魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡 作:防御特化っていいよね
『あ、主はやて……まさか、姉さまが……?』
「そのまさかだ。全く、私のことすら忘れていたとは、5代目以降の夜天の主は相当無茶苦茶をしたらしいな」
「リインフォース……その、怒って、へん?もう一回、起こしたこと……」
『……まさか、大きくなられましたね主はやて。今一度、貴方に仕えることを許していただけますか?』
「うぅ……リインフォース~~~……」
夜天の魔導書から聞こえるラフィとよく似た声の主、リインフォースは夜天の魔導書の中から周囲を把握できたようで、ラフィに対して驚いたような声をあげた後に、恐る恐る声をかけたはやてさんの優しく今一度主従として仕えることを許して欲しいと願い出た。
はやてさんはそれを聞いて安心したのか、腰が抜けたような感じで地面に座り込むとぽろぽろと瞳から涙を落として夜天の書を抱きしめる。守護騎士たちがそれを支えるように囲い、再会の喜びを享受している。俺は一仕事終えて集中していたからか汗だくになっているラフィにタオルを差し出した。
「お疲れさん、ラフィ。今日は俺がメシ作ろうか。リクエストある?」
「そうだな、ミートパイ、でどうだろうか」
「好きだなーそれ。いいよ、つくる」
「楽しみだ」
何のことはない会話、ミートパイ……俺の家じゃ喜ばしいことがあった時とか、ご褒美とか……とにかくいいことがあった時に食べられる特別メニューだ。初代から受け継がれた秘密のレシピで作られるそのミートパイが、ラフィは大好物なんだよ。レシピは代々の当主が口伝するからラフィも知らないし、改良をくわえられて当時のレシピとは様変わりしちゃっている。
ラフィが好きなのは初代のレシピなので、丁度記憶継承している俺が作ることができる。初めて作った時は焦がしちゃって苦笑いされたっけ。今は、結構褒めてくれる程度には作れるんだけどな、元は行軍食だったから食いでがあって高カロリー、乙女の敵らしいけどこういう時くらいはいいだろ。お腹いっぱい食べてくれ。
「ちょちょちょい、なーに帰り支度しとるん?このまま帰したら私ただの恩知らずやで。全力で歓待するから、なあみんな?」
「そうですね。悪いがカイト、この後の予定は決定している」
「というか礼も言わせずに帰ろうとするんじゃねえ。それに積もる話だってあるんじゃねえか?」
「そうよ~。ここまでやってもらって何もしないで返したんじゃベルカの騎士の風上にも置けないわ」
家族団欒に水を差すのも悪いだろうと、アテンザさんに軽く挨拶だけして部屋を辞そうとする俺とラフィの行く手がふさがれる。それは当然ながら、はやてさんと守護騎士の面々なわけで。お礼って言われてもなあ……それは俺じゃなくてラフィにされるもんだろうし、俺が受けるのはなんか違う気がする。そもそも俺ははやてさんによくしてもらっているのでこれ以上を受け取るのはもっと違くないか?
まーまー、そう言わずに、と俺ははやてさんに腕を捕まえられてそのまま護送されることになった。その気になれば振りほどくことはできるんだけど、非常に機嫌よくて嬉しそうなはやてさんを前にしてそれをするのはなんか憚られたので俺は引っ張られるがまま、転送ポートに一緒に行くのだった。
「ヴィヴィオのデバイスについて、ですか?」
「そーなの。ヴィヴィオももう初等科の4年生になるでしょ?サプライズで用意してあげようかなーって」
「なるほど、それはいいですね。どんなのにしようかとか決まってるんですか?」
「インテリジェントデバイスなのは決まってるんだけどねー」
はやてさん宅にて俺はハチャメチャに美味しい料理をご馳走になっていた。というか、転送ポートから出たらオフトレ合宿の面々がはやてさんの家に集合していて、来た俺たちにクラッカー鳴らしてお祝いしてきた。どうやら完全に仕組まれていてらしい。ちなみに俺はヴィヴィオ、コロナも、リオの素晴らしい満面の笑みを見た時点で諦めた。後輩は大切です。
それで、結局言われるがままにリインフォース復活おめでとう&俺DSAA男子戦優勝おめでとうパーティーが始まったのだ。リインフォースの記憶はどうやらどうしても残したかったはやてさんとの記憶のみが残っているらしくて、はやてさんに目覚めさせてもらうまでの記憶はないらしい。つまりは守護騎士たちと一緒ということだ。
基幹プログラムとしてバックアップのプログラムの中に入っていた当時の夜天の主と初代アロイジウスのことは思い出せたみたいだからある意味では万々歳かもしれないな。よくわからん改造をしだした後代の夜天の主のことは思い出さなくてもいいだろ。うんうん。
それと今はプログラムの身で体のないリインフォース、ややこしいんでアインスと呼ぶがアインスの体はまた作り直すらしい。このまま夜天の魔導書をインテリジェントデバイスとして扱うのも悪くないのではないかというアインスの提案を絶対に体は必要とねじ伏せたはやてさんの主権限が発動したわけだ。
またラフィの体のつくりを分析して体を作るのかと思っていたら、はやてさんのリンカーコアをちょっぴり削って作るつもりらしい。流石素の魔力量がSSあるはやてさんだ、一時的に魔力値が下がることくらいはなんてことないらしい。ラフィのような感じではなくてツヴァイに近い感じになるのか。ツヴァイはお姉ちゃんになるのか妹になるのか、どっちなのやら。
そんな感じで飲めや歌えやの大騒ぎをしていたのだ。いやほんと、乱痴気騒ぎ一歩手前だった。何せ大人組はお酒入っているからね。いやーすごかったよ、なのはさんにひたすら甘えるフェイトさんとか、スバルさんにダル絡みするティアナさんとか、ペース速く呑んでたせいで脱ぎ始めようとしたはやてさんとか。マジでヴィヴィオにコロナとリオがお酒が出るまでに力尽きて眠ってなければ多分俺は全員を気絶させにかかってたと思う。教育に悪い。
ちなみになのはさん、スバルさんノーヴェさんはどうやらザルらしい。甘いお酒が好きなのだそうだが、実家に転がっている古いベルカワインとか好きかな?ありすぎて保存するしかないんだけど。イクスの体を世話してくれているお礼に一本持っていったらカリムさんが冷や汗を流していた。もう蔵元はなくなっているけどオリヴィエ陛下が好きだったワインと同じものだからね。年代は流石に違うけど。ウチの保存魔法を舐めてはいけない。何だったら当時の年代のもあったりするぞ。
それでそれで、フェイトさんを腰に抱き着かれたままのなのはさんが言うには一応レイジングハートを用いて大人モードを維持できるようになったヴィヴィオにそろそろデバイスを用意してもいいんじゃないかという話がなのはさんの中で持ち上がっているらしい、というかもうすでに発注をかける段階にまで来てるんだとか。
「ヴィヴィオは……格闘型でしょうねえ。ノーヴェ師匠はどう思います?」
「師匠じゃねえ。まあ……今さらアームドデバイスってわけでもねえし。カイトが言う通りなんだろうな」
「カートリッジはどうしようか」
「無くていいでしょう。将来局入りするかわかんないですけど……カートリッジってなんだかんだ負担ヤバいですよ。10歳で使い始めるもんじゃ……何で目を逸らしてるんですかなのはさん?」
「いや~、私カートリッジ使い始めたのちょうど今のヴィヴィオと同い年くらいだったから耳が痛いなーって」
「地球って怪物の集まりか何かなんですか?」
今は割と普通に搭載されているデバイスを見るがカートリッジシステムは瞬間的に魔力を爆発するようなレベルで高めるのでリンカーコアへの負担が半端ない。物心ついた時から先代である母さんに鍛え上げられている俺だってカートリッジを使うようになったのは頑健を制御できるようになってからだった。少なくとも、まだ魔法初心者のヴィヴィオにカートリッジ入りのデバイスなんか渡した日にはそのうちリンカーコアが傷ついてしまうかもしれないし、俺は反対だな。
というか、なのはさんってどうやら9歳くらいから魔法に関わってたらしいんだけどちょうど闇の書の事件があったあたりで守護騎士と敵対することになり、レイジングハートを大破させられたらしい。それで修復&パワーアップで局で研究されていたベルカ式カートリッジシステムを積んで戦ったのだとか。この人の強さの根源を見た気がした。まさかこの人も俺のように脳みその中にベルカがあるんじゃなかろうな?
「まあ、そうだよね。どうしてもカートリッジが必要なら後付けすればいいし~。にゃはは、でもヴィヴィオは格闘型か~、ちょっとノーヴェが羨ましいかも」
「適正で言えばなのはよりだろ?ヴィヴィオ、格闘型とはちょっとずれてるかんな」
「射砲撃の適正は高いんでしたっけ。あと高速マルチタスクと、目がいい。見事にシューター型の適正ですね、俺とは正反対だ。オリヴィエ陛下とも違うし」
「そうなのか?」
そうなんですよ、と俺は別室で眠ってしまっているヴィヴィオが起きてないかだけ気配で確認してオリヴィエ陛下のことを語りだした。オリヴィエ陛下は幼少期の事故で両手を欠損してしまったおかげで実家での扱いもよくなく、人質のような形でシュトゥラにやってきた。古代ベルカの王たちは戦えるのが基本だったので王族に連なるオリヴィエ陛下も戦えたには戦えたが、それも我流のものだった。
そこに現れたのがクラウス陛下の武術の師匠も務めていた初代アロイジウス。魔力で操る戦腕のおかげで緻密な魔力操作と筋力を身に着けていたオリヴィエ陛下はアロイジウスをいつの間にか師として仰ぎ、よくよく仲良くしていたらしい。ちょうどヴィヴィオみたいな感じで。だから俺は初代の記憶が混じっているせいで何となくヴィヴィオに強く出れないのかもしれないな。
初代アロイジウスをまじで師にするとどうなるか。それは防御と攻撃に特化した騎士が出来上がるということだ。オリヴィエ陛下も例に漏れず、レアスキル「聖王の鎧」による圧倒的防御と戦腕による怪力で無双を誇ったとのこと。そりゃ強いわ。まあヴィヴィオには聖王の鎧はないみたいだからオリヴィエ陛下と同じスタイルは無理だろうけどね。
「そうすると~格闘型で最近流行りの融合装着型がいいかな?演算領域が広めにとれるのがいいらしいね」
「あれどうなってるんですかね?融合騎って適合者が少ないから廃れたはずなのに今さら融合型が流行るなんて」
「どうも最近、融合騎ならともかく、ただのデバイスなら敷居がだいぶ下がったらしい。私にも詳しくはわからないが」
そうなのか、と俺はワイングラスに並々と赤ワインを注いでくいっとやっているラフィの解説を聞いてなお首を傾げる。融合騎と融合装着型デバイスって違いなんだろう?リンカーコアのあるなしか?融合騎のリンカーコアがロードの中に入り込むのに拒否反応が出る場合が多いって聞くし。そういうことなんだろうか?
「そういえば、嘱託魔導士になったんだっけカイト君」
「そうですね。免許は取りましたよ、なんかえらい本入局しないかって言われましたけど」
「むっふっふ~それならカイト君に依頼があります!」
「なんでしょう?捜査協力ですか?」
なのはさん、どうやらザルレベルにお酒に強いとは言っても既に結構な量のワインやらバーボンやらウィスキーやらウォッカやらをちゃんぽんしてあけているので若干酔っているらしい。いつもよりもかなりテンションが高い、もしかしてそれ思いつきですか?と同じ職場にいるヴィータさんの方を見ると、はやてさんに脱がされそうになっていたのでマッハで目を逸らした。目が合った気がしたが俺は何も見なかった。強く生きて欲しい。
ぱんぱかぱーん、となのはさんが自分で効果音を出してレイジングハートが出した仮想画面を反対にして俺に見せる。するとそこには陸士隊への教導に協力してほしいという依頼文が書かれていた。陸士隊への教導~~?んなむちゃな。俺が教えることなんて近寄って斬れくらいしかないんだけど。
「クロスレンジの教導ならヴィータちゃんがいるんだけど、今回教導する陸士候補たち結構多くてヴィータちゃん一人じゃ手が足りないんだ。だから……ちょうどよくいる次元世界一つよーい男の子の力を借りたくって」
「俺にできることなんてサンドバックか近寄って殴れって教えることくらいですけど」
「それでも大丈夫だよ~。教えるのはヴィータちゃんがいるんだもの。相手役が欲しいんだよ。協力者連れてきてもいいから、古代ベルカのやり方でやっちゃって」
なるほどね。確かにヴィータさんはすぐれた教導官なのだけど体は一つだ。受講者同士で模擬戦し合うのも大事だけど格上に挑む度胸がクロスレンジでは重要視されるし、やろうかな。俺はなのはさんに了承の返事を返すのだった。
次次回でようやく原作に行けそうです
それではまた次回に。感想評価よろしくお願いします