ホロライブ外伝〜風呂嫌いのシャチとからあげとムシキング〜   作:兎乃神

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裏稼業てなーに?それ美味しーの??ぽぇぽぇぽえぇ??

 宵闇が過ぎて久しいネオン街。

欲望渦巻くこの街で移ろう水面は露となる。

数多の誘惑に心奪われる不夜城にあっても、薄れる事なく一際輝く彼女にはどんな光り物も影を潜めるだろう。

 

「んーー、この辺りのはずなんだけどぉ~?」

周りを見渡し一人呟く彼女の鈴の音は喧騒の中に消えていく。

 

「おっ♡おっ♡おっ♡おっ♡」

「いた!いた!!いたぁ〜〜♡♡」

 

「ねぇ♡おじさんな~にしてるの?今からお店行くの?」

「ぽぇ♡ぽぇ♡ぽえぇ〜♡♡♡そんなのつまんないよー!!ねぇ~えぇ〜♡お店なんか行かないで沙花叉と遊ぼ〜よ〜♡♡」

 

おじさんと呼ばれた男は唐突に物陰から現れた女の子に驚きと共に怪訝そうな顔を浮かべる。新手の客引きか?

確かに十人が十人可愛いと言うくらいの女の子だ。

 

可愛い。

 

だが何故だろう。

 

シャチを模した帽子に大きい赤チェックのリボン

無数のベルトをあしらったオフショルパンクな出で立ちに

赤チェックのスカートから伸びるガーターストッキングが 首輪の様なチョーカーや露出度の高い白地のインナーと相まって男心を擽るが、本能がアラートを鳴らしている。

 

この女はヤバい

 

「ぽぇ〜〜?

 あー♡ねぇ~♡おじさん沙花叉の事見すぎだってぇ♡

 やらしぃ〜んだぁ〜♡この♡このぉ♡♡」

 

小突かれて気付いた時には目で追ってしまう。

このままでは駄目だ。早くこの場を去ろう。

君子危うきに近寄らず、それが一番だ。

 

「沙花叉お風呂嫌いだけど、おじさんだったらいーよ♡」

「へへへ♡沙花叉の事お風呂で綺麗にして♡ねっ?

 沙花叉もおじさんの事綺麗してあげるから〜♡」

「ねぇ〜えぇ〜♡いいでしょ?ねっ?ねっ??

 沙花叉と一緒に楽しい事しよ♡♡」

 そう言うと徐ろに上目遣いで胸元に指を伸ばし、こちらの反応を愉しむように更にたわわな部分を露出させていく。

 

「ぽぇ♡ぽぇ♡ぽぇえ♡♡」

「沙花叉、この路地裏抜けた先にいい場所知ってるんだぁ♡ほぉ〜らぁ〜♡沙花叉我慢で〜♡きぃ〜♡なぁ~♡い〜♡」

 

何なん?可愛いかよ。

君子危うきに近寄る選択もこのネオン街では一興か。

 

街は街だ。それ以上でもそれ以下でもない。

 

たわわを腕に押し付けられて気を良くした男は沙花叉と一緒に華やかなネオン街の端の路地裏に消えていく、

それが男の最後の選択となったのだ。

 

 

 

 数時間後、ネオン街の大通りから外れた路地裏の一角。

寂れた雑居ビルの最上階は血と硝煙の匂いがまだ取れない。

男だった物を視界の端に追いやり、掃除屋沙花叉クロヱは

大きなため息をつく。

 

「ダリィ〜……」

 

掃除屋としての仕事は至って順調。

強いてあげるならお気に入りの洋服に少し返り血がついたくらいだ。

 

気が重いのは別の理由だった。

 

秘密結社holoXのインターンの掃除屋。

それが沙花叉クロヱの顔の一つだ。

秘密結社の任務は失敗が許されない。

故に依頼達成の報告は確実な物でなくてはならない。

故に持って帰らねばならない。何を?生首を。

 

何でも同僚の侍が総帥に直談判して熱く語ったせいで、総帥が面白がってOKしたらしい。

現場の沙花叉にとっては迷惑以外の何者でもない。

 

盛大なため息しか出ない。

一仕事終えて疲れてるのに首を切断して侍から受け取った折り畳み式首桶に入れるとか苦行でしかない。

 

よし、この首桶はござる桶と呼ぼう。

 

そう一人心に決めてござる桶に首をしまうと、

沙花叉はたわわの谷間からスマホを取り出した。

 

「しもしも?ルイ姉??沙花叉だけど依頼終わったよー?」

 

「おー!沙花叉おつかれー!!報告待ってたよー!!!」

秘密結社holoXの女幹部鷹嶺ルイ。

仕事の出来る女幹部は報連相も欠かさない。

 

ブラック企業上がりの元ヤンの上司である女幹部は

上機嫌に芯のある声で応える。

 

「ターゲットを上手く誘って仕留める事が出来たじゃない。インターン生の仕事としてはまずまずって所ね。」

 

「そいつはどーも。」

乾いた視線を周囲に向けるが気配はない。

どこかで見ていたかのような物言い。

いや、違うな。

どこかで見ていたんだ。流石は鷹と言ったところか。

大方、ターゲットを逃した場合に沙花叉者共

情報全てを無かった事にするつもりだったんだろう。

 

秘密結社としては秘密は墓場までって事か。

面白くもない。

 

「ぽぇぽぇぽぇ〜?あっるぇ〜??もしかしてルイ姉見てたのぉ???沙花叉の事好き過ぎてぇ♡ストーカーしてたんですかぁ〜????」

 

「冗っ談じゃないわよぉ〜!仕事よ仕事。人事評価も女幹部の仕事内!!」

 

「成る程成る程♡高みの見学って訳かぁ〜。

鷹嶺ルイだけになぁ!!」

 

電話越しにくぐもった声が聞こえる。

きっと爆笑し過ぎで呼吸困難に陥っているのだろう。

 

「ひー♡ひ、いひひひひ♡はぁ、ひー♡さ、沙花叉きょ、今日もセンス最高!それだけで沙花叉をインターンにしたかいがあったわ!アハハハハハ!!」

 

掃除屋業を廃業したらお笑い芸人としての道も悪くないかもしれない。

客が鷹嶺ルイだけだったらの話だが。

 

「ルイ姉笑ってるの所悪いんだけど沙花叉帰るからね~」

 

「ひー!ひーー♡」

 

沙花叉は通話を終わらせため息一つして胸の谷間にスマホをしまい背伸びをする。

 

「んーー!!それじゃあ帰るとしますか」

 

掃除屋は全ての証拠を残さない。

今夜のデートは沙花叉とターゲットのおじさん、そしてノゾキのルイ姉だけの秘密だ。

 

「ほらぁ〜♡おじさん♡身体とのお別れすみましたかぁ〜?沙花叉と一緒に帰るんだからぁ♡早くござる桶に入りなさぁ〜い♡♡」

 

一人しかいない雑居ビルで沙花叉の甘い声が響く。

それが沙花叉のおじさんへの最後の手向けだ。

おじさんに拒否権はない。

あるのは強制的に桶に入れられる、ただそれだけだ。

 

「よーし!しゅっぱぁ〜つ!!

ぽぇぽぇぽぇ〜♡」

 

ござる桶を脇に抱えて雑居ビルを去る。

雑居ビルに残されたおじさんの身体は何処か物悲しい。

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