魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡   作:防御特化っていいよね

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第21話 波乱

「主カイト、待たせた。非殺傷設定の更新が完了したぞ。管理局の犯罪者鎮圧用設定を改変したものではあるが効果は劇的だ。これなら本気でフラムを振るっても問題あるまい」

 

「おお!ありがとうラフィ!そうだな、なんかお礼をしなきゃいかんな……なんかあるか?」

 

「ならば……肩でも揉んでくれ。最近凝るんだ。老朽化してガタが来てるのかもしれん」

 

 おばあちゃんかよ……と思いながら俺はラフィの肩を揉む。確かに俺のデバイスをよくいじくりまわしてメンテナンスをしているからかカッチカチに凝ってしまっているのが見える。目を細めて気持ちよさそうに唸るラフィからは融合騎の威厳も、歴史の生き証人であるという自覚も、ついでに年長者であるという風格も感じられなかった。具体的に言えばババアだった。

 

「へぶっ!?」

 

「確かに私は年齢はいっているかもしれんがババアではない。それよりも主カイト、もうすぐ時間ではないか?」

 

「おっ!?おー、そっか。行ってくるわ。お前は来ねーの?」

 

「実は騎士シグナムより魔剣の整備の依頼を受けてな。この後仕事だ」

 

「局の整備じゃだめなのか」

 

「古いデバイスは古い人間の方が分かっているものだ。特に今回は研ぎなおしの依頼だからな。局では顔を顰められるだろう」

 

 ああ、なるほどと俺はラフィの裏拳を受けた鼻を抑えながら頷く。管理局にとってデバイスとは魔法の杖だ。武器ではない、それだけで戦力となるアームドデバイスでも一定の範囲まで刃をつけてはいるものの、あまりそれも好まれてないのが実情だ。非殺傷設定のおかげで犯罪者を基本無傷で捉えるのが大前提の管理局で非殺傷設定を抜ける威力のあるデバイスの威力をさらに高めたいっていうのは局の技師も嫌がるだろうな確かに。

 

「お前的に見てどうなの?レヴァンテイン」

 

「メンテナンスは良くされている。大切に扱われている証拠だ。だが、刃が鈍っているのはそうだろう。騎士シグナムが私を頼ったのはそれを分かっているからだ。家の工房にいるので帰ったら連絡をくれ」

 

「了解、じゃ行ってくるわ」

 

 そういって俺はラフィに適当に手を振ってから家を出る。今日は、都市本戦の開始日……世界戦優勝者であるジークの初試合が行われる日なのだ。俺の試合は明日なのでちょうどよくあいているし、イサムのやつも今日が試合だろう。ジークの意見も知りたいからあいつの試合を見た後に合流出来ればなとは思う。カラッと夏になってきたミッドの空に顔を顰めて、俺は会場まで歩いていった。バイクの免許取ろうかな……。

 

 

 

「おや、カイトさんではありませんの!ささ、こちらにどうぞ!エドガー、お茶を入れて差し上げて」

 

「かしこまりました」

 

「いやいやお構いなく。ヴィクターも今日は試合じゃなかったか?」

 

「ええ、ジークの試合の2つあとですわ。カイトさんも、都市本戦出場おめでとうございます。流石は城塞の騎士、世界戦を優勝して戦うのが楽しみです」

 

「ありがとうよ。ただ、俺にもでかい壁が出来たし、ヴィクターはあの腹ペコを越えないとな」

 

 当然ながら腹ペコとはジークのことである。ちょっと前に都市本戦出場決定をあいつのテントに教えに行ったら持っていった1週間分の食料をその場で全部平らげやがった。その瞬間から俺はもうあいつのことを胃袋ガイスト系女子としか認識できなくなってしまったんだ。観戦席に座っていたヴィクターが俺に気づいて席を譲ってくれる、ヴィクターもヴィクターで面倒見がいいよなあ。

 

「相手はミカヤ・シェベルだったっけ。おー、ベテランじゃねえか、立ち姿もいいな。芯が通ってる、古武道独特の気持ちのいい立ち方だ」

 

「そうですわね。ミカヤさんの居合抜刀術は目を見張るものがあります。構えに入った状態ならともかく……抜かれたら見えない」

 

「居合ね……ベルカ末期にはなかったな。経験がねーわ。あの頃剣っつったら騎士甲冑の上から叩きつぶすもんだったしな、鋭さが要求されたのはごく一部だった」

 

「……いつも思っておりますが、物騒ですわね」

 

 物騒という言葉が形になったのがベルカっていう世界なので実際その通りだ。ミカヤ・シェベル……比較的長身の女性で明らかに俺らより年上だ。相対するジークは真剣そのものな瞳でその人を見ている。セットアップを済ませた二人が相対する。うお、ジークのやついきなり鉄腕を解放してるじゃねーか。なるほど、シェベルさんはそれだけの実力者ってことだな。

 

 シェベルさんは居合刀を左手で鞘を持ち右手で柄に手をかけて重心を落とした。おお、カウンターで行くのか。開始と同時にジークがまっすぐシェベルさんに突っ込む。管理外世界である地球の文化や武術が入ってきたのはここ100年くらいの話だったはず。エレミアの技術継承を受けているジークや記憶を継承している俺たちにとっては、経験が少ないものだ。如何せん、先代の経験に沿った対応をしてしまいがちなのが記憶継承者の悪い所だな。

 

「ヤバいな、あの人。ジークにカウンターを合わせるのか」

 

「それがあの人の戦い方ですわ。攻めも守りもこなせますが、一番得意なのはカウンターでしょう。後の先の取り方は私でもかないません」

 

「お嬢様が素直に負けを認めるとは、珍しいこともありますね」

 

「なっ!?し、仕方ないでしょう!?この方の前で見栄なんか張りたくありません!」

 

 エドガーの言葉から始まるアレソレは聞き流すことにしても、シェベルさんは凄いな。遠近両用隙が無いジークの鋭い射砲撃を的確に切り裂いて防御し、サブミッションは掴ませず、打撃は逸らし、そして得物によるリーチの差をうまく利用している。堅実な守りだ。それでもジークは、強いんだけど。

 

 抜刀、斬撃、納刀、この3つの動作をワンアクションで収めている。体に染みついて抜けなくなった武闘家の動きだ。ジークの顔から笑みがこぼれる。細かくジャブを打ち、納刀を済ませたシェベルさんを釘付けにする。居合を封じてそのまま、持っていくつもりか。俺じゃ取れない選択肢だ、そんな細かい動きは不得手なんでな。

 

「天瞳流抜刀居合……天月・朧!」

 

「んあっ!?」

 

「ジークっ!?」

 

 抜刀術を封じていたはずのジークが、斬撃を貰って吹き飛ばされた。驚いた、あの状態から居合に持っていったのもそうだけど、その魔法の使い方に。通常はワンアクションで体全体に作用するはずの身体加速魔法、ブリッツアクションを抜刀術を行う右手だけに使用することで神速の斬撃と、間合いのリズムの変化を同時にやってのけた。あれはきついぞ、シールド貼ったのに斬られて、しかも喉だ。ダメージもかなりいってる。

 

『チャンピオン、ダウーン!しかし!カウント前に自力で立ち上がった~~!』

 

「ジーク、良かった……」

 

「ヤバいっ!」

 

「カイトさん?どうされました?」

 

 ゆらり、と立ち上がったジークに俺は冷や汗を流す。遅れて疑問の声をあげていたヴィクターも察したらしい。あのジークは、河原で俺と試合した時と一緒だ!ゆら、と鉄腕と化した両手に高密度の魔力の揺らぎが蠟燭の灯のように灯っていく。シェベルさんが強すぎたんだ、ジークを殺しかねないと体が判断した!エレミアの自動操縦(オートパイロット)がでた!

 

「おい、まずいぞ。あれに、反射行動に加減はない!ジーク、目を覚ませ!」

 

「ジーク……!貴方はそんな弱くありませんわ!」

 

 ガイスト・つまりはイレイザー魔法。辛うじてデバイスが制御しているのか非殺傷は外れていない、よかった……!ジークはこうなるかもしれないとわかっていたから自分のデバイスから殺傷設定に変える機能にロックをかけていたらしい。試合続行としていいのか?洗練されたそれではなく、踏み込みで地面を凹ませて獣のように飛びかかったジークに表情を引き締めたシェベルさんが抜刀……しようとして右手を抑えられた。まずいっ!

 

「く、ぐぅ……!」

 

「やりやがった……!」

 

 ボキリ、と離れているこちらにも凄惨な音が聞こえる。イレイザー、非殺傷設定を貫通して手首を壊しやがった。意図的な破壊はルール違反だ。慌てて制止をするセコンド役のスタッフを吹き飛ばしたジークが口で鞘を噛んで左手で抜刀したシェベルさんに向かう。慌てたスタッフがリングについている緊急装置を起動し、シェベルさんとジークの間に壁が出現し、そしてジークにバインドが幾重にもかかる。

 

「……だめだ、気絶させないと戻らないぞ」

 

「……やるしかありませんわ」

 

「一撃で痺れさせてくれ。シュロス!」

 

 イレイザーでバインドを消し飛ばしたジークが壁を破壊してシェベルさんの所に向かおうとする。もう既に試合どころではない、俺たちは観客席からデバイスを起動して飛び立ち、俺はシュロスでイレイザーを纏ったジークの腕を受け止める。一瞬の隙を見逃さなかったヴィクターが暴徒鎮圧用の高電圧と麻痺を合わせた帯電蹴りをジークの延髄に叩き込んだ。ここまでやってようやく、ジークは力を失って倒れ込んだ。スタッフが慌てて此方にやってきてシェベルさんを担架で運んでいく。

 

 ジークは気絶してはいるものの、遠巻きにされてしまっている。おそらくは会場に待機している高ランクの魔導士のバインドで縛ってから運ぶつもりなんだろう。顔を顰めた俺はジークを横抱きで抱き上げる、そしてそのままスタッフさんに医務室に運ぶことを告げてヴィクターを伴って俺は会場を後にした。

 

「ジーク……エレミアは、何をしたくてこんな記憶継承の方法を……」

 

「そんなもん、子孫を守りたかっただけだろ。時代にはそぐわないが、あの頃ならこのくらいしないと、な」

 

「どうにか……どうにかして反射行動だけでも解けたら……」

 

 ヴィクターが唇を噛んで悔しそうに漏らす。ジークは、目を覚まさない。彼女の意識を奪ったエレミアの遺志は、彼女を守りたいのだろう。そう願って遺伝子にプログラミングされているはずだ。その遺伝子のプログラミングを解除する方法は俺には一つしか思いつかない。ジーク自身が、エレミアとして強くなることだ。彼女は、ガイスト……イレイザーを使うのを怖がっているから、過剰反応で余計に拒否しているのかもしれない。

 

「ヴィクター、次試合だろ。コンディションは悪いかもしれんが……ジークが気にする、負けるなよ」

 

「言われずとも。どうかジークのことをよろしくお願いしますわ」

 

「ああ、任せとけ」

 

 医務室に入って医務官にジークを診てもらう。あれだけのことはあったが、DSAAは魔法戦技を競う大会だ。人死にでも出ない限りは試合は続行されるだろう。ヴィクターもこの後試合があるのだ。俺は唇から血をにじませたヴィクターにハンカチを渡して医務室から追い出した。応援できないが、映像越しですまないが、応援させてもらう。

 

「過度の精神負担により、眠っているだけのようです。体へのダメージは少ないですね」

 

「そうですか、良かった……しかし、試合は」

 

「審議中、だそうだよ。初めましてだね、アロイジウス君。君はジークのコレなのかな?」

 

「もう平気なんですか?」

 

「骨はくっついたけどね、暫く運動は厳禁だそうだよ。全く、ジークちゃんは面白いねえ」

 

 俺の後ろから声をかけてきたのは三角巾で腕を釣ったシェベルさんだった。無事な左手で小指を立てるポーズをするシェベルさんは右手を砕かれた相手に向けるとは思えないほど穏やかな視線でジークのことを見ていた。どうやら、ジークがそれをどう思うかはともかくシェベルさん本人は気にしてはいないらしい。

 

「私があのジークちゃんを見たのは今日が初めてだ。本人やヴィクターちゃんから話だけは聞いていたんだけどね、なるほどあれは厄介だ。ジークちゃんが悩むのも分かる」

 

「慰めかもしれませんけど、ジークが死ぬって判断した攻撃に反応するみたいなんで、実戦なら勝負ついてましたよ」

 

「そうかもね。でもね、あれは試合だし、あれの後結局これだ。結果が全て、たとえ本人の意識がなかろうと……ジークちゃんの勝ちさ」

 

 やはり、武闘家。精神が完成しているんだ。悔しさはあれど相手を憎まず、そして讃える。からから笑っているシェベルさんはいきなりぎらっと殺気を漲らせて俺をみた。妙に剣呑な瞳をしているが、なんだろう?

 

「最近、ナカジマちゃんの元気が無くてね、ほら。ノーヴェ・ナカジマだよ。君関連らしいんだけど、君彼女に何かしたのかい?」

 

「俺も最近それに悩んでましてね。きっかけは何となくわかるんですけど」

 

「なにかな?私に話せる話なら聞かせて欲しいんだ。彼女は私の友達だからね」

 

「俺の両親がJS事件で死んだ話をしました。救助現場からの帰りで」

 

 俺のその言葉に、シェベルさんは殺気を引っ込めて物凄く難しい顔になった。




 ミカヤちゃん、登場。ジークに腕砕かれてるらしいっすね。多分この事件があったから欠場したんやろなあ。あとヴィクターさんはアロイジウスの真実をある程度知っているので尊敬マシマシです。しょうがないね。

 ではまた次回に。感想評価よろしくお願いします
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