魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡   作:防御特化っていいよね

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第18話 マリンガーデン火災

「それでなんですが、何がどうして俺に捜査協力なんざ要請する気になったんですか?」

 

「ぶっちゃけ私も盲点だったのよ。はじめっからアンタに当たってればこんな回り道しなくて済んだんじゃないかと今確信しているわ」

 

「回り道、ですか」

 

「そーよ。聖王教会に要請したりギンガさんに軌道拘置所まで行ってもらったり、挙句の果てにはヴィヴィオに無限書庫で調べ物させてルーテシアまで巻き込んだんだから」

 

 それはそれはいろんなことをしてらしたんですね、と俺はいつだかのヴィヴィオが無限書庫にいった理由がティアナさんの要請によるものだったということに得心がいった顔をする。現在俺がいるのは拘置所、ではなく。スバルさんが所属する防災部隊の庁舎である。俺が解体したマリアージュは検死に掛けられているらしく、ティアナさんの補佐官がそれをやっているらしい。

 

「で、ヴィヴィオが解読中に、そういえば先輩に聞いたら分かるんじゃないかな?なんていうから全員でずっこけたわよ。何で思いつかなかったのかしら」

 

「ベルカ時代は長いですからね。イクスヴェリアが生きた時代と俺の先祖が生きた時代は違いますから。まあ思いつかなくても無理はないでしょう。ちなみにイクスヴェリアはちょこちょこ起きてるのでベルカ末期でもマリアージュは脅威でしたよ」

 

「それで、どうしてあのやり方でマリアージュの自爆が防げるのかしら?」

 

「それはですね、簡単な話です。マリアージュは制御系に人間の神経を利用しています。マリアージュのコアからの命令を脳に届け、体に送るというメカニズムで動いているわけです」

 

 だから、解体の手順としてはコア、首の順になる。お手軽インスタント兵器だから、割と構造自体は単純なのだ。脅威なのはただただ数と戦闘に特化しているということだけで、知能自体は子供並みだし、単調な命令のみを介すことができるわけだ。それと、俺は前置きしてから真面目な顔でティアナさんに返す。

 

「あれが、一番死者の尊厳を守れるからです。マリアージュには、元になった死体が必ずありますから。自爆なんてさせたら、可哀想でしょう」

 

「それで、首を落としたわけね……それと、大事なことなんだけど……どうして狙われたか心当たりあるかしら?無差別にしては出来過ぎているわ」

 

「そりゃ、俺がマリアージュのことを知っているからでしょう。あとイクスヴェリアのこともですか。マリアージュはどうやら母体であるイクスヴェリアを探しているみたいですからね。操主ももしかしたらそうなのかもしれません」

 

「待ちなさい。何で貴方がそれを知っているということを相手は分かっていたのかしら?あなた、聖王教会とは仲が悪いんでしょう?」

 

「ええ、悪いというか犬猿の仲です。でも……局のデータベースには俺が完全記憶継承者であることは乗ってます、閲覧権限があればだれでも見られますよ?それこそ執務官とかでも」

 

 俺の言葉にティアナさんは言葉を失う。そしてすぐに表情を入れ替えて周りを確認した。そりゃあ、こんなことをいうのは憚られるけど多分、管理局内の誰かがマリアージュの操主だ。捜査が始まったころからマリアージュの出現数は増加し、それでティアナさんがミッドに戻ってきた途端に俺が襲われた。俺のデータは権限さえあれば確かに誰でも見ることはできるが、その権限も別に軽いものじゃない。データベースにアクセスできる誰かの仕業だ。

 

『全くいやな推論するわねアンタ……否定できないのが辛い所だわ。ありがと、必ず役に立てるわ』

 

『俺だってこんなこと言いたかないですよ。ああ、そうだ。最後に一つ』

 

『なにかしら?』

 

『イクスヴェリアは戦いが嫌いな女の子です。マリアージュを作れるだけで、戦いは望んでいない。目覚めていたのなら、優しく手を取ってあげてください。ハリボテの王様なんですよ』

 

『断定するのね。分かったわ、約束する』

 

 話が不穏になってきたので念話に切り替えつつ俺は最後にティアナさんに対してささやかなお願いをする。イクスヴェリアは非道な王として伝わっているが、3代目が会った彼女は心優しいただの女の子だったと手記には記してある。初代が戦ったマリアージュの軍団と3代目がまみえたイクスヴェリア……どっちが本当なんだろうな。俺は……後者を信じたい。

 

 ティアナさんがため息をついたタイミングでビーッと庁舎の非常ベルが鳴った。緊急出動の合図だろうか。緊急放送の内容を見ていくと……火災?このタイミングで?場所はマリンガーデン……確か其処、古代ベルカの遺跡の外観を見学できるってことで人気のスポットだ。マリアージュの操主は、どうやら目星をつけたらしいな。

 

「……人手が欲しいわ。救助関係の資格、持ってるかしら?」

 

「非常時限定の救助隊員資格なら」

 

「十分よ、カイト・エルンスト・アロイジウスさん。緊急事態により救助への協力を要請します」

 

「分かりました。指示をお願いします!」

 

 俺が持ってる資格は講習を受けてデバイスを持っていればだれでも取れる様な資格ではあるが、ミッドでは魔法系の事故が多発するので持っている人は多い資格だ。とっさの時に誰かを助ける許可がとれるので、ミッド市民はデバイスを手に入れたらまずこれを取れと言われる資格でもある。それほど、ミッドではどこかで魔法関係の事件が起こっているわけだ。あー、やっぱ局の民間協力者の登録だけはしとけばよかったかな。

 

「アンタ、この事件片付いたら嘱託魔導士資格とは言わないけど民間協力者資格とっといた方がいいわよ。古代ベルカのアレソレがあったら私多分、アンタを一番に当たるだろうから。もしかしたらフェイトさんもはやてさんもね」

 

「そうしときます」

 

 言われてしまった。捜査協力者には謝礼金が払われるのがお作法なんだけど、緊急時の場合民間協力者とただの現場協力者は仕事の数は同じなのに払われるお手当は倍は違うのだ。ティアナさんが言ったのはそういうことだろう、情報の重要度の割に安く買いたたかれないようにしなさいと釘を刺してもらったというわけだ。

 

「ランスター執務官、マリンガーデンにて一連の事件と関係が疑われる火災がありました!すぐに出動を……そちらは?」

 

「古代ベルカ関係に精通している捜査協力者です。魔導士ランクは概算陸戦AA相当、強力な防御魔法が使えます。同行して救助に当たってもらいます」

 

「了解しました。車両を待たせてあります、こちらへ!」

 

 管理局の陸士であろう人がティアナさんを呼びに来た、救助現場において戦闘能力あるいは救助能力がある民間人が手伝いに入ることは日常茶飯事ではあるので陸士の人も深く追求せず俺を緊急車両の中に招き入れてくれる。ティアナさんから耳につけるタイプの通信デバイスを受け取って装着する。魔力を感知して張り付くタイプだ、通信回線をオンにして確認を終わらせる。

 

「救助現場は初よね?騎士甲冑の強度は心配ないでしょうけど耐熱温度と呼吸魔法は使える?」

 

「耐熱温度は1000度まで、呼吸魔法も使えます。他人に調整してかけることも一応は」

 

「上々よ。ヴォルツ司令!こちらティアナ!臨時協力者と一緒に現場に突入します!」

 

『こちらヴォルツ!了解した!おい坊主!迷惑かけるが頼む!要救助者に加えてマリアージュがボロボロいやがんだ!現場の陸士の救助の手が止まってる!』

 

「聞いたわねカイト?あなたは前線の陸士と合流してマリアージュの対処を。要救助者を見つけたら守りつつできるなら撤退、出来ないなら救援が来るまで持ちこたえて。通信回線は開いたままにしなさい」

 

「了解」

 

 今回の現場に指揮を執っているヴォルツ司令にはティアナさんから俺がどういう人間でマリアージュへの対処が可能だということは報告済みらしくいろいろすっ飛ばして現場に入る許可がもらえた。緊急車両なので訓練されたミッドの市民たちは道路を我先にと開けてくれるので超特急で現場につくことができた。マリンガーデンは海上に浮かぶ巨大複合施設だ。必然的に侵入経路も限られてくる、大型の橋の先には既に炎上するマリンガーデンと、戦闘音……そして、マリアージュの姿があった。

 

「ティアナさん、切り込みます。いいですね?」

 

「いいわ。クロスミラージュ!」

 

「フラム、シュロス。フォルムツヴァイ」

 

 車両から降りると同時に俺たちはデバイスを起動して騎士甲冑とバリアジャケットに身を包む。小盾と斧槍に姿を変えた己の相棒を持った俺は陸士たちが防御魔法で要救助者を庇っている目の前に強化した身体能力で躍り出て、そのまま斧槍を薙ぎ払い、3体のマリアージュを纏めて両断する。自爆しようとするマリアージュをプロテクションバリアで包んで自爆の影響を抑える。これが今は最善、死者の尊厳は大事だが生者の命には代えられない、恨んでくれ。

 

「一時協力者のカイトです。これより眼前のマリアージュを一掃し道を切り開きます。救助の準備を」

 

「わ、わかった。っておい!突っ込むな!」

 

「剛刃!」

 

『『starkeklinge』』

 

 魔力付与により斧槍と小盾の淵が切れ味を増す。俺は眼前に群れを成すマリアージュに対して真正面から突っ込み、斧槍をぶん回し、円形の盾の縁で首を落とし、胴体を真っ二つにし、人型のハリケーンのようにマリアージュを処理していく。マリアージュが厄介なのは、魔法兵器なだけあって魔力を使った攻撃と防御をしてくることだ。射砲撃は防御されてしまうことも多いし、近接戦には腕を刃に変えて攻撃してくる。一番楽なのは俺がやってるように防御を割れる攻撃ですりつぶすのが一番いいのだが、自分でやってて分かる、これ結構キッツいな!

 

「一掃しました!どうぞ!」

 

「クリア!入れ入れ!要救助者捜索開始!」

 

 入口近くのマリアージュを一掃した俺が後ろを振り返って叫ぶ、救助隊員の皆さんは救助に関しては滅茶苦茶プロだが、戦闘に対してそれほどでもない場合が多い。というかスバルさんみたいなタイプは希少中の希少だ。強い人は皆武装隊や犯罪捜査の方に行くから。だから、マリアージュ相手に手をこまねいてしまったんだ。武装隊の人!どこにいんのもう!

 

「……マリアージュがまだ奥にいます。安全を確保してくるので救助の方はお任せします」

 

「クソ、ああ頼んだ!情けねえな子供に頼らなきゃならんなんざ!」

 

「泣き言いうな!頼りになっていいじゃねえか!将来が楽しみなんだからよ!」

 

 やっぱり、この人たちプロだ。自分にできないことを、他人に任せて自分の仕事に専念することができる。正直、俺はぶっ壊すことは出来ても救うことはいまいち難しい。それ相応の訓練を受けていない素人だから、救助のプロに任せるしかない。だからこそ、俺がこれ以上誰も傷つかせないようにマリアージュによる被害を抑える。

 

 奥に突っ込む。後ろから救助隊が次々入っていくる気配を感じる。途中で見つけた生存者の人に保護の魔法をかけて、救助隊の人に引き渡しながら俺はマリアージュを処分していく。いったいどれだけいるんだ、このご時世にどれだけの死体を用意してそれを弄んだ?何人行方不明になってる?何人墓を掘り返された?操主は相当イカレているに違いない。

 

 階段を駆け下りてマリアージュを始末していく。っち、広すぎて俺の魔力探知じゃ生存者を探すのも一苦労だ。上階では消火と救助が急ピッチで進んでいく。遠隔砲撃による消火剤の噴射も入った。鎮火まで秒読み……だけどなんだ、この違和感。この何かが引っかかる感じは……?マリアージュの中に……軍団長がいないからか!指揮官はもっと下だな!?

 

『カイト!?聞こえる!?マリアージュの操主を逮捕したわ!そっちスバルいない!?通信が途絶したの!』

 

「見てないです!通信が途絶した場所を教えてください!近場なら見に行きます!」

 

『無茶はしないで!崩落が激しいわ!いいわね!?』

 

 ティアナさんから通信に俺は足を止める。スバルさんもここに来てたのか!それで、通信途絶だって?マリアージュの操主が逮捕されたのは良かったが、そっちの方が心配だ。俺はティアナさんから送られてきた地図のデータを確認する。通信が途絶したのは……遺跡観覧エリアか!ここからさらに下だ。俺は階段を使うのも惜しかったので吹き抜けになってる遺跡の真上から飛び降りる。

 

 残念ながらラフィがいないと俺は飛べやしないので自由落下に身を任せ、目的の階層に空中に固定したシールド蹴って飛び込んだ。そこからさらに下へ下っていくと、崩落が激しい中に、何かの車輪が通った後を見つける。これ、マッハキャリバーのローラーの跡じゃないか?追いかけてみよう。

 

 ローラーの跡を追いかけ、崩落してる壁を抜いて進んでいくと、茶髪の小さな女の子を保護し抱きかかえるスバルさんを見つけた!だが、その後ろに軍団長型のマリアージュが姿を現した。スバルさんは咄嗟に女の子を庇う。俺はギリ当たるか不安だったが、渾身の力を込めてフラムを投擲する。衝撃波を飛ばしながらまっすぐ飛んだフラムは、マリアージュのコアに過たず命中し串刺しにした後、柱を2つ貫通して3つ目で死体人形を柱に縫い留めた。間に合ったか……!

 




 前話と比べてティアナさんが掌ぐるんぐるんしてますが、あっさりマリアージュを無力化したのでもうこいつどんなことやっても大丈夫だろうという諦めの境地に達しているからです。古代ベルカウィキの主人公が悪い。

 狙われたのはマリアージュを知っていたから、ですね。局には記憶保持者であることは登録してあるのでイクスの場所を知っているかもしれなかったらそりゃ襲われます。一歩間違えばヴィヴィオや覇王様なんかも襲われてたかもしれませんね。完全記憶継承者なので優先されちゃいました。

 ではまた次回、感想評価をよろしくお願いします
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