魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡   作:防御特化っていいよね

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第13話 世界チャンピオン参上

「はぐはぐ、もぐもぐ……」

 

「あーあー、落ち着いて食えって。誰もとりゃしねーよ」

 

 俺の目の前では何故か俺の家の土地の中にある川辺で拳舞をしていた不審者が、串に刺して塩で焼き上げた魚を一心不乱に食べているところだった。よくよく見れば、川が増水しても危険じゃない場所あたりに大きなテントが張られていて、しかも結構固定されて時間が経ってるっぽかった。実家をほったらかしているうちに住み着いていたらしい、ぶっちゃけどうでもいいんだけどね。

 

 しかし、よく食うなあと俺は7匹目の川魚の鱗をフラムで剥がし、内臓をむしり取ってシュロスの保存領域の中に常備しているサバイバルキットの中にある塩を振りかけて適当な木を削って作った串を指して焚火で炙る。いきなり腹を空かして倒れ伏した不審者を見捨てるという選択肢は騎士としてなかったので、しょうがなく俺は食事の面倒を見ることにした。

 

 まず、川にシュロスをぶん投げると、総計70キロあるいい感じの重さで衝撃波が発生し気絶した魚がぷかーっと浮いてくる、そしてそれを回収し、〆て適当な木をフラムで伐採し、焚火を作り、そして俺の炎熱資質で火をつける。あとはまあ、ごらんのとおり焼き魚だけではあるが、食料は確保できるわけだ、塩味だけですまんな。

 

 シュロスとフラムがこんなことに使われるなんてご先祖様は思いもよらなかっただろうな、不満そうにデバイスコアが光った気がするが、非人格化型なのでないだろう。ほれ、燃えろ燃えろー、良い脂の乗り具合だな、余ったら俺も食おうかな。

 

「むぐっ!?ん、んんんん!」

 

「おいおい喉に詰まらせるなって。ほら、水」

 

「んぐ……ごくごくごく……ぷはぁ!美味しかったぁ……はっ!?」

 

「お、正気に戻ったか?」

 

 サバイバルキットの中に会った非常用のミネラルウォーターを手渡すと、胸をどんどん叩いて喉に詰まらせたものを落とそうとしていた不審者さんはごくごくと勢いよく喉を鳴らしてミネラルウォーターを呑み切って満足気な息をついた。その時の声で分かったが、女の子だ。なんで俺の土地にいるんだ?と首を傾げていると顔の下半分でも分かるほど真っ赤にゆだった不審者が震えていた。

 

「な、ななななんで……こんなところに人がぁ」

 

「そりゃここ、俺の、というか俺の家の土地だし。ほっぽりだしたまんまだったけど」

 

「ひゃえっ!?じゃ、じゃあウチ……不法侵入者なん!?」

 

「ん、まあそうなるかな。それで、不審者さんはここで何してたわけ?」

 

 赤くなったり青くなったり忙しい人だなこの人は。ワタワタと手を振って慌てている不審者さんに俺は思わず吹き出す。別に怒る気はないし、好きにいてくれたらいいよと言うと彼女はほっと息をついてフードを後ろに下げる。するとどうやって収納していたのか分からないほどの豊かな黒髪のツインテールが現れる。ああ、知っている人物だ、というか有名人だ。

 

「ウチ、ジークリンデ・エレミアといいます。勝手に土地の中に入ってすいませんでした、ベルカ自治領の自由区だと思ってて……」

 

「良いよ、境界線ないし。俺はカイト・エルンスト・アロイジウス。気軽にカイトって呼んでくれ、チャンピオン」

 

「あ、ウチのこと知ってはるんやね……アロイジウス……?どっかで聞いたような……」

 

「ああ、聖王時代の話だが、エレミアとは関わりがあった」

 

「そか、ウチ継いでるんは戦闘の記録のみで個人の記憶については……」

 

「別にどうでもいいだろ。過去なんて昔の話、俺たちじゃない。そういうことがあったってだけだ。ま、俺にとっちゃいまのお前はいきなり腹が減って倒れ込んだ女だけどな」

 

 ジークリンデ・エレミア、去年のDSAA世界戦の優勝者……つまり、全次元世界で1番強い10代の少女ってわけだ。まさかこんなところでキャンプ生活を楽しんでいるとは思わなかったが、ある意味では僥倖かもな。これがチャンピオン、俺の目標の一つなんだから。

 

 しかし、エレミア、エレミアねえ。黒のエレミア、古代ベルカで初めて、無手による人体の完全破壊術を作り上げた一族。多才なことで知られていて、機械工学や魔導学にも精通していた。アロイジウスが保管する聖王が使った戦腕も、エレミアの作品だからな。揶揄われたのが分かったのか、少しだけ頬を染めた彼女は意地悪言わんといて、とむくれる。俺はそれに苦笑してちょうど焼きあがった7匹目を手に取り、彼女に差し出した。

 

「去年の試合、すごかったぜ。俺も今年からDSAAに出るんだ。ま、上で待っててくれ」

 

「そうなん!?男子戦ってことはそうか、世界戦のエキシビション狙いやな!?わー!男の子に宣戦布告されるんは初めてやわ!」

 

「まあ、如何せんどうも都市本選までは素手縛りなんだがな。困ったもんだ」

 

「素手縛り?格闘型(ストライカー)じゃないん?」

 

「ほれ、今使ってるこれ、俺の相棒たち。まさか漁に使われるとは思わなかっただろうな」

 

『『Kein Problem』』

 

「あー、それはごめんな?ウチ、こういう生活しとるからどうもたまにご飯食べられないことがあって……」

 

 立て掛けられたシュロスと薪に突き刺さっているフラムが機械的な返事をするとそれようやくこれがデバイスだと気づいたジークリンデは苦笑しながら謝る。まあ、エレミアは旅をする一族だし、そういう風に根無し草なこともあるだろうさ。深くは突っ込まない、初対面で話すことでもない。待機状態に戻った2機に改めて礼を言ってから俺は腰を上げる。

 

「好きなだけいてくれていいぜ。俺は家と土地の確認に来ただけなんでな。変なもん食って腹下すなよ」

 

「ちょちょちょい待ち!まだちょっとお話してもええ?聞きたい事あるんよ!」

 

「おう、なんだ?」

 

「なんでアームドデバイス使っちゃダメなん?普通使った方が勝てるやろ?」

 

「ああ、俺が相棒たちを使うと非殺傷を貫通しちまうんだよ。場合によっちゃ再起不能もあり得るんだと。だから、まともに防御ができるレベルのやつかちあうまで、デバイスは禁止ってわけだ」

 

 俺がノーヴェさんに伝えられたことをそのままジークリンデに伝えると彼女はやっぱり、とボソッと呟いてから口元に手を当てて考えだした。ふーん、しかしインタビューなんかでは人見知りっぽくて縮こまってたチャンピオンの素の姿はこんなもんなのか。まあ、人のことをこうだったんじゃないか決めつけられるほど彼女を知ってるわけじゃないけど。

 

「なあ、今ここで……ウチと一戦やってかへん?素手じゃ不安なんやろ?見極めたるで?」

 

「へぇ……いいのか?」

 

「勿論、誘ってるのウチやで?ごめんな、君……カイ君は優勝後のエキシビションまで我慢できへんほど()()()()()なんよ」

 

「光栄だな。ご指導感謝するぜ、ジークリンデ」

 

「ジークって呼んで。あっ!勝手にあだ名付けたけどええ?」

 

 チャンピオンの突然の試合申し込み、DSAAの地区予選を俺の素手だけで戦い抜けるのか、勿論場合によっちゃデバイスも使うかもしれないが、不慮の事故で腕でも飛ばしたら問題だ。バリアジャケットの強度が高い人に当たるまでは流石に、な。それに、元々戦いたいと思っていた相手だ、向こうからしたら味見程度とはいえ、遊んでくれる気になったんだから。どうとでも呼べと返してから俺は立ち上がる。彼女もそれに続き、河原の石が無い平らな場所でお互い無言で構える。

 

 普段着の俺と、ジャージ姿のジーク。エレミアは相手にしたことはあるけど所詮はそれもデータ。戦闘の記録を受け継ぐエレミアはベルカの末期よりも強くなっている。重装歩兵のような構えをする俺と記憶でよく見た構えを取るジーク。格闘戦だ、魔法は違法なので使わない。

 

「いくでっ!」

 

「おうっ!」

 

 踏み込み、気づいたらジークが目の前にいた。低空タックル、投げ技だ。がっちりと下半身を抱きこまれた俺は投げられ、ない。ジークは持ち上げようとした俺の足が動かないことに眉をひそめる。アロイジウスの戦闘は陸戦が基本、大盾を構える俺たちが足元をおろそかにするわけには行かない。両足で踏ん張らなきゃ耐えられないんだよな。

 

 俺は足元のジークに向かって右手のうちおろしを放つ。流石の反応速度で俺の手を掌で受けてそのまま投げに持っていこうとするジークだが、掴んだ腕に全力で力を込めて俺は抗う。技じゃない、単なる力。筋力。それで洗練された技をねじ伏せる。振りぬいた右手に押されたジークがたたらを踏んでこちらを見据えて口を開く。

 

「投げられへんのか。初めてやわ」

 

「そりゃ、嬉しいことだな。先祖代々脳筋筋肉ダルマでな。それに、男として女の子に力で負けたら恥ずかしいだろ?」

 

「それ、今じゃ男女差別やで~」

 

「言うな、男の子にもプライドがあるんだよ」

 

「去年の男の子にもあったんかな?」

 

「さぁな。TKO負けだからなんとも」

 

 軽口を挟み合いながらお互い駆け寄り、ジークの1打が3打に見えるほどのすさまじいラッシュを左手一本で切り抜け、振り抜きのタイミングで右拳を放つ。ウチの格闘術は大抵相手の攻撃に耐えながら必勝、もしくは防御の上からでもあたるタイミングで撃つことだ。ウチのバカ力なら、防御の上からだろうと攻撃は通る。

 

「おっっも……!とんでもないパンチ打つやん。メロメロになっちゃうで?」

 

「楽しそうに笑うなあ、ジーク」

 

「そら楽しいもん。カイ君は、楽しくない?」

 

「楽しいぜ?メロメロになっちまいそうだ」

 

 せやろ?と微笑んだジークは上段回し蹴りをぶち込んでくる。俺はそれをあえて防御せずにまともに受けた。全身の筋骨をインパクトの瞬間に固めて防御することで、ダメージを最小限に抑えて、防御に回すはずだった余力を全て攻撃へ。左手で彼女の足を掴み、片手だけでぶん投げて地面に叩きつける。当然、彼女が受け身をすることを見越し、追撃の右を、の所で悪寒を感じでバックステップ、魔力の嵐が吹き荒れ、俺が立っていた場所が()()()()()()

 

「ジーク?」

 

 ゆらり、と彼女が立ち上がる。受け身を取ったのは見たし、叩きつける瞬間に引いてダメージ自体は最小限になる様に調整したはずだ。幽鬼のように立ち上がったジークが、さっきまでの楽しいという輝きに満ちた瞳とは正反対の、暗く冷たい瞳をしてこちらを見つめている。知っている、その目の中にあるもの……殺意だ。

 

「鉄腕、解放。ガイスト……」

 

「ああ、エレミアの神髄か。調子に乗って……力を籠め過ぎたか」

 

 どうやら、ジークの意識は今はないらしい。これが魔法戦だったら防御魔法なりなんなりで防いでジークのままでいられたのだろうが……魔法戦じゃないから防御魔法が使えず、かつ俺の対人戦不足と戦場ばっか体験していたせいで加減の弁が飛んだ一撃により、エレミアの記録に刻まれた自動迎撃(オートパイロット)の発動条件を達成してしまったらしい。今のジークは俺という外敵の排除のみを目的に動いている人形みたいなもんだ、彼女の意志は封じ込められてる。気づくまで耐えるしかないか。

 

「シュロスリッター、フォルムツヴァイ」

 

『kleinerform』

 

 イレイザー、当たった場所を消し飛ばす魔法であるエレミアの神髄相手に無手で挑むのは自殺行為だ。彼女を殺人者にするわけには行かない。そして、彼女に自責の念を植え付けてもいけない。絶対条件は、俺が無傷で彼女の猛攻を耐えて生き残ること。シュロスを起動し、第二形態へ変形させる。格闘戦での小回りを優先した円形の小盾だ。攻めることは考えるな。守れ。

 

殲撃(ガイスト)!!」

 

「おらっ!」

 

 イレイザーを纏った腕を防御魔法を分厚くかけたシュロスで受ける。っち!5重にかけた防御魔法を一撃で3層までぶち抜くか!魔法自体を消去してるって考えたほうがよさそうだな。蹴り、掴み、全てを着弾地点に展開した防御魔法で防ぎまくる。幸い、イレイザーで消せる魔法には上限があるらしい。5層の魔法を10層へ、これで2撃は耐える。身体強化もしてきた、こっちも『剛健』を発動して食らいつく。

 

 ドガガガ!と廃棄物処理施設のプレス機でも聞かないような音を立てて数秒で10撃以上の攻撃が嵐のように叩き込まれ続けるが、俺はそれを悉く防御魔法と身体強化の合わせ技で防ぎ続ける。イレイザーを纏ってない部分を素手で弾き、イレイザーはシュロスで対処する。鉄腕のおかげで多少力を込めてもジークに傷はつかないだろう。無限にも思える時間を丁寧に、丁寧に対処しながら耐え続ける。

 

「ん……あ……はっ!?ま、まさか……」

 

「……ん、ああジーク。起きたか……ああよかった……」

 

 極限の集中力を維持し続けて、300打から先は数えてないほどの打撃の果てに……ジークリンデ・エレミアは意識を取り戻したのだった。




 主人公は基本明らかな格下でもない限り加減をしないので往々にしてこういうことが起こり得ます。エレミアのオートパイロットが何時出来たかの設定が分からないので聖王時代には既にあったことにしています。

 シュロスリッターの第二形態はキャプテンアメリカが持ってるような円形の小型シールドですが、裏側にカートリッジシステムがくっついてるのでフリスビーは出来ません。殴れはします。

 ジークさん、死ぬかもって思ったら体乗っ取られるって怖いなあ。ではまた次回に。感想評価よろしくお願いします。
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