魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡 作:防御特化っていいよね
『DSAA男子、世界戦決勝!イサム選手vsカイト選手!』
「やあ、予想通り会えたな」
「そうだな。まあめんどくさい口上はいらねえだろ。俺らみたいな古い騎士の決闘じゃあるまいし。闘ろうぜ」
「同感だ」
お互いに苦笑する。暦は既に11月。DSAAインターミドル男子戦も遂に決着だ。会場に用意された特設リングをぐるっと囲むテレビカメラを視界にとらえて苦笑しながら、俺は目の前で同じようなことを考えているであろうイサムに話しかける。古い騎士としては決闘前の口上もいいものだが、やはり何かを懸けて行われる決闘と強さ比べは違うだろう。
イサムはそもそもあまりしゃべるのが得意なタイプではなさそうだ。口下手とまではいかないが、黙っていられるなら黙っていたいタイプ。高速機動型のバリアジャケット、鋭い小太刀型のアームドデバイス2本、最低限のカートリッジシステムを積んだ籠手型のインテリジェントデバイス……真正面からこいつのバリアジャケットを見るのは初めてだが、理にかなったデザインだな。
「六花、カートリッジ」
「フラム、撃発」
開始の合図とともに、俺たちはそれぞれデバイスから一発カートリッジをロードする。イサムが必ず戦闘開始にする魔法、ステージ全体を氷結させて足場を不安定にし霜による霧で視界を封じるフィールド魔法。渦巻く零下の波動がステージを駆け抜ける、が俺が発した炎熱の魔力が拮抗し、俺とイサムの間ちょうどで止まった。イサムは分かってたように姿を消す。
「はあっ!」
「うらっ!」
二刀での強襲をシュロスで受ける。速いな、大方の予想通り死角から襲ってきやがった。おそらくブリッツアクションである魔法で俺の真後ろに回り込んだのだろう、遅れてカートリッジが地面に落ちる音が聞こえる。1撃、2撃、3撃、二刀の小太刀の攻撃を大盾で受けていく。流れるような動きで無駄のない攻撃、やはり強いな。剣術だけでもシグナムさんに匹敵するかもしれない。
「御神流、徹!」
「……なに?」
力がこもった一撃を同じようにシュロスで受ける。さっきまでと違うのは、ライフポイントが減ったこと。騎士甲冑越しということもあって減った500のライフと手に残る鈍い痛みが攻撃を受けたことを如実に表していた。次の2撃目も同じだろう、ラフィが自己判断で防御魔法をシュロスに貼って受ける。盾が分厚くなったがそれでもライフは減った。
「鎧徹しか!?」
「ご明察!!さすがだ!」
正体を看破した瞬間から小太刀のインパクトの瞬間に受けの拍子をずらした。大抵の鎧徹しはこれで対処できるからだ。やはり予想通りで、ライフの減りはなくなった。
シュロスを蹴り、バックステップで距離を取ったイサムが氷でできた針を次々と発射してくる。ッチ、視認性が悪いな!前方に火柱を纏って蒸発させて防御する。真後ろからキラッと光るものを視界の端にとらえた。それはぐるっと俺の右手に巻き付いて拘束する。ワイヤーか、力で引きちぎ……!無理だな!
「貰った!」
「ああ、くれてやるよ!」
ワイヤーを引きちぎるのは不可能ではないが、俺の動きを一瞬止めるのが目的なのだろう。過たずそれは果たされた。イサムがそのまま俺の右手に小太刀を振るう。二の腕にシールドを張ったがイサムの小太刀はどうやらよく研がれているらしい。だが、ただで終わるわけには行かん。相打ちまで持たせてもらう。
「凍牙双閃!」
「っ!いいこと……教えてやるよ!俺は左利きなんだ!」
「しまっ!?」
俺の右手を挟み込むように振るわれた氷結の魔力が籠った小太刀は間に合わせのシールドを切り裂いて俺の右手に達する。クラッシュエミュレートにて右腕切断の判定が下されるが、これはもういい。技後硬直を狙った俺がシュロスの接合を外した左手に魔力を込めて、イサムを思いっきりぶん殴った。
俺は右手でフラムを使うが、利き手は左だ。何だったら70kgあるシュロスを振り回す左手の筋力の方が高かったりする。攻撃に使うなんざなかなかないがな。俺の渾身の左ストレートは小太刀を振り切ったイサムを完全にとらえる。イサムは咄嗟に右手の小太刀を離して防御態勢を取るが、防御をあっさり貫通した俺の拳はイサムの右手を潰しつつボディを捉えて吹き飛ばす。
「あったまってきたなぁおい!」
「まったくだ!」
クラッシュエミュレートが起動してイサムの右手が使えなくなる。おそらく粉砕骨折以上だろう。出血判定のある俺の方が不利だが……出血はラフィが止めてくれる。シュロスをフォルムツヴァイに変えてもう一度左手に接合し、フラムも左手でもった俺と左手一本で小太刀を持つイサムがにらみ合う。庇ってるが、どうやら肋骨もいってるらしいな、確信した。当たれば届く。当たらねえのが問題だが。
言葉はいらず、同時に突っ込む。がしゃんとフラムからカートリッジが排出される。炎熱が渦巻くフラムを俺は左手で振り下ろした。同じようにイサムの垂れさがった右手の籠手からカートリッジが排出されて小太刀が凍り付いていく。ぶつかり合う刹那、イサムの姿がかき消えた。なるほど、神速か!
「なめんな!」
「くっ!」
拍子をずらすつもりで俺が振り切った後に目の前に大上段に構えた小太刀を振り下ろしつつ現れたイサムに対して、俺は予想していたと脳天にシールドを張る。俺のシールドを斬るのは難しいだろう、さっきみたいに魔力も術式もスッカスカなら斬れて当然だろうさ、こいつなら。けど、こいつは無理だろ!
ピタッとシールドに止められたイサムの小太刀、そしてフリーになった左手を振るう。イサムが戻した小太刀と俺の戦斧がぶつかり合う。氷結と炎熱の魔力が吹き荒れて周りを滅茶苦茶にしていく。ライフポイントは俺が15000、イサムは17000、切り飛ばされた判定の右手の分が痛いな。
「流石に重すぎる。受けてこれか」
「おうよ。伊達にこんなもん振り回しているわけじゃないぜ」
『主カイト、出血の処理が完了した。サポートに戻る』
イサムは右手の小太刀を吹き飛ばされそうになりながら何とかこらえている。伊達や酔狂で速さを捨てたわけじゃないんでな、力と防御、それがアロイジウスの騎士だ。生半可な防御を叩き割る攻撃を鋭さを追求した小太刀で受けるのは難しいだろう。たたらを踏んだイサムはバックステップで下がる。
出血多量判定で霞んでいた目が元に戻った。これで見やすくなったな。さてどうするか、となったところで4分のゴングが鳴る。4分ってのは意外と短いな。一時的にクラッシュエミュレートが解けて体が自由になる。30秒の休憩の間に右手切断だけは直しておかないと治癒魔法を全力で使う。一旦リングの端に戻った俺たち、目が合うとどちらともなく好戦的に笑った。ヴィヴィオたちが何か声をかけて来てくれているが、意識する余裕がないな。
「いや、強いわ。あんなの反則だろ」
「それお前が言ったらダメな奴だぞ」
「そうですね。多分あっちもセコンド相手に同じこと言ってるでしょうし。次ラウンドで決着付けます」
「せ、先輩!頑張ってください!」
ヴィヴィオにコロナとリオが心配そうな面持ちで応援してくれる。俺はニカッと笑って任せろと親指を立てる。安心したようなヴィヴィオたちの笑顔に背を向けて今一度リングの上に上がる。クラッシュエミュレートは話しているときに全回復さした。それは向こうも同じだろう。そして、両者ともに長引くと不利だ。このラウンドで決着付けるしかない。あと先考えず、全力で。
「かますぜラフィ。やるぞ」
『承った』
「決着付けようか、カイト」
「おうよ、イサム」
ゴングが鳴る。こいつ相手にもう出し惜しみもくそもないだろ。全力全開だ。なのはさんが移ったかね。と思いながら俺はリンカーコアを全力で稼働させる。魔力の嵐が吹き荒れる。俺からも、イサムからも。凍結と炎風が吹き荒れて台風のごとくリングを駆け抜ける。
「フルドライブ」
『ignition』
「リミットブレイク」
『我が主の意のままに』
両手の小太刀の刀身が薄い水色に変わり、両手を凍結させたイサムと、全身から制御しきれない炎を吹き出す俺。構えは対極、静と動。仕掛けるのは当然、イサムが先。やつもこのまま出し惜しむよりはと思ったのだろう。最初から神速を使って俺の傍に出現した。そして、その速度を保ったままいつの間にか納刀していた小太刀を抜刀術で引き出す。
「小太刀二刀御神流、奥技之六!薙旋っ!!!!」
「おおおおおおっ!!」
ジークのそれを受け切った時と同じように神速の抜刀を受ける。衝撃波と氷結の塵が飛び散る。まさか、飛び込んできてくれるとは思わなかった。1撃、2撃、そして背後に回って3撃目、そして4撃目を……俺はシュロスに仕込んだトラップバインドで捕まえる。そもそも適性の無い俺のバインドなんざ、すぐに振りほどける。けど、一瞬、ほんの一瞬止まってくれれば十分だ。
「城塞不撓、裏式」
『城塞、逃がすこと能わず』
「これはっ!」
思わずバックステップで下がったイサムの周囲を囲うように城塞不撓が出現する。城塞不撓は防御魔法でもあるが、ケージタイプ、つまりは結界魔法に類する魔法でもある。敵の攻撃から身を守る盾であると同時に敵を閉じ込め逃がさない城門にもなるわけだ。未だかつて、俺の城塞不撓は破られていない。強度も、硬度も……今の俺が出せる最高のものだ。
「……これで、どうする気だ?」
「それごとぶっ壊すんだよ。さあ行くぜフラムスクーレ!シュロスリッター!フルドライブ!」
『『BrechenSchlossform』』
ありったけのカートリッジがロードされる。俺の身の丈を超える大斧に変じた二機は俺の魔力を圧縮に圧縮を重ねた魔力刃を展開して吠えるのを今か今か止まっている。ここまではいつも通り、だけどこれだけじゃ城塞不撓を砕いてイサムのライフを削り取ることは不可能だ。リミットブレイクで悲鳴を上げるリンカーコアに鞭を打ち、俺はさらに魔力を捻りだした。
「もうちょい付き合ってくれよラフィ!」
『言っても聞かんだろう。好きにするといい。死するときも生きるときも我ら融合騎は主と共にあるものだ』
「あんがとよ!それじゃ、もっと無茶しようじゃねえか!」
そこからさらに、俺はあいた左手に4本の砲弾型カートリッジを取り出すと、同時にそれを拉げさせて中にある魔力を解放した。炎熱の炎でリングが溶け始める。今までにないほどに巨大化した魔力刃を携えた俺が肩にそれを担ぐと。納刀し、抜刀術の構えを取ったイサムが静かに俺を見据えていた。相殺する気か。やれるもんならやってみろ。
「これで終わりだ」
「わかってるさ」
そう二人で嘯いて、静かに見つめ合う。赤い城塞越しにみるあいつの顔は、真剣ではあれどどこか穏やかだった。俺も、そんな顔をしているのだろう。動き出しは、俺が早い。あいつは俺が城塞不撓を割ると確信している。そのうえで、抜刀術で相殺する気でいるのだ。
「破城!激震っ!!!!」
「御神流奥義! 虎切っ!」
俺が大斧を振り下ろしたと同時に世界がぶっ壊れそうなほどの大爆炎が上がり、ガラスのような音を立てて城塞不撓が粉々になるのが分かる。手応えなんてわかったもんじゃねえ。けど……当たった。それだけは確信を持って言える。これで避けられて攻撃入れられてりゃ俺の負けだ。1秒、2秒……何もない。舞い上がった塵が消える。
「……負けたよ」
「……今回は、俺の勝ちだな」
「今回は、ね」
破城激震の炸裂地には、折れた小太刀を振りぬいた状態のイサムが立っていた。どうやら、破城激震の爆炎を切り裂いたのだろうがそこでデバイスが限界を迎えて折れて、そしてライフポイントも残らず削り取られたらしい。足元から崩れ落ちるイサムを抱き留めて無理やり立たせる。一歩間違えれば負けてたな。次やるときゃどうなるか分からん。というか、奇跡だな、勝てたのは。
『け、け、決着~~~~!DSAAインターミドル男子戦決勝を制したのはカイト選手!!惜しみない拍手をお送り願います』
「カイト先輩~~~~!!」
「おわっ!?へぶっ!?ぐぬっ!?」
「……ずっと思ってたんだけど、お前セコンド増やし過ぎじゃない?」
「知らん、勝手に増えてた」
実況と解説が俺たちを讃えてくれて、会場中から拍手と口笛が聞こえてくる。それに笑っていると興奮が抑えきれなくなったらしいヴィヴィオとコロナとリオが背中に抱き着いてきた。何とか自力で立ったイサムが呆れたような顔でそんなことを言うので実際勝手に増えてたとしか言えない俺は苦笑いするしかない。ラフィがユニゾンを解いて俺の隣に立った。
「主カイト、城砕の継承見事だった。完成された城塞の騎士が出るのは久しぶりだ」
「ああ、そういやいけたんだっけ。全く、ご先祖さまもこんな襲名条件を残しやがってまったく」
そんなことを言いながら俺は左手をあげてシュロスを掲げる。それを見た観衆から、また爆発するような声援が降り注ぐのだった。
なんで最後の継承で城塞不撓を砕ける必要があるのか、答えがこれです。四方を城塞で囲み、それごと相手を粉砕するアロイジウスの必勝の策(脳筋)です。ちなみにイサム君、普通に主人公の腕を斬り飛ばせるあたりこっちもバグってるな。流石御神流。
ではまた次回、感想評価よろしくお願いいたします。