魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡   作:防御特化っていいよね

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第20話 ライバル

「さって、今日もやるかぁ」

 

「はい!カイト先輩、ファイトです!」

 

「おう、ありがとさんヴィヴィオ」

 

「……気をつけろよ。油断してると掬われるぞ」

 

 了解です、とノーヴェさんに返し俺は相も変わらず素手のままDSAAのリングに上がる。完全に実況も解説も俺を純格闘型(ストライカー)として紹介しているが、それを聞くたびにはっきり言って申し訳ない気分になる。一応大会の書類にはアームドデバイス2本とユニゾンデバイス一騎で申請してはいるのだが、どうやらそれは実況解説とは共有していないらしい。

 

 ダメ元で聞いてみたんだ、非殺傷設定を抜く威力のデバイスを使って相手を傷つけたらどうなるかって。そしたら、アウトだった。非殺傷を抜くのは事故だからしょうがないが、それが分かり切ってそのデバイス使うのは殺傷設定を使うのと何も変わらない、だそうだ。ぐうの音も出ない正論である。まああと少しでフラムとシュロス用の非殺傷設定が完成しそうだからそれまで我慢だな。

 

「よろしくっ!」

 

「ああ、よろしくな」

 

 次の相手は、おお、デバイス2本持ち。俺と一緒だな。拳銃型と短刀型か……遠近でデバイスを分けるタイプね。防御と攻撃をデバイスで分けてる俺と同じタイプ。エリートまで勝ち上がってきただけあって、流石に強そうだ。朗らかでさわやかな笑いを返した相手は……合図と同時に貫通型らしい魔法弾を銃から放ってくる。シールドを張って防御!

 

「君の試合は全部見た!近づいての重い一撃!逆にフットワークを利用して錯乱するようなこともない!近づかせない、判定で勝てればいい!」

 

「なるほどな。ガードしても、ダメージは入るから戦術としては間違ってない」

 

 むしろ俺対策としたらかなりいい部類だと思う。俺は連射されるバリア貫通弾をシールドを複数枚着弾箇所に貼って防ぐ。DSAAはライフ制、つまりは一撃かすらせて逃げ回り無傷ならそりゃ確かに勝てるわ。いいな、面白くなってきた。楽しんだうえで本気で勝ちに来てくれてるやつにこっちも本気で応えられないのは残念だが、今できる全力で破らせてもらう!

 

「はあっ!!!」

 

「うわっ!?」

 

 俺は弾幕の最中、防御をしつつ全力で右足を踏みしめる。剛健によって平時の数十倍もの膂力を手にしてる俺の震脚は、上半身から練り上げられた力を余すところなく地面に伝え……リングを粉砕した。一瞬で凸凹になった地面にフットワーク軽く俺の周りを魔法で移動して射撃をくわえていた相手は、足を取られてスピードを落とした。さらに、亀裂から俺の魔力が変換された炎熱が噴き出し、移動できる場所を狭める。

 

「一撃粉砕!業火爆拳!」

 

「うわああああっ!?」

 

 極限まで高めた炎熱を拳に纏ったフィニッシュブローを相手の防御の上から捻じ込んで、殴り飛ばす。リングから殴り飛ばされた相手は、壁に深くめり込んでダウンを取られる。10カウントのうちダウンで続行できなければこれで終了だ。膝を笑わせて立ち上がった相手はカウント9でファイティングポーズを取るも、そこで膝から崩れ落ちた。ここで、10カウント……終了だ。

 

「ありがとうございました」

 

「……ああ!俺の負けだ!次は負けないぞ、来年会おう!」

 

 クラッシュエミュレートが消えた相手は何とか立ち上がって俺と握手をした後、控室に消えていく。ここからはああいう……戦い慣れした相手が続くのか。いいな、すごくいい。正直なところ、フラムとシュロスを早くこの舞台でふるってやりたいし、大手を振って堂々と、本気で戦いたい。

 

 やったー!ともろ手を挙げて喜ぶヴィヴィオが飛びついてくるので受け止めてやってから、俺は試合中に感じた刺すような視線をさり気に探る。ノーヴェさんも気づいているようで目だけ動かしてどこにいるかを探っている。ヴィヴィオを見ているわけじゃないな、視線を受けているのは俺……つまりは、選手だ。

 

「カイト先輩、どうしました?お腹でも減りましたか?」

 

「お前の中で俺はどうなってるんだよ。お前こそ腹減ったのか?可愛い虫の音が聞こえるぜ」

 

「ふぇっ!?カイト先輩のばかっ!」

 

 俺に飛びつく寸前に、ヴィヴィオがから聞こえたきゅ~~っという可愛らしい音について指摘すると、自分でも自覚があったのか顔をリンゴのように真っ赤にしたヴィヴィオが最近様になってきたパンチを俺に見舞う。失礼なことを言った自覚はあるのでそれを甘んじてヴィヴィオが怪我をしないように受けてから、俺は視線の主に目をやる。

 

 黒髪、黒目。鋭い鷹のような目をして俺を見つめるそいつと完全に目が合う。向こうもそれに気付いている……試合で見たことないな……多分都市本選から違う場所の選手だ。ミッドの世界戦代表は3人、したがってそれぞれミッドの中の大きな都市に分けてトーナメントが3つ開かれることになる。その中のどこかにあいつはいる。今日あいてるということは……西南の方か?スケジュールはそれぞれ違うからな。

 

 むに~~と俺の顔をひっつかんでびよんびよんといじくり回すヴィヴィオのせいでかっこはつかないんだけどな。相手もそれが分かってるからか、苦笑いのような表情でこっちを見ている。なんだ、思ったより普通の性格してるのかもしれんな。相手に向かって親指で外を示すと、そいつは頷いて踵を返した。あいつ……強いな、多分。

 

「悪かったってヴィヴィオ、レディに対してデリカシーがなかったな」

 

「ふーんだ、先輩なんて知らないもん」

 

 へそを曲げたヴィヴィオに平謝りしながら廊下を歩く。ノーヴェさんは、イクスヴェリア陛下を保護したマリンガーデン火災の件で俺がJS事件に言及してからなんかギクシャクしてしまっている。俺を前にして、何かを言いよどむようなことがよくあるし、物憂げな顔もするようになった。いつもだったらぶっきらぼうながらも優しい人なんだけど露骨に距離を置かれてなんか寂しい。仲直りしてーなー、どうすればいいのやら。

 

 そんなことを考えながら、ヴィヴィオに組み付かれてはいはいとおんぶをした状態で会場を出る。さて、やつはどこに―――っ!?

 

「お前……強いんだな。今までの試合、全部一撃でKOだ。攻勢に回ったら手が付けられない攻撃力と、それを支える防御力。しかも……本気じゃない」

 

「……そらどーも。で、そういうお前も選手なんだろ?悪いな、別会場のやつまでは把握してねーわ」

 

 冗談だろ、気づけなかった。ヴィヴィオに意識を割いていたとはいえ、真後ろで、声をかけられる距離まで接近されて気づけなかった。言い訳はいくらでもできるが戦場なら殺られてたな。最近たるんでるのか?ノーヴェさんも俺と同じだったらしくて目を鋭くして立ち位置を変えた。彼は苦笑をして手をあげる。

 

「待ってくれ、別に如何こうしようってわけじゃないんだ。別会場に興味がないのは俺も同じさ、ただ偶々……お前の試合が目に入った。勝ち上がってくると、確信したよ」

 

「名前教えてくれ。俺も多分、上でお前と試合するって確信したわ。カイトだ」

 

「イサムだ。イサム・フワ……永全不動八門一派・御神真刀流、小太刀二刀術の師範代やってる。よろしく」

 

「……長いな」

 

「俺もそう思うよ」

 

 師範代にそう思われちゃおしまいじゃねえの、と思いながら俺はイサムの差し出した手を素直に握る。握った感触は、確かに武器を握る人間の手だった。特に剣を握っている人間特有の剣だこが目立つ。相手も俺の手から俺が武器を握る人間だというのが分かったのかやっぱり、と言って手を離す。

 

純格闘型(ストライカー)じゃない、と試合を見て思ってたけど全然別ものじゃないか。得物はなにを?」

 

「斧と盾だ。ちゃんとした非殺傷設定の搭載が間に合わなくてな、仕方なくこれというわけさ」

 

「せ、せせせんぱいっ!ダメです情報ばらしちゃ!」

 

「バレてんだから無駄無駄。本気でやるならフェアじゃねーとな。武器自体は向こうも明かしてくれたわけだし。そもそも……」

 

「得物がバレた程度で不利になるなら、もう負けてる、かな?」

 

「分かってんじゃん」

 

 ヴィヴィオが俺があっさりと得物をバラしたことに慌ててあわあわと俺の服の裾を引っ張る。イサムが俺の言葉を引き継いだ通り、使用する武装や魔法がバレた程度負けるならそんなもん、まっさらな状態で戦っても負けるよ。対策ってのはされて当たり前なのであって、初見殺しには成れどそれは必勝の策ではない。そもそも、どっちが強いか張り合ってるだけなのに情報戦も何もないだろ。

 

「俺は西南のトーナメントで優勝する。きっとお前もこの中心地区トーナメントで優勝するだろう。俺たちが戦うとしたら世界戦だ。楽しみにしてる」

 

「ああ、俺も楽しみが出来た。戦場に殴り込みかけるよりヒリつくね」

 

「そうか。じゃあ、世界戦で。カイト、君に会えてよかったよ。気合いが入ったから」

 

「じゃあなイサム。次に会う時は両手に得物ぶら下げて待ってるぜ」

 

 多くを語る必要はない、まだ戦えないのなら話していても意味がない。ここまで話しておいてなんだが、イサムは強い、だけど……俺とはタイプの違う強さを持っているように見える。俺どころかノーヴェさんの背後を取った気配の殺し方、厚くなった手の皮に残る潰れた豆に剣だこ……魔導士側じゃない、どっちかと言えば俺たち……古代ベルカの戦争屋である騎士の思想に近い鍛え方をしている。踵を返して去っていくイサムに俺は最後に声をかける。

 

「次会う時は袖口のもんと胸元のやつ外しとけよ。勘違いしそうだ」

 

「っ!!……そうするよ」

 

 俺がそれを指摘するとイサムは初めて驚いたような顔をして、笑みを深めた。俺はそれで満足したので適当に腕をぷらぷら振ってヴィヴィオとノーヴェさんの方に向き直る。ヴィヴィオは俺が指摘したことを分かってはいなかったみたいだけど、ノーヴェさんは俺の指摘で見抜いたらしい、さすがだ。冷や汗を垂らしながらイサムが去っていく方を見ている。

 

「カイト先輩、袖口と胸元のものって?」

 

「あいつ、武器を仕込んでたんだよ。カイトがいわなきゃ私も気づけなかった。なんてやつだよ」

 

「暗器ってやつだな。袖口にはワイヤー、あと金属のなんかだ。反射が見えた。あと胸元は、刃物だろうな」

 

「それって違法なんじゃ……」

 

「そういう流派なんだろ。体の一部と化しているせいでないと逆に危ない。反射行動でエグい攻撃が出るかもしれん。刃物を持つことで自分の行動を出来るだけ安全な方に縛ってるんだ」

 

 いやだなー、ああいうの。ご先祖様を暗殺しに来たアサシンよりえげつないもん持ってそうだ。得てしてああいうのって素手の方が危なかったりするんだよな。刃物を持ってたら手を斬られたというのが素手だったら眼球を素手でむしられたに変化するかもしれないんだから。家はぶっちゃけ戦争用と言っていいが、あいつは実戦流派だな。

 

「まあ、会うのは相当先だからいいわ。楽しみが増えただけだな」

 

「う~~、ちょっと怖いかも……」

 

「大丈夫だ、俺が近くにいりゃ守ってやるしあいつも武闘家の目をしてるから変なことしないだろ。釘も刺したしな」

 

 まさか相手が武装を済ませていたとは思わなかったらしいヴィヴィオがちょっとビビったような感じの声を出すので流石に話題のチョイスがまずかったかと反省する。いやはやしかし、それだけ流派の動きが身に染みついているということなので実力者としては間違いないだろう。いかんな、ジークと戦えるかもしれないっていうのと同じくらいワクワクしてきた。おれも模擬戦ジャンキーなのかもしれん。

 

「まあ、それよりも。勝ったんだし海上施設行こうぜ。イクスヴェリア陛下に報告にいこう」

 

「あっ!はい!イクス、今日は起きてるといいなあ」

 

「ずっと寝っぱなしだもんな」

 

 あの、マリンガーデンの火災の後、俺の腕の中で眠ってしまったイクスヴェリア陛下は未だ一度も目を覚ましていない。担当医の話によるとやはり全身くまなく不完全な覚醒の影響が出ていて不具合でまくりのボロボロのようだ。スバルさんはそれに酷く残念そうに唇をかみしめていたが、イクスヴェリア陛下もすぐこのまま100年単位の眠りにつくわけではない。必ず、本格的な機能停止に陥る前に覚醒して準備をする必要がある。

 

 マリンガーデンの中でスバルさんはイクスヴェリア陛下にヴィヴィオのことを話していたらしくヴィヴィオ本人もイクスヴェリア陛下と話すことを心待ちにしている。だから今日も、勝利報告をもって彼女にお見舞いに行くのだ。気を取り直したヴィヴィオが先に走って行ってしまうのを、俺とノーヴェさんは顔を見合わせて追いかけた。

 

 




 とらハ要素入りまーす。はい、男子戦に張り合いが無いように思ったのでオリキャラ君投入です。御神流は次元世界にも広がってたんだよ!(迫真)

 ではまた次回に。投稿予定は2日後になります。それでは感想評価よろしくお願いします。
 
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