魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡   作:防御特化っていいよね

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第3話 古代ベルカって面倒くさい

「ふむ、申し訳ないが人、いやデバイス違いだ。私の名はヴェントラフィカ。『業火に焚べる風』の名を拝名している」

 

「えっ!?あっ!?そうだよね!ごめんなさい!あんまりにも昔に会った人に似ていたものだから……!」

 

「なのはママ、どうしたの?」

 

「カイト、もしかしてヴェントラフィカさんって」

 

「ウチの初代が使っていた融合騎ですよ……あー、上がっていきます?お茶くらいなら出せるよな?」

 

 ラフィ、ヴェントラフィカは遥か古代、ベルカの最末期に完成した人と融合することで魔法の補助を行うデバイス、ユニゾンデバイスだ。金髪の腰まであるロングヘアーに、釣り目がちだが優しさを感じる蒼い瞳、背は高くスタイルもいい美人。初代も男だったんだなと呆れたこともあったなあ。

 

 出会いは3年前、親の遺産を継いだ時にベルカ自治領にある実家の整理をしている際に見つけた書物型ストレージデバイスの中にデバイス二つと一緒に封印されていて、たまたま俺との融合係数が高かったのでセーフティが外れて目覚めた、俺の残された最後の家族。

 

 ラフィにお客さんを入れてもいいか、というと構わない、今から夕食の準備をするところだったから少し遅くなると返される。俺はそれに頷いて3人のお偉いさんにうちに上がって行ってもらうことにした。どうも、事情がこんがらがっているみたいで、整理したほうがよさそうだ。ヴィヴィオにお願いされた連絡先の交換もできてないし。

 

「ラフィ、フラムとシュロス返してくれ。終わってんだろ?」

 

「ああ。机の上に置いてある。少々待ってくれ、茶と茶請けを用意してこよう」

 

「ん、3人ともこちらにどうぞ」

 

 パタパタと台所に消えていったラフィを見送り、俺は3人を居間に案内する。隣の倉庫になっている部屋から椅子をいくつか引っ張り出してきて、そのあとに机の上にある金属製の腕輪を二つ、手に取って腕に嵌める。もう既につけてない時間の方が珍しい俺のデバイス二つ。

 

「調子は?」

 

『Ja』

 

『Nein』

 

「ん、オッケー。あーヴィヴィオ、忘れないうちにこれが俺の連絡先な。困ったことがあっても無くても好きにかけてくれ」

 

「わぁ、やったぁ!ありがとうございます!えーっと、こうしてこうやって」

 

「デバイスじゃないんですね」

 

「魔法の基礎ができるまでは、個人専用のデバイスはまだ早いかなって。ちょっと今回のことで反省中なんだけど……」

 

「インテリジェントならその場で通報なりを自己判断してくれますからね。お守り替わりに持たせておくにはかなり高価ですけど」

 

 非人格型、つまり簡単な応答ができる程度のAIしか搭載されてない俺のデバイスたちとは違い、どうもヴィヴィオに持たせようと画策しているのは人格型AIを搭載したインテリジェントデバイスらしい。けどまだ許しが出ていないらしくて、ヴィヴィオが持っているのは子供用の通信端末、確かに子供に持たせるには高価かもしれないな。

 

 私たちも、と己のデバイスを取り出したなのはさんとフェイトさんのデバイスを見ると、インテリジェント型だ。しかもかなりAIを学習させているみたいでそんじょそこらの人間よりも受け答えが滑らか。無骨な俺のデバイスにも見習わせたいくらいだね。まあ、無理なんだけど。AIの精度が違うし。

 

「それで、聞いていいのか分かりませんが、リインフォースって誰です?そんなにウチのラフィとそっくりなんですか?」

 

「うーん、それはその……実は守秘義務みたいなものがあってね?」

 

「大丈夫ですか管理局。口が滑ってますけど」

 

「ふ、普段はなのはもそういうことはないんだよ!?ただ、今回のことはあまりにも衝撃的だったから……」

 

「リインフォースってはやてさんの融合騎だよね?リインフォースツヴァイさん」

 

「うん、えっと、ね?今回はツヴァイのことじゃなくて……ツヴァイの前にいたリインフォースと、ヴェントラフィカがそっくりだったの。髪の色と、目の色を変えればもうほんと瓜二つだし雰囲気もそっくりで……」

 

 ……ああ、そういうことか。そりゃ似ているわけだ。人とそっくりだったなら、それはもはや他人の空似なんだけど、融合騎……ユニゾンデバイスとなれば話は変わる。ここから先はラフィもいてくれないと困る話かな。ヴィヴィオの無邪気な質問にフェイトさんが困った感じで説明しているのを横から聞いて俺は内心で頷いた。

 

「ああ、そういうことか。そのリインフォースとやらは、こんな感じだろう?」

 

「えええええっ!?」

 

「そ、そうですそうそう!何で知ってるのかな!?」

 

「何でも何も、私と夜天の書の管制融合騎は姉妹機だからな。製造順で言えば私が姉になる。妹は息災か?その口ぶりだと今代の夜天の主と知り合いなのだろう?」

 

「それは……その……」

 

 お盆に紅茶を淹れたカップとソーサーを運んできたラフィがテーブルにお茶とお菓子を配置し終えると魔法で髪の色と目の色を変える。銀色の髪に血のような赤い瞳、それを見たなのはさんが即答で応える。やっぱりこの人たち夜天の魔導書の主と面識があるな?じゃないとこの反応はないだろ。

 

 夜天の魔導書、世界の多種多様で偉大な魔法を記録するために作られた大容量の魔導書型ストレージデバイス。容量が大きいだけあって、どうも魔法の使用時にレスポンスが悪かったらしくただの記録書として使っていたらしいんだけど、ベルカ最末期の当時は戦争の連続に戦力が不足し、その時5代目だった夜天の魔導書の主が管制人格として融合騎の開発を決意し、それの技術実証機として開発されたのが当時のラフィだ。で、それを託されたのが融合係数が高かったご先祖様ってわけ。

 

 そして、ラフィが妹に当たるリインフォースというらしいデバイスが今も元気かと聞くと、なのはさんとフェイトさんの顔が一気に曇る。あー、そういうことになるよな。ツヴァイ、2号機が開発されたっていうことは1号機に当たるラフィの妹の方に何らかの不具合もしくは故障、喪失が発生したと考えるのが普通だ。ラフィもそれを察したのか少し目を伏せつつ言葉を返す。

 

「そうか、まあ開発時から長い時が経った。破損せずに残っただけでも奇跡だろう。満足して逝けたのならば私が口を出すことではない」

 

「その……聖王教会から何も聞いてないんですか?家柄的に伝えられてないことの方がおかしいような……」

 

「ああ、確かに父さんと母さんなら知っててもおかしくはなかったかもしれません。二人ともJS事件で亡くなりましたし、そもそも俺の家は聖王教会と断絶してるので、ベルカの情報は入ってこないんですよ。って何ですかその顔!?」

 

 夜天の魔導書の事情について俺が知らなかった理由を話すとなのはさんとフェイトさんどころかヴィヴィオまでも顔に影が差す程暗い顔になってしまった。いきなりのことに俺が困惑しきりになり助け船を求めて髪と瞳の色を元に戻したラフィを見ると彼女は素知らぬ顔で主が余計なことを言ったのが悪いと言わんばかりの表情をして、紅茶にミルクを混ぜていた。こいつロードを見捨てやがったな!?

 

「あー、別にもう整理はつけたので悪い事聞いちゃったみたいな顔しなくてもいいですよ?ミッドじゃ親がいない子供なんて珍しくないですし、俺には幸運にも相棒がいますから」

 

「あの、カイト先輩はJS事件のことって……」

 

「事のあらましはニュース程度の知識でな。ただ、ゆりかごが動いたのは知ってる。まあ、つまりそういうことだ。ゆりかごの知識は継いだ記憶の中にある」

 

「じゃあ、私がやったってことも……」

 

「……お前、3年前4歳か5歳くらいだろ。自分の意志でやったのか?俺は、お前を見る限りそうは思わないけどな。知られたくないことも言いたくないこともあるだろ。言わなくてもいい」

 

 JS事件のことのあらましは、稀代の大犯罪者ジェイル・スカリエッティが戦闘機人ナンバーズと共にロストロギア、戦艦「聖王のゆりかご」を起動しミッドチルダを滅茶苦茶にした一連のテロ事件の総称だ。聖王のゆりかごは聖王の血筋に連なる人物がコアとしてシステムの一部になることにより強大な力で戦場を蹂躙する遺失物、ロストロギアの一つだ。3年前まで聖王の血筋が発見されてないのは聖王教会が発表してない時点で事実だ。そんな現人神みたいな血統が出現したら聖王教会が嬉々として崇め奉るに決まってるからな。

 

 それで、ゆりかご発動のキーになったのが目の前で暗くなってるヴィヴィオってとこか。ジェイルスカリエッティが科学者だから別の手段で起動したもんだと思ってたが、正規の手段だったわけだ。

 

 あー、なるほどな。ウチの家がもうちょっと聖王教会に歩み寄っていれば確かにヴィヴィオの情報も入ってきたかもしれないが、正直割とどうでもいいな。戦争は過去の話だ。継いだ記憶の最後にも「子孫はこの記憶を継いだ時、全ては終わったものと考え記録として残せ」という初代の述懐があるくらいに、うちの家じゃもう過去のことって考えになってる。

 

「もごっ!?」

 

「ほら、まあそう暗くなるな。俺はお前を色眼鏡では見ない。お前がどこの誰の血を引いていようが、高町ヴィヴィオとして見るよ」

 

 それでいいですよね?と保護者二人に視線を向けると二人してほっとした顔をしている。申し訳ないな、何も知らない一般人だったらまあありがとうごめんなさいで済む話なのになまじ俺の家系が家系なせいで隠し事が出来なくなっているし。もごもごと急に口の中に突っ込まれたクッキーを頑張って咀嚼し飲み込もうとしているヴィヴィオに再度グッと親指を立てる。

 

「俺は気にしない。お前も気にしない。今んとこはそれでいいだろ?初対面でそんな突っ込んだ話はするもんじゃないしな」

 

「先輩は……良い人ですね!」

 

「だろ?ご先祖様に恥じない騎士になるのが俺の目標だ。折角会えたんだ、仲良く笑うのが一番だぜ」

 

「はいっ!」

 

 よし、ヴィヴィオの顔に笑顔が戻った。さっき俺を見捨てた薄情な融合騎もさすがは我が主、みたいな顔でうんうん頷いている。お前は後で俺特性のスタミナジュースを飲ましてやる。クソまずいが効力は折り紙付きだ。もしくは生卵一気飲みでもいいぞ。俺もやるからお前もやれ。話がひと段落したところでああそうだとラフィが俺に顎をしゃくって先を促す。俺はそれに頷いて

 

「もし、良ければなんですが今代の夜天の主に会ってみたいんですが、繋いでいただけませんか?」

 

「はやてちゃんに?なんでか聞いてもいいかな?」

 

「実は、ラフィの開発者である夜天の主から、もし次に目覚めた時に夜天の主に渡すように預かっているものがありまして、ラフィが俺を主として目覚めたのなら会って渡すべきだと考えてるんです」

 

「何を渡すかは今代に会うまでは明かすことはできないが、不利益になるものではないと断言しよう。よく熟考してくれ。主カイト、夜も更けた。今日は外食にしよう」

 

「じゃ、じゃあ!一緒に食べませんか!?ねえ、なのはママ、フェイトママ!」

 

 一回聖王教会を頼ってみようかと考えたが、聖王教会にラフィやフラムとシュロスを難癖付けて持ってかれる可能性があるので頼るのはやめた。そもそも、両親がJS事件で死んだときに遺産について事細かに尋ねようとしてきた連中だ。古代ベルカの貴重な遺産があると踏んでいたのだろう。実際にラフィやフラム、シュロスという当時から受け継がれているデバイスが出てきたのでその認識は間違ってはいないが。ロストロギア扱いされて持っていかれたら困る。ただでさえ家は聖王教会と仲が悪いんだ、変な恩を売りたくないし情報も渡したくない。

 

 話し合ったおかげで夜遅くになってしまったので、ラフィが外食を提案するとそれを好機とばかりに捕らえたヴィヴィオが一緒に食べませんかと前のめりな誘いをしてくる。もともと誘っていた立場だったのもあってか、なのはさんとフェイトさんも結構乗り気だ。折角だから近くに美味しいお店があるの、というなのはさんのお言葉に甘えることにした。

 

「すいませんがお世話になります。ラフィ、ん」

 

「ああ」

 

「へー、ラフィさんも小さくなれるんだね!」

 

「私は大きい方が本来の姿なのだがな。後期ロットの融合騎はこのサイズが基本だと聞く。燃費は悪くないが、少々窮屈だ」

 

「あーなるほど!リインさんとかアギトみたいな!へー!」

 

 光を放ち、身長30㎝程の妖精サイズに魔法で縮んだラフィを今着ているポロシャツの胸ポケットに入れる。少々汗臭いぞ、という文句を全力疾走の後だったんだからしょうがないだろ、シャワーは署で浴びさせてもらえたんだから多めに見ろと言って聞き流し、3人の後に車にお邪魔させてもらい、俺たちは食事に向かうのだった。




 古代ベルカ関係は資料が少ないので勝手に設定しました。ごめんなさい。というわけで主人公はアームドデバイス2本、そしてユニゾンデバイスを所持しています。

 ではまた次回に、感想評価を下さると励みになります
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