魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡 作:防御特化っていいよね
「スバルさんっ!無事ですか!?」
「カイト!?どうしてこんな危険なところにいるの!?危ないから早く逃げないと!」
「それ、そっくりそのままお返しします。ボロボロじゃないですか」
「……その紋章の盾は……!」
スバルさんは、どうやら崩落に巻き込まれたらしくバリアジャケットはボロボロ、ところどころ出血しているし、皮膚の下から……何か機械のようなものが見え隠れしている。おそらくは人工骨格に強化筋肉、そうか、この人……いや、追及はすまい。その事実とスバルさん本人のパーソナリティに何か関係があるわけでもないし。
俺の視線に気が付いたのか、バツが悪そうにスバルさんはさり気に手で傷口を隠そうとする。俺はそれを気にしないようにして、軍団長型のマリアージュが突き刺さったフラムを抜き取ろうともがいているところに向かう。既に胴体は千切れかけていて虫の息だ。自爆しようとする前に、俺はシュロスの縁で首を抉り飛ばした。マリアージュの活動が完全に止まる。フラムをフォルムアインの手斧に戻して引き抜き、改めて二人に向き直る。
「逃げましょうスバルさん。まだいけますね?」
「え、うん!大丈夫!イクスも平気だよね?」
「はい、防災士長。でも、私は……」
「ティアナさん!スバルさんと要救助者を見つけました!安全な撤退ルートがあれば教えて欲しいです!」
『よかった……!いい?今からそっちまで壁を抜いて道を作るわ。はっきり言うけど地上は鎮火できても地下はまだ燃えてる。崩落まで秒読みよ。だから』
「道を作って安全な所まで一直線、だね。ティア!」
『そういうこと、いいわね?カイト、二人を余波から守って!行くわ、収束開始!』
「二人とも俺の後ろへ!シュロス!撃発!」
『explosion!』
「その魔法……やっぱり、あなたは……!」
どうやらティアナさんは収束砲撃で地上から地下まで穴をあけて道を無理やり作る気らしい。シュロスから砲弾型カートリッジが吐き出され、幾重にも張り巡らされた防御結界が俺とスバルさん、茶髪の少女、スバルさんがイクスと呼んだので彼女がイクスヴェリアなのだろう……を覆って衝撃その他に備える。数秒後、極太のオレンジ色の極光が降ってきて、一直線に空につながる道が出来た。スバルさんが籠手についているカートリッジを一発使い、魔法を発動する。
「ウィング、ロード!さあ!行こう!」
「あっ……私は、その……」
「いいから!ね?カイトも急いで!」
助かることをやんわりと拒否するイクスヴェリアを強引に説き伏せたスバルさんの足元から魔力で構成された道が一直線に伸びて地上への道になる。マッハキャリバーの車輪がうなりをあげて摩擦熱で煙が上がるほどのパワーで一直線に道を駆け上っていく。ってはやっ!おいてかれる!と俺はその道を全速力で追いかける。そうして地上に飛び出して数瞬後、地下から大爆発が起きてマリンガーデンが崩壊を始めた。げ、映画かよ。ギリギリもいいとこだったな。
いやはや、午前中は聖王教会と非公式会談をして、午後は捜査協力として情報話しまくって、そんで帰ろうと思ったタイミングで救助活動ときた。うん、あえて言うが滅茶苦茶忙しいな今日!救助隊が待機している橋の先に着地した俺たちにティアナさんと、あれ?ノーヴェさんがいる。それと色々な髪の色をした美人さんたちが近づいてきた。美人の知り合いは美人しかいないのか?
「姉貴!良かった、無事……って言いづらいけど、まあとにかくってこれ……」
「あー、うん。バレちゃったっぽい……それよりも、イクス……これが今の時代の空ですよ!」
「すごいです……海も空も、星も……こんなに澄んで……」
「でしょー?あっつつつ……とりあえず病院に行こうかー」
ノーヴェさんがスバルさんに急いで駆け寄ってその体を支える。魔力のめぐりが悪くなった、無理やり動かしてたんだな、その……頑丈さに任せて。イクスヴェリア、いや……イクスヴェリア陛下は慌ててスバルさんの抱っこから抜け出してあたふたと医療施設はどこですかと慌てだした。おー、思ったよりも気が弱いんだな。俺が継いだのは初代の記録だけだから、3代目と関わりがあるイクスヴェリア陛下のことは3代目の彼女の手記しか知らない。
「イクスヴェリア陛下、大丈夫ですか?」
「貴方は……その、間違っていたら申し訳ないのですが、ソフィーアの……」
「はい、今代の『城塞の騎士』カイトと申します。拝謁出来たこと、嬉しく思います」
「ああ、なんてこと……ソフィーアの子孫に会えるだなんて」
跪いて彼女に目を合わせる。略儀ではあるが騎士の礼だ。ソフィーア・エルンスト・アロイジウス……3代目の城塞の騎士にして初めての女性騎士。流れの騎士として旅をしていたところ、目覚めたイクスヴェリア陛下を偶然発見し、マリアージュを欲しがった他国から彼女を守るために安全な場所までともに旅をし、そして再びイクスヴェリア陛下が眠りにつくまで守護をしたと記録にはある。ちなみに他国が残ってたマリアージュのコアを使用したことでマリアージュの創造者なのに追われるという間抜けな事態が起こっている。さらにちなみに解体手順はこの時に確立された。
「……知り合いなの?」
「ご先祖がですけどね。御覧の通り、イクスヴェリア陛下本人は戦闘能力が皆無なので。子犬にも負けるそうです」
「なっ!?ソフィーアはそんなことまで後世に残したのですかっ!?うううぅぅぅ……」
「確かに強そうには見えないッスね」
「だー!とにかく全員病院だ病院っ!カイト!お前も!」
「明日学院休んでいいですかね~?試合が次の休みでよかったなマジで」
「……公欠にするなら通してあげるわよ」
失礼します、と目覚めたばかりで運動能力に難があるらしい立ってるだけで小鹿のようにぷるぷるしているイクスヴェリア陛下に了解を取って抱き上げる。3代目のソフィーアとイクスヴェリア陛下は従者によると親子のように仲が良かったと記録に残っている。ソフィーアはそれが嬉しかったとのこと。3代目はそれだから子供好き&子沢山として伝わってるのかもしれんな。
まあとにかく、イクスヴェリア陛下は俺がアロイジウス家の末裔であることには一定の信頼を置いてくれてはいるらしい。もちろんそれはこれから俺が信頼を勝ち取っていく必要があるが、知り合いの子孫という関係性でも遠い時間から旅をしてきたイクスヴェリア陛下にとっては味方に思える要素なのだろう。イクスヴェリア陛下と一緒に俺はヘリに乗り込む。担架に寝かされたスバルさんと事件関係の付き添いのティアナさん、それとノーヴェさんも一緒に。ヘリは静かに音を立てて飛び立った。
「……で、操主はティアナさんの補佐官だったと。なるほど」
「他言無用でお願いするわ……まさかルネッサが……」
「そうだったのか……戦争が日常だったヤツが、平和な時代に馴染めないと……」
ヘリの中で眠ってしまったスバルさんと、同じく俺の膝の上で眠って、いや……機能不全で停止してしまったイクスヴェリア陛下を抱き上げたまま俺は事のあらましを聞いた。マリアージュの操主はルネッサ・マグナス執務官補というこの事件でティアナさんの副官だった人物。オルセアという常に戦争でドンパチやっている世界の出身者。
もとはと言えば、トレディア・グラーゼという活動家によって世界に痛みを思い出させ、戦争をなくすためにマリアージュを使いJS事件に乗じてテロを起こす計画だったのだが、その前にマリアージュによってトレディアは殺され、それを引き継いだのがルネッサ・マグナスだった……らしい。詳しくはこれから調書を取るらしいけど。あまり愉快な理由ではなさそうだ。
「……なあ、カイト……お前、姉貴のことさ」
「……俺の両親はJS事件で死にました。母はゆりかごの砲撃から同僚を守るために壁となり、魔力不足の末に。父は、ガジェットドローンのAMFによる魔法使用の制限により、不覚を取ったそうです」
「っ……!」
「その、ガジェットドローンやゆりかごを動かしていたのが、戦闘機人という奴らしいですね。スバルさんも、そうなのでしょうか?」
俺は、JS事件については概要しか知らない。戦闘機人という存在がいたことも、ガジェットドローンのことも、ニュースで知った。紙ぺら1枚に書かれた死因と、小さくなって帰ってきた両親との再会はあっさりしたもんだった、母さんらしい死に方だけど、父さんは悔しかったんじゃないかなと思う。詳しいことは機密で、遺族だろうと教えてもらえなかった。きっとそれは、管理局に協力すれば刑期を短くする、もしくはなくす恩赦のようなシステムに起因するものだろう。
スバルさんは機動六課の一員だった。だから何だという話ではあるが、ナンバーズという戦闘機人の一味ではないだろう。だけど、何か関係があるんじゃないか、とスバルさんの肌の中に見えた人工物を見て、俺はそういう風に考えてしまった。そんな問答をしたことで、母さんや父さんが帰ってくるわけでもないし、スバルさんの事情を暴きたいわけでもない。この話はここで終わろう。
「まあ、俺が知るべき話ではないのでしょう。それでなんですが、イクスヴェリア陛下はどうなるんですか?まさか犯人扱いだなんてしませんよね?」
「……むしろどうやって犯人として扱えっていうのよ。完全に被害者じゃない」
あからさまにノーヴェさんと御姉妹らしいウェンディさんの動揺が激しいので何らかの関係はあるんだろうなと思いつつ話を逸らした。ティアナさんの顔色もすぐれないがそれは補佐官が事件の犯人だったことも関係しているのだろう。ただ、JS事件はどうやら禁句だったらしい。もうワードとして出さないようにしよう。
やばい、完全にやらかした。俺のせいで明らかにヘリの中の空気が地獄になってしまっている。俺は安らかに俺の服を握って眠りにつくイクスヴェリア陛下を抱きなおして脳内でマルチタスクで複数の思考を同時にしながら状況の打開を考える助けてご先祖様たち!俺にこの氷結魔法より冷たくなった空気を暖める方法を教えて欲しい。だめだ、脳筋が故に炎熱資質を活かして焚火をするイメージしか湧いてこない。物理的に暖めてどうする。
「よく、眠ってるっすね。イクスヴェリア様」
「起きたばかりで全身に機能不全が起きてますからね。詳しくは検査してみないと分からないですが、命に別状はない筈です」
「そういや、何百年単位で眠ってたんだよな……」
「その機能不全、治るの?」
ティアナさんの心配そうな言葉に、俺は分からないと首を振る。なにせ、今は亡き古代ベルカの技術だ。確かにミッドや管理局の技術レベルは非常に高いがそれでも治療は不可能だろう。現代の技術でそれができるなら、もっと肉体改造が身近になってるだろうし。腕増やしたりとか、目からビーム出せるようにするとか。遺伝子を生きたまま組み替えるとか、2つの生物を拒否反応なく一つにするとか。そういうレベルなのだ。
「多分、今は人間でいうレム睡眠……覚醒と非覚醒を繰り返すはずです。そして、段々と眠る時間が増えていき……最終的には、元の眠りに戻るでしょう。数百年、下手すればまた千年単位で眠るかもしれませんね。何せ、今回彼女が起床したのはイレギュラーですから」
「……そっか。流石のアンタにもどうにもできないわけね」
「俺は何も出来ませんよ。頭悪いですし。覚えてるだけです」
ティアナさんにはどうやら俺が古代ベルカのことは聞けば大概分かるし何とかできる便利な奴に思えているのかもしれないけど、残念ながら俺は知っていることしか知らないし、技術関係についてはからっきしだ。そういうのを訪ねるんだったらラフィに聞いた方がいい。といってもラフィもデバイス技師ではあれど研究者ではないのでイクスヴェリア陛下のことについては門外漢だ。
ヘリが降下していくのを感じる。ヘリの操縦士はどうやらかなりの凄腕らしく、着陸時に衝撃をほとんど感じなかった。すぐに後部ハッチが開いて、スバルさんとイクスヴェリア陛下は移動式のベッドの上に寝かされて運ばれて行った。俺は正直怪我とかはしていなかったんだけど、長い間火災現場にいたので精密検査を受けなければいけないようだ。
隣に降りてきた別のヘリからエリオとキャロが降りてきて、俺がいることに目を丸くしている。どうやら二人も飛び入りで救助に参加したらしい、まあとにかく……無事でよかったな。
バレちゃいましたねえ!スバルさんの体の秘密が!それに伴って数の子さんたちももろもろ意識しないとまずくなってきたでしょう。なお主人公はやらかした自分を攻めている模様。
イクスについてはゆっくり進めて行こうと思います。それではまた次回に。感想評価よろしくお願いします。