魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡 作:防御特化っていいよね
「ミッドチルダでやるんですねー!世界戦!」
「そりゃここ第一世界だし、DSAAの本部もここにあるわけだしなあ。ああでも、リングが広いのはありがたいな」
「やっと出番か。もう私を使わないというなよ主カイト」
「悪かったって」
DSAAの男子戦世界大会当日、俺とラフィ、ヴィヴィオにイクス、ノーヴェさんは巨大なドーム型の会場にやってきた。どうやらなのはさんやフェイトさん、ついでに機動六課の面々が休みを取って見に来てくれているらしい、恥ずかしくて困った。あと、仲直りしたジークとヴィクターも会場で応援するってメールで来てたなー。いやー、でかい舞台に来たもんだ。
今日集まったのは男女合わせて64人、管理世界でDSAAの支部があるあらゆる世界の代表者たちだ。行われるのはトーナメント形式での試合なので、16回試合があるわけだな。組み合わせ発表は今からなので個人的にはどんな奴と戦えるのか楽しみではある。あと俺目立ってる。セコンドがこんなわらわらいるから当然かもしれないけど。
「ああ、カイト。久しぶり。やっぱりお前が進んでくるっていう俺の勘は捨てたもんじゃなかったな」
「よう、イサム。俺の勘も当たってて嬉しいぜ。今日は何もつけてないんだな」
「はは、お前に指摘されたから。いや、気を引き締めてくれてありがとうと言うべきか。セコンド増やしたのか?」
「ああ、ラフィのことか。融合騎だよ、1戦目から使うから、よく見とけ」
「ヴェントラフィカだ。好きに呼べ」
当たり前のように気配を消したイサムが現れたが、そういえばこいつラフィのことは知らなかったんだったな。何せ都市本選まで封印する羽目になって拗ねに拗ねて結局応援にも来なかったわけだし。へぇ、とイサムはよろしくお願いしますとなぜか俺より礼儀だたしくラフィに挨拶をする。そういえばこいつって結局技術だけで勝ち上がってきたから魔法も身体強化くらいしか使ってねえんだよな。
「お前については情報が少なすぎてどうしたもんかと思ってたけど、また凄いもの持ちだしてきたな。御神の剣とどっちが強いか、楽しみだよ」
「あ、そうだ。お前の流派の同門の人と知り合ったんだが、向こうさん会いたいって言ってたから大会終わったら時間くれねえか?」
「同門?御神流の!?それは、驚いたよ。地球のってことだよね?ぜひ、俺でよければ」
「おう、ありがとよ」
恭也さんに教えてもらった話だと御神流一派はどうやら断絶の危機にあるらしくて、是非とも交流を持てるならと繋いでくれるとありがたいという話だったので先にその話を進めることにする。どうやらイサムのやつも御神流が他にあることを知らなかったのか切れ長の瞳を見開いて俺をきょとんと見つめる。そうしていると組み合わせが決まったらしく、放送で俺の名前が呼ばれた。一番手か。
「行ってくるぜ。イサム、しっかり見とけよ」
「分かってるさ。お前も俺の試合、眠ってくれるなよ」
言葉少なくそう交わして、俺はラフィを引き連れてセコンドであるヴィヴィオとノーヴェさん、あとバスケットに収まったイクスをヴィヴィオに渡す。スポットライトに照らされた会場は、観客で満員御礼だった。見られてアガるたちではないが、見られても恥ずかしくない試合をしたいもんだ。
『さあ始まりましたDSAA男子世界本戦!1試合目は第5世界代表、ウィリアム・グラージェスと第1世界代表!カイト・エルンスト・アロイジウスだああ!おっと!カイト選手の傍に見慣れない人が見えますが、解説さんいかがでしょうか!?』
『資料によりますとカイト選手はユニゾンデバイスを所持しているらしいです。彼女がそうなのでしょう、古代ベルカから続く騎士の家系ともありますから、1戦目から期待できそうですね』
「ふむ、主カイト」
「ああ、ユニゾンイン」
一緒にリングに上がった俺とラフィに視線が集まる。相手のウィリアムさんはどうやら
ユニゾンした俺が大盾と戦斧を携えて炎のマントをはためかせて立つ。融合騎はかなり珍しいので観客のボルテージが一気に上がるのが見える。開始の合図がかかったが、ウィリアムさんは額に汗をかいて動かず待ちの態勢をとった。どうやら彼はかなり考えるタイプらしい。事前情報と違うのが来たからな、俺から攻めよう。
ダッ!と俺は盾を構えてまっすぐ突っ込む、当然ながらこんな簡単な攻撃に当たってくれるほど相手は優しくないし、弱くもない。細かくステップをすることで俺を錯乱して拳から魔力弾を飛ばして牽制をしてくる。目の前に出現したシールドがそれを防いだ。バスっと音を立ててフラムからカートリッジが吐き出される。圧縮された炎がフラムにまとわりついて、魔力が渦巻く。
「紅火剛閃」
ドグシャァッ!と俺は距離があるのにも関わらずフラムを思いっきりウィリアムさんに振り下ろす。クロスレンジよりも威力は劣るが、ラフィがユニゾンすることにより遠距離攻撃は不可能でも範囲攻撃は可能になる。解放された炎熱の波がウィリアムさんに襲い掛かった。彼は顔を歪めて足からカートリッジを排出し、蹴りの一発で炎をかき消す。
「剛刃」
『炎熱付与』
切れ味をあげる魔法を俺が、ラフィが炎熱をそれぞれフラムに付与する。乱発される魔力弾をシュロスで受けて進み、ただひたすら前に出る。ベルカの騎士にやれることはただ一つ、近寄って斬れ。遠い敵を殴りたければ兵器を使えばいい。俺たちはただ、後ろを守る壁であるからだ。
「おおおおおおっ!!」
「ふんっ!!!」
3発カートリッジをロードした魔力付与を纏った蹴りの一撃がシュロスに突き刺さった。びりびりと盾の裏にも伝わってくるほどの打撃の威力に俺は内心で拍手を送る。努力を重ねれば分かる、ここまで来るのにどれだけ強くあろうとしたかを。向こうも理解しているはずだ。フラムを振るう。防御の上から押しこまれたフラムがウィリアムさんを揺らがし、斜めに振りぬかれる。衝撃音が耳をつんざいた。
『ウィリアム選手、ダウン!ダメージは深刻か!?』
『クラッシュエミュレートは左腕切断、第5,6肋骨の骨折。かなり苦しい一撃ですね。ライフも一気に5000削れました』
「強いな……あんた……!」
「ウィリアムさん、あなたもですよ。胴体斬り飛ばすつもりだったんですけど、逸らされました」
だらり、と左腕が動かなくなったウィリアムさんが苦々し気にそういう。防御が抜かれる瞬間にこの人、左腕を犠牲にしてフラムの軌道をずらした。カウントが進む中、少しでも時間が欲しいウィリアムさんはカウント9で立ち上がる。片手が使えない状況、残り時間は1分と少し。決められるなら、ここで決めたいが……俺は攻めの騎士じゃない。
「アルスノヴァ、フルドライブ!」
「来るか!シュロス!ラフィ」
『城塞、閉門』
クラッシュエミュレートの被害は深刻、左腕切断扱いの場合大量出血で目がかすんだりもすることがある。決め技に賭けるつもりだ。迸る魔力がリングを駆け抜け、ウィリアムさんの足に収束されている。ブレイカーじゃないな、自己魔力の極限圧縮と考えるべきだろう。天高く飛びあがったウィリアムさんが背中に魔力の翼を生やして、6重の魔法円をくぐり、段階的に加速して隕石のようにこちらに迫る。
俺はそれを最も信頼する手段で受けることにした。城塞不撓だ。シュロスから砲弾型カートリッジが爆音とともに吐き出され、紅いベルカ式の魔法陣が俺の足元に展開し、地面に突き立てたシュロスを起点にして城塞が現れる。最後の魔法円をくぐって加速しきったウィリアムさんが飛び蹴りの態勢で城塞不撓を蹴り割らんと突き刺さる。
ミシミシと負荷が俺に襲い掛かるが、これで動けなかったら俺は城塞の名を返上しなければならない。4重の防御魔法がウィリアムさんの行く手を阻む、俺はそれに向けて、シュロスを構える。爆音が2回、足元にガラガラと2つの砲弾型カートリッジが吐き出されて、シュロスの前面に魔力が塊となって集まる。
「砲撃魔法……!?」
「ご明察!高町なのは直伝の砲撃魔法だ!ディバイン……!」
『バスター!』
なのはさんに叩き込んでもらった新技、炎熱資質のおかげで燃え盛る魔力の奔流が駆け抜け、瞬時に消えた城塞不撓に止められていたウィリアムさんを飲み込む。砲弾型カートリッジのすさまじい魔力を込めて無理やり魔力を固めて発射したに等しい砲撃魔法はそれでもその威力をいかんなく発揮して、技の最中で動けなかったウィリアムさんのライフを削り取る。
俺は確かに射砲撃に関してはほとんど適正がない。砲撃が形になる程度だった。だが、ラフィとユニゾンして処理能力をあげ、さらにシュロスの砲弾型カートリッジを利用することで威力を出来るだけ下げないようにしながら砲撃を使うことができるようになった。といってもちゃんとまとまって飛んでいくなのはさんの砲撃と違って俺の砲撃は進めば進むほど拡散して威力がドンドン下がっていっちゃうのだがな。それでも、間近にきたウィリアムさんを迎撃するのには十分だった。
『第一試合!勝者はミッド代表のカイト選手!決まり手はまさかの砲撃魔法!』
『古代ベルカの騎士が砲撃魔法とは……カイト選手は狙ってこの意外性をついてきたのでしょう』
「……ありがとうございました。優勝してくれよ、俺に勝ったんだから」
「ええ、背負わせてもらいます。お疲れ様でした」
ベルカの騎士には大別して二つの種類がある。固定砲台の広域型、つまりははやてさんのような大火力を用いる騎士と、俺を始めとする大多数がこれになる近接戦闘主体の騎士。だからなのだろう。射砲撃が使える騎士は意外と珍しい。ヴィータさんのような誘導弾を使える騎士はもっと減る。古代ベルカならさらに珍しい。だから、この奇襲は通用するのだ。
テレビカメラが俺を捉えてリポーターが興奮気味に今の試合の感想を伝えるのをよそに、俺はラフィとユニゾンを解いてリングを降りる。大興奮のヴィヴィオがこちらに駆け寄ってくるのを見て、思わず犬の尻尾と耳を幻視してしまった。地球にいる犬種で最近人気のゴールデンレトリバーという犬にそっくりだったのだ。
「カイト先輩っ!一回戦突破おめでとうございますっ!ディバインバスター、いつの間に覚えたんですか!?」
「オフトレの時にちょこっと夜トレーニングしてたらなのはさんに見てもらえてな。その時教えてもらった。形だけでしかないけど」
「いやお前、あんな硬いのに砲撃魔法って……どんどん相手にしたくないような強さになってくぞ」
「誉め言葉として受け取っておきます。イクス、どうだった?おう、ありがと。よーし、イサムの試合みるか」
「あ、カイト先輩トーナメント表出ましたよ!」
そう言ってヴィヴィオが端末から仮想画面を出してトーナメント表を見せてくれる。既に2試合目が始まっている音を聞きながらそのトーナメント表を失敬してみてみると……イサムのやつ一番最後なのか。ってことはお互い決勝じゃないと戦えないってわけか。
「カイトくーんお疲れ様~。えへへ~、ディバインバスター使ってくれたんだ~この~」
「なのはったら勝ってからこんな調子で……」
「嬉しいんやろ。なあシグナム?」
「えぇ、まあ。私もモンディアルが紫電一閃を習得した時は恐らくこんな気持ちだったかと」
「シグナムさん……!」
「なのはさんはスバルのこともあるから倍かしら?」
「カーイトー!頑張ったね~~!」
なのはさんの声がしたので振り返ると、応援に来てくれていたオフトレ合宿に来ていた全員が揃ってこっちにやってくるところだった。滅茶苦茶目立ってる。だって、管理局の中でも有名人が固まっているんだからそりゃ目立つよ。そして一番に声をかけてくれたなのはさんは俺がディバインバスターを決め技に選んだことがそんなに嬉しかったのかなんだかいつもよりニコニコしてる気がする。
応援ありがとうございました、と頭を下げるといいえーと皆して返してくれる。いやしかし、全員どうやって同時に休みをもぎ取ったのか?そう考えているとはやてさんが狸の耳を生やしているように見えるほど黒い笑みを浮かべているのを見てああきっとこの人がなんかやったんだなと俺は納得せざるを得なくなった。この人、佐官だけあってマジでいろんなことできるな。
ディバインバスター習得。形的にはなのはさん式ではなくスバルさん式ですね。近距離砲撃です。
それではまた次回に、感想評価よろしくお願いします