魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡   作:防御特化っていいよね

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第23話 選択

「先輩、チャンピオンと戦いたかったんですよね……やっぱりこの間の試合が」

 

「ん、まあしょうがねえよ。あんなことがあったわけだしなあ。むしろ無理に進まないって選択がとれただけ大したもんじゃないか?」

 

「そうなのかな……チャンピオン、シェベルさんもだけど大丈夫だといいんだけど」

 

「ミカヤちゃんは心配ないって言ってたけどな……チャンピオンの方はよくわからねえんだよなあ」

 

 ノーヴェさんが頭をポリポリと搔きながらシェベルさんのことは心配ないという。一人にしておいてほしいとジークはいったが、流石に心配だな……いやしかし、整理をつけたとは言い難いし、俺が様子を見に行くのはいいことなのだろうか。ああいうのって乗り越えるのは結局自分なのだから、その苦しみの本質を理解できない俺では役に立たないどころか邪魔でしかないのかもしれない。

 

 メールだけでも送っておくか、そうすればジークも一人ではないってことは分かってくれるだろ。助けて欲しいって言うんなら全力で力になってやろうじゃねえか。あとはそうだな……俺が勝ち続けることだ。あいつは多分、気にするタイプだ。自分のせいで負けた、だなんて思わせないようにすることが大事だろう。

 

「んあ?スバルさんから音声通信?」

 

「姉貴から?」

 

 珍しいこともあるもんだ、と俺は首を傾げる。スバルさんとはあのカルナージでのオフトレ合宿以来、おそらく一番頻繁にメールのやり取りをし続けている。というか、スバルさん物凄く筆まめ?メールまめ?なタイプで毎日必ず1通くらいは音声から書き起こされたらしいメールをくれるのだ。毎日メールフォルダに溜まっていくそれはよく話題が尽きないなあと感心するほど。

 

 その代わりといったらなんだけど音声通信って初めてかもしれないな。はやてさんとかフェイトさんとかはよく音声通信くれるし出なかったら拗ねるんだけど、スバルさんは初めてかもしれん。エリオとキャロはよくセットになって保護した動物の写真とかを送ってくれるんだけど。脱線した、仮想画面を映してっと。

 

「はーい、スバルさんお久しぶりです?イクスヴェリア陛下の件以来ですかね?なんでしょう?」

 

『あー!カイト!?ごめん試合終えてすぐなんだけどこっち来れないかな!?出来ればラフィも連れて!』

 

「構いませんけど、こっちとは?」

 

『海上保護施設!イクスが目覚めたんだって!カイトのこと呼んでる!あたしも行くから急いで!』

 

「すぐ行きます」

 

 結構慌てた顔のスバルさんが通信に出てきてすわ事件が起こって協力要請でもきたか!?と思ったけど別の方面での事件だった。あのマリンガーデンの火災の後帰りのヘリの中で機能不全によって眠りについてイクスヴェリア陛下が一時的に目を覚ましたらしい。そのことを聞いた俺はすぐさま即答で行くことにしてヴィヴィオに手刀をきってご飯の話はまたな、という。というか

 

「ヴィヴィオ、来るか?」

 

「えっ!?いいんですか?」

 

「スバルさーん、いかがでしょう?」

 

『いいよいいよ全然オッケー!きてきて!』

 

「軽いなあ姉貴は……あたしも行くぜ。いいよな?」

 

 そういえば、助け出した時にイクスヴェリア陛下を励ますためにスバルさんは現代に生きる王たちの子孫の一人、その例としてヴィヴィオの話をしたらしい。イクスヴェリア陛下はそれにたいそう驚いていたらしく、ヴィヴィオに会ってみたいと救助を拒んでいたことを忘れたかのように漏らしたのだとか。それならば、会わせてあげてもいいだろう。ラフィが眠りについたのは6代目からなので3代目と関わりがあるイクスヴェリア陛下とも当然面識がある。よし、連れて行こう。

 

「よし、ヴィヴィオ、俺はラフィを連れてくるから駅に行って先に待っててくれ。10分で戻る」

 

「え、カイト先輩一緒に……」

 

 ヴィヴィオにいうが早いが俺は全力で地面を踏みしめて家の方向に走った。イクスヴェリア陛下の体の不具合が何時悪化して眠ってしまうかもわからないので猛ダッシュだ、家に伝わる剛健ではなく普通の身体強化を使ってバレないように車並みに速く走った俺は、家で煎餅をかじって緑茶を飲んでいたラフィをそのまま抱えてまた玄関から走って出て行った。俵担ぎされたラフィがため息を吐いて小さくなり胸ポケットに入るのを確認した俺は、速度を速めるのだった。

 

「というわけでイクスヴェリア陛下が目覚めたそうだぞラフィ」

 

「んぐ、んぐ、そうか。喜ばしいな。だが主カイト、そういうのは事前に説明しておくべきだ。私が下着姿だったらどうしてた」

 

「とりあえず土下座して服着てもらってから担いでた」

 

「担ぐな」

 

 手に持ったままだった煎餅を口の中に放り込んで飲み込んだラフィが溜め息交じりに俺にチョップをする。タイムはだいたい9分と少しだな、そして20秒ほど待っていると走ってきたらしいノーヴェさんが俺と同じようにヴィヴィオを担いでこっちに来た。お待たせしました、というとノーヴェさんがジト目で

 

「なんでお前の方が早いんだよ」

 

「なんででしょうね」

 

「納得いかねえ」

 

「ふむ、ヴィヴィオ、無事か?」

 

「は、はぇ~~~……」

 

 どうやら結構振り回されたらしいヴィヴィオが目をぐるんぐるんと回してしまっているのでラフィが俵担ぎ状態の彼女をノーヴェから受け取り優しく抱っこする。ラフィは何代も家に伝わってきただけあって、子育てには言うに及ばず家事全般何でもござれで万能だ。3代目のおしめも変えたし乳母もやった。母親と同じくらい母親やってるユニゾンデバイスなんてこいつくらいだろう。

 

 海上保護施設までは電車一本で行けるので楽だ。ノーヴェさんはどれだけヴィヴィオを振り回してきたのだろうか、ガラガラの電車の中で多少行儀は悪いが椅子の上でラフィに膝枕されてダウンしているヴィヴィオ、なんだろう、逆さまにされてシェイクでもされたのかな。危ないなあ。

 

「あっ!いたいた!よかったーきてくれて……ヴィヴィオどうしたの?」

 

「どうやらジェットコースターが思ったよりきたらしくて」

 

「???」

 

「あー、それよりもスバル姉ぇ。イクスヴェリア陛下、どうなんだ?」

 

「私も通信貰ったばっかりでわかんなくて、ただ……会いたいっていうことらしいから午後から半休取ってこっちに来たんだ。交代してくれるって人もいてくれて助かったんだよ~」

 

 乗った列車は急行だったのでいくつか駅に止まるがそのひとつで仕事を切り上げることに成功したらしいスバルさんが俺にとっては新鮮な救助隊の制服姿のまま俺たちに気づいて車両にやってきてくれた。やっぱ着慣れているだけあってカッコいいな。ヴィヴィオがグロッキーな理由を聞かれてはぐらかしたが、ノーヴェさんの露骨な話の切り替えは気づかれなかったらしい。

 

 

 

「あっ!スバル、カイト……ラフィ!来てくれたんですね!んぅ……しょ」

 

「おはようイクス!調子はどう?」

 

「イクスヴェリア陛下、おはようございます」

 

「イクス様……お久しぶりです。ご壮健なようで、とても嬉しく思います」

 

 海上保護施設の病室の中に入るとイクスヴェリア陛下はベッドに腰掛けて待っていた。俺たちが入るとまずスバルさんと俺、そしてラフィに気づいたイクスヴェリア陛下は目に涙を浮かべておぼつかない足取りで立ち上がってこちらに来ようとする。立ち上がった瞬間に動いたラフィが膝をついて彼女を抱き留めた。そうしてそのまま膝に抱き上げてベッドに腰かける。イクスヴェリア陛下はそれを嬉しそうに受け入れた。

 

「調子はいかがですか、イクスヴェリア陛下」

 

「カイト、イクスと呼んでください。もうこの身は王の燃え残り、玉座にはありませんから……その、そちらは?」

 

「あっ!はい!高町ヴィヴィオです!初めましてイクスさん!」

 

「ヴィヴィオ!もしやスバルが教えてくれた現代の聖王陛下でしょうか?あえて光栄です!」

 

「そんな、私は普通の女の子ですよぉ~」

 

 思ったよりは元気、かな?跪こうとしたらやめてくださいって言われちゃった。ふむ、ちゃんと見るのは初めてだから背はヴィヴィオより低かったんだな、ラフィがすっぽり抱っこできるわけだ。ラフィも懐かしいのだろう、ぎゅっとイクスを抱きしめて頭を撫でている。まるで娘にやるような感じだ。間違ってはないのか?いやイクスが何歳なのか分からないけど、ベルカ先史出身だから軽く……1000は超えてるな。女性の年齢はファンタジー、やめておこう。

 

「現代はどんな人間でも学び舎に通えるのですか?それは素晴らしい事です!ヴィヴィオにもお友達が?」

 

「うーん、学校で話す人は沢山いますよ!」

 

「イクスも元気になったら通ってみたらどうですか?」

 

「私が、学校にですか!?」

 

 女3人寄れば姦しいとは言うが、やんややんやと話し合ってしまって俺が入る隙が作れない。まあ、再会を楽しむのを邪魔するのは忍びないし、俺は俺で気になることもあるから、御付きの医務官の人に目配せしてそっと病室から出た。あまり面白い話ではないだろうしな。

 

「それで、彼女の容体はどうなんですか?」

 

「……おそらくまた近いうちに眠ってしまわれるかと。体のあらゆる部分が無理な覚醒のせいで不具合の塊になっています。いつ目覚めるかは、わかりません」

 

「そうですか……しょうがないな……すいません。少々騒がしくなると思います」

 

「ええ、構いませんよ。人払いはしてありますから」

 

 医務官はそう頭を下げて隣室の中に入っていった。何かあった時のために待機しておいてくれるらしい。俺は深呼吸してシュロスから引っ張り出した仮想画面に連絡を入れる。相手先は聖王教会、騎士カリムへの直通番号だ。あー、でもなー、くっそー、力のない自分が憎い。どんな交換条件を吹っ掛けられるのやら。

 

『まあ、騎士カイト、試合は拝見していました。見事な戦いぶりでしたね。何かご用ですか?』

 

「ええ、まあ。冥府の炎王イクスヴェリア陛下が海上保護施設で治療を受けていることは御存知ですね?」

 

『もちろん。何かあった時に動くためにも情報は仕入れていますから。彼女の容体も』

 

「そうですか、簡単に言います。対症療法でイクスヴェリア陛下を助けることができるかもしれません。時間はかかりますが」

 

『詳しく聞かせてください』

 

 ティータイムの途中だったらしい騎士カリムがティーカップを置いてお茶菓子を画面の向こうに追いやって目線をシリアスにする。俺はそれに一つ頷いて、イクスが助け出された日から3代目の手記を始めとして家の資料をひっくり返しラフィと一緒に探したイクスを助けられる可能性のある方法を騎士カリムに話す。

 

 イクスは、全身をアルハザードの技術で改造されてマリアージュのコアを生み出すことに特化させられた人間だ。現代の技術でこれをどうにかする方法は見つからないだろう。けど、体の構造は、どうやら驚くほどにユニゾンデバイスに近いらしいのだ。ユニゾンデバイスは主と融合しても、融合後の体内で自我を保ち続けることができる、そしてそれはイクスヴェリア陛下も同じらしい。というかマリアージュと融合することで戦うことが出来なくもないらしいから、出来るはずだ。

 

 つまりそれがどういうことかというと、ユニゾンデバイスがメンテナンスの時に行うように、彼女の意識と肉体を魔法で切り離すことができるということだ。魔力で肉体を保つ魔法生物として意識を保ち続けることができるかも、しれない。もちろんほぼ仮説でやってみなければ分からないのだが、それはイクスの気持ち次第だ。

 

 イクスの体には、ユニゾンデバイスを始めとしたデバイスのように自己修復機能が備わっている。不完全な覚醒のおかげでそれがエラーの原因になっているならいっそ意識と切り離して全力で再生してもらうのがいいかもしれない。そうすると、イクス本体が無防備になってしまう。そこで、騎士カリムに頼みたいのは……

 

『なるほど、聖王教会で彼女の肉体の保護をしてほしい、と』

 

「ええ、ただとは言いませんよ?そうですねえ……当時の諸侯の一人の手記が原本で残ってるんですけど……」

 

『そんな交渉をしなくても引き受けるつもりなんですが……取引という形でなら信頼がおけるというのならお受けしますね。書類は追々でいいでしょうか?』

 

「感謝します、騎士カリム」

 

『いいえ、聖王教会として当然のことをするまでです』

 

 そう言って騎士カリムとの通信が切れる。俺はまあ悪くない内容だと思ったのでようやくそれで大きく深呼吸をして病室の中に戻った。イクスが楽しそうに笑っていて、何とかしなくちゃなと改めて思うな。




 イクスヴェリア陛下がどうなるかは次回ということで。ああ、原作が遠い...。中弛みしないといいなあ。

 次回更新予定は3日後です。それではまた、感想評価よろしくお願いします
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