魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡   作:防御特化っていいよね

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第22話 エレミア

「じゃあ、私はそろそろお暇するよ。ジークちゃんによろしくね……あと、変なこと聞いて悪かった」

 

「いいよ、終わったことだし。ジークの事気遣ってくれてありがとな」

 

「出来ればもう一度戦いたいが本音なんだけどね」

 

「それはジークに直接言ってやってくれよ」

 

 できるならそうするよ、とシェベルさんはぼやいて医務室の簡素な椅子から立ち上がった。一緒に見ていた画面の奥では、明らかに精彩を欠いてはいるものの一撃で相手をリングに沈めたヴィクターの姿が映っている。どうやら彼女はノーヴェさんの事情についてある程度知っているようだが、さすがに話せるようなことではないらしく、あの後すぐに話題を変えた。

 

 俺も別に滅茶苦茶知りたい、知らないと前には進めない!ってほど聞きたいわけではなかったので話題変更には素直に従った。明らかに話題選びをまずったという顔をしているシェベルさんに俺も申し訳なくなったが、正直に答えることが誠意だと思ったので誤魔化すことはやめたのだ。

 

 ジークがシェベルさんのことをどう思っているかは目覚めてみないとわからないが、シェベルさん本人はジークのことを想って一旦離れる選択肢を取ったらしい。意識を取り戻さないジークの頬を左手で軽く撫でた彼女は試合頑張ってね、と俺に声をかけるとさっさと帰ってしまった。さて、今日は色々あったなあ……。

 

「カイトさん、ジークの容体は?」

 

「……まだ目覚めてないよ。お疲れさんヴィクター、完勝だったな」

 

「ええ、ジーク……こんなことになるだなんて」

 

 まずいな、ジーク本人がどうなるか分からないが、ヴィクターも結構きているらしい。幼馴染だって言っていたし、ジークのことは我が事のように感じてしまうのだろう。俺は記憶を残した初代のことを恨んだり、邪険に思ったりはしていないが、エレミアは何を思って記憶ではなく、戦闘経験のみを遺したのだろうか?それに至る記憶があればジークの事情も解決できるかもしれないのだが……。

 

「ん……は、あれ?ウチどうなって……あっ!?」

 

「ジーク!良かった!心配したのよ……」

 

「ヴィクター、それにカイ君も……まさか、まさかウチ、また……」

 

「今回ばっかりは、何もなかったとは言ってやれねえな……」

 

 ジークが目を覚ました。混乱したように周りを見渡したジークは徐々に状況を理解したのか顔を真っ青にして震え始める。段々と理解していったらしい、おそらくジークの中ではいきなり試合中から記憶が途切れているのだろう。そして彼女が取り乱したように口を開いた。

 

「ミ、ミカヤさんはっ!?無事なの!?」

 

「右手首の粉砕骨折で済んだ。もう骨もくっついてるが、暫く試合は無理だろうな」

 

「審判たちの審議の結果ですが、故意ではなかったと証明されました。ジークの、判定勝ちですわ」

 

「そんな……そんなのっ!!」

 

 ジークが長いツインテールを振り乱して叫ぶ。医務官は事情を察したのか部屋を出て行ってくれた、良い人だ。判定の結果はヴィクターが聞いてきてくれた。ジークの反射行動の原因となった喉への居合だが、その前にジークが減らしたライフの方が多かった。鉄腕は防御の上からでも容赦なく攻撃を通すからな。手首粉砕のライフ減少はなかったことになったが、それでもジークが上回った。

 

 ジークはそれを聞いて虚脱したような顔となった。痛ましいその顔に、俺どころかヴィクターですら声をかけることが出来なかった。ジークは、ジワリと目に涙を浮かべるがそれを強引に拭ってベッドから立ち上がる。ヴィクターが支えようと数がジークはそれを手で制してふらふらとした足取りで歩き始める。

 

「ジーク!」

 

「ごめん、ヴィクター……カイ君……ひとりにして」

 

「ですが!」

 

「ヴィクター、そっとしておいてやってくれ。整理をつける時間が必要だろ。ジーク、飯はきちんと食えよ」

 

「カイトさん……」

 

「ありがと、カイ君……」

 

 ふらふらと、ゆらゆらと……今にも倒れそうなほど頼りない足取りで、チャンピオンにはとても見えないほどのかよわさのままジークは医務室を出ていく。ヴィクターが追いかけようとするのは俺は肩を掴んで止めた。流石にこれは、一人で抱えて消化できるまでやれることはない。ましてや、暴走するあいつを止めた立場の俺たちに気遣われてもジークは惨めになるだけだ。

 

 ぐっと手を握り締めるヴィクター、正直やるせない。あいつをあのレベルまで押し上げたのはエレミアの戦闘技術も確かにあるが、同時にそれがあいつを傷つけている。二律背反、いくらなんでもむごいと思うが……それが古代ベルカの血筋を受け継ぐ俺たちのようなものに課せられた宿命だ。先祖のアレソレは俺たちの意志に関わらずどうやっても付いてくるから。

 

 あいつの悩みを分かってやることは難しい。あくまで俺の初代は記録を残すために子孫に記憶を残し、使命を託した。ジークのように危険に反応して自動で戦うようなプログラミングはされていない。あくまで自分で自衛するものだという考えだろう。大きく深呼吸をしたヴィクターは失礼いたしますと言ってエドガーを伴って帰っていった。

 

 医務室に残された俺も、医務官に礼を言って帰路につく。いつもだったら試合を見てたぎってくるはずの心も今日は冷めきってしまっていた。はー、今日は結局何も出来そうにねえや。さっさと休んでしまおう。どうせ俺も、明日には試合だから。

 

 

 

 

「カイト先輩……何かありました?」

 

「んん?まあな。試合には影響しないから安心しな」

 

「でも……」

 

「ヴィヴィオが俺を心配するなんざ10年早い!」

 

「むーっ!!!」

 

 翌日のこと、あんなことがあっても試合自体が無くなるわけではないので勿論俺は気持ちを切り替えて会場にヴィヴィオたちと訪れていた。普段通りにしているつもりだったけどどうやらヴィヴィオはそういう雰囲気を掴むのが上手なタイプらしく、俺に何かあったんじゃないかと尋ねてくる。突っ込まれたくなかったので強引にはぐらかしてヴィヴィオを抱き上げる。

 

 ノーヴェさんも何かがあったことは感づいているらしく不審そうな顔つきをしているがあえて突っ込まないことにしてくれたらしい、有難い。さてさて、今日の相手はエルク・ローグ選手。DSAA男子部門の中では強豪とされている人物だ。直剣型デバイスでの剣戟を得意としている近代ベルカの騎士らしい。同じ騎士としては結構シンパシー感じるな。

 

『さあ、都市本戦出場を決めた2名の選手を紹介します!前回都市本選4位の強豪!エルク・ローグ!対するは初出場でここにコマを進めたルーキー!拳の一撃ですべてを沈めてきたカイト・エルンスト・アロイジウスだ~~!』

 

「よろしく頼みます」

 

「胸を借ります」

 

 お互いそう頭を下げてデバイスを起動する。ローグさんのデバイスは……そうか、守護騎士たちが管理局入りしたことで古代ベルカのデバイスの解析が進んだからこそ開発された……レヴァンテインと同型のデバイスだった。柄にあるカートリッジシステムといい、そっくりだ。変形機構が同じかどうかは分からないけどな。

 

 だが、俺も今回から武器持ち、というか本気状態だ。ユニゾン自体は世界戦まで取っておく予定だが巨大なタワーシールドと戦斧を手にした俺に実況がポカンとしている。相手も一瞬ポカンとしたが、すぐに俺が仕上がっていることを察したのか苦笑して長剣を構えた。多分、俺のこと対策してきているのだろうけど、悪いことしたな。

 

「フルブライト!カートリッジ!」

 

「フラム、撃発」

 

 お互いのデバイスからカートリッジが排出されてローグさんの方は雷が、俺のフラムには炎が渦巻く。近寄って斬れ、近代ベルカも古代ベルカも、何だったらミッド式でも変わらない不変の真実に従い。お互い何も示し合わせずに突撃してクロスレンジでの接近戦に入る。

 

「くっ……硬い……!」

 

「それが取り柄なんだよ!」

 

 雷撃とともに振るわれる長剣をどっしりと腰を落とした俺がシュロスを的確に操って受ける。厄介だな、一撃一撃に麻痺が付属されてる。まともに受けたら連撃が確定する、少し強引に出るか。俺は7回目の斬撃を受ける際にシュロスを構えたまま突撃し、攻撃ごと巻き込んで相手の全身にぶつけて体勢を崩した。

 

「紅火、剛閃!」

 

「うわああっ!?」

 

 体勢を崩したところに、赤く燃えるフラムを振るう。踏み込みで地面をへこませつつ体を固定した俺が全力でふるったフラムは予想していたらしい相手の防御魔法を上から叩き割ってローグさんに直撃する。渦巻いた炎は着弾と同時に爆発し、ローグさんはきりもみ回転して吹き飛び、リングから落ちて行った。

 

「くっ、ま、まだだ……!」

 

「こぉい!」

 

 感触がおかしいと思ったが、どうやらギリギリでデバイスを割り込ませて物理方面は防御できたらしい。並みの相手だったら今ので一撃KOだった。ごっそりと7割ほど削れたローグさんのライフを確認しながらも俺は警戒を緩めず今度は2発フラムにカートリッジをロードさせて、大上段に構えて、振り下ろす。炎熱の衝撃波が壁となって駆け抜け、リングに戻ったローグさんに殺到する。

 

「フルブライト!フルドライブ!」

 

「シュロス、撃発」

 

 バゴン!と通常のカートリッジではありえない音を立ててシュロスから砲弾型カートリッジが吐き出される。渦巻く魔力を爆発的に高めた俺が、大剣に変じたデバイスを構えるローグさんに突撃する。ローグさんもそれにこたえて全力でこちらに走りより、思いっきり大剣を振るった。

 

『け、決着~~~!エルク・ローグ、ライフポイントゼロ!カイト・エルンスト・アロイジウスが次の試合にコマを進めた!』

 

 大剣がシュロスと触れた瞬間にシュロスの表面からリングの半分を覆う指向性の大爆発が起こってローグさんのライフを残さず削り取った。盾だけど盾にあらずってね。これ接近戦殺しとして伝わっている魔法なんだけど、流石にこれを捌けたらシグナムさんとかヴィータさんレベルなので苦戦したかもしれない。

 

 地面で両手両足を投げ出して倒れるローグさんを片手で助け起こして頭を下げる。ローグさんはカラッとした笑顔で次も頑張れよとだけ残してリングを後にした。ツインデバイスかつ種別の違うカートリッジを使用する俺は確かに初見殺しの塊かもしれない。基本的にデバイスは変形するものだから、基本形態で戦い続ける限りは情報も出ないし。

 

「おし、勝ったな。どうだヴィヴィオやってやったぜ」

 

「はいっ!流石です先輩!いよっ!城塞の騎士!」

 

「どこで覚えたんだよそんなの。時間いいし飯でも食って帰るか?ノーヴェさんいいです?」

 

「ん?ああ、いいぜ。お前もしかしたらそのまま世界戦いくかもな」

 

 肩をバン、と叩くノーヴェさんによしてくださいよと照れ隠しをして俺はヴィヴィオに手を差し出す。えいっ!とヴィヴィオがぱちんと俺の手に手を叩きつけてハイタッチをしてから俺たちはさっきの試合で興奮冷めやらぬ会場を後にするのだった。ふーむ、割と男子も見られてるっちゃみられてるんだな……

 

 俺は別会場で同日試合だったイサムの映像が出ているのを見て更衣室で着替えながら確認する。あいつの試合はいくつか確認したが今の所高速移動からの急所への連撃で試合を終えている印象だ。速いっちゃ速いな、いかん……フェイトさんやエリオを見慣れているせいで感覚が肥満しているかもしれん。グルメすぎるのも考え物だ。

 

 ただ、まあ……本気ではないだろうなっていうのが第一の感想だ。攻撃に余裕があるし、遊びの幅が広い。どうしたら効率よくライフを削れるかというのを試しているように思える。一撃の威力だけ見るなら明らかに俺が上ではあるが、スピードでは格段に劣っているし、防御魔法の上からなぜか攻撃が通っているのも気になる。うーん、不思議だ。

 

「お待たせ~。ヴィヴィオ、ノーヴェさんなんか食いたいものあります?」

 

「か、カカカイトせんぱいっ!それどころじゃないですよ!大事件です大事件!」

 

「どうした?」

 

「あー、お前にとっちゃ確かに事件かもしれねえ。いいか、前年度チャンピオンのジークリンデ・エレミアが出場の辞退をした」

 

「……なるほど」

 

 そうか、ジークはそういう風に考えたんだな。あいつの考えることだし俺がピーチクパーチク言うことじゃねえ。それならそれで俺は自分の試合に集中するだけだしな。ただ……まあ、顔くらいは見に行ってやるかとファンだったらしく慌てるヴィヴィオに落ち着くよう言い含めるのだった。




 ジークさんの悩みってVivid劇中じゃ解決してないんですよね。実際作者もこれどうすりゃいいのかと頭を抱えています。それにしてもジークさんかわいい。

 ではまた次回に。感想評価よろしくお願いします。
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