魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡 作:防御特化っていいよね
「きゃー!イクスちゃんかわいい~~!」
「ヴェントラフィカちゃんもかわいい~!」
「マジかよカイト、お前DSAAの世界戦でんの?なんで俺たちに何も言わなかったわけ?」
「悪かったって。でもお前どうせ会場に行っても女子の方見に行くだろ」
「どうせお前が勝つだろうしな」
イラっと来た俺がぐっとこぶしを握るとクラス1のバカでおなじみの友人は暴力反対よ!きゃー!なんてふざけて教室から出て行った。ちなみに今からホームルームなんだが大丈夫なのだろうか?あ、先生が入ってきた。残念ながら遅刻扱いだな、ざまみろ。俺の机の上にあるバスケットから、イクスとラフィが顔を出すと主に女子連中から黄色い悲鳴が上がった。可愛いものに弱いよなー女子は。そこにいるの古代ベルカの王様と融合騎だぜ?お?先生事情知ってんだ、冷や汗掻いてら。
もとが運動音痴なのかイクスは不具合がない筈の魔力でできた肉体ですらうまく操ることができないようで、よたよたと非常に危うい動きで移動する。ちなみに飛行魔法も使えないので徒歩だ。誰かが、この場合ラフィが大きくなって運んでやる必要があるわけなんだが、その庇護欲を誘う姿に女子連中はメロメロになってしまった。
世界戦出場決定と共に、与えられたモラトリアムは1週間、その1週間で俺たちは修行したりとかなんか対策したりとかするわけなんだが、とりあえず俺はいつも通りに過ごす、わけではなく今日は高町家に訪問予定だ。戦技教導官であるなのはさんにイサムの映像を見てもらってちょっとした対策を積もうと考えているわけだ。あいつ、俺と同じでほとんど情報を出さずに勝ち上がってきたわけなので。
流石に世界戦ともなれば、情報を整理して挑むのがいいだろう。今までは俺一人の都合で負けたり勝ったりできたが、世界戦からは俺はミッドチルダという世界を背負って戦うことになる。背負うものがでかくて重いほど強くなるのがアロイジウスの騎士なので、望むところでしかない。戦争においても情報は重要事項だったしな。
「えー、知ってるやつもいるかと思うが、このクラスのアロイジウスがDSAAの世界戦ミッドチルダ代表に選ばれた。皆、応援してやってくれ。それと、アロイジウスが連れてきているその子たちは学校見学だから変なことを教えないように」
「やっべ間に合った」
「遅刻だ」
「バカな!?」
そう、折角自由の身になったイクスを、折角なら学校に連れてきてやればいいんじゃねえかって騎士カリムを通じて学院に許可を取って暫く一緒に登校することになったのだ。おそらくだが騎士カリムの圧に耐えられなかった学院は、2つ返事でオッケーをくれたわけだな。騎士カリム、管理局だと少将なんだしな、あの若さで。すげえ。
それでそれを伝えるとイクスは物凄く喜んだ、目をキラキラをさせて俺の手にぎゅっと抱き着いて喜びを表現してくれた。もう何かそれだけで十分だったんだけど、現代生活の視察ということで古代ベルカの王、イクスヴェリア陛下の学校見学が今日から始まるのだ。具体的には俺の卒業まで。イクスの体が治ったら本格的に学校に行くのもいいだろう。なんだかんだ王だから教養自体はあるし。
「……っ!っ!」
「お、イクスどうした?」
「ベルカ先史の授業の内容が違う、のだそうだ。歴史がごっちゃになってるらしい」
「……いいかイクス。面倒ごとに巻き込まれたくなければ、今すぐその疑問を忘れるんだ」
頬杖をついて授業を受けつつマルチタスクで今日の予定を確認していた俺の腕に抱き着いて気づいてアピールをするイクスに目を向けると、ラフィがイクスが伝えたい内容を言葉にして伝えてくれた。それは俺たち記憶継承者が往々にしてよくぶち当たる問題で、記憶にある歴史と教えられる歴史が全然違う、というものだった。
こういうのは大抵後に続いた戦勝国が歴史の事実をいいように脚色して誤魔化してるのが常なので、俺たちのような事実を知る人間はちげーーーーよ!と叫びたいのをこらえてぐっと飲み込むのが大事なのだ。下手するとベルカ歴史研究者なんかに目をつけられて2週間居候が増えるみたいなことになりかねない。ちなみに俺はなった。3週間目に突入したあたりで母さんがブチギレて追い出したのも懐かしいなあ。
俺が小声で真剣にイクスに忠告すると、イクスは俺の余りのシリアス具合にこくんと唾をのんでぶんぶんと首を上下に振る。よし、いいぞイクス。と俺は指先で彼女の頭を優しく撫でる。そしてすぐさまやべえ不敬じゃんと引っ込めたが、イクスがちょっと悲しそうな顔で俺の指を見つめていたのが心にグサッときた。この王様可愛いな、わんこみたいだ。
わんこといえばここ最近よく教室にくるヴィヴィオはすっかりこのクラスのマスコットになってしまった。このクラス、俺が聖王ってのは神でも何でもねえただの女の子なんだよと常々言ってるせいで若干聖王への信仰が緩いのだ。まあ、俺が敬虔な信徒に悪影響を及ぼさないように最初っから無神論者で固めたのかもしれんが。
「ねーアロイジウス君。イクスちゃんっておかし食べられるの~?」
「食べられるけど容量が小さいから丸々1個渡すなよ。5分の1くらいにしてやってくれ」
「それじゃーこのクッキーを進呈してしんぜよう!あ、ヴェントラフィカさんもよかったら」
「感謝する。イクス様、私と分けましょう」
まあそれはともかく、授業が終わってすぐさま俺の机の周りは珍しい物好きに囲まれる。イクスは初日だから人見知りを発揮してすぐにバスケットの中に逃げ込むが、そっと周りを確認しているあたりどう接していいか分からないだけらしい。完全にわんこどころか小動物だ。フェレット……いやハムスター?ウサギかもしれん。ああ、次の授業は魔法実技か。よし、やるか。
「誰か模擬戦やらね?」
「お前とやると死ぬからやだよ」
「殺しにくるだろお前」
「非殺傷でも痛いもんは痛いんだぞゴリラ騎士」
失礼なクラスメイトどもだ。最後のやつは3回泣かしてやる。
「いらっしゃーいカイト君!そういえばうちに来るの初めてじゃないかな?何か飲みたいものある?」
「いらっしゃい先輩!イクスもラフィもいらっしゃい!」
「いえ、お構いなく。すいません休日に時間取ってもらって」
「いーよ~。折角世界戦出るんだから勝ちたいもんね。それで、気になってる子って誰?」
ところ変わって授業後にヴィヴィオと合流し、おんぶ状態でやってきた高町家。そういえば来るの初めてだったなとなのはさんがわざわざ淹れてくれた緑茶を頂きながら俺は目の前でほけほけ笑う教導官殿と魔力の翼を生やして浮遊するその愛機を見ながらとても化け物じみた威力の砲撃をぶっ放してた人には見えないなあとと思ってしまう。ちなみにデータ上含めて俺のプロテクション破ったのこの人が初めて。オフトレの時最終的に破られたからね。
いやはや、まさか高密度の魔力刃をレイジングハートに展開して突撃してきて受け止めたと思ったら魔力刃を強引にプロテクションに通して通った先で砲撃撃つとは思わなかったんだ。あれ俺も真似しようかな?割とマジであれは焦った、というか経験の差を感じたね。尊敬の念が絶えないよ。
「こいつですね、イサム・フワっていうやつです。全く本気を出さずに勝ち進んでるんでなのはさんの所見を聞きたいなあと」
「あ!この人!なんだっけ?すっごく長ーい流派の人」
「へー、良い動きするね。んー、どっかで見たことある感じがするなあ」
どこだったかなー?となのはさんはイサムの戦闘映像をチラ見にして唇に指を当てて何かを思い出そうとする。ヴィヴィオもイサムのことは強く印象に残っているらしくむむむ~~?と腕を組んで何かを思い出そうとしているらしい。ラフィとイクスはお茶菓子に夢中。おいラフィ、お前も世界戦からは出番があるんだからこっちに興味を向けろ。
「えーと、たしかえーぜんふどー、はちもん……う~~~長くて思い出せないよ~~」
「永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術な。本人も長いって言ってたしなあ」
「あ!そういうこと!ちょ~~~っと待っててね~!」
ヴィヴィオはどうやら1回聞いただけのイサムの流派を思い出せなかったらしい。俺は逆に長すぎてインパクトがあったから覚えてしまった。だってさー、普通あんななげー流派なっかなかないもんでさ。覚えちゃうって。それで、なのはさんは流派の名前でピンときたらしく仮想画面を開いてどこかに通信をかけ始めた。えーっと、次元通信?ってことは別世界か?語感からして地球の流派っぽかったけど……。
「もしもし?忍さん?よかった~~~。お兄ちゃんいます?あ、ありがとうございます~~」
「なのはママ?地球のお友達、だったっけ?」
「そうそう。まさか御神流がこっちに来てるだなんて思わなかったな。フワっていうことはきっと不破だよね?」
『もしもし?なのはか?こんな突然連絡するなんて何かあったのか?』
「あ?お兄ちゃん!ごめんね急に~。実はなんだけど……」
お兄ちゃん?ということは画面に映ったこの鋭い目をした男の人ってなのはさんの実兄なのか!?う、うわー、実戦を経た目をしているってこれ……なるほどなのはさんが強いのはもしかして俺と同じように家系的な部分もあったり……いや怖いな!?なのはさんが恭也さんというらしい男性にこれこれこうでー、と俺が次元世界における魔法戦技の大会に出ることとライバル視しているヤツが御神流の師範代であることを説明する。御神流の時点で恭也さんは大分驚いていたが、イサムの戦闘映像をみて納得したように頷いた。
『なるほど、確かにこれは御神の剣士で間違いない。歩法からしてもかなりの技量だ。いいだろう、御神のことについて概要だけなら話してやる』
「まさかなのはさんのご実家がライバルの同門だったとは」
「にゃはは~、私も驚いちゃった~」
「恭也おじさん、すっごーい」
ヴィヴィオのおじさん発言に確かに俺はもう30代だがと笑う恭也さん、え?恭也さん30超えてんの?うそぉ?とても見えないほど若々しいんだけど、なのはさんのお兄さんだから年上なのはそうなのか。ええ~~?ま、まあそれはともかくとして御神流のことについてご教授してくださった。
御神流というのは古流の剣術というよりも殺人術に近いらしい。ふーむ、メインの武器である二刀流の小太刀に加えて、小刀に暗器である飛針、さらには鋼糸も使うのだとか。イサムが袖に仕込んでたのでそれは覚えているが、暗殺術に近いもんだったのか。まあ流派の正義云々はどうでもいいんだけど、一つ聞き逃せないのが神速という技の存在だった。
知覚を引き延ばすことで自らの動きを速める、やり方なんかは当然教えてもらえなかったにしろその神速とやらはどうやら、俺にとっての頑健、城塞不撓、破城激震のようないわゆる奥義というものに該当するような技術だろう。なるほどなるほど……なるほどね~~。俄然面白くなってきたな。いかんな俺は戦闘狂ではないはずなんだが、楽しく感じてしまっているらしい。
「恭也さん、ありがとうございました。いずれまたそちらに伺って礼をさせてください」
『気にしなくていい。御神流が俺たち以外にも残っていることを知れて俺としても嬉しいんだ。微力ながら応援しているよ。それと……なのはとも仲良くしてやってくれ。目を離すとよく無茶をするからな』
「……俺管理局所属じゃないですけど、キヲツケマス」
「ちょっとお兄ちゃん!」
『はは、なのは。母さんが寂しがっているから近いうちに顔を出してやってくれよ。それじゃあな』
もー!とまさか15歳の若造によろしく頼むとはなのはさんも予想外だったらしく顔を赤くして恭也さんに怒っている。恭也さんはそれにひとしきり笑った後になのはさんに謝って通信をきる。もう、と腰に手を当ててぷりぷりと怒るなのはさんはなんだかいつもより幼く見えた。家族の前だとあんな感じなのかな。
「と、とにかく御神流についてはこんな感じかな。こっちに来て魔法に対応してるとなるとちょっと私としても分からない部分は多いかも。だけど映像を見る限り魔力の運用はそれなりに上手だと思うかな。フェイトちゃんやエリオと同じ軽装高機動型のバリアジャケットだから。フェイトちゃんに模擬戦頼んでみる?」
「流石に忙しいでしょうしそういうのはあまり……」
「え?私やるよ、ぜんぜん」
「……いつの間に?」
確かに高速機動型なのだとすればそれが最善なのかもしれないのだけど、管理局の執務官という激務をこなしているフェイトさんの休みを削ってもらって模擬戦をするのは少々憚られたのでやんわり断ったらいつの間にか俺が座っているソファの後ろにフェイトさんが出現していた。
執務官の制服姿のままということは、どうやら仕事帰りらしいのだけどフェイトさん元気一杯だった。そういえばこの人模擬戦ジャンキーだったな……いや、オフトレに参加した人全員そうだったか。結構連戦させられたからなあ、いい経験になった。いつがいい?休み取るよというフェイトさんに俺は申し訳なさを覚えつつ頭を下げるのだった。
なのはさんは成人段階、というか機動六課結成あたりで家の事情については把握している設定です。なので不思議なことは何一つありません多分。
それではまた次回に。感想評価よろしくお願いします