魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡 作:防御特化っていいよね
「あの……えっと……?」
「ああ、ごめんなさいねカリムさん。アロイジウス家としてはともかく、俺個人としては聖王教会と協力するのはありだと思ってるんですよ。はやてさんが俺を口説き落としたもんで」
「カリム~~、私に感謝しいや~?ごっつ大変やったんやでカイトくんに協力してもらうの~」
目をぱちくりとするカリムさんをケラケラ笑ったはやてさんが揶揄うように弄っている。さっきまでのアレソレはほぼ本心ではあるが、聖王教会の力を借りるということは悪くないと思っているのも事実。なんだかんだ言っても俺にとってはヴィヴィオは短い付き合いながらも好感を抱くには十分だったってわけだ。
「ヴィヴィオを守る、という点に関してならば俺は聖王教会と組んでもいいと思っています。ちょっと前に誘拐されかけてましたからね……流石に見過ごせない」
「では……」
「ええ、本格的に所属するか否かはこれから判断させてもらいます。なので……俺を信用させてください、それによってはまあ……下賜された物のいくつかをそちらに渡しましょう」
「えーとな、カリム。夜天の魔導書のバックアップみたいなもんがカイトくんの家で眠っとるかもしれへんやろ?探しとるロストロギアだったら、提供してもいいって頷いてくれたんよ。その代わり……」
「ヴィヴィオさんの安全の担保と将来の自由の確約……ですね?」
俺はカリムさんのその言葉に頷く。結局はそれに収束するのだ。いくらオリヴィエ陛下の遺志や遺言、願いがあるにしろ死者の言葉だ。生者を優先しろってご先祖もオリヴィエ陛下も言うに決まっている。それなら複雑な事情を抱えているであろうヴィヴィオが少しでも生きやすくなるなら聖王教会とだって喜んで手を組んでやる。どうせ、ガラクタが8割だ。渡せないもの以外は犠牲にしたっていい。
……こうして考えると、俺という人間はヴィヴィオのことを心底気に入ってしまったのだなと改めて確信する。そもそもヴィヴィオは人に嫌われるようなパーソナリティをしてはいないが、にしても俺は構い過ぎだろうか?断絶しているはずの聖王教会と組んでまで彼女の安全を担保したがるだなんて、笑えないな。
「なぜ、そこまで?」
「あんたがたのおかげですよ。あんたがたが俺をSt.ヒルデ魔法学院にいれたから、後輩のためにひと肌脱ぎたくなったんです。お手柄ですね」
「愛されとるなーヴィヴィオは。私もこんな彼氏がほしいわ~」
「まず守護騎士のお眼鏡にかなわないとダメなんで大分ハードル高そうですね。一生独身説あるんじゃないですか?」
「しっつれいやなカイトくんは!ならカイトくんがなるか!?」
「……むしろ俺じゃ釣り合わないのでは?没落騎士なんかやめといたほうがいいですよ」
はやてさん、言動が面白いから忘れがちだけどウルトラスーパー美人なんだよね。将来この人を射止められる男は幸せ者だなあと真面目に思うよ。俺はほら、明らかに釣り合ってないからねえ……。話していて面白いからそのうちすぐ彼氏できるんじゃない?あと俺はヴィヴィオの先輩であって彼氏じゃないし。そういう色恋沙汰に発展するにはヴィヴィオが幼すぎるよ、ないない。
「とりあえずさしあたりの話なんですけど……はやてさん、リインフォースさんのこと……どうするか決めましたか?」
「……そやなぁ……みんなと話したんよ。でもな、やっぱり……私が会いたい。リインフォースともっと話がしたい。だから……お願いするわ」
「分かりました、騎士はやて。騎士カリム、少々よろしいでしょうか?」
「なんでしょうか?夜天の魔導書の修復に関してならば協力は惜しみません。ましてや管制融合騎の復活ですから」
そっか……はやてさん決めたんだ。俺はピッピッと目の前で仮想画面を操作して通信を繋ぐ、相手は勿論リインフォースの姉妹機であるラフィだ。ラフィは俺と連絡が繋がったことにほっとしたような顔をして通信に出る。事のあらましを伝えると彼女はふむ、と一つ頷いて
『了解した。騎士カリム、騎士シャッハ。お初にお目にかかる。ヴェントラフィカだ、まあ好きに呼んでほしい。夜天の魔導書の修復作業に当たり必要なものがあるので協力してもらえるとありがたい。無くても私一人で出来はするが、万全を期したいのでな』
「伺いましょう」
『大容量のデータを扱える施設、それと腕利きのデバイスマイスターを一人……ああそれと、人払いもな。騎士はやて、当日は守護騎士も含めて必ず全員で集まってほしい。夜天の書の中身を弄るのだ、不測の事態があっては困る』
「わかった。デバイスマイスターについては心当たりがあるし、多分喜んで手伝ってくれると思うわ。全員の休みの調整は時間がかかるから、ちぃと待っててな」
『かまわん。ツヴァイはそこに?』
「おるでー?呼んでこようか?」
ラフィがリインフォースツヴァイと話がしたいとはやてさんに話すと快諾した彼女は待っててな~とぱたぱたとどこかに消えてちょっとすると小さなバスケットを持ってきた。どうやらそれはリインフォースツヴァイ用の休憩室であるらしい、はやてさんがバスケットの蓋を開けるとひょこりとリインフォースツヴァイが顔を出した。いいなあれ、ラフィにも作ってやろうかな。あいつ最近歩くのが面倒とか年寄り臭い理由で小さくなって俺に乗っかる様になったし。
「はいですっ!お姉ちゃんに呼ばれてリインフォースツヴァイ!参上しました!」
「いつの間にか仲良うなってしもてんな」
『夜によく連絡をくれるのでな。さてツヴァイ、修復の際にはお前の中にある妹の欠片を取り出す必要がある。もう既にお前はお前として確立しているから、取り出したとしても何ら問題はない。いいな?』
「そうなん?ツヴァイを作るときに骨子として組み込んだと思うんやけど」
『最初はな、なくてはならないものだ。だが我ら融合騎はインテリジェントデバイス以上に成長性を有している。ツヴァイは既に妹に頼らずとも「個」として完成している。妹の部分を抜いたところで一時的に魔力値が下がるくらいで済むだろう』
「ならリインはリインフォースが復活したら暫く一緒にお休みやな」
「分かりました!お姉ちゃんと会えるのが今から楽しみです!」
すいーっと空を飛びあがったリインフォースツヴァイは両手を広げて喜ぶ。微笑ましいその動作に、シリアスな空気でいっぱいだった居間の雰囲気が少し和らいだ。そのあといくつかの懸念事項について話した後、俺と聖王教会の秘密の会談は終了となった。ご飯食べてって、というはやてさんのお誘いをラフィが心配なのでと丁寧に断ってから俺は八神家を辞した。ん~~!肩が凝った!
はやてさんの料理はギガウマ、とヴィータさんに聞いてはいたから食べてはみたかったけど、今は正直何よりも先にラフィに会いたい。海岸線を抜けてからさっさと帰って心配事を消してしまおうと考えているとシュロスの方に着信があった。なんか用事あったっけと首を傾げながら見ると珍しい人の名前があった。
「はい、カイトですが。ティアナさんどうされました?スバルさんのメール攻撃なら間に合ってますが」
『アンタにもやってるのねあの子……ねえカイト、今時間大丈夫かしら?悪いんだけど捜査に協力してもらいたいの。相応に報酬も出るわ』
「伺いましょうか、俺に頼るってことは古代ベルカ関係で?」
『そうよ。マリアージュとイクスって知ってるかしら?』
「ああ、はい。知って……ちょうど目の前に出ましたね」
『は?』
連絡の相手は黒い執務官の制服に身を包んだティアナさん。捜査協力とは穏やかじゃないな、と思っていたら出てきた言葉に俺はうげ、と言わんばかりの顔になる。マリアージュとイクス……うん、初代の知識にあるな。ティアナさんに説明しようと思って記憶を掘り返そうとすると、目の前の海からザバ、と海水をかき分けてのっぺらぼうのような非現実的なのに女性的で真っ白な何かが現れた。俺は仮想画面を反転させてティアナさんにそれを見せると彼女は一瞬で切羽詰まった声を出す。
『カイト、逃げなさい。今私が捜査する事件なんだけど、マリアージュによる連続殺人なの。早く!』
「逃げたら被害が出ます。このマリアージュは軍団長型、一番破壊力と知能が高いタイプで、自爆した時の被害も大きい。ここで仕留めます」
『アンタは民間人なのよ!?下手なことはさせられないわ』
「大丈夫です。マリアージュには自爆させないための解体手順があります。それを守れば被害は最小限以下に抑えられる。今は俺しかできない」
『……すぐそっちに行くわ。絶対に怪我しないで』
了解、と返して俺はフラムを起動した。シュロスは無くていい、2撃で終わる。あー、今日は厄日だな。まあいいや、とだらんとフラムを下げた状態でこちらを認識したマリアージュに歩いて近づく。マリアージュはそののっぺらぼうの顔面をこちらに向けてどこからか音声を発した。
「貴方はイクスを知るものですか?」
「知るか、死体人形。尊厳を踏みにじりやがって」
「私のことを知っているようですね。イクスの元に……」
ブツッと音を立ててマリアージュの音声が途切れる。頑健で身体能力を極限まで高めた俺が話している途中のマリアージュの懐に飛び込んで胸の中央にあるコアをフラムの一撃で砕いたからだ。ここまでなら自爆できるが、俺は返す刀でフラムを反転させてマリアージュがコアを砕かれたと気づくまえにその首を刈り取った。沈黙したマリアージュが膝から崩れ落ち、硬質な音を立てて頭が地面に転がる。
「終わり、と」
ブンッとフラムについたマリアージュの作動液を血振りの要領でふるい飛ばしてから待機形態に戻した。マリアージュは戦闘能力は高いが、対話と戦闘への移行に若干のタイムラグがある。戦闘形態に移るのが人間に比べて遅いのだ。だから、対話を維持しつつ警戒範囲のギリギリまで近寄り、一瞬以下で仕留めれば自爆シークエンスに移れずに倒すことができる。
「カイト!」
「ティアナさん!早かったですね」
「ええ、丁度よく転移が使える魔導士がいたから協力してもらえたの。すぐに局員も来るわ。本当に、出来たのね」
「出来ないことは言いません。それよりもマリアージュの解体についてですが、胸の中央のコアを砕くとほぼ同時以下で頭を潰してください。そうすれば自爆は出来ない」
「……話の続き、良いかしら」
ティアナさんが動かなくなったマリアージュに向けてクロスミラージュを構えながら続きを促してくる。俺はそこからマリアージュについて知っていることを語った。マリアージュとは、そのコアと人間の死体を用いてその場で生成されるインスタントお手軽殺戮兵器だ。いわゆる
「で、そのマリアージュのコアを生成できるのが古代ベルカの王の一人、冥府の炎王イクスヴェリアというわけですね。小さな女の子ですよ、本体は。俺の初代が生きた頃よりさらに前の話ですね、人造生命体の研究が盛んで、いろんな王が自分の体、もしくは息子娘の体をいじくりまわしました。イクスヴェリアもその一人、もしくは被害者なのでしょう」
「そのイクスヴェリアが今回の黒幕、ということかしら」
「ないですね。イクスヴェリア本体が目覚めていて、その気なら今頃ミッドはマリアージュで埋め尽くされてますよ。マリアージュのコアは別の人間でも使うことができますし、操主は別にいると考えていいかと」
「……とにかく、詳しい話を聞かせて欲しいの。多分貴方の話が一番確度が高いわ」
「分かりました。それじゃ、ティアナさん。どうぞ」
「………………」
とりあえずマリアージュについては緊急性を要するみたいなのでフラムからラフィに連絡を送り事情を説明して実家の結界から出ないように言っておいた。不満そうな返信が返ってきたが、人命には変えられないので我慢してもらうしかない。そして俺が両手を揃えてティアナさんに差し出すと、彼女はその意味を理解してはいるので物凄く渋い顔をした。
規則は規則です、と俺がいうと正当防衛だからその両手を仕舞いなさい、とティアナさんは俺の手錠をかけることなくクロスミラージュを待機形態に戻すのだった。
なんで原作1年前に設定したか?これがあるからさぁ!というわけでサウンドステージXの話も入ります。マリアージュの見た目は資料がないので女性っぽい感じのキンハーに出てくるノーバディをイメージしてください。ちなみに何で狙われたのかも次回。
イクスヴェリア陛下はかわいいですね(ボ卿並感)ちなみに初代とは関わりがないです、マリアージュは恐らくボロボロ出て来たでしょうけど。
そろそろ話のストックが無くなってきたので投稿間隔を伸ばすと思います。20話までは毎日投稿しますがそこから先は2日か3日に1回になるかな。それではまた次回に。感想評価よろしくお願いします。