魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡 作:防御特化っていいよね
ヴィヴィオとアインハルトの真剣勝負からはや1週間、今俺は……戦場のど真ん中にいます。具体的にはテロ組織のアジトの中に突っ込んで大立ち回りを繰り広げていた。真正面から壁をぶっ壊して現れた俺に対して泡を喰ったテロリストたちは慌ててデバイスやら質量兵器やらを構えて射撃をかましてくる。俺はそれをバリアを張って防いだ、同時に俺の後ろからオレンジ色と金色の誘導魔力弾が飛んできて正確に相手の脳天を打ち据える。
「クリア、前に進みます。援護どうも、フェイトさんティアナさん」
「油断しないで。この先まだまだ出るわよ」
「うん、カイトなら大丈夫だと思うけど、ここは遺跡でもあるから変なトラップにも注意してね」
「ベルカじゃ罠ありの要塞は珍しくなかったですよ、ここは末期じゃなくて中期あたりの遺跡だと思いますけど」
そして今回一緒にテロリストにカチコミをかけているのは管理局のハイパーエリート、執務官のフェイトさんにティアナさんである。ちなみに俺は嘱託魔導士としての指名依頼をこの二人から貰って今回この現場にやってきた。どうしても閉所での戦闘になるから信頼できるフロントアタッカーが欲しかったらしい。残念ながらスバルさんは海じゃなくて陸所属なので協力依頼が出来なかったのだとか。陸と海の溝は深いなあ。
そこで指名、というか白羽の矢が立ったのが学校を卒業し就職を投げ出し資格を取っただけのプーの俺、暇なうえに無駄に硬いフロントアタッカーである。根城が古代ベルカの遺跡ということもありトントン拍子で機密性が高い任務への参加を許可された。ついでに陸戦Sという魔導士ランクも役に立ったとか。とってて良かった~。
長い通路の幅ギリギリにシールドを展開してそのままダッシュする。後ろをついてくるティアナさんとフェイトさんに後ろを任せて俺は前を何とかしよう。シールドを展開したまま走る、これすなわち相手にとっては壁が迫ってくるのと同じ、何人もシールドに激突し、張り付いた状態で俺は速度を落とさず走り続け、向かい側の壁に突っ込んだ。
メゴォ!と聞くに堪えない音を立てながら壁が陥没し、10人ほどのテロリストが壁とシールドにサンドイッチされて悲痛なうめき声をあげて気絶する。バインドには俺適正ないので二人に拘束をお任せしてそのまま次の通路で同じことをして確実にテロリストを減らしていく。
「カイト、ここの壁抜けるかしら!?」
「了解!ラフィ!」
『剛撃』
ラフィが発動した衝撃を加速させる術式を纏わせたシュロスを構えて目の前の壁に突っ込む。爆散した壁の中にソニックムーヴを纏って突っ込んだフェイトさんが目にも止まらぬ早業で中央で何かを抱えていた男を拘束する。遅れてティアナさんの徹甲弾が取り巻きの頭を正確に打ち抜いて気絶に追い込んだ。何という早業、阿吽の呼吸というやつだ。
「組織の全構成員の拘束を終了、引き渡しだね。お疲れ様、ティアナ、カイト」
「お疲れさまでした。すいませんフェイトさん、私の追ってる事件に巻き込んで。カイトもありがとうね」
「いい運動になったので大丈夫です。執務官二人がかりって結構重要度高い場所なんですかね?」
「ん~、それは機密だからないしょ。あとは帰るだけだね。ああ、結構壊しちゃったな……」
やりすぎたかな、と俺はちょっと暴れた結果を眺めて反省する。結構いい歯ごたえの運動にはなったんだが、重要な部分は意図して避けてはいたんだけど古代ベルカの遺跡の中を荒らしまくってしまった。後で発掘調査をする人から叱られるやつだなこれ。反省、と俺は突入してきた武装隊に後を引き継ぐ執務官二人を眺めるのだった。
「そういえばカイト、今年のオフトレも来るよね?」
「いいんですか?」
「いいに決まってるよ~。はやてたちは来れないけど、ヴィヴィオもカイトはくるものだって思ってるよ?」
「そういえば今頃は中間試験やってんのかヴィヴィオたちは。アインハルトも誘うんだっけかな」
そうかー、もうヴィヴィオやフェイトさんやなのはさんたちと知り合って1年経つんだなあ。時の流れは早いもんだ、ちょうど俺ももうすぐ16か。アンダー15の大会に参加しなかったのが心残りだが、まあそこら辺は納得いくまで鍛え上げられなかった当時の俺の責任だ。しょうがない。
そしてオフトレ、魅惑のオフトレである。あれまじで楽しかったんだよなあ。楽しかったのもそうなんだけど現役の管理局エースの人たちとトレーニングして、模擬戦まで出来るとあってはそりゃあ行かないという選択肢がないわけで。ヴィヴィオも今年からデバイスを持ったんならDSAAに出るだろうし模擬戦にも入ってくるだろう。
「あ、ここでいいです。待ち合わせしてるんで」
「そう?ヴィヴィオと?」
「いや、アインハルトとですね。お互いの先祖について色々とありますし、覇王流の矯正もしなきゃいけないので」
「そっか、お師匠様だもんねカイトは」
「いや、それは初代の話でして」
任務後直帰するというフェイトさんに半ば無理やり車に引きずりこまれて助手席に座らされた俺が胸ポケの中で眠っているラフィを摘まんで起こしながら路肩に止まってくれたフェイトさんにお礼を言ってドアを開けて外に出る。実は今日、アインハルトから会いたいという連絡を貰っていて待ち合わせをすることになったのだ。
任務があるから時間遅れるかもしれんぞとは言ったのだが、待っていますと言われてしまえば首を縦に振るほかなく、なので俺は全力で任務を早く終わらせるために頑張ったのだ。いつもより容赦なくやったので非殺傷を抜きかけて焦ったけど、始末書が増えるのはごめんだ。寝ぼけたラフィを頭に乗せて曲がり角をいくつか曲がると見覚えのある銀髪が鞄を両手で持って姿勢よく立っているのが見えた。
「よう、アインハルト。待たせたか?」
「いえ、今日はよろしくお願いします」
「ああ、そんじゃいくか。こっちだ」
物静かだなあこいつ、と一瞬思ったが違うわ。緊張でガチガチなんだな?まさかヴィヴィオ相手にあんなに凛とした姿を見せているアインハルトが両手両足を同時に出すというベッタベタな動作でカチコチと動き出すのを見て俺は内心で申し訳ないが笑ってしまった。うーん、あの路地裏の堂々とした姿はどこに行ってしまったのか。頭の上のラフィが突っ伏して笑いをこらえているほどオーバーな動作だ。
「……大丈夫か?」
「な、なにがですか!?」
「いや、変に緊張しているからさ」
「それは、その……ヴィヴィオさんたちの前では何とか取り繕えましたが、今更どんな顔をして会えばいいのかと……ましてや教えを乞おうとしていますし……」
呼びつけたの君だけどな?という言葉を飲み込んで俺は素直な奴だなあと歩きながらある意味で感心する。アインハルトにとっては記憶の払拭は死活問題だ。問題の大きさで言うならジークよりも重いかもしれんな、ジークのアレは術式な分制御ができる可能性を残してはいるがアインハルトの記憶継承は偶発的な側面が大きい、制御は無理だな。だから、どうするかという話なわけであるが。
「とりあえずはシュトゥラの話から進めようか。多分お前の記憶の中じゃ、何がどうしてそうなったかが欠けてる所があるはずだ。前後の情報を補完することも必要だろ」
「は、はい!お願いします!」
「主カイト、私はイクス様と出かけてくる。聖王教会にも寄ってくるから騎士カリムに言伝があれば今承ろう」
「了解、フラムもってけ。念のためな。騎士カリムには覇王についての記録を漁ってほしいって伝えといてくれ」
「承知した」
分かれ道で大きくなったラフィにフラムを手渡して別れる。俺が何時も住んでいるミッド郊外の家で待っているイクスの体の様子を見に行くつもりらしい。今から俺が向かうのは俺の実家の方なのでここで一旦分かれることにした。騎士カリムが管轄しているところはかなり安全だとは分かっているが、イクスが一緒なんだし武器があった方がいいだろう。何だったら斧槍術は俺より達者だしなラフィは。
ひらひらと手を振って家に戻るラフィに背を向けて俺はベルカ自治区の外れにある実家にアインハルトと向かう。借りてきた猫、いや怯え方を見るにウサギか?とてもヴィヴィオを圧倒していたライオンのような少女とは思えない態度で後ろをついてくるアインハルトに俺はやりづらいなあと頭を掻いた。
「……なるほどな、お前が覚えているのはクラウス殿下の生涯で強く焼き付いた記憶のみってわけか」
「はい。特に聖王女オリヴィエがやってきてからの日々が多いです。楽しかった記憶も、辛かった記憶も」
「日常生活とかについてはむしろ覚えてないわけか。オリヴィエ陛下との記憶、ね。グラムについても?」
「お師さまの記憶も多くあります。ですが、一番鮮明に思い出せるのは……彼がシュトゥラを辞した時の記憶です」
俺の実家の広さと堅牢さに目を丸くしたストラトスをとりあえずと屋敷の中に案内する。俺の実家は古代ベルカの色んなもんが雑多に収められているが、その中でも特に大事なものは屋敷の地下にある扉に掛けられた魔法から行ける半分虚数空間に位置する異界倉庫にあるので家のやつ以外を入れたことはない書斎にアインハルトと一緒に入った。
鍵である俺の生体情報とシュロスがあるので入室は出来る。持ち出しはラフィがいないと無理だが。今は亡き古代ベルカの謎結界技術だ、ぶっ壊れたら俺には再現できん。そこで俺は保存魔法がかけられた初代の手記を手に取ってアインハルトにどこからの記憶があるかと聞いた。
とりあえずそれと照らし合わせてアインハルトに聞く限りでは、記憶は断片的らしくやはりクラウス殿下が強く記憶に焼き付けたもののみがアインハルトに伝わっているようだ。それと身体記憶である覇王流も……もっとも覇王流については体の動きや構えなどの前提条件を無視した型、技の伝え方のようで形になってはいるが、やはり歪としか言えない感じだ。
「ふむ……まあ大体理解したわ。それじゃあ次は……」
「あの……」
「どうした?」
「不躾なのですが……どうして、襲撃者である私の願いを聞いてくれるのですか?その……普通でしたら遠ざけるかと思うのですが……」
「そうだなあ……特に理由なんざねーな。しいて言うなら、お前が困ってるからか」
不可解そうに、申し訳なさそうに、そんなことを言うアインハルトに俺は顎に手を当ててそう返す。確かに一般的な価値観ならあの邂逅のあともう一回そいつに会おうなんざ考えないだろうが、俺は現代の価値観も持ち合わせつつ、古代ベルカの価値観も持ち合わせている複雑な人間だ。とある戦場で殺し合った相手が、次の戦場じゃ戦友だったなんてよくある話だ、逆もしかりでな。つまり何が言いたいかというと、殺されかけたくらいじゃ嫌う理由にはならん。ましてやアレは俺が望んでやったことだしな。
「そんな、理由で……?」
「そんな理由だろ、ノーヴェさんもな。そもそも俺がああしたのはお前の目的を誤解したからだ、誤解が解けた以上何も言うことはない」
「それでも、私は……覇王の血統は貴方方を国から追いやり、逆賊としての汚名を被せました。それがなぜ……どうしてここまでクラウスのことを好意的に……!」
アインハルトに渡した初代の手記、その中には一言一句足りともシュトゥラもクラウス殿下のことも悪し様に表現した言葉はない。そこにあるのは主君に対する忠心と、師父としての愛情……そして子を持つ親としていずれ王となるクラウス殿下への秘めた親心のようなものであった。それを読んだアインハルトは知らずのうちに片目から涙をこぼした。まるで時を超えて殿下の心に触れることが出来たような、そんな感じの感慨を俺の中の初代は抱いている。
「そういうもんだぜ?初代の記憶もそうだが、俺たちアロイジウスは覇王家のことを恨んじゃいねーよ。そういう時代だったんだ、むしろ忠を尽くさせてくれて感謝してるくらいさ」
「……今回、無理を承知でお願いしたのは……クラウスの悔恨の一つを成すためでした。覇王として名をあげた後も終ぞできることの無かった……アロイジウスへの、お師さまへの謝罪を……その記憶を持つ、貴方へ」
「そいつは……」
「分かっています。自己満足以外の何物でもないということは。ですが、師を死地においやり、オリヴィエの最後を看取らせ、弔いまで任せた最大の忠臣に対して
混ざった、と直感的に理解した。歪むアインハルトの顔、血を吐くような言葉の中に混ざるクラウス殿下の一人称に俺の中の初代の感情がざわつくのが分かった。俺はその感情に、身を任せることにした。
ちなみに主人公の家の蔵はベルカに立っていた当時のアロイジウスの屋敷の蔵の中につながっています。現在ベルカは実質虚数空間にあるので虚数空間に行くということでもありますが。古代ベルカマジックって便利ー。
ではまた次回に。感想評価よろしくお願いします