魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡   作:防御特化っていいよね

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第33話 教導

「わりーな、あたしが不甲斐ないばっかりに。30人近くいるとどうもな。どうしても手が足りねえし、今日は他の教導官別世界にいるんだよ」

 

「……なあカイト、この人とんでもなく強いだろ。こんな人に教導やってもらえるっていいのか?俺、受講料払わないとダメじゃないのか?」

 

「だろ?一回俺も受けてみたんだけどマジでためにしかならないからさ。俺らは教える側、というか模擬戦相手だけど頑張ろうぜ」

 

「楽しみだな。AMF環境も体験できるなんて至れり尽くせりだ」

 

 冬休み入って数日後、管理局の仕事は終わらない。本日俺の姿は管理局の教導隊の施設にあった。申し訳なさそうなヴィータさんにいえいえ喜んでやらせてもらいますよと返してから、ヴィータさんが仮想画面に集中している隙をついて俺を肘でつっつき、耳元でささやいてくる男に俺も無声で返した。

 

 相手は今日のために俺から協力依頼を出した男、イサムである。どうやらこいつは民間協力者の資格を持っているらしく徹底的に追い詰めるなら俺に近いタイプがいいなと思ったので真っ先に思い付いたこいつに連絡を取ってみたのだ。有意義な地球旅行だったという報告を聞いた後にこれこれこうで、協力してくれないかと尋ねたら割と二つ返事だった。

 

 初めて直接見るヴィータさんを前にして立ち振る舞いだけで強さを見抜いた我がライバルは、むしろ指導料を払いたいと俺に言う。俺はイサム相手に激しく同意をした。この人、見た目で損をしているけどフロントアタッカーできるし、何だったらセンターガードもある程度できる万能騎士なんだ。しかもその凄い人が教導官、いっちゃなんだけどこの人に教えてもらえるとかマジで幸運でしかない。吸収していかないとなあ。

 

 制服姿のなのはさんが後ろに今回の教導相手を連れてやってきて、俺はそういえば同年代相手だったのか、と今さらながら驚いてイサムと顔を見合わせる。正直年上を想像していたのでちょっとやりやすくなって楽しくなってきたな。俺とイサムの顔は売れているので受講者たちはざわざわとざわめいている。そしてそれを遮る様になのはさんが手を叩いて話し出した。

 

「はーい、それでは本日は特別教導としてゲストを招いて教導を行っていきます。DSAAを見た人ならわかると思うけど、今年度の男子の部優勝者と準優勝者にお越しいただきました」

 

「カイトです。今日はよろしくお願いします」

 

「イサム・フワです」

 

 うおおおおおおおーーーーっ!!!!と男子女子問わずそこにいる受講者全員が沸いた。俺とイサムは目を合わせて想定以上のものが来たと思わず両耳を手でふさぐ。すげえ!本物だ!だの、イサムのことイケメンっていう女子がいるわ、俺のことを強そうっていう声があるわ、なんかやりづらいな。俺もイサムもメディアの取材とかほとんどやらなかったから情報が少ないみたいだし、ここに居るのは驚きでしかないのかな。

 

 収拾がつかないのでヴィータさんに荒くなってもいいですか、と念話で尋ねるとかましてくれというもんだから俺はイサムと目を合わせて頷く。抜きざまに己のデバイスを起動した俺たちは受講生たち対して思いっきり振るった。当然ながらそれは距離が離れているうえに魔法も使ってない一撃ではあるが……デバイスを振るった風圧が受講生全員を叩いた。ポカンとしてる受講者たちに

 

「はい、色々あると思うけどよろしくな。今の見て分かると思うけど加減と容赦はないものと思ってくれ。古いベルカの騎士なんでな、その通りにしかできん」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

「はい、よろしく」

 

「い、いつの間に……!?」

 

 つかつかとフラムを手に俺が前に出ると今の一撃で気が引き締まったらしい受講生たちはごくりと息を呑んだ。そして、いつの間にか後ろに回っていたイサムが全員に返事をすると、いつ目の前から消えたのか分からなかったらしい一番後ろの男子が顔を青くして驚いている。掴みは万全だな。よしよし。

 

「はい、注目してくれてありがとさん。ヴィータさん、お願いします」

 

「よし!ではこれからクロスレンジ及びAMF影響下における対魔導士戦闘の教導を始めるぞ!全員デバイスを起動しろ!」

 

 はい!といい感じに気合が乗った返事が返ってきて俺とイサムもデバイスモードで相棒たちを起動した。バリアジャケットではなく訓練着のまま己が相棒たちを構えた俺は、まだデバイスの扱いに慣れていないらしい受講生たちがわたわたと剣や杖、槍の形をした魔法の杖を起動するのを待つ。若干重そうな感じに持つやつが多いので筋力トレーニングを後でやらせようと俺は秘かに決意した。パワーは大事だぜ。

 

『もしかして魔法初心者ですか?クロスレンジ志望が多いのは分かりますけどAMFは早いような……?』

 

『やっぱ分かるか。だからなんだよ、一回魔法に頼らない状況を知っておいてほしいんだ。デバイスは今の管理局じゃ武器じゃねえって扱いだけどよ、現場で持つあたしらにとっちゃ相棒で武器だ。自覚してもらわねえとな』

 

『つまり一回追い込んでおきたいと。なるほどね……こういうスパルタなの好きだなあ』

 

「まずはクロスレンジの教導から入るぞ!全員二人一組を作れ!あぶれたらあたしかこの二人と組んでもらう!」

 

 はいっ!と小気味いい返事が返ってきて陸士候補生たちは次々と二人組を作っていく。30人って聞いていたからあぶれる人はいないだろう。それに確か陸士訓練校の同クラスだというらしいし、気心も知れているのか。ある意味で青春だなあ、陸士訓練校か、士官学校はお断りだが割とありかもしれないな。実力はあるつもりだが、どうもソロに特化してるもんな俺。

 

 訓練校でデバイスありの模擬戦をするのは珍しくはない。見た感じ戦闘魔法に触れて日が短いであろうことはよくよく読み取れるので俺とイサムは分かれてデバイスをぶつけ合う陸士候補生たちが危ない目に合わないように神経を張り詰める。時折防御魔法が間に合わずクリーンヒットが出そうになったらデバイスか防御魔法を割り込ませる。非殺傷はあるけど結局痛えんだあれ。

 

 そうして1時間ほどみっちり模擬戦を組を分けてやったあたりでヴィータさんはかつん、とグラーフアイゼンから音を出して体力を消費し息も絶え絶えな陸士候補生たちの注目を集める。どうやらここからが俺らのメインイベント、AMF対抗訓練らしい。ヴィータさんが指を鳴らすとフォン、とだけ音がする。試しにシールドを張ってみるが異様にやりづらい。これがAMFか。

 

「体にゃ何の効果もないが、これがAMFだ。アンチ・マギリング・フィールド、魔力の結合を阻害するフィールドだな。誘導弾主体のシューターはどうしてもこれ対策が必須になる、当然クロスレンジもだ」

 

 ちなみにこいつらは例外だぞ、とAMF環境下でシールド貼ったり、刀身を凍結させたりとどれくらいいけそうか確認する俺とイサムをサラッと例外扱いしたヴィータさんがピッピッと仮想画面を弄ると、楕円型だったり丸っこかったり四角だったりする様々なメカが投影される。管理局式のガジェットだ。

 

「つーわけで、折角例外が二人いるから対AMF戦闘をぶっつけ本番でやってもらう。クロスレンジ志望、よく見とけ」

 

「だって、やろっかカイト。そろそろ動きたくなってきただろ?」

 

「っし、大体感覚掴んだな……身体強化だけでいいか。クロスレンジの手本だっていうし」

 

「オッケー、正直この環境下だと俺遠隔系の魔法何も出来そうにないし、防御任せていいよな?」

 

「もちろん。ヴィータさん、お願いします」

 

 自らガジェットの群れに分け入ってど真ん中に陣取る俺とイサム、ヴィータさんはわざわざ敵のど真ん中に入るのかと呆れた顔をしていたが、どうにかなるとは思っていたのだろう。何も言わずにガジェットドローンたちに攻撃開始の命令を送った。背中合わせになった俺たちが同時に動く。

 

 動き出した瞬間身体強化を使って飛び出した俺たち。背後のイサムはビームを躱し、逆に俺はシュロスでビームを受けて進む。イサムが紙でも切る様に1型と呼ばれる細長いタイプのガジェットを切り裂いていき、俺は3型と呼ばれる大型の丸いガジェットをシュロスをぶつけて粉砕した。

 

 見えなくなっても困るので俺もイサムも身体強化の倍率はかなり下げているが、それでもやっぱり管理局式ガジェットは物足りないかな。スカリエッティ謹製だとこれよりAMF強度が高くて10倍くらい硬いらしいけど。

 

 父さんがやられたガジェットへの対策は滅茶苦茶やったからな。といってもシミュレーターで自己強化以外の魔法を縛ってひたすらマリアージュとぶん殴り合うだけなんだけどさ。

 

「カイト!足場くれ!」

 

「おう!」

 

 空中にいるガジェット2型を見据えたイサムが俺に声をかけてこっちに突っ込んでくる。俺はシュロスをイサムに向けて構えて、イサムがシュロスに乗った瞬間思いっきりやつを上に打ち上げた。いくつか姿勢制御用のシールドを展開するが、AMFのせいですぐに空中に溶けていった。イサムは空中に溶ける前のシールドをうまいこと蹴り上げて上へ飛び出し、ガジェット2型を斬り飛ばしていく。

 

 俺も負けていられないな、と地を蹴って襲い掛かるビームを全て受け止めて、近寄っては盾で轢き飛ばし、近寄っては戦斧で粉砕し、蹴り飛ばし、踏みつぶし、身体強化のみで使えるあらゆる攻撃を用いてガジェットをぶち壊していった。そうしてヴィータさんが終了の合図をくれると、壊したガジェットは映像となって消えていく。

 

「とまあ、こんな感じでクロスレンジならAMF環境でも対ガジェットはこなせるわけだ。JS事件のおかげでAMFへの対応と対ガジェットは管理局員に必須になった!各自気合い入れて行けよ!」

 

 ヴィータさんの大きく張り上げた声に負けじと返す返事。イサムと俺は起動しっぱなしのデバイスを待機形態にしてヴィータさんの補助に入るのだった。楽しかったな、イサム。だろ?

 

 

 

 

 

「それで、カイトはどうするの?俺と同い年ってことは今年で義務教育終わりだろ?局入り?」

 

「とりあえずは嘱託魔導士かね。DSAAは続けるよ、お前もだろ」

 

「負けっぱなしは癪だからな」

 

 一合、二合と盾と小太刀が交錯する。雑談しながらではあるが、体は本気で動いている。ラフィは今日一緒ではないので魔力による身体強化以外の魔法は無しで模擬戦をすることになった俺とイサム。模擬戦を見るズタボロの受講生たちの視線を受けつつ小太刀と斧、盾をぶつけ合う。

 

 技量、というか動き的に洗練されているのはイサムの方だな。盾も斧もアロイジウスのものは力任せの部分が多いので、鎧徹しのような技を使えるイサムの方が武器術の腕は上かもしれない。そもそも使う武器が違うから比べるも何もないか。身体能力については俺の方が上だ。御神流の剣術にパワーで対抗するのはお前くらいだとぼやかれたけど。

 

「ふんっ!」

 

「ワイヤーを筋力で千切らないでくれ!」

 

「おら!」

 

「飛針を纏めて握りつぶすな!」

 

「これがアロイジウスだ!」

 

 悲しいことにこれがアロイジウスである。何度も言うがアロイジウスを支えるのは筋力、腕力、魔力、技なんて二の次だ。守って攻撃を当てればいつか勝てるんだからな!とイサムのワイヤーを筋力で引きちぎり、飛針というらしい金属製の大針を5本まとめて握ってへし折ったりしているとイサムから文句が飛んだ。お返しの戦斧の一撃は二刀で見事に逸らされる。

 

 力で対抗せず技で俺が振るうフラムの力の向きを変えて逸らされた一撃はダミーのコンクリ塀を一撃で粉砕し、返す刀の小太刀を防御した余波が鉄柱を真っ二つにする。神速を併用して俺の周りを正しく目にも止まらぬ速さで移動しながら連撃を叩き込んでくるイサムを俺は勘と動体視力で捉えてシュロスとたまにフラムで防御し続ける。

 

「あそこまでやれなんざ言わねえけど、少なくとも現場出るようになったらアレに近いもんはあるぞ。よく見とけ」

 

「……見えねえんですけど」

 

「残像しか見えません教官!」

 

「あれで身体強化だけかよ……」

 

 楽しくなってきた俺とイサムがもっと速度を上げてイサムの輪郭が消え始めたくらいでヴィータさんが乱入し的確に俺とイサムの後頭部を狙ってグラーフアイゼンを叩き込んできた。お互いに相手に集中していたせいで意識外だったヴィータさんの一撃を見事に食らった俺とイサムは悶絶してうずくまる。

 

 あきれ返ったようなヴィータさんの深い蒼の瞳の中には笑みと感謝が映っていた。そして、俺とイサムはあの状態の俺たちを相手にいとも簡単に攻撃を当てた小さな古騎士を、改めて尊敬の目で見つめるのだった。




 作者実はヴィータさんが一番好きだったりします。だってねえ?STSのアレ見ちゃったら好きになるしかないでしょうよ。というわけでまた次回に。

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