魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡 作:防御特化っていいよね
秋晴れ、ともいう段々と涼しくなって過ごしやすくなり、非常にトレーニングにも熱が入る頃になった。DSAAは母数が多いだけあって長い期間をかけて世界戦が行われる。世界戦の開始は9月だった、そして今は、そう。10月の半ば。そして俺はいま、全身を火だるまにした対戦相手に向かってフォルムツヴァイのフラムを思いっきり振り下ろすところだ。
「はぁっ!!!!」
『カイト選手、またも相手を寄せ付けることなく勝利!イサム選手と並んで非常に安定感のある試合運びです!』
斧槍は相手の3重の防御魔法を1撃で叩き割り、相手の脳天を捉える。小規模のクレーターの中で完全に気絶した相手を前にして俺はフラムとシュロスを待機形態に戻して相手に礼をしてから身をひるがえす。ううむ、世界戦だけあって相手も手強い……というかDSAAルールに特化しているからやりづらいというのが正しいだろう。
どこを攻撃すればクラッシュエミュレートを効率よく発動させることができるか?ライフポイントを一番削れる場所は?こういったことを把握して攻撃してくるから、守り損ねるとめんどくさいのだ。このレベルになると俺の騎士甲冑も貫通してくるだろうし。ユニゾンを解いて小さくなったラフィがイクスを抱っこするのを見ながら俺は視線を下に向ける。
「カイト先輩!お疲れ様ですっ!」
「わー!カイト先輩勝っちゃった!」
「あの、良かったらドリンクをどうぞ!」
「ん、ああ。ありがとう」
なんかわんこが増えた。
さて、首尾よく世界戦の決勝までコマを進めた俺ではあるが……嬉しくないわけではない、わけではないのだけど目の前の光景には少々ウルっと来てしまうものがあった。素直なわんこが増えたと言ったが、その正体は一人は勿論ヴィヴィオ、そして増えたのは二人……なんとヴィヴィオの友達だ。
一人目はコロナ・ティミルという長い髪を緩めのツインテールにしている蒼い目の女の子。ちょっぴりおとなしめの性格らしいが、試合を間近で見て興奮しているのだろう、白い頬に赤みがさしている。あと俺相手に緊張しているのかドリンクを差し出す手が震えている。なんか悪いことしているみたいで困るなあ。
そんでもう一人がリオ・ウェズリーという八重歯に緑の目、ショートカットが良く似合う子だ。もちろんこの子も女の子。ヴィヴィオ以上に元気いっぱいで試合中何度も手に汗握っていたのが視界の端にちらちら映っていた。見た感じ、何か武術をやっているらしく立ち姿がしゃんとしていてさらに足運びに無駄が少ない。ミッドのストライクアーツじゃないな?別世界のなんかだろう。
「しかし、男が殴り合ってるのなんか見て楽しいか?ヴィヴィオも飽きたらセコンド降りてもいいんだぞ」
「いやですっ!」
「……まあお前がいいならいいけど。コロナもリオも、ヴィヴィオに付き合ってもらって悪いな」
「いえいえ!というか、むしろ……」
「私たちがヴィヴィオにお願いして連れてきてもらったので……」
そうなのか?と俺は控室に移動しながら首を傾げる。コロナもリオも、どうやらストライクアーツを嗜んでいるらしくDSAAにも興味があるようだ。ちなみに今日はノーヴェさんはボランティアと日程が被ったので欠席。まあ俺がいるので万が一があったら斧と盾ぶん回して助けに行くので大丈夫だろう。全員を家まで送り届けるのがミッションです。
尊敬してますっ!という視線はヴィヴィオで慣れ切ったつもりではあったのだが、さすがにこれはこまる。視線の量が3倍に増えたのだ。ヴィヴィオは一体俺のことをこの二人にどう紹介したのか。だって今朝方初めて会った時にはもう既にきらきらとした目で俺のこと見つめてたもの。ヴィヴィオはそうでしょうそうでしょうとふんぞり返っていたが。お前は俺の何なんだよ。
「テレビで拝見してたんですけど、やっぱり生の試合の迫力は段違いですね!」
「そうそう!さっきのとどめもすっごいパワーで!いいなーヴィヴィオ、ずっと試合近くで見てたんでしょ?」
「そうだよ!カイト先輩、どの試合もKO勝ちだし、ライフポイント減らないし!ほんとすっごいんだから」
「こそばゆいからやめてくれ……イサムも勝ったか」
全方位トライアングルで女の子に囲まれている俺は男子戦を戦っている奴らに今どう映っているのやら。俺の後の試合の映像で、イサムが当然のように首を狩って終わらせたのを見て、まあ順当だなと頷いた。なんか食いに行くかと3人に聞くと頷きが帰ってきた。近くのカフェ行くか―と音頭を取り、俺たちは会場を後にする。
しかし……ヴィヴィオを見ても友達になろうというSt.ヒルデ魔法学院の生徒がいるのは……正直嬉しいことだ。あそこは聖王教会の系列に連なる宗教学校でもあるのでそれこそ聖王教の入信者が多い。魔導学も結構発達しているから魔法目当てで入れる親御さんもいるがミッドチルダにおいてはメジャーな宗教である聖王教を知っている人は多いだろう。
必然、聖王オリヴィエと同一の遺伝子を持ってしまったヴィヴィオの外見を見て、同一視する人や、血脈を想起して気後れしてしまうひとはどうしても多いらしい。実際ヴィヴィオは初等部では少し浮き気味なのだそうだ、勿論いじめではなく……逆に気を遣われ過ぎてて困っているレベル。ただ、話しかけるのにも勇気がいる存在になってしまっている。
そのヴィヴィオに臆することなく話しかけて、友達になってやろうという女の子が二人も出てきた。俺の視点が完全に親か兄のような感じになってしまっているが、かなり嬉しい事なのだ、これは。食事の一つや二つ奢ることくらいなんてことない。ただ、親御さんはこのことを知っているのだろうか?親に何か言われて離されたらヴィヴィオが悲しんでしまうが……。
「好きなもの頼めー。俺のおごりだ」
「わーいやったー!」
「い、いいんですか?」
「ありがとうございます!ご馳走になります!」
いいよいいよ好きなもんを好きなだけ頼め、とイクスとラフィが入ったバスケットをカフェの卓上に置く。大きくなったラフィが伸びをして席に着いたのを確認した俺がイクスに何が食べたいかを尋ねる。小さく小さく切り分けたりしてやる必要があるけど、イクスも食べられはするからな。なに?フレンチトースト?いいぞ、俺はパスタも頼もう。
「あ、ご飯食べて行っても大丈夫なのか?ご両親に何か言われてたりとか……」
「実は……ご飯食べてくるって言っておこづかい貰ってて……」
「私も……」
「あ、私も。なのはママになんて言おう」
「とっとけとっとけ。素直に話してもいいとは思うけどな。ま、ここは男に持たせてくれよ」
なのはさんは俺が送り迎えするからヴィヴィオは安全だと思っているのだろうけど、初等科3年生を初めて会う男と一緒にしてご飯まで食べてきなさいと送り出している二人のご両親はどんな気持ちなのだろうか?二人ともしっかり可愛らしいし、ここ最近ミッドの治安はよろしくないから保護者同伴にすべきだとは思うんだけど……俺がおかしいのか?ヴィヴィオの誘拐事件から結構経ってるとは言え警戒しすぎなのかね。
食べながら談笑するところによると、どうやら3人の出会いは無限書庫だったらしい。コロナはともかくリオもこの性格で文学少女だったのか……割と驚いた。もしかして頭もよかったり?すげえな、魔法使う人間はだいたい理系なんだが文系3人衆とはまたある意味凄いよ。俺はまあ学校の成績自体は魔法以外可もなく不可もなくだから。ベルカの歴史だけは真実書きそうになってたまに消したりしてるけど。
「カイト先輩は、この後どうするんですか?」
「ん?この後か?お前ら送り届けた後は嘱託魔導士試験に行くぞ。というか魔導士ランクを測りに行くだけだけど」
「先輩は卒業後は進学せずに管理局に?」
「えー!折角DSAAでここまで行けるんだったらプロの魔法戦技の選手でも……」
「まあ、卒業後すぐじゃないけどな。U19に参加できなくなるくらいで陸士隊にでも入ろうかと思ってるよ。嘱託魔導士試験はほぼ免除だしな」
リオがもったいなーい!と声をあげてくれるのも有難く受け取りつつ俺はパスタを平らげる。ティアナさんから言われた嘱託魔導士資格とりなさいよ、という忠告通りに俺は今日嘱託魔導士資格を取りに行くつもりでいる。この前捜査協力した分の協力金が管理局から支払われたのだけど、なんか多いと思ったらティアナさんとスバルさん、ヴォルツ司令がポケットマネーも包んでいて物凄く申し訳ない気分になったのだ。
受け取れません、とそれぞれに連絡入れたのだけど、命懸けたんだからそんくらいないとダメよとティアナさんはいうし、スバルさんなんかえー?受け取らないと怒るよーというし。ヴォルツ司令は倍だそうかというからもう受け取らざるを得なくなった。申し訳ないので家で贔屓にしているベルカ系の菓子屋の菓子折りをそれぞれに送らせてもらった。古代ベルカへの伝手はお任せください。
なので、また協力した時に備えて魔導士ランクを測って嘱託魔導士の資格を取っておこうと思ったのだ。どうせ試合で全力出してもちょっと休めばまた万全になるし。俺とラフィは家だと基本一緒だけど最近はイクスというラフィにとって庇護すべき存在が出来たことで別行動が多くなった。揃ってる今日測るべきじゃないかな。
「あれ?カイト先輩空飛べますよね?本局じゃなくていいんですか?」
「……本局はほら、いろいろアレじゃないか?」
「……あー、フェイトままにはやてさん、ティアナさんとかも」
「そゆことだ。まあその人らの推薦があったから試験が免除になったんだけど」
そう、俺の嘱託魔導士試験はほぼ免除されてしまっている。試験には座学と模擬戦、救助訓練、さらには災害時の対応という4つの試験があるんだけど、座学ははやてさんが、模擬戦はなのはさんとフェイトさんが、救助訓練はティアナさんが、さらには災害時対応についてはスバルさんがそれぞれ推薦で基準値以上であるとやってくれたおかげで試験が無くなってしまったのだ。
だから魔導士ランクを測りに行くだけ。やることもガジェットドローンを利用した程度の模擬戦だからすぐに終わる。陸戦AAAは硬いね、となのはさんは言ってくれるからそんくらいを目指して頑張ろうじゃないか。ラフィもいるし俺の超全力でルームを塵にしてくれよう。初手破城激震とか。
「はーい!それ、見に行ってもいいですかー!?」
「いいけど、つまらんぞ多分」
「いえ!是非とも勉強させてください!」
「私も行くっ!」
お、おおう?魔導士ランクを測りに行くだけだぞ?ガジェットドローン相手にドンパチやるだけだぞ?それなのに3人ともついていきたいとは変わっているなあ。俺はいいんだけど親御さんが何ていうか分からんし……とりあえずなのはさんにメール送ったらレイジングハートからオッケーが帰ってきた。リオとコロナの親御さんの連絡先を教えてもらってっと。
それで二人の親御さんに連絡を取ってみたんだけど、なんか普通にオッケー出た。コロナの親御さんは娘のことをよろしくお願いしますっていうし、リオの親御さんなんか道場やってるから今度遊びに来てくれとも言われた。なんじゃ、俺がおかしいのか?それともこれもヴィヴィオの人徳なのかね?
それはともかくとして親御さんの許可が出たし、食事も終わってティーブレイク中だし、俺はウェイターに会計をしてもらってそのままカフェを出て最寄りの管理局の施設まで行くことにした。予約はすでに済ませてあるし、管理局は推薦人が推薦人だからもろ手を挙げてバッチコーイレベルでウェルカムだった。ほんとに人いないんだな……。
『カイト・エルンスト・アロイジウスさん。空戦AA、陸戦Sで登録となります。魔力量は非ユニゾンでAAA、ユニゾン時Sです』
「どうも……マジかこれ」
「当然だぞ、主カイト」
「Sって確か、なのはママとかフェイトママとかシグナムさんとかと一緒ってことだよね!?」
「流石は世界戦出場者……!」
「ふわ~~~……!」
ガジェットドローンって脆いなあ、と思いつつ出現したら秒で狩るを繰り返した結果、俺の魔導士ランクはかなりの高ランクに定まってしまった。調子に乗ってあちらこちらを爆破して攻撃してたんだが、それが結構巻き込んで落とせて気持ち良かったんだよなあ。魔導士ランクは戦闘評価が大部分を占めているので確かに戦闘に特化している俺ならこうなるのか。
証明書を受け取りながら俺の周りで跳ねまわって喜ぶ3人と、微笑ましそうにイクスとラフィが見つめていた。分かるよ、なんか父性沸くよな。
コロナ&リオ登場。あと魔導士ランク取得。戦闘特化なのでこのくらいはね。次回はDSAA終幕。原作に速く突入したいです。
ではまた次回に。感想評価よろしくお願いします