あなただけについていく   作:如月SQ

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あなただけについていく

 暗い……臭いしなんか生暖かい……ここは、何処だ。

 

チカッ

 

 ん?今微かに光が……見えたっ……!

 その方向に向けて、思いっきりもがく!

 う、おぉおおおおお!

 

「どりゃぁ!」

 

「おぉ!生きてたか!」

 

 飛び出した先には同族の姿。

 俺が飛び出した所、背後には俺達の何十倍もあるような巨大生物の姿。

 ああ、思い出したぜ、こいつに喰われてたのか!

 

「ったく、口くせえんだよ!クソが!」

 

「生きてて何よりだぜ戦友」

 

「ああ、今回の犠牲は?」

 

「お前がなる所だっただけだ。部隊それぞれに欠けなし」

 

「そりゃ上々。我らがキャプテンも喜んでるな」

 

「お前が喰われた時絶望顔してたぞ」

 

「キャプテンもいつまでも馴れないな。ま、だからこそついて行く甲斐があるんだが」

 

 俺達はこの未開の星をキャプテンの指揮の元、探索、戦闘をこなし、珍しい物資を発見したら運搬する、そんな部隊だ。

 数は増えたり減ったりはするが、100を越える事はない。キャプテンの指示が届かなくなるからな。

 

この星の生物はどいつもこいつも、俺達の数十倍はあろうかという巨体ばかり。

 毎回相手するのは骨が折れるぜ……今俺が喰われていたのは、赤い体に斑点のある、かなり同じ個体が発見されてる巨大生物で、何度も倒した事のある奴だ。

 本来は背中に張り付いて倒すんだが、振り払われて喰われそうになってた新入りを庇い、俺が喰われて……。

 

「ぜんばい!」

 

「うお!」

 

 庇った新入りが涙を浮かべて俺に抱き付いてきやがった!

 

「ごべんなざい!ぼぐのぜいでぇ!」

 

「やめろやめろ!新入りのてめえが喰われてたら、とっくに消化されちまってるよ!俺なら大丈夫だと思ったから庇っただけだ!」

 

 いやまぁ、正直先に死ぬなら若いこいつじゃねえ、年長の俺だろうと思っただけだが。

 とはいえ、あんまり関係ないけどな、この部隊の消耗率は高い。俺は運良く設立初期からいるが、俺より若い奴を何度見送ったかわからん。

 それでもそういう機会があれば……と思ってはいたから今回の行動に出たが、悪運強くて生き残っちまったみたいだな。

 

「うぅうううう!」

 

「ったく。次は気を付けろよ?今度は庇えるかわかんねえんだからな」

 

ピピーーーッ!

 

 っと、キャプテンの集合の笛か。

 

「ほら、いつまでも泣いてんじゃねえ。行くぞ」

 

「ぐすっ……はいっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まず部隊を二つに分ける。ここまでのルートで死骸を回収する班と、今回の目的地までの道を切り開く班だ。また、前者は副キャプテンの指揮で動いていてくれ。事前の調査ではこの辺りに既に敵性生物はいないが……努々油断しないように!」

 

 成る程、さっきまで敵性生物を兎に角倒して放置していたのはなんなんだと思ってたが、今回の本命があったか……。洞窟でも見つけたか?

 確かに表層よりは珍しい物が見付かりそうだが、同時に閉鎖空間なだけあって危険でもある。

 ま、そこは俺達が気張ればいい事か。

 

 俺は回収班だな、副キャプテンの指揮か……笛での指示はしっかりしてるんだが、何考えてるかわからないから苦手なんだよなぁ。

 

「では行動開始!」

 

ピィーーーーッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、今日の調査どんなの見付かるかな!」

 

「ん?そうだなぁ、キャプテンの為になる物が見付かるといいな」

 

「ね!こないだ見つけたお宝でキャプテンの装備強くなってて、ビックリしちゃった!炎に包まれながらもあたしを助けにきてくれたキャプテン格好良かったなぁ……」

 

「くく、ネイビーお前、キャプテンに惚れたか?」

 

「そ、そんなんじゃないって!立場も違うし……弁えてるし……」

 

「わりいわりい。ま、キャプテンはいい男だからな。気持ちはわかるぜ」

 

「…………レッド、まさか、そっちの気があるの……?」

 

「そういう意味じゃねーよバカ。ほれ、船までもう少しだ、気張るぞ」

 

 敵性生物の一つ一つがお宝だ。俺達は小型……とは言え俺達とそう変わらないサイズの死骸を運んでいく。

 途中青部隊のまあまあ古参の女と話していたが、うーん、やはりキャプテンはいい男だ。

 途中寝言をほざいていたが、キャプテンを慕ってない部隊員なんざいねぇだろ。

 

 ……よし、船に運び終わった。

 さて、この後はどうすんだ?

 副キャプテンに目を向けると、数を確認していたのだろう、目線をキョロキョロと忙しなく動かしていた。

 やがて数が揃ったのか、副キャプテンは笛を鳴らす。

 

ピッ!ピッ!ピピィーーーーーッ!

 

 集合して、キャプテンと合流目指して行進、か。

 了解、行きますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご苦労、副キャプテン……集合!整列!」

 

ピーッ!ピッ!

 

 指示通り、各部隊毎に整列する。

 

「間も無く私達は目の前の洞窟の探索を始めるが、入る前に暫し休息を取る。すぐそこに食糧を用意しているので、「やったぁ」……それぞれ仲良く分けるように!では、解散!10分後、洞窟に突入する!」

 

 飯か!嬉しいが、俺達はプロフェッショナル。反応する奴は……。いや、紫部隊の一番ののんびり屋が反応してやがったな。

 直ぐに近くの白部隊の奴に小突かれてたが……。まぁいいさ、あれでも仕事は出来る奴だ。

 

「飯だ飯だ、行くぞ」

 

「あいさー」

 

「うぃー」

 

「洞窟探索頑張るぞー!」

 

 今から気張っても仕方ないだろうに……まぁ、やる気があるのは良い事だけどな。

 

 

 

 

 

「うーん、美味い」

 

 俺は自分の分をさっさと確保し、一人でゆっくりと舌鼓をうっていた。

 甘味が体に染み渡るぜ……。

 

「またやったねこのデブ!いい加減にしなよ!?」

 

「ご、ごめんなさーい!」

 

 ……白部隊のスノウが、さっきの紫部隊のバイオレットにキレてんな。

 あいつらも古参だが、いつまで経っても騒がしい。

 

「おいおい、今度はバイオレットの奴何やったんだ?」

 

「あ!聞いておくれよレッド!こいつ三人分はあった食糧、あっという間に一人で食べちまったんだよ!逆に見せてやりたかったね!見事な喰いっぷりだったよ!」

 

「えへへ、それ程でも」

 

「褒めてないんだよ!このアホデブ!」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 そんなやり取りをしても、他の白部隊と紫部隊の奴らはわははと笑ったり煽るだけだから役にたたん。

 まあ、この二人も本当に仲が悪い訳じゃないから、放置しても問題ないとは思うけどな。

 

「まぁまぁスノウ、落ち着けよ。バイオレットなら食った分もしっかり働いてくれるさ?な?」

 

「う、うん!絶対絶対頑張る!」

 

「ほら、バイオレットもこう言ってるし……」

 

「はぁー……レッドは甘いんだから……わかったよ、バイオレット、次やったらただじゃおかないからね!」

 

「ご、ごめんねスノウちゃん、本当に気を付けるよ」

 

「はいはい、期待しないでおくよ……」

 

 そう言うスノウは心底呆れつつも、少し笑みを浮かべていた。

 ったく、素直じゃねぇなぁ。

 

 さて、そろそろ時間か、部隊に戻って……。

 

「まぁた世話焼き?」

 

「ん?ジャスミンか。まあな。俺が最古参な訳だし……キャプテンの手を煩わせるのもな」

 

「さっき喰われてた奴の台詞とは思えないわね、キャプテンすごい焦ってたわよ」

 

「うへ、耳が痛いぜ」

 

「貴方は貴方で、自分の価値をもう少し理解すべきよ。設立当初からいるのはもう、貴方しかいないのよ?貴方は部隊の柱。無謀な行動は慎むべきよ」

 

「……そうかねぇ、新しい芽も育ってきてると思うけどな。ロートルは若い芽を守る為に命を張るべき……俺はそう思うぜ」

 

「っ!その認識が甘いのよ!貴方が喰われた時、部隊員が一瞬止まったのよ!私が叱責したから直ぐに動き出したけど、致命的な隙だわ!」

 

「お前みたいなのがいるならそれこそ安心だ、もし俺になんかあっても、頼むぜ?」

 

 黄部隊のジャスミン……こいつも部隊に入ってなかなか長い。

 状況把握が得意な、部隊のまとめ役だ。

 少し耳が痛い事を言われちまったが……まぁ、こいつがいるなら大丈夫さ。

 俺はジャスミンの肩を叩きながら、その場を後にした。

 

「…………そういう事じゃないのよ。……私の気も知らないで……バカ」

 

 そんなジャスミンの言葉を、聞かなかった事にして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピッ!ピッ!ピィーーーーーー!

 

「これより!洞窟の探索を開始する!各部隊続け!行くぞ!」

 

 勇ましい笛と共に、俺達は未知の洞窟へと降りていく。

 さて、どんなお宝があって、どんな敵性生物が出るか……。

 まったく、恐ろしいが……何処かワクワクするな。

 

「先輩先輩!」

 

「ん?」

 

「怖いけど、ちょっとだけワクワクしますね!」

 

「はっ……同感だ。死ぬなよ、ラヴァ」

 

「はいっ!頑張ります!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――現実ってのは残酷だ。

 

 俺はこれまでの戦いでも、それをわかっていた筈だ。

 

 生き残るのは……良い奴でも、強い奴でも、賢い奴でもない。

 

 ただ、運が良い奴だけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!キャプテンッ!」

 

バクンッ!

 

「くっ!一斉攻撃だ!」

 

ピッ!

 

 キャプテンを庇ったネイビーは、凶暴な黒に斑点の特異個体に喰われた。

 一瞬の事だった。

 

「っ……!」

 

 黒い個体が力尽きた後、運搬する直前にキャプテンがその死体を殴った。

 珍しいそのキャプテンの様子に、俺達は何も言う事が出来なかった。

 

 黒い個体には、結局青部隊を中心に10は喰われた。

 だが、もしキャプテンが攻撃を受けていれば、犠牲はその程度で済まなかっただろう。

 ……なんて慰めは、ただ傷を抉るだけか。

 

 ベテランでムードメーカーだったネイビー、彼女を失った青部隊の雰囲気はひどく重かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数々のお宝を手に入れ、進み続ける。

 とある場所では黄部隊の一部が降ってきた破裂する岩の犠牲となり吹き飛び、数が減り士気の落ちていた青部隊が、水棲の敵性生物に喰われ更に数を減らされた。

 

 そして今、俺達はいくつもの落石の中を進んでいた。

 キャプテンは凄まじい指揮能力と笛捌きでそれらを避けて進んでいるが、黄色に斑点の個体が何匹も見受けられる。

 だが、その落石は敵性生物にとっても脅威だったようで、落石の一つが見事に黄色の個体を押し潰した。

 

「おお、ラッキー!」

 

 それを見て一瞬だけ部隊からブレてしまった後輩、そのすぐ側に、もう一匹の黄色の個体が佇んでいやがった。

 

「ッカヤロォ!ラヴァ!」

 

「あっ」

 

バクンッ!

 

 呆気なく、ラヴァは喰われた。悲鳴すら上げる事なく。

 

「っ!キャプテン!あいつを―」

 

「退避だ!退避ー!」

 

ピィーーーーーー!

 

 落石が続く中、ラヴァを助ける為に戦闘をする訳にはいかない。

 キャプテンの判断は正しい、正しいが。

 

「クソッ!」

 

 俺は悪態をつくのを止める事は出来なかった。

 視界の端で、ラヴァを喰らった個体が落石で押し潰されるのが見えた。

 そのやるせなさに、拳を強く握り締めた。

 

「死ぬなって……言ったじゃねぇか……!」

 

 落石を潜り抜け、俺達は進む。

 キャプテンの見事な指揮で、ここでの犠牲はラヴァだけ、だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、何処か重い雰囲気の空間……今までの感覚だと恐らく一段と強い敵性生物がいる、そんな予感がした。

 

「……嫌な雰囲気だ、気を引き締めて行く!」

 

ピッ!ピッ!ピッ!ピィーーーーーー!

 

 キャプテンもそれを感じているようだ。

 ここに来てから、不気味な音がしてるのも拍車をかける。

 

 そして初めて遭遇したのは、赤に斑点を基本とする、この洞窟でも数多く存在して敵性生物の幼体のような、白い小さな敵性生物。

 小さいとはいえ俺達と同じか少し大きいくらいではあるが。

 

「……初めて見る個体だ。待機!私一人で少し様子を見てくる!」

 

 少し危険だが、悪い選択肢ではないか。俺達は周囲を警戒しつつ、キャプテンの動きを見ていた。

 

 その小さな個体はキャプテンを視認しても進み続ける。

 キャプテンはその個体に攻撃を加え……その個体はそのまま力尽きた。

 

「……?異常な程弱いな」

 

 そうキャプテンが呟いた瞬間だった。

 

「きゃぁあ!」

 

「スノウちゃん!」

 

 何処から来たのかその個体がスノウを喰らった。

 だが、直ぐ様バイオレットが反応してその個体は倒される事となる。

 本来なら、あのタイプの個体に喰われても直ぐに死ぬ訳ではない。

 だが、その個体は普通じゃなかった。

 

「危なかったね、スノウちゃん。……スノウ、ちゃん?」

 

 バイオレットの呆然とした声が響いた。

 その個体の特性なのだろう、一瞬で噛み砕かれたスノウは、その口から解放されてもピクリとも動かなかった。

 仲の良かった仲間を失い、消沈するバイオレットだが、敵性生物はそんな隙を許さない。

 

「補食スピードが早すぎるのか……!くっ!しかもまだまだくる……!」

 

 キャプテンの視線の向こうから、その小さな白い幼体は次々と現れる。

 その光景に背筋に寒気が走り、部隊はざわめく。

 

「キャプテン!どうするんだ!?」

 

 キャプテンはその個体を睨み付け、暫し思案する。

 そして、その答えは直ぐに出た。

 

「強行する!このままでは埒があかない!」

 

 それは危険な賭けだった。

 だが……悪くない。

 そのまま囲まれてじり貧になる可能性もあるんだ。

 俺は支持するぜ、キャプテン。

 

「出来る限りあの幼体を避けて進む!私の先制攻撃で怯ませるか倒す!取り逃しを、補食行動に気を付けてトドメをさせ!行くぞ、突撃!」

 

ピィーーーーーー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その先にいたのは今までの敵性生物が小さく見える巨体の、敵性生物だった。

 赤い体に斑点のその姿だが、胴体がとんでもなく肥大化しており、その汚いケツからは先程から処理していた幼体を止めどなく生み出し続けていた。

 

「減らねえ訳だぜ……」

 

 不気味な音の正体もこいつか……。

 だが、ボーッと突っ立ってやがる。

 もしや、子供を生むしか能がねえのか?

 

「……よし、生まれる幼体は、私が処理する!総員!超巨大敵性生物に攻撃を仕掛けろ!突撃!」

 

 キャプテンもそう考えたようで、突撃の指示を出した。

 俺達の数は100からかなり減っているし、ここに来るまでに更に減らされたが、まだ70はいる!

 ここで一気に、数で押し切る!

 

「「「うぉおおおおおおお!!!」」」

 

 雄叫びが洞窟に響きわたった。

 特に紫部隊に気合いが入ってるな!

 

「スノウの弔い合戦だ……!覚悟しやがれクソ野郎が!」

 

 ……だが、敵性生物は、そう甘くない。

 甘く見た報いは、直ぐに訪れる事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 順調だと思っていた、超巨大敵性生物の横腹を攻撃し続け、生まれてくる幼体はキャプテンが処理し続けていた。

 奴は苦しんでいるように見えた。痛みにもがき、唸り声をあげていた。

 

「このまま押し切るぞっ!」

 

 誰かが言ったその言葉、それと共に奴は体を大きく震わせた。

 

「っ……!」

 

「わぁっ!」

 

「うぁっ!」

 

 それと共に弾き飛ばされ、俺達は倒れこむ。

 くそ、こんな力が……!

 心の中で悪態をついた俺が奴のほうを見ると、奴は唸り声をあげ、その体を傾けた。

 

 その動きに嫌な予感を感じた俺は、キャプテンのほうを向いて叫んだ。

 

「キャプテンッ!!」

 

ゴゴゴゴ

 

 地鳴りの音を響かせ、奴が向こうに転がり始める。

 

ゴンッ

 

 向こう側の壁に当たり……再度鳴いた。

 そして案の定、そのまま皆が倒れている方に、こっちに、転がり始めた。

 

ズゴゴゴゴゴゴゴ!

 

「しまっ……!退避!退避ー!」

 

ピピィーーーーーーー!!!

 

 それに気付いたキャプテンが冷や汗を流し、笛を吹く。

 だが、それは遅かった。

 俺を含んだ部隊はある程度その危機に気付き、笛に従って必死に退避したが……奴の真横にいた奴等に、笛の音が届いていない!

 それに俺らもギリギリだ!

 俺は奴が転がってこないスペースに向けて飛び込み、背後を見た。

 

 そして、転がって向かってくる奴に向けて、バイオレットが駆け出してたのが、見えた。

 

「スノウちゃんの仇だ!絶対!絶対ゆる」

 

プチ

 

 逃げおくれた部隊員が、奴の巨体に飲み込まれていった。

 

「ぎゃ」

 

プチ

 

「いや」

 

プチ

 

プチプチプチプチプチ

 

プチチチチチチチチチチチチチチチチチ

 

チチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ……!」

 

 やられた……!一瞬で何十やられた!?残ってるのは!?

 

「レッド!赤2青1黄3白3紫全滅!」

 

 ジャスミン!生きてたか、心強い!

 素早く数を教えてくれたのは嬉しいが、部隊の損傷が致命的だ……!

 

「ちっ……!どうするキャプテン!」

 

 この生き残りの数は撤退案件だぞ!

 

「っ……わ、私の判断ミスで……こ、こんな……!」

 

 ……指示がない。クソ、ショックを受けすぎたか!

 青い顔でわなわなと震えるキャプテンだが、このままではキャプテンの命すら怪しいぞ!

 

「っ!レッド!幼体が迫ってる!」

 

「息つく暇もねえな!」

 

 ジャスミンの指し示した先には、白い幼体が既に幾匹も此方に向かってきているのが見えた。

 あの超巨大敵性生物は既に動きを止めて元の場所に棒立ちし、此方を見下ろしてやがる。

 

「キャプテン!キャプテン!どうするんだ!指示をくれ!」

 

「わ、私の……!」

 

 キャプテン!

 キャプテンにばかり集中していたのが、良くなかったのだろう。

 俺はすぐ後ろに近付いていた幼体に気付けなかった。

 

「レッド!危ない!」

 

バクンッ

 

 気付いたのはジャスミンだけ……俺が油断、したから。

 

「ジャスミンっ……!この野郎っ!」

 

 くそ、ジャスミンも喰われた!クソ、クソ、クソ!

 俺の背後に迫っていた奴から、俺を庇って……!

 幼体を倒しても、噛み砕かれてしまったジャスミンは……!

 

 じりじりと迫ってくる幼体達に皆はまだ襲われていないが、時間の問題だ!

 

「キャプテン!」

 

「はっ!……くっ、すまない!まだ君がいた、君達がいた!諦めるのはまだ、早かった!」

 

 漸く思いが届いたのか、キャプテンは迫る幼体に攻撃を叩き込んだ。

 やっとか……!この絶望的な状況、どうする?

 

「幼体の処理は続いて私が行う!君達は……この試薬で一発逆転をはかる!」

 

 取り出したのは赤い液体、ついこの間完成したという試薬、俺達の力を一時的に高めるという名目の薬。

 だが、いけるのか?

 

「超巨大敵性生物の体力は、かなり減らせている筈。これで一気に決める!」

 

 成る程な、一種の賭けか……。

 いいだろう、キャプテン。俺はあんたについてくって決めてんだ!

 あんたが決めた事なら最後まで付き合うぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 死闘、だった。

 

「後は任せ」

 

プチ

 

 逃げ損ねた黄部隊が潰された。

 

「ぎゃっ」

 

バクンッ

 

 キャプテンの手が回らない程増えた幼体に、白部隊が喰われた。

 

 絶望的なその状況、それでも俺は最後までキャプテンを信じた。

 

 

 

 

 

 そして――

 

『ギュェエエエエ!!!』

 

 奴は大きく悲鳴をあげると、醜く肥大した体が破裂していき、その顔部分が死体として残った。

 

 気付けば生き残りは俺だけ……だった。

 

「や、やった……か」

 

 呆然と呟く。

 洞窟に入る前には100もいた部隊が俺だけ、か。

 

「た、倒した、のか……」

 

 その声、キャプテンの疲れた声に気付き、俺は勝利の達成感を共有しようと、顔をキャプテンのほうへと、向けた。

 

「っ……!」

 

 同時に俺は駆け出していた。

 気付けば動いていた。

 俺は、キャプテンをその場から押し退けた。

 キャプテンの背後に迫っていたその幼体から、庇って。

 

「あっ……!」

 

 目を見開いたキャプテンが手を伸ばすが、間に合わない。

 

 俺は、最後にキャプテンに精一杯の笑みを向けた。

 

「楽しかったぜ、キャプテン」

 

 そして、幼体の牙が、俺の真っ赤な体を噛み砕いた。

 

 ああ、クリムゾン、スカーレット、ブルー、シアン、ネイビー、イエロー、アンバー、ジャスミン、ホワイト、スノウ、パープル、バイオレット……。

 俺も、そっちに、行くよ。

 

 ……キャプテン……あんたは、まだ、来るなよ……。

 

 ………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ピクミンゼンメツ】

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

【ピクミンゼンメツ】

 

「あー!最後にやっちまったぁ!!!」

 

 テレビ画面に表示されたその文字に、少年は悲鳴をあげた。

 コントローラーを放り投げ、UFOのような船に操作キャラである『キャプテン・オリマー』が回収されていくのを見送っていた。

 

「いやー、行けそうだと思ったんだけどなぁ……強いなあのチャッピー。初見殺しがひでえ」

 

パリパリ

 

 ゲームは一時中断し、ポテトチップスを摘まむ。正直頑張って増やしたピクミン達を大量に殺してしまった罪悪感で、次の画面に進める気力がなくなってしまっていたのだ。

 

「けど面白いなぁ、このゲーム……いつのよ」

 

 スマホで検索して、このゲームが2004年のゲームだと知って少年はとても驚く。

 

「すげぇな、もう20年前のゲームじゃん」

 

 とても遊び甲斐のあるゲームに、少年は満足そうに笑みを浮かべた。

 

「……まぁでも今日はいいや。流石にちょっと……しんどい」

 

 少年は徐にゲームの電源を落とす。これでセーブデータどうなるかはわからないけれど、どうせなら……今日の分は消えてていいかな。

 そんなゲーマーにあるまじき思考をしながら、少年はソファーの上で大きく伸びをした。

 

 テーブルの上には紫の四角いゲーム機、その手前に置かれた長方形のパッケージ。

 そこに描かれた五色の不思議な生物ピクミン。

 そのキャラの頭上にはこう書かれていた。

 

 

 

ピクミン2

 

 

 

 

 

【Nintendo Switchにて最新作ピクミン4、好評発売中!】

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