魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡   作:防御特化っていいよね

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第2話 面倒ごとは纏めてくる 

 率直な感想を言おう、面倒ごとに完全に首を突っ込んでしまったのはしょうがないにしろ、その面倒ごとがまさか収束砲撃の目の前に立つレベルで致死的なものだとは思わなかった。俺は、というか俺の血族は聖王教会を毛嫌いして一切接触を断っているおかげでベルカ関係の情報が入ってこないことは日常茶飯事だ。何だったらJS事件で前線に行った両親は死んだしな。それで聖王教会が接触してこようとしたけど、条件付きで俺が逃げて結局接触はなかった。

 

 だから、知らなかった。まさか聖王の血筋が見つかっていたなんて。俺はじゃら、と両手に掛けられた手錠を眺めながら、隣に首都航空隊のお姉さんを挟んで座る少女を見る。翡翠と紅玉の瞳を伏せた彼女は、視線を感じて俺と目が合うとなぜかわたわたと慌てだして、俺の手錠を見てテンションを下げたりとか、逆に顔を見て赤くなったりとか、見ていて面白い反応をしてくれている。ああ、そういえば自己紹介をしていなかった。

 

 結局、航空隊が現れてから一気に事態は解決に動いた。まあ、俺が蹴っ飛ばした車の横転に巻き込まれた犯罪者の男たちはほとんど気絶していたらしいんだけど、如何せんシートベルトをしていなかったので軒並み重症らしいが、命に別状はないらしい。俺が車から引きずりだしてぶん投げた奴も含めて。頑丈で羨ましいことだ。

 

「つきましたので聴取をさせてもらいます。貴方はこっちに」

 

「あの!助けてくれて、ありがとうございました!」

 

「ん?おお。気にすんな。君もよくあの状況で冷静に念話出来たな。すごいぜ、それ。じゃ、元気でやれよー」

 

 お姉さんの言葉で俺は時空管理局の地上本部に車が入ったことにようやく気付く。一応俺は無断で魔法を使用して戦闘行為を行った犯罪者ではあるのであの誘拐犯の一味とは別で取り調べが行われるのだそうだ。だからこんな、仰々しい手錠が付いているのだけど、その気になればブチッと行けるがそれやったらマジで言い訳できなくなるのでやめる。

 

 車からおりて別れる時に、パタパタとこちらに走ってきた女の子が大袈裟なほど大きな動作で頭を下げて礼を言ってくれる。あんなことがあった後なのに随分と肝が据わっているな。いや、一回泣いたから感情の整理が出来たのだろうか、車の中の時間もあったし。俺は女の子と目線を合わせて、グッと親指を立ててからお姉さんに従って取調室に入った。

 

「ごめんなさいね。貴方が彼女を助けたのは分かっているのだけど、はいそうですかで終わらせられないの」

 

「いえ、気にしないでください。デバイスも端末も持ってなくてバカみたいな真似しかできなかった俺が悪いので」

 

「それで、通報がなかったのね。こほん、では聴取を始めます。名前と、通っていれば学校を」

 

「カイト・エルンスト・アロイジウス。St.ヒルデ魔法学院中等部3年生、年齢は15歳です」

 

「アロイジウス……ってもしかして貴方ヒルデ先輩の……!」

 

「母をご存じなんですか?」

 

 ああ、そっか。首都航空隊ってことは母さんと知り合いでもおかしくないんだ。先代の騎士だった母さんも首都航空隊で空尉をしていたからまだ終結から3年しかたっていないJS事件前に知り合った人がいてもおかしくはない。少しだけ動揺した様子のお姉さんはこほん、と息をついて心を落ち着かせてから聴取を再開した。

 

「では次、なぜあの場にいたのですか?」

 

 気を取り直したお姉さんの質問に俺は正直に答える。ジョギング中に行きすぎてベルカ自治領のとこまで来てしまったこと、そこで広域の念話を受けて車の中で拘束されたあの女の子を見つけたこと。首都航空隊が戻ってこず、通報を出す手段がなかったので身体強化魔法で車を追いかけ、最終手段として実力行使に出たことを話しているとトントン、と聴取室がノックされてドアが開く。ドアの外に立っていたのは、管理局の本局の制服に身を包んだ金髪で赤い目をした女性だった。

 

「本局執務官、フェイト・T・ハラオウンです。今回の事件、犯人たちが本局預かりになっていた事件の容疑者だったことが判明したので、聴取を代わらせてください」

 

「了解しました。それじゃアロイジウスさん、私はこれにて」

 

「はい」

 

 執務官ときたか。と俺は内心で舌を巻く。時空管理局には世界の管理を行う本局と、ミッドチルダ全体の治安維持をする地上本部があるのだけれど、その中でも本局に所属する執務官はとんでもねえエリートとして知られている。しかもフェイト・T・ハラオウンときたか。JS事件を解決した地上本部の組織、機動六課の中心人物として有名だ。面倒ごとの役満だ。

 

 よいしょ、と姿勢よく机を挟んで腰掛けたハラオウン執務官に、情報共有が済まされていたのかさっきまでの質問の続きから始まった。理路整然とした話し方をする人だ、さすがはエリートで本局のスーパーキャリアウーマンで英雄。あらかた聴取が終わるとパタン、とこのご時世管理局ぐらいでしか見ない分厚い紙束のファイルを閉じたハラオウン執務官が口を開く。

 

「聴取はこれで終わりです。では、ここからは……個人的な話をさせてもらうね」

 

「はい?」

 

 一気に口調を緩くしたハラオウン執務官のその言葉と共に、ガチャと音を立てて俺の両手にかかっていた手錠が電子音と共に外れる。え、待ってこれ規則だと聴取が終わって無罪が確定するか留置所に行くまで付けてないとダメなんじゃないの?目を白黒とさせて机の上に重い音を立てて落ちた手錠を眺めて手首をさする俺にハラオウン執務官は真剣な顔で頭を下げる。

 

「カイト・エルンスト・アロイジウスさん、ヴィヴィオを助けてくれたこと、あの子の後見人として深く感謝しています。ありがとうございました」

 

「……身内が事件を受けていいんですか?」

 

「あんまりよくないかな。だけど、あの犯人たちは半年くらい前から私が追いかけてたの。まさかヴィヴィオを攫うだなんて思わなかったけど……」

 

「あー、首都航空隊が動いてる事件ですし、何となくきな臭いとは思いましたけど……そのくらいヤバいやつらだったのか……間一髪だったわけですね」

 

「……もしかしてカイトは、ヴィヴィオのことを知っているの?」

 

「いいえ、彼女のことは今日知りました。ただ、顔を見れば何となく察せます。俺の家柄、調べたんでしょう?」

 

 いきなり呼び捨てにされたことに若干驚いたが、なんでこの人が来たのかを察することができた。俺は先祖の記憶を継いでいる。この先祖というのは聖王教会が崇め奉る聖王オリヴィエが生きた時代と同年代を生きた騎士「城塞の騎士」アロイジウスの記憶のことだ。シュトゥラという国の筆頭騎士だったアロイジウスは、敵国であり友好国の王女だったオリヴィエと交流がある。当然、彼女の顔も仔細に記憶している。

 

 ヴィヴィオというらしいあの少女は、聖王オリヴィエと瓜二つだ。年齢の違いはあれど、成長すればきっと生き写しになるに違いない。そりゃあ、狙われる。管理局のデータベースにも俺が記憶継承者だということはデータにあるので、それを踏まえた彼女の後見人であり執務官であるこの人が出張ってきたと考えるべきだろう。これ完全にヴィヴィオが聖王の血統だっていう裏付けになってるけどいいのかな?

 

「とりあえず、このことについては墓まで持っていきます。それでいいですか?」

 

「うん、そうしてくれると嬉しいかな。さて、ここからはお説教ね」

 

 デスヨネー、と俺は渋い顔になる。そりゃそうだ、だって俺遠回しに厳重注意で済ますねっていう風にハラオウン執務官に言われたけど、滅茶苦茶危険なことしたからな。それなりに自信があったとはいえ今回は質量兵器&犯罪者グループにデバイスなしで挑むという普通に考えなくても馬鹿丸出しなことしたからな。注意されて当たり前だ、むしろ前科がつかないことがおかしいほどだ。何だったら救助対象も危険にさらしたかもしれないわけだし。

 

 つらつらと俺の行動の問題点を抜き出しつつ映像を交えて危険を説明しながら正論をぶつけてくるハラオウン執務官、俺はそれを素直に聞くのだった。はい、はい、ごめんなさい。デバイスがあったらこんなことしませんでした。これからは片方ずつメンテに出します。ああ、そういえば相棒に連絡入れて謝らないとダメだ。ああ、憂鬱……。

 

 

「あっ!フェイトちゃん!よかった!」

 

「フェイトママ!」

 

「ヴィヴィオ!なのはも!先に帰ってって言ったのに……」

 

「にゃはは、ごめんね。ヴィヴィオがどーしてもっていうから。それに私も、直接お礼を言いたくて」

 

 取調室を出てロビーまで戻り、公衆電話でも借りようかと考えているとロビーのソファに座っていた女性が立ち上がってこちらにぱたぱたとやってきた。俺はその顔に見覚えがありまくりで舌を巻く。その女性の名は高町なのは。何度も言及しているJS事件解決の立役者にしてエースオブエースの異名を持つ凄腕の魔導士だ。そして、その足元にいる金髪の少女も、どうやら待っていたらしい。

 

 後見人というだけあってハラオウン執務官はヴィヴィオにかなりなつかれている模様、というかママと呼ばれているあたり義理の親なのか。あれ?ヴィヴィオは血統的には聖王の血筋……あーー……ややこしいのでこれ以上考えないようにしよう。ひとしきりハラオウン執務官に抱き着いたヴィヴィオは俺と目が合うとハッとした顔で慌てて離れる。ハラオウン執務官が寂しそうな顔してるぞ。

 

「えっと、その……高町ヴィヴィオです!今日は助けてくれて、本当にありがとうございました!」

 

「カイト・エルンスト・アロイジウスだ。長いしややこしいからカイトでいいよ。まあ、無事でよかった。怪我はしてないと思うけど、危ない真似して悪かったな」

 

「いえいえ!その、カイトさんが気づいてくれなかったら多分もっと……とてもお強いんですね!」

 

「まあ、そうかもな。今年からDSAAに出ようと思ってるし、鍛えてはいるかな」

 

「DSAA!?そうなんですかっ!?いいなぁ、私もいつか出たいなあって思ってるんです」

 

 ぴょいんぴょいんと飛び跳ねて実に楽しそうに話す子だなあ、というのがヴィヴィオの第一印象だ。花が咲くように屈託なく笑い、身長差が結構あるにもかかわらず俺の目をきちんと見て話す。言っちゃ悪いが普通ならあんな危ない目に合わせた人間には文句の一つも出るだろうとは思ってはいたが、まさかこんな素直にお礼が返ってくるとは思わなかったし、精神的にもタフだ。凄い子だな。

 

「改めまして、ヴィヴィオの母の高町なのはです。今回はヴィヴィオを助けてくれてありがとう!カイトくん、でいいかな?」

 

「はい、高町さんのことは色々メディアで見てます。お会いできて光栄です」

 

「にゃはは、そういう堅苦しいのはいいよぉ~。なのはって呼んでね。それよりも、お礼と言ったら変かもしれないけど、ご飯一緒に行かないかな?当然ご馳走するから!」

 

 ああ、なるほど。直接お礼を言いたいってことなのか。申し訳ねえなあ、今ごろカンカンの相棒が俺の帰りを今か今かと待っているだろうから流石にこれ以上遅くなるような真似はできないし夕食食っていくわけにもいかん。もうすでに外は真っ暗だ。俺は申し訳なさに舌を噛みそうになりながら断腸の思いで断ることにする。

 

「すいません……実は同居人が夕食の用意をもうしてるはずで、連絡もしてないのでこれ以上遅くなるわけには……」

 

「あっ!そっか、そうだよね!ごめん、こっちの都合ばっかり押し付けて……」

 

「ええ、申し訳ないです。すいませんが、俺はここで。ヴィヴィオも、またどこかで会えたらな」

 

「それなら、私の車で送っていくよ。なのはたちも、それでいいかな?あと連絡は、もう局員の人がしてるよ。何せ大事件だったからね」

 

「あー……はい、わかりました。お世話になります」

 

 俺がなのはさんの誘いを断ると、ヴィヴィオの顔がそんなあと言わんばかりのどんより曇り顔になる。俺はそれにまた罪悪感をこじらせて胸を痛めたが、ハラオウン執務官の助け舟にまたパァっと明るい顔になる。表情がころころ変わって見てて飽きないな。流石にこれ以上期待させるのもかわいそうなので暖かい目で見守る二人のお母さんの誘いに乗ることにした。

 

 道中、ヴィヴィオが俺と同じSt.ヒルデ魔法学院の初等部に通っていることが判明したり、ハラオウン執務官と呼ぶと慌ててフェイトと呼べと言われたり、ヴィヴィオがミッド式のストライクアーツという武術を今修めている途中で、魔法のことも勉強していることを聞いたりとかした。彼女はどうやらミッド式と混ざった近代ベルカ式を魔法式に使っているらしいが、俺が使っている古式(エンシェント)ベルカ式のことも聞きたがったりしたので家についたら連絡先を交換する運びになってしまった。流石に初対面で信用しすぎな気がするんだけど……。

 

「あー、ごめんラフィ。遅くなった」

 

「やっと帰ってきたか、主カイト。話は聞いている、騎士として誉ある行動だ。私としても鼻が高い。そちらが……?」

 

「リイン、フォース……?」

 

 一般的な2階建ての一軒家、それが俺の自宅。まあ他にもベルカの自治領の端っこあたりに本邸に当たる屋敷があるんだけどそこら辺は割愛。ドアを開けて同居人を呼ぶと顔を出した同居人、ヴェントラフィカことラフィに今日あったことについての評価を貰った。そして、ラフィの顔を見たなのはさんの口から、こぼれるように出た誰かの名前に、俺はまた厄介ごとの匂いをかぎ取るのだった。




 主人公名前年齢判明、聖王教会との関係についてはおいおい。そして最後に出てきたヤツについては次回に。

 それではまた次回に。感想評価よろしくお願いします。
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