魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡   作:防御特化っていいよね

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第24話 賭け

「イクス様、ご自分の状態については御把握の通りだと思います。しかし、眠りにつくよりもこの時代で私たちと暮らしませんか?」

 

「わかっています。私の今の状態は、もういつ永い眠りについてもおかしくはありません。またラフィに再開できて、嬉しくてたまらないのに……どうして、そんな残酷なことを言うのですか……」

 

「イクスさん……」

 

「まって、その言い方だとイクスを助ける手段があるっていう風に聞こえるんだけど、あるの?イクスを治す方法」

 

 病室に戻った俺はラフィと顔を合わせてアイコンタクトをする。聖王教会の協力を取り付けるまではラフィとの作戦会議通り、あとはイクスの気持ち次第……というところで自分の体のことを俺たち以上に知っているイクスにとってはそれは不可能なことを聞くこと等しかったらしく、ラフィの胸に顔をうずめて泣きそうな声を出した。

 

 ヴィヴィオがイクスのことをどうにかならないのか、という視線で見つめているのを見ていたスバルさんがピクリ、と鋭い指摘を飛ばしてくる。さて、ここからが仕事かな。頼むぜーラフィ。お前の説得次第だ。

 

「3代目……主ソフィーアはイクス様のことを眠りについた後にも気にかけていた。何とかして、人と同じ道を歩めないものかと。ベルカ末期の技術で不可能ならば、未来に託すと。100冊を超える研究ノートが家の蔵から見つかった」

 

「その中に、何とかできるかもしれないものを見つけた。方法は、イクスの精神と肉体を分離する。肉体は自己修復に任せて、精神は目覚めている状態にならできるかもしれない」

 

「戦の無いこの時代ならば、マリアージュを求められることもそうない。イクス様がイクス様として、生きられる時代だ。何の奇跡か、私が目覚めているのも因果を感じる」

 

「精神と肉体を分離する……融合騎のメンテナンスの手順を引き延ばすのですね。確かに……それなら……」

 

 ラフィの膝の上でイクスが考え込むように俯く。そう、可能性としては出来るほうに傾いている策だ。休眠状態ではなく、修復のための眠りなら数千年単位ではなく短く、それこそ数年単位で終わってしまうだろう。もしもこの時代でイクスが生きたいと願うならこれがベストとはいかなくてもベターになる。

 

「……もしやるとしたら、何がいるんだ」

 

「その場でできる。ただ……高濃度の魔力があれば、なおいい。イクス様の精神を入れる器は魔力で作るからな」

 

「それなら、あたしの魔力も使ってよ!」

 

「私も!お手伝いさせてください」

 

「み、みなさん……私はまだ……その」

 

「ね!生きようよイクス!あたし、まだイクスと沢山おしゃべりして美味しいもの食べて、遊んだりしたい!友達だから、さ」

 

「スバル……」

 

 ノーヴェさんの問いかけにラフィが返答すると、魔力が必要なら使ってほしいとスバルさん、ヴィヴィオにノーヴェさんも快く申し出てくれた。イクスは多分、踏ん切りがつかなくて悩んでいるのだろう。マリアージュはお手軽に兵器を量産できる大量殺戮兵器だ。マリアージュが殺した死体をマリアージュに変えることでいくらでも増えていく。そして、その上に死体の山の上に作られた玉座に座っていたのがイクスだった。

 

 彼女の手は汚れている、これは、俺がどうやったって否定してやれない事実だ。確かに、3代目が出会った頃のイクスはマリアージュを作ることに拒否反応を示していたが、ベルカ先史の時は、国を守るためにマリアージュを自らの意志で使ったことも事実。だから、今更になって平和な生活が手に入るといわれても、どうすればいいのか分からなくなってしまうのだろう。

 

「いいのでしょうか……戦を起こしていた私が、この平和な時代に残っても」

 

「いいだろ。そう聞くってことは、生きたいって思ってるってことだ。自分に素直になればいい。な?」

 

「主カイトの言う通りだ。もしまた、イクス様と暮らせるのなら、夢のようだと……長い微睡の中で考えていました」

 

「…………お願い、します」

 

 よしきた!と俺はラフィと目配せして成功したことに安堵する。いや、まだ早いか。何せ、この術式を試すのは俺たちが初めてになるんだから。いつ眠ってしまうか分からないイクスにとっては時間がない、彼女の意識がないとこれは出来ないので起きている今、やる必要がある。ラフィがイクスを抱いたまま、足元にベルカ式の魔法陣を展開し、俺もそれに倣う。俺とラフィの魔法陣が重なって六芒星を描いたら、ヴィヴィオたちの出番だ。

 

「思いっきり魔法陣に魔力を込めてくれ!いくぞっ!」

 

「うん!」

 

「おう!」

 

「はいっ!」

 

「イクス様、意識を強くもってください。私に、ゆだねて……」

 

「はい、ヴェントラフィカ……!」

 

 流石は管理局のエースも混じる魔力供給……魔法陣には十分すぎるほどの魔力が強制的にぶち込まれる。ヴィヴィオの魔力が強いのか、六芒星が聖王特有の魔力光である虹色に輝いた。ラフィに搔き抱かれたイクスの目の前に光が出現して急速に魔力によって形が作られていく。不定形だったものから手足が伸びて人型に……!そしてパァッと光が病室を駆け巡った。

 

「ど、どうなった……!?」

 

「先輩みちゃだめ~~~~っ!!」

 

「ぬぐわあああっ!?」

 

「主カイト、スマンが暫く後ろを向け」

 

「そうだね、そうしたほうがいいよ」

 

「振り向いたら蹴っ飛ばすかんな!」

 

 あまりの光量に目を開けていられなかった俺は手で目を隠して光から逃れる。瞼の奥で光が無くなったことを理解して目を開けようとするといきなりヴィヴィオが顔面に向かって抱き着いてきた。体幹は鍛えに鍛えぬいてあるので全く問題には成らなかったのだが、ヴィヴィオの腹に邪魔されて再度俺の視界は封じ込められる。なぜか女性陣がみんなして俺に見ないように言ってくるので素直に後ろを向いてヴィヴィオを顔面から引きはがした。

 

「え、それでイクスどうなってるんです!?」

 

「成功はしているのだが……少々不測の事態が起きている。主カイトに見られるのはかわいそうだ」

 

「とりあえずバリアジャケット着せてあげませんか!?」

 

「そうだな!デザインはこの際何でもいいだろ!」

 

「ま、マッハキャリバー!」

 

『All right』

 

 俺は女性陣の慌てように一つの答えに行きついてしまった。そういえば、精神体のイクスの服がどうなるかとか考えてなかったな、と。つまりあれだ、出てきた器は全裸だったってことだ。そりゃあ俺が見るわけには行かないわ。というか気づいたのに気づかれたらぶん殴られそうなので俺は口をつぐんで暫く待つ。

 

 うしろでぺかーとスバルさんの魔力が光ったら、ようやく振り向く許可が下りた。振り向いた先にいたのは、ラフィの掌の上でぺたんと座る、ユニゾンデバイスサイズまで小さくなったイクスだった。本体の体は安らかな安心しきった顔でベッドの上に寝かされ呼吸をしていた。成功は、成功だな。スバルさんがデザインしたらしい白のワンピースに身を包んだイクスは、ちょっと赤い顔のまま微笑んで、俺にペコリと頭を下げた。

 

「やっぱ喋れないか。魔力の器に精神が入ってるだけだからなあ……使い魔や守護獣とは勝手が違うか」

 

「それでも、成功だ。検査をすれば分かるだろうが、イクス様の体は急速に修復を進めていくだろう」

 

「それで、体の方はどうしたら……」

 

「ああ、そろそろ来るんじゃないか?聖王教会に頼んだから体はそっちで保護してもらう。ま、俺がやるよりゃ安全だよ」

 

 ふぅ、と消費した魔力がでかすぎた俺が汗を拭って椅子に腰かける。見れば皆、莫大な魔力を消費したおかげでちょっとだけ疲れた顔をしていた。あせあせとした顔のイクスが何度も頭を下げるのを止めたノーヴェさんが、口を開く。ここ最近のよそよそしい態度とは別の、決意をしたような顔だった。

 

「……正直、いまする話じゃねえとは思うんだ。だけどカイト、聞いてくれ……あたしたちについて」

 

「ノーヴェ!いいの!?」

 

「……伺いましょう」

 

「スバル姉ぇの傷の中みて、お前が言ったこと、あってるよ。あたしもそうだ。あたしたちは戦闘機人、スバル姉ぇはそのプロトタイプ、あたしは完成版。ジェイル・スカリエッティが作ったナンバーズの一人……お前の、両親の仇だ」

 

「……なるほど。ラフィ、悪いんだけど席外す。なんかあったら連絡くれ」

 

 どうやら、結構込み入った話になりそうだ。俺は右手につけているフラムをラフィに投げ渡して席を立ち、外に出る。無言でノーヴェさんとスバルさんが付いてくる。ヴィヴィオが付いてこようとしてラフィに肩を抑えられて止められた。心配そうな顔に笑顔を返して俺はそのまま扉を閉めて、施設の屋上にでる。

 

 屋上のベンチに腰掛けた俺が続きを促すとノーヴェさんは語ってくれる。ジェイル・スカリエッティにクローニング技術を用いて作られたこと、ドクターにいわれるがまま戦闘と破壊を繰り返し、そのままあのテロを引き起こしたこと。事件後、説得されて罪を償う道を選んだこと……そして、出会った時から謝りたいと考えていたことも。ノーヴェさんは包み隠さず、教えてくれた。

 

「だから、あたしたちは……本当なら名前を出して被害者全員に謝らなきゃならねえ、勿論、お前にも……だけど」

 

「管理局側のルールで名前を出せなかった、ってとこですか。なるほど……」

 

「ノーヴェは、ずっと悩んでたんだ。どうしたらカイトにちゃんと謝れるかって……」

 

「……まず一つ」

 

 俺がじっとノーヴェさんの目を見て指を立てるとノーヴェさんはびくっと体を震わせてから頷いた。正直なところ、話を聞く限りは俺がこの人を裁く権利はないってことだ。確かに俺の両親はJS事件で死んだが、母さんを殺したのはゆりかごで、父さんを殺したのはガジェットだった。ナンバーズが直接やったわけではない。もちろん指揮官としての罪はあろうが、そこら辺は全部ジェイル・スカリエッティが悪いといえるだろう。

 

「正直に話してくれて、とても嬉しいです。スバルさんの体のことを知ってしまった時に、悪いことをしてしまったと後悔していました。正直ヘリの中で詳しく両親の死因について語ったことは間違っていたと思っています」

 

「そんなことはねえ!あれは、あの事件は間違ってたんだ!あたしたちがあんなことしなきゃ、お前の両親は……!」

 

「ええ、生きていたでしょう。ですが、それは仮定です。でもですね、ノーヴェさんや、その御姉妹がちゃんと反省して、悔い改めて、先に進みたいと言うのなら……手を取り支えるのが、俺の家の騎士道です」

 

 俺の両親は確かに殺された。だけど、その死にはきっと意味があった。母さんが守った同僚が管理局で頑張っている。父さんが助けた人が自分もそうなりたいと陸士隊の門を叩いた。確かにあのテロは未曽有の大災害だっただろう。恨んでる人は山ほどいるかもしれない。やりきれない思いは俺だってある。それでも、罪を憎むことはあれど、更生したいと努力する人を否定してはいけないんだ。

 

「よく話してくれました。おかげで俺も前に向けます。許す、とは言えません……ですけど、これから先俺の両親が助けたであろう分まで……人を助けてください」

 

「……近いうちに、更生プログラムを受けている姉妹全員で改めて謝罪に行かせてくれ。それと……墓参りにも」

 

「ええ、待ってますよ。すぐにとは言いませんけど、いつも通りに接してくれると俺も嬉しいです。よそよそしくて、参ってましたから」

 

「っ……!ありがとう、カイト……!」

 

 正直、俺が声を荒げて彼女を怒鳴りつけたほうが、彼女にとっては楽だったかもしれない。だけど、俺はそうしない。この人は、俺が思ってるより深く後悔して、知らなかったことを悔いて、それでも俺から目を逸らさずに悩んで向き合ってくれた。強い人だ、きっとこの人なら向き合える。頑張れる、父さんと母さんの分まで人を守って助けてくれるだろう。

 

 ノーヴェさんのキレイな瞳からぽろぽろと雫が落ちる。何で今話したのか、はノーヴェさんじゃないとわからないけど、きっと俺なら話して理解し合えるんじゃないかと考えていたのだとしたら、嬉しい。それは、ノーヴェさんが俺を見てくれていたという証拠なのだから。あのまま隠し通すことだってできた、だけど話してくれた。それが、たまらなく嬉しいのだ。

 

 一歩間違えば俺が本気で襲い掛かってくるかもしれないということを理解しながらも、勇気を出してくれた。だってそうだろ?彼女らは公的には罪を償う、もしくはなかったことになっているのだから。知らんぷりもできた。だけど、自分たちがやったことに真正面から向き合っているからこそ、俺に明かすという選択を取れた。

 

 やっぱり、すごい人じゃないかと俺はスバルさんに慰められるノーヴェさんを見て、微笑むのだった。




 イクス妖精化が原作前に起こりました。それと賛否ありそうですが数の子達との和解も成りました。

ではまた次回に。感想評価よろしくお願いします
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