魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡   作:防御特化っていいよね

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第14話 DSAA開幕

「……ひっ、カイ君?ウ、ウチ、また……」

 

「ハァ……よく見ろ、ジーク」

 

「えっ、あれ……無、傷?」

 

「ハァ……悪いな……ハァ……力を籠め過ぎたみたいだ。怪我してないか?」

 

 ジークがエレミアの記録に刻まれた反射行動に体を奪われたが、元に戻す……正確には元に戻るまで耐え抜くことに成功した俺は呼吸を忘れるほど集中したせいか大きく息を乱しながら足を投げ出して地面に倒れ込む。まさかの事態を想定していたらしいジークが慌てて俺の顔を覗き込んでくる。飽和寸前の涙に覆われた瞳が大きく見開かれた。エレミアの神髄にさらされた俺が、無傷だったから。

 

「え、今ウチ……だって」

 

「しらん。俺はお前を投げて、お前は気絶しちまった。あったことはそれだけだ。お前は何もしてないし、俺がやり過ぎただけ。加減を忘れた馬鹿野郎が女の子を傷つけただけだ」

 

「ウソや……だって、こんなボロボロになって……」

 

「あん?あんだけ楽しく殴り合ったんだから地面くらいボロボロになるだろ。もう一回言うぞ……何も、なかった。いいな?」

 

「う、うううぅぅぅ……うわぁぁぁぁぁんっ!」

 

「おいそこでマジ泣きはやめろ!俺が本気で悪いことしたみたいだろうが!……悪いことしたんだけど!」

 

 あらゆるところが削り取られて地形が変わった河原を見て首を振るジークに対し俺があくまで何もなかったことを念押しすると飽和寸前だった涙は決壊してジークは大泣きしてしまった。倒れ込んで大の字になってる俺に縋り付いて泣くジークは、どこにでもいるただの女の子に見えた。やべーな、酸欠でまだちょっと動けそうにないぞ。どう慰めたもんか……。

 

 しかしまあ、強くはなかったな……エレミアの神髄による条件反射。厄介なだけだった。なぜか?と言われるとそこにジークの意志がなかったから、これに尽きるだろう。データで相手していたエレミアとなんも変わらん。意外性はなく、あくまでまっすぐに俺を排除しようとするだけ、基礎性能に任せたゴリ押し。その基礎性能が脅威だったんだけどな、確かに強いかもしれんが……俺が目指す強さではない。

 

 しゃくりあげるジークに、どうしたもんかと昔の記憶を掘り返す。ダメだ、初代の記憶を当てにするな。初代の周りにいた奴らは泣くことが許されなかったから、人前で泣いてなんかない。従って初代は泣いているところを見つけたとしても臣下としてみてみぬふりをしなければならなかった、慰め方なんかわかるか。

 

 そして俺の記憶……ダメだ、同じクラスのバカとバカやった記憶しか出てこねえ。何だ俺の青春は、ほぼ戦場のデータで蛮族していただけじゃねえか。最近になって不思議なことに女性、というかかなり年下の女の子を通じて女性と縁が出来たが泣いたとこなんて見てねぇ!ここまでの刹那の思考を超え、俺が導き出した答えは……

 

「あー……ジーク、今日は無理かもしれんが、またどっかでやろうぜ?今度は、お互い本気でよ」

 

「ひっく……見たやろ?ウチが吞まれたら……」

 

「何もなかったっつっただろ?それに……今俺は無傷でここに居る。エレミアの神髄ごときに城塞の守りが抜けてたまるか」

 

「……不器用さんやね、カイ君は」

 

「生憎筋肉で物事を判断しているからな」

 

「なんやの、それ。ふふふっ」

 

 まずは筋肉、とりあえず筋肉がアロイジウスのモットーである。俺の余りの挙動不審具合にジークも涙が吹っ飛んだのかぺたんと地面に座り込んだ状態で肩を震わせて笑った。ん、まあ泣き止んだなら結果オーライか。ああ、そうだいま何時だ?げっ、もうこんな時間かよ。帰らねーとまずいな。酸欠状態から復帰したので体を起こす。

 

「そろそろいい時間なんでな、帰るわ。ああ、そうだ……たまにここ来ていいか?一緒にメシでも食おうぜ」

 

「……いいん?」

 

「いないと怒るぞ~。不法滞在者として通報しちまうかもな」

 

「ふふっ、そら逃げるわけにはいかないわ。逮捕されたらエキシビション出られへんもん」

 

「そういうことだ。ま、今回は俺がやり過ぎただけってことで、な。ああ、そうだ……俺、通じるか?」

 

「通じひんかったらウチは世界戦優勝してないんよ?」

 

「そらどーも、んじゃな?」

 

 にっこりと笑ってくれたジークが、俺を認めてくれた。俺はジークに自分の連絡先を仮想画面のデータにまとめて押し付けて、立ち上がる。いい感じに燃えてきたな。ジークリンデ・エレミア……次は本気で戦いたいな。エレミアの神髄に縛られず、お互いの全力を、魔法アリで。それにはまず、男子部門で世界一にならないと。いやぁ……燃えてきたな。

 

 

 

 

 

 

 

「カイトせんぱ~~い!おはようございます!今日ですね!DSAAインターミドルの地区予選!」

 

「おーヴィヴィオ、おはよう。朝から元気だな。ノーヴェさんも、おはようございます」

 

「おう、おはよ。まあお前なら心配してねぇけど一応私もセコンドな。お?ラフィはどうした?」

 

「使わないなら来ないってことで自己メンテナンスのために実家に戻ってます。薄情な相棒です」

 

 ラフィはまあ、たまにそういうことがある。というか、戦いに行くくせに自分を使わないので拗ねているのだ。大事な戦なのだろう、私を使わないとはどういうことだってな。むくれたラフィは結局来る気を失くしたというわけだ。さて、話は変わるが今日がDSAAインターミドルの開始になる。男女別の会場、かと思いきや実は会場自体は一緒だ。リングも交代交代に使うことになる。

 

 会場を生で見るのは初めてなんだろう。きょろきょろといろんなところを見るヴィヴィオは、楽しそうだ。ともすれば俺よりも楽しんでいるかもしれないなあ。さてさて、俺は選手なので着替えを済ませて試合を済ませよう。俺はノービス戦、つまり一番下のクラスから始まるので今日だけで3戦ほど戦う必要がある。全勝すれば、エリートってクラスに上がることができるわけだ。

 

 試合ルールは1ラウンド4分、12000ポイントのライフ制で、ゼロにするか相手を気絶させれば勝ち。当たり前だが魔法の殺傷設定は厳禁、攻撃がヒットした際のダメージがAIによって算出されて、もしそれが骨折などの重度損傷を伴う場合クラッシュエミュレートという重傷を再現した状態が付加されることになる。相応の痛みと、腕の骨折ならば腕が動かしにくくなったりとかだ。まあ簡単だ、まっすぐ行ってぶん殴ればいいだろ。

 

『ゼッケン895番、ゼッケン674番は8番リングへ集まってください』

 

「呼ばれたなー。よし、やるか」

 

「はいっ!応援してますから!」

 

「頼んだ」

 

 ゼッケン895番、それが俺の番号。相手の674番は……見た限り魔導士タイプだな、ミッドチルダ式の射砲撃タイプっぽい。セットアップを済ませて俺はいつも着ている騎士甲冑ではなく、トレーニングウェアを元にした騎士甲冑に身を包んだ。古代ベルカの騎士でアームドデバイス使いだとバレたらめんどくさい。魔法陣だけなら近代ベルカか古代ベルカかどうかは分からんが、ふざけんな本気でやれと言われたら言い返せないからな。

 

「よろしくお願いします!」

 

「おう、よろしく」

 

 同年代か……しかし、ストレージデバイスじゃなくインテリジェントとは金かけてるなぁ……桁が3つくらい違うんだぜ?場合によっちゃ家が建つくらい高いのがインテリジェントデバイスだ。オーソドックスな杖タイプか……射砲撃型はDSAAの狭いリングだと戦いづらいものなんだがな、よくやる。

 

 ずり、と腰を落としていつも通りの素手の構えを取る。会場の視線は華やかな女子部門に夢中、俺ら男子はおつまみ程度の認識だ。それならそれでいいけどな。足元にミッドチルダ式の魔法陣を展開して準備を終えた相手が勝つ気満々の目線で俺を見やる。おお、いいねぇ。そう来なくちゃ。

 

『試合開始!』

 

「ドライブバレット!エクスキューションシフト!」

 

 試合開始と同時に相手は準備していた魔法を発動する。誘導魔力弾の一斉射か……どうやらデバイスにはカートリッジシステムは組み込まれていないらしい。だが、マルチタスクの数に難があるのか足が止まっている。俺は剛健を発動して身体能力を強化した後、踏み込みで地面を割り、魔法が発射される前に相手の懐に潜り込む。

 

『protection』

 

「ふんっ!!!」

 

「がはっ!?」

 

 相手のデバイスが自動で発動した防御魔法の上から全力の右拳を相手に叩き込んだ。プロテクションを紙のように突き破った俺のパンチは、相手の鳩尾を捉えて、甚大なダメージを伝える。相手は吹き飛んでリングアウト、クラッシュエミュレートは内臓破裂、骨盤骨折、背骨骨折ってところか。すげぇな、折った感触まで再現してるのか。

 

『ダウーン!カウント……否、気絶しています!ゼッケン895番、勝利です!』

 

 吹き飛んだ相手は壁にめり込んで、ずりずりとずり落ちる。かくん、と頭が下がったところを見るとクラッシュエミュレートの多重起動により、痛覚が限界を超えて意識が飛んだってところだろうな。叩きつけられる瞬間に、デバイスが衝撃拡散の魔法を使ってたみたいだし……よく学んだ主人想いのAIだ。

 

『続けてゼッケン895番とゼッケン789番、お願いします!』

 

「よろしくな」

 

「おう」

 

 ノービスクラスは母数は多いうえに時間がないので試合が巻きで行われることが多い。俺が立つリングに上がってきたのは、多分年上の浅黒い肌の男。彼がセットアップを済ませるとミッド式の魔法陣と共に、長剣型のデバイスが姿を現した。へー、ミッド式ベースなのにアームドデバイスとは珍しいな。と俺が考えていると、試合が始まってしまった。

 

「アルマ!カートリッジロード!ブレイクストレート!」

 

「猛れ紅炎」

 

 長剣の柄からカートリッジが一発吐き出され、圧縮魔力が刀身を覆う。それを振りかざしてこちらに向かう男に対し、俺は右手に炎を灯して真正面から向かい合う。袈裟懸けに振り下ろされる長剣を、左手で側面を弾いて逸らす。申し訳ないが、シグナムさんに比べれば止まって見える。シグナムさんなら、弾くという選択肢は取れなかった。速度で劣る俺なら防御一択。

 

 弾かれて態勢を崩した相手の顔面を右手で握りこむ、アイアンクロー……ではない。そのまま力任せに相手の顔を押し、後頭部から地面にめり込ませる。リング全体に蜘蛛の巣状の罅が入る、俺はさらに相手の顔を地面に押し付けて逃げ場を失くしてから、灯した炎を爆発させた。顔面を中心にクレーターが出来上がる。これで相手の選手は意識を暗闇に落としただろう。

 

 担架で運ばれる相手選手に向かって一礼をしてから、俺はリングを降りる。2勝をしたのでクラスが上がり、ノービスからスーパーノービスへクラスアップした。今日あと1勝すればこれでエリートクラスに入ることができる。リングから降りるとやったー!と俺より喜んでいるヴィヴィオとあきれ顔のノーヴェさんが待っていた。

 

「えげつないことすんなー、お前。あんなもんトラウマになるぞ」

 

「カイト先輩!連勝おめでとうございますっ!ドリンクあるんでどうぞ!」

 

「ありがと、ヴィヴィオ。大丈夫ですよノーヴェさん、あれ程度で折れるんならこの先でどうせ折れますし」

 

「否定はしないけどなあそりゃ。で、どうだ感触的には?」

 

 後ろで俺が滅茶苦茶にしたリングが魔法で修復されていくのを尻目に、俺たちは一回控室を通ってから観客席に出た。適当に空いてる場所を見つけて同じ男子の試合を見つめる。ノーヴェさんの言葉に正直な感想を返すなら……失礼を承知で言わせてもらおう。

 

「正直、拍子抜けですね。覚悟していた程苦戦するとは思えないです。ザフィーラさんのように硬い防御もなければ、シグナムさんのような剣術もない。なのはさんのような射砲撃もなければ、フェイトさんほど速くもなく……ノーヴェさんやスバルさんのように突撃力があるわけでもない。ノーヴェさんの言う通り、相棒たちは過剰かもしれません」

 

「そりゃそうだ。お前が挙げたのは全員、管理局でエース張ってる連中だぜ?そりゃあ、匹敵するやつはいるだろうさ、でも……もっと上の話になる」

 

「……正直ヴィヴィオを相手にしてる方が楽しいですね。ヴィヴィオはスパーリングしてる時すごい楽しそうなんで、俺も楽しくなりますし」

 

「じゃあ!今日の試合終わったらお願いします!えへへ、先輩とスパーリングするのは楽しいですし!」

 

 俺の素直な感想にノーヴェさんは嘆息して返す。それはそうだ、比較対象が上すぎるのだろう。けど俺の生の模擬戦の経験はあの人たちと母さん父さんくらいなので必然的にそうなってしまう。ただ……あんまり楽しくない。向かってくる相手が、楽しもうとはしてないからだ。さっきの2戦、俺を倒そう倒そうという意識ばかりで、勝たなきゃ殺されるのかと思わんばかりの必死さだったから、なんかやりづらかった。

 

 折角やるんだから楽しんでいこうぜ、というのはバトルマニアすぎるであろうか?俺はヴィヴィオからの申し入れに頷いて彼女の頭をぽふとひと撫でする。ほんとこいつ……何するにも楽しそうだよな。やっぱり、それが一番だと思う。

 




 流石に猛攻にさらされて余裕!ではないです。ジークさんは弱くない。まあ当たっていいのであればもうちょっと余裕が出ましたが無傷じゃないとダメだったし。

 ちゃんとやった模擬戦の相手が管理局のスーパーエースばっかりだったせいで目が肥えてしまったカイト君、そういうとこやぞ。

 ではまた次回に。感想評価よろしくお願いします。
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