魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡   作:防御特化っていいよね

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第12話 カルナージからの帰還

「今回は2対1ということで古代ベルカチームの勝利です。お疲れさまでした~~!」

 

 ぱちぱちぱち~~と模擬戦に参加していた全員とメガーヌさんとヴィヴィオの拍手がトレーニングエリアに響き渡る。ボロボロのバリアジャケットと騎士甲冑を身にまとった俺たちだけど、顔に疲れはなく、むしろ生き生きとしている。いやーしかし、超楽しかったな!戦術がそれぞれ違ったし、3回とも新鮮な気持ちで戦うことができた!

 

 ユニゾンを解いて疲れたといったラフィが俺のシャツの胸ポケットに入って眠ってしまう。まあもうこれ以上何もないからいいんだけど。うーんしかし、3回戦って落としたうちの一回はティアナさんの幻術に俺が封じられてそのまま撹乱されグダグダになってしまった負けだ。最初の一戦目はスターライトブレイカーと俺の破城激震のぶつかり合いで俺となのはさんが落ちて、援護が半分になったことによりはやてさんの広域魔法が乱舞して競り勝った感じ。

 

 しかし、まだ未完成とはいえ破城を使ったが、総合的な威力で言えばスターライトブレイカーは恐ろしいな。一部を消し飛ばしてなのはさんに当てることは出来ても、全部消し飛ばして相殺とか無理だ無理。頭おかしいよあんな馬鹿魔力、シュロスのカートリッジ使っても追いつけない。

 

「そ・れ・で♪カイトくん、最初の一戦目私を落とした魔法、あれは何?」

 

「あー!それそれ!収束砲でもないのになのはさんのスターライトブレイカーを消し飛ばしかけたの!びっくりしたよ!」

 

「あー、あれは初代が攻城戦の時に使った魔法です。まあ、城ぶっ壊せば全部まるっと収まってハッピー的な思想らしいですよ?俺のは未完成ですけど」

 

「あれで未完成って……完成系はどうなるのよ……」

 

「うーん、俺の家だと『城塞』の名を継ぐのに条件があるんですよ」

 

 俺の家に伝わる3つの魔法について説明しないと襲名の条件が分からないんだよな。俺の家に伝わる魔法は常軌を逸した強化倍率の身体強化魔法『剛健』、鉄壁の城塞『城塞不撓』、あらゆる城を打ち砕く『破城激震』……この3つが伝わっているわけなんだけど、まず襲名のための第一条件として『剛健』に耐えうる体を作るため、フラムとシュロスを素で振り回すレベルの基礎能力を作る必要がある。

 

 剛健が十全に使えるようになれば、城塞不撓の負荷に耐えられる体になったということなので、城塞不撓の改良に入る。この際先代に当たる城塞の騎士の『破城激震』を自らの城塞不撓で防ぎきることで、ようやく『城塞』の名を先代から受け継ぐことができるんだ。それで、ここから破城激震の修行に入れる。

 

「今は俺、この段階なんですよ。破城激震についてはまだ修行途中なんです」

 

「つまり、先代を超えないと襲名できへんてことか」

 

「ええ、当主としては関係ないんですけどね、城塞を受け継げるのは飛び飛びだったと聞きます。バーチャルデータでも超えればオッケーです。現実でやるとそりゃまあ、被害がですね」

 

「ふむ、その破城激震について完了となる基準は何なんだ?」

 

「己の城塞不撓を破城激震で打ち砕くことだ。これでようやく、城塞と城砕の名を拝名することになる」

 

 俺の説明をラフィが引き継いでくれる。そう、最後は己を超えることでようやく城塞と隠し名である城を砕く者『城砕』の名を継ぎ、アロイジウスの騎士として完成するわけである。道は長いなあ、先代を超えることが襲名の絶対条件なので少なくとも代を重ねるごとに城塞不撓は改良されて、強く硬くなっていく。そしてそれを砕く力を手に入れることでアロイジウスはさらに強くなるというわけである。

 

「ヴィヴィオの目がキラキラしてるね」

 

「努力を重ねる人が好きだからね、ヴィヴィオは」

 

「こそばゆいんですけど……」

 

 何というか、ヴィヴィオは俺のことを必要以上に大きく見ていないか?その尊敬してます!と顔全体に書いてある感じの表情はいいんだけど、俺はそこまでえらいもんじゃないし、そもそもが聖王教会にとったら不良騎士だ、聖王の聖遺物が無ければいつ権力で取りつぶしてもおかしくないやつだぞ。ああでも、嬉しくないわけじゃないよ?こそばゆいだけ。

 

 

 

 

 

「4日間、あっという間だったなー」

 

「そうですね!すっごく楽しかったです!来年は私も模擬戦に……」

 

「その前にヴィヴィオは体力つけるこった。頑張れよ」

 

 カルナージでのオフトレ合宿は、俺にとっては非常に有用なものだった。ルーテシアはちょくちょくミッドにくるそうなので、あまり寂しく思う必要はなさそうでよかった。というか、フラムとシュロスを分解させろと息巻いていたので、古代ベルカ系のデバイスマイスターであるラフィが同席していたらいいぞと言っておいた。ラフィがいなきゃシュロスもフラムも修理できないからな。

 

 俺はDSAAに無所属で殴り込みをかける気満々だったので、宣誓の意味を込めて出場登録を帰る前にみんなが見てる目の前でやったが、世界戦楽しみにしているよとみんなして俺が勝ちぬく前提で話すものだから期待が重くて困ったよ。気合いは入ったけど。

 

「そや、これのことなんやけどな」

 

「はい」

 

「……聖王教会に持ち帰っても、ええやろか」

 

「どうぞ?それはもう、はやてさんのものです。俺は聖王教会に入る気はありませんが、それを聖王教会に提出するのかどうかははやてさんの自由です」

 

 帰りの便はどうやらみんな一緒だったらしく向かいの席に座る、というか俺は窓際に追いやられ、隣にヴィヴィオ、その隣になのはさん、向かいにはラフィ、その隣にフェイトさんはやてさんが座っている。はやてさんが取り出したのは初日に返還した夜天の魔導書のバックアップだった。ちなみに現在使っている夜天の書をラフィが見たら顔を顰めて「出力が2割、処理能力に至っては4割下がっている」とのことらしい。作り直したとはいえ、闇の書に持ってかれた欠損部分は大きいのだろう。

 

 アロイジウス家はそれを預かっていただけだし、然るべき人物に渡すために守っていただけだ。だから、聖王教会にも預かっているものを要求されても頑として首を縦には振らない、たとえそれがもうこの世にいなくても、存在していなくても、アロイジウスがある限り預かり、守り続ける。ただ、預かり物を返還した先の人がどう使うかは自由だ。まあ大量破壊とかに使ったら顔真っ赤にして殺しに行くけど。

 

「なあ、一度でええから聖王教会に行ってみんか?今と昔は大分違うと思うんよ。毒殺なんてありえへん」

 

「申し訳ないですがお断りします。そもそもアロイジウスは聖王を神やその他の神秘的存在とは認めてません。普通の……ただ運命に翻弄された女の子です」

 

「はぁ……やっぱダメか。カリム、ごめんなあ……」

 

 ぐでん、とはやてさんがバックアップを胸に抱きしめて椅子の上にふにゃふにゃになる。はやてさんが言うカリムという聖王教会の人がどんな人かはしらないけど、聖王教会内での派閥的には穏健派なのかもしれないな。俺に接触してきている人たちは多分タカ派なんだろう。妙に管理局をけなしたりするし。しょうがないなあ、俺が言えるのはここまでだ。ラフィが寝付いているのを確認してこそっと。

 

「……聖王教会の人として会うことはできませんが、個人としては別ですよ」

 

「……優しいなあ、カイトくんは~~!お姉さんが抱きしめたるわ~~!!」

 

「ちょっ!?はやてさんあぶなっ!?」

 

「てめぇ何やってんだカイト!そこになおれ!アイゼンの頑固な染みにしてやる!」

 

「まあ待てヴィータ、今のはどちらかというと主からだ」

 

 最大限の譲歩をボソッと呟くと、なぜかはやてさんの頭の上にない筈のたぬきの耳がぴょこんと立った気がした。そうして顔をあげたはやてさんの顔には、満面の笑み。もしかして判断間違った?と後悔するよりも先にシートベルトを謎の手際の良さで外したはやてさんは俺を真正面から抱きしめる。やめてほしい、後ろから鬼教官の声が聞こえる。ヴィヴィオが私も―!とびかかってきて、事態の収拾は不可能になるのだった。判断間違えたわ、絶対。

 

「ちゃんと通信に出るんやよ?あと、デバイスは肌身離さず持ち歩くよーに」

 

「そのお説教は大分前にフェイトさんに受けましたよ……」

 

「もう一回してあげようか?カイト、模擬戦を見る限り無茶するのが前提みたいだし……」

 

「反論は出来ませんが遠慮したいですね」

 

「しかしまあ……べったりやな」

 

「しょうがないよ……最初から関わっていた私たちはともかく、大多数のヴィヴィオの周りにいる人はヴィヴィオの事情は知らなくても察せるんだもん。知った上で、無視してくれるカイトくんには懐いちゃうって」

 

「そやなあ……聖王を特別視してないんからか。ヴィヴィオは、普通の女の子、やもんな」

 

 疲れがたまっているのか、ヴィヴィオは俺の膝の上で眠ってしまっていた。膝枕ではなく横に座って、俺の胸に頭を預けた状態で。聖王の系譜に属する女の子……周りだって気にするし、気を遣ってしまうのは仕方がないだろう。翠と赤の虹彩異色に金髪、隠せない聖王の血を継ぐ者の証。オリヴィエ陛下は確かに聖王だった、でも……聖王家の中で特別ではなかった。ただ、人身御供のように、ゆりかごに捧げられただけの女の子だった。

 

 だから、俺は彼女を普通の人間としてみる。聖王陛下だなんて間違っても呼んでやるもんか。ヴィヴィオはヴィヴィオ、小学3年生の普通の女の子だ。涎で俺のシャツに世界地図を書いていく少女に苦笑しながら、俺はなのはさんたちと談笑をするのだった。嘱託魔導士試験も考えないとなあ。民間協力者から始めるか?

 

 

 

 

 

「ラフィ、ちょっと実家のほうまで行ってくるわ」

 

「ん、了解した。デバイスを忘れるな」

 

「わーかってるって。もう忘れねーよっていうか忘れたわけじゃなくて預けたんだろうが」

 

 カルナージでのオフトレ合宿から数日、まあ特に何もなく毎日ヴィヴィオにまとわりつかれて遊んでやったりトレーニングに付き合ったりしてやってるわけだが、今日は何でもヴィヴィオは用事があるとのことで久しぶりに一人で過ごしているわけだ。ラフィがいるけど。折角だから走り込みがてらほかりっぱなしの実家の様子でも見に行こうと俺はその足をベルカ自治領に向けた。

 

 ベルカ自治領は聖王教会のお膝元ではあるが、俺の家の土地も隣接している。腐ってもベルカ時代から続く騎士の家系だ、金も土地も持っている。俺は持て余しているけどな、ほとんど整備してはいないし、山と川、それと岩場と森があるだけの、いいように言えば自然豊か、悪く言えば荒地だ。それでもまあ、一応生家なわけだから、手入れにはいかないとな。

 

 たまーに勝手に聖王教会のシスターが薬草やら木の実やらを取って行ったりしているが、それくらいでやいやいいうほど狭い心は持ってないし、立て札や柵なんかを立ててない俺ら側も悪い。そこは聖王教会関係なく、大目に見ることにしている。

 

「屋敷はまあ、変わりないか」

 

 屋敷というか石造りの要塞のような屋敷の様子を確認する。中身に掛けてある保全の魔法と、それを発動し続けるデバイスと魔力バッテリーに魔力と万が一の時のためのカートリッジを装填してから、俺は地下に向かう。地下には武器庫があって、工房もあるんだが……如何せんラフィしか使えないから俺にはさっぱりだ。使ってしまった砲弾型カートリッジの追加分を手に取ってシュロスの中に仕舞い、施錠の魔法をかけなおした。

 

 2階建てのエントランスも、居間も、寝室も……特に変わりないな。聖王教会から届いていた封書を一応あけて確認してみると、何のことはない聖遺物譲渡の要請と卒業後の進路として聖王教会に入る様に告知する文書。変わらないことだ、封書を中に戻して同じような封書が纏めてある場所に乱雑に突っ込む。

 

 屋敷の玄関を出て、時間が余っているので川の近くの木を薪に変えて乾かしておくかと思い立ち、屋敷から離れる。ちょっとした森を突っ切ってしばらくすると小川のせせらぎが聞こえてくる。そして、何かを振り回す風切り音も。誰かいる?聖王教会の誰かか?と咄嗟に息を殺して気配を極限まで殺して近くまでより、様子を伺う。

 

「やっ!はぁっ!!!……あ、あぅ……」

 

「っ!?お、おいおい!お前、大丈夫か!?」

 

 一言で言えば、不審者だった。不審者というのは、上下黒のジャージで、フードを被って顔を完全に隠して……俺が唸るほどに鋭い蹴りや拳を繰り出して空を叩いていた。不審者にしておくには惜しいほどの技の冴えだ。そのままベルカの末期にも通用するかもしれないほど。

 

 なんだけど、その不審者は当たれば顎が粉砕されるであろうアッパーを放った直後に、足から脱力するように、崩れ落ちる。いくら不審者と言えど流石にこれは見過ごせないし、俺の土地で起こったら事件になってしまうので慌てて助け起こす。フードを取ろうと手をかけると、口元が動いた。

 

「お……おなか……へった……」

 

 その言葉を裏付けるように、きゅ~~~っと、不審者の腹の虫の鳴き声が、おれにも聞こえた。

 

 




 不審者登場。公式で腹ペコで行き倒れることがあると設定されている不憫な子です。ダリナンダアンタイッタイ。ヴィヴィオさん、3年生の後半にコロナとリオに出会ったとあるのですが、それまでお友達はいなかったんでしょうか……?コロナとリオ以外のお友達が出てこないから……。

 ではまた次回に。感想評価よろしくお願いします。
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