

 私は意気消沈して、正座で反省の意を示していたのだけれど……。

 

「……でも、悪いことばかりじゃない」

 

 前から降って来た、フリーレンの言葉を聞いた。

 

「アウラがいなければ、間違いなくトーンは独断で迷宮に潜入してただろうし、その場合はこの試験に合格するチャンスはまずなかったと思う。

 協力する空気にならなければ私もフェルンを連れて単独で行くつもりだったし、そうなれば今あそこにいる面々は、もっと少なくなっていたはずだ。

 ……アウラは、確かに誰かを助けてるよ。偉いね」

 

 そう言って、手が、私の頭をぽすぽすと撫でる。

 

 おじさまのそれとは違う、小さくて、温かくて、柔らかい手の感触。

 これは、もしかして……。

 

 

 

「……ママ!!??」

「なんでだよ。元魔族のアウラにはいないでしょ、ママ」

「パパならいるわよ。別にお金はもらっていないけれど」

「アウラはパパ活よりいちゃラブサイドじゃん。どっちかと言えば私でしょ、それは」

「あなた自分がドライな方と思ってるのかもしれないけけど、いざその時になるとデレデレのべたべたじゃない。この前私が眠った後赤ちゃんプレイしたのも知ってるからね」

「次それ言ったら絶交だからねアウラ」

「ごめん、私に理解できる言語で喋ってもらっていい?」

 

 

 

 フリーレンに励まされて、私は少しだけ元気を取り戻した。

 

 確かに、今はみんなの足を引っ張ってて最悪な状態。

 けれど考えてみれば、私は元々、人類の足をあり得ない規模で引っ張りまくってる、極大なマイナスのスタートだった。

 誇ることでは決してないけれど、良くも悪くもそういう苦境には慣れてると言っていい。

 後は、私にできる形でプラスを培うだけね。

 

 そう思って、改めてお互いの情報を共有して、作戦を立てた。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 私とリーニエの、対フリーレン複製体作戦は、至極簡単。

 

 「私の戦い方を複製してるなら、2人に対して最初から本気を出すことはまずない」というフリーレンの言葉を信じて、しばらく真っ当に戦う。

 そして、複製体の攻撃が激しくなり、リーニエの攻撃受容が限界に近付いてきたら、一気に戦い方を切り替える。

 

 私が、大扉の奥の水鏡の悪魔(シュピーゲル)に『服従させる魔法(アゼリューゼ)』を放ち。

 この魔法が効果を為すまでの時間を、リーニエが稼ぐ。

 

 色々と仕込みはしたけれど、結局のところこの作戦の成否は、リーニエが握っている。

 

 水鏡の悪魔(シュピーゲル)はあくまでひ弱な寄生生物、多くの魔力を持っているわけじゃない。

 私の『服従させる魔法(アゼリューゼ)』が結果を判定し終えるまで、恐らくは10秒というところかしら。

 

 その間、リーニエがフリーレン複製体から私を守り、あるいはその動きを妨害し続けられれば、私たちの勝ち。

 逆に、リーニエが複製体を引き付けきれなかった場合は、私たちの負け。

 

 そういう、シンプルな……けれど、私とリーニエならば必ず完遂できると思った作戦。

 

 

 

 

 

 

 ……けれど、それは甘かったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

「が、ぐ……ァ゛」

 

 何が起きたか、一瞬、理解できなかった。

 

 気付けば私は……壁に叩きつけられ、指一本すら動かせなくなっていた。

 

 

 

 先程、フリーレンの練る魔力量が跳ね上がった瞬間。

 リーニエは、『高速で移動する魔法(ジルヴエーア)』でフリーレン複製体の背後に回り込み、斧を振り下ろした。

 

『閃天撃──ッ!!』

 

 そして、その攻撃は、確かにヒットした。

 

 複製体は振り向きざまに攻撃魔法を放とうとしたけれど……。

 振り向いた瞬間に何故かその魔法の行使を中止して、防御魔法とバックステップでの回避に切り替えた。

 

 フリーレンは魔法使いであって、戦士ではない。

 だから、戦士の技を模倣したリーニエの高速の攻撃に対し、僅かに反応が遅れた……のかもしれない。

 あるいは……その斧から放たれる閃光を見て、複製体になろうとも、反射的に攻撃の手を休めてしまったのかもしれないわね。

 

 とにかく、咄嗟に振り向いて展開された2枚の防御魔法の障壁を破り、更には構えられた複製体の杖を貫いて……。

 リーニエは、その胴を叩き切った。

 

 ……ただし、その通りは浅く、致命傷とまではいかなかったのだけれど。

 

 

 

 そこまでは、いい。

 そこまでは、決して良くない展開だけれど、理解できる範疇だった。

 

 けれど、即座に飛行魔法で体勢を立て直した複製体は……。

 

 私たちに、『何か』をした。

 

 

 

 正直に言うわ。

 私には『それ』が何か、わからなかった。

 

 余りにも正確な術式構築。

 余りにも高速な魔法展開。

 余りにも流麗な魔力循環。

 余りにも複雑な魔術原理。

 

 余りにも練り上げられた……フリーレンの切り札。

 

 私には切り札がある、と。

 最奥侵入前の作戦会議で、確かにフリーレンは語った。

 けれど、まだ完全に信じられない2人にそれを明かす気はない。

 そして、私がそれを使う段階に入れば、どの道2人は私に勝てないと思う。

 だから、切り札を打たれないように、不意打ちで殺し切ってほしい、と。

 

 ……けれど、今。

 模倣に過ぎぬリーニエの斧は、僅かながらにその核に届かず。

 

 私たちは、それに直面してしまった。

 

 

 

 複製体は、手をかざすこともなかった。

 

 ただ、私とリーニエは、いつの間にか壁に叩きつけられていた。

 

 ……いいえ、違う。叩きつけられていた、ではなく。

 今なお、壁に、押し付けられている。

 

 違う?

 身体の圧縮? 拘束魔法? 重力? ベクトルの変換、体内の組織の破壊? 部位の損傷?

 

 わからない。

 

 少なくとも、『服従させる魔法(アゼリューゼ)』の処理に脳のリソースを全て費やしている今、それを考える暇はない。

 

 

 

 ……まだ、私たちは、負けてはいない。

 

 確かに、痛打はもらった。

 今なお、私は指一本動かせない状態で、体はミシミシと悲鳴を上げている。

 恐らくはあと5秒も経てば、全身から血が流れ出し始めるでしょう。

 

 けれど、それだけ。

 

 私の左手には、未だ天秤が握られている。

 そしてその上には、白い魂と黒い魂が、既に乗り終わっている。

 

 あと、7秒。

 7秒あれば、私は、水鏡の悪魔(シュピーゲル)を、服従させることができる。

 

 今もなお、私は天秤に魔力を流している。

 その長い生涯でひたすらに研究を続ける魔族は、自然と魔力の操作に長ける。

 殊に、あの人類との大戦争を生き抜いてきた魔族は、今更痛みで怯んで魔力の操作を怠ったりはしない。

 ……流石に、天秤を持つ左手を斬り落とされたりすれば、話は別になるけれど。

 

 だから後は、私の脳が正常に魔法処理をし終われば、それで終わり。

 そして……このフリーレンの切り札が私を殺し切るまでには、20秒以上はかかるはずだ。

 

 この戦いは、私たちの勝ちに終わる。

 

 

 

 

 

 ……フリーレンの複製体が、これ以上何もしなければ、だけれど。

 

 

 

 

 

 私の潰れかけた視界の隅で、フリーレンの複製体が、こちらに手を向けたのがわかった。

 あの切り札じゃない……純粋な攻撃魔法を放つつもりね。

 

 

「なん゛っ……とも」

 

 ……なんとも、手酷い。

 500年分の魔力による魔力防護を持つ私を貫く、酷い痛みを伴う拘束魔法……と思われるナニカ。

 これで完全に抵抗させないまま、一方的に攻撃魔法を撃つつもりね。

 

 フリーレンは、かつて交戦した勇者ヒンメルのパーティの一員。

 私の『服従させる魔法(アゼリューゼ)』の最大の弱点、効果発揮までのタイムラグを知っている。

 だから、何もさせないまま、さっさと殺すつもりなんでしょう。

 

 そうすれば、私は防御魔法を展開せざるを得ない。

 そこに脳のリソースを割いた分だけ、『服従させる魔法(アゼリューゼ)』の発動は遅くなり……。

 同時に、私の体の限界は近付いていく。

 

 あと5秒あれば、それだけで勝てるっていうのに……。

 その5秒が、何よりも、長い。

 

 

 

 ……それでも、諦めはしないけれどね。

 

 「もう駄目だから」なんて理由で立ち止まれる程、私の生涯は善なるものではなかった。

 多くの人を殺し、喰らい、尊厳を踏みにじり、興味すら持たなかったこの一生。

 最後の刹那、須臾の瞬間まで、贖罪に使う以外に選択肢はないんだから。

 

 だから、私は無表情に手の平を向けて来る複製体を真っ向から睨みつけて……。

 

 

 

 彼女を挟んで、ずっと奥の方にいる彼女が、同じように諦めない姿を、見た。

 

 魔法の射出元としてイメージしやすい腕を突き出すことすらできず、視覚も含む感覚すらかき乱されて……彼女の模倣する過去の技も魔法も、大半が縛られた状態で。

 

 それでもなお、彼女は歯を食いしばり、魔力を練った。

 

 

 

「……『過去を繋げる、魔法(フェアビン、デン)』」

 

 

 

 刹那。

 複製体が、跳ね飛ばされる。

 

 あの魔法は……間違いない。

 

 ついさっき撃たれた、フリーレンの切り札!?

 

 リーニエ。昔から、魔力の流れを見るのはとんでもなく上手い子だとは思ってたけど……。

 まさかあの一瞬で、フリーレンの魔力の流れまで見ていたの?

 

 なんて抜け目のない、貪欲な子。

 ……でも、今回はそれに助けられた。

 

 『服従させる魔法(アゼリューゼ)』が効果を発するまで、あと4秒。

 

 少なくとも、その内の数瞬の時を、彼女の魔法はもたらしてくれた。

 

 

 

 『過去を繋げる魔法(フェアビンデン)』は、己の技量や理解に関係なく、見たことのある魔力の動きを魔法によって再現するというもの。

 そのため、その魔法が如何なるものか理解しなくとも、無理やりに使うことができる。

 

 ……けれど、難点が2つ。

 その原理も理解しないままの魔法行使になるから、その精度はぐっと落ちてしまうし……。

 消耗する魔力はそのまま、それどころか悪化することまであるから、オーバースペックの魔法を使うとすぐに魔力切れを起こしてしまう。

 

 実際、第一次試験では一部分とはいえ『万物を黄金に変える魔法(ディーアゴルゼ)』を模倣した結果、数秒で魔力が枯渇しかけたらしいし。

 

 

 

 そして……今回は、その弱点が色濃く出てしまったと言っていいでしょう。

 

 本来は壁に叩きつけ、そこで全身へのダメージと共に拘束するはずの魔法は……。

 フリーレンの複製体に直撃させるには、精度が甘く。

 拘束し続けるには、リーニエの魔力量が足らず。

 

 結局、ただ相手を弾き飛ばすだけの魔法になってしまった。

 ……それでも、複製体の防御魔法を貫くことすらなく無視して直撃している時点で、かなりの芸当だと思うけれど。

 

 

 

 戦いに身を置く者であれば、地面を転がるようなことは慣れているのでしょう。

 リーニエの魔法で跳ね飛ばされた複製体は、しかし壁に激突することはなく、両手両足を使ってその勢いを殺した。

 当然ながら、私とリーニエの拘束が解かれることもなく、今なお全身を襲う鈍い痛みは続き、指一本すら動かせないまま、左手の天秤を握りしめるので精いっぱい。

 

 そうして、即座に立ち上がった複製体は、私に……。

 

 

 

 ……ではなく。

 リーニエの方に、その手の平を向けた。

 

 

 

「まず、い……リーニエ!」

 

 複製体の、そして水鏡の悪魔(シュピーゲル)の、優先度が変わった。

 

 あるいは、フリーレン自身、自分の切り札への対抗策を持っていないのか。

 複製体はどうやら、リーニエの『過去を繋げる魔法(フェアビンデン)』を危険視し、先に仕留めることを決めたらしい。

 

 私に気を取られた隙を突いて再びリーニエに吹き飛ばされては、攻撃もできなくなるかもしれない。

 そして、『過去を繋げる魔法(フェアビンデン)』は数多の可能性を秘めた魔法。下手をすれば、私と同じ魔法を使えるかもしれない……と、水鏡の悪魔(シュピーゲル)は判断したんだろう。

 

 更には、現在私は魔力制御で漏出魔力を減らした状態であり、リーニエはそれをしていない。

 魔物からすれば、リーニエの方が強く見えるのかもしれない。

 

 それらが合わさって、水鏡の悪魔(シュピーゲル)は私よりリーニエの方を優先して殺すことを決めた。

 

 

 

 ……けれど、勿論、リーニエが私よりも強いなんてことはない。

 

 確かに、彼女は強い。

 並みの一級魔法使い程度なら、勝つことができる。

 今回同行する一級魔法使いゼンゼとも、極端に離れた距離からでないのなら、善戦が可能でしょう。

 

 けれど……。

 こうして拘束されながら、フリーレンの本気の攻撃魔法を受け切れる程じゃ、ない。

 

 フリーレンの魔力が巡り、その手に集まる。

 駄目だ。撃たせちゃいけない。リーニエが死ぬ。

 私は咄嗟に今使ってる魔法を停止し、複製体に向けて攻撃魔法を放とうとして……。

 

 

 

『アウラ』

 

 

 

 『彼方に声を届ける魔法』で伝わって来た、リーニエの声を、聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『お願い。やって』

 

 

 

「ッ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の網膜を、黒い閃光が焼き焦がすと、ほぼ同時。

 

 カタン、と。

 天秤が、完全に傾ききった。

 

 

 







(追記)
 誤字報告をいただき、訂正させていただきました。ありがとうございました!
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