魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡   作:防御特化っていいよね

40 / 60
第40話 謝罪と師弟

「謝罪させて欲しい、アロイジウス……師グラム。僕の選択は、君たちの名誉を地に落とし、帰る場所を奪った。決して許されることではない……!」

 

「お気になさることではない。シュトゥラの騎士として、主君に使える騎士としてこれほどの誉れはない、そう思っていました」

 

 クラウス殿下と混ざったアインハルトの口から、当時の悔恨が籠った重々しい謝罪を口にする。対して俺がやったことは、あの夜と同じ。半ば強制的にそうさせられたのではなく、俺の意志で初代の感情に体を明け渡した形にはなるが、時を越えて師弟の邂逅が為った。もちろん、本人ではなくその残響の残響、幻でしかないが。

 

「よろしいですか殿下、私は我が子孫も含めてその密命を誉れとして誇りに思っています。ほかならぬ貴方が、それを間違いなどと……それは受け入れられませぬ」

 

「お師さま……」

 

「ご自分を許しなされ、愛しなされ。自らを傷つけるための拳を私は育てたつもりはありませぬ。その拳は……」

 

「自らを、誇りを、守るべきもののために……!」

 

「そう、貴方が握ったその拳は、必ず誰かを救っています。謝罪など、必要なし。胸を張ってくだされ。わが騎士は忠誠を果たせたのだと。それが我らへの救いとなります」

 

「当然だ……!貴方は、シュトゥラ筆頭騎士、城塞のアロイジウスは!僕の、クラウスの唯一無二の忠臣だ……!!」

 

 正直、自分の口から出る言葉に驚いた。いつの間にか立っていた俺とアインハルトの口からこぼれ出る己じゃないものの言葉。アインハルトもそうだろう、初代の感情が荒れ狂うことはここ1年で何度かあった。だけどそれは、記憶に残る残滓。押さえつけて俯瞰することができるものだった。

 

 だけど、今は違う。記憶は形を成し、往時の人格を取り戻し、俺という器を借りて今ここに立っていた。乗っ取られたわけではない、アインハルトは分からないが、俺はいつでも主導権を取り戻せる。その確信があった。おそらく継承の術式の中に、こういう時のためのシステムが組み込まれていたんだろう。あくまで、体の主導権は俺で、貸し与えているから初代が顕現できたという感じか。

 

「その言葉を聞けて安心しました、わが主君よ。どうか御身の子孫へ身体の返却を。我らは既に、終わった身です」

 

「……そうか、僕の感情が、僕の子孫を蝕んでいるのか……。アロイジウスの末裔よ、この子にどうか……優しい記憶を。僕の悔恨を塗りつぶす、鮮烈で幸福な記憶を……戦いの果てに、行かせないでくれ。主従としてではなく、友としてあってほしい」

 

「……っ!承知しました!今代の城塞として、承ります」

 

 俺の記憶の術式は、どうやら感応してクラウス殿下の人格も記憶を寄せ集めて作ったらしい。術式制御じゃない記憶継承はクラウス殿下にとっては恐らくイレギュラー、初代から唐突に返された体の制御に驚きながら俺は何とか残響のクラウス殿下の願いを受諾した。クラウス殿下はヒントを残してくれた、頷いたクラウス殿下の気配が薄れていく。残響は、消えた。

 

 クラウス殿下の魂に刻まれるほどの強烈な悔恨が偶然成した記憶の継承は、アロイジウスやエレミアのような決して消えぬ術式により刻まれたものじゃない。制御が効かない代わりに、塗りつぶすことができる。残響のクラウス殿下が塗りつぶすと評したのはそういうことだろう。ふらついてアインハルトを受け止めて、思考をフル回転する。

 

「まさか初代がクラウス殿下の血筋に会った時のために術式くんでたとはな……あの夜も初代の感情が荒れ狂ったのもそれが原因か……それにしても」

 

「ひゃ……!?あ、あの……そのぉ……」

 

「ん?どうしたアインハルト。ああ、悪い。足元がおぼつかなかったかみたいだからついな」

 

「い、いえ。まさか、クラウスの人格が形を成すだなんて」

 

 驚いた様子のアインハルトがふらついたことに恥ずかしくなったのか少しだけ頬を染めながら自力で立ち上がる。正直俺も驚いた、初代の術式はどうやら一定範囲に影響を及ぼすものだったらしく、城塞不撓の結界術の応用で効果範囲を広げて一定範囲に効果があるものだった。だからこそクラウス殿下が偶然とはいえ残響として出現した。

 

「……記憶の方は、どうだ?」

 

「……変わりないです。今でも、叩くようにクラウスの悔恨が聞こえてきます」

 

「そうか……」

 

 さすがにそううまくはいかないよなあ。アインハルトはアイデンティティとして今まで記憶だけを頼りに覇王流を鍛え上げていたけど、いきなりその記憶の主の言葉を聞いたからとてはいそうですかとなったりはしないだろう。俺はぽん、と彼女の肩を叩いて一回落ち着くことにした。

 

「とりあえずここからは出よう。この後覇王流のこともやろうとは思ったが、さすがに今すぐは無理だ」

 

「いえ!どうか、御指南を。私なら大丈夫です!」

 

「却下だ。そもそももう夜も更ける。少し休んだら送っていくから帰れ」

 

 そんな、と言うアインハルトの瞳には少々疲れが浮かんでいた。そりゃそうだ、俺ですらも未体験のことを体験させられて精神的に少し疲れている。衝撃を受けてはいても行動指針を変えるほどの打撃ではなかったのか、アインハルトは覇王流の指南を求めている。いや、違うな……こいつ多分根本的に格闘技が好きなんだろ、ヴィヴィオと同じタイプだ。記憶に振り回されているけどな。

 

 保管庫からアインハルトと一緒に出て地上に上がり、半ば無理やり居間のソファに座らせる。俺にはコーヒー、アインハルトには紅茶を淹れて茶菓子と一緒にテーブルに置いた。いつもはやらないが疲れたので角砂糖を4つ纏めて投入し乱雑にかき混ぜてグイッと飲み干す。アインハルトはそんな俺が珍しいのかぱちくりしながら自分も角砂糖を一つとミルクを紅茶に混ぜて口をつけた

 

「そういやお前St.ヒルデ魔法学院なんだって?俺が所属してた頃は会わなかったんだけどな」

 

「その……流石に初等科と中等科は校舎が違いますから」

 

「ヴィヴィオはほぼ毎日遊びに来てたんだけどなあ」

 

「それに私は……気まぐれにつけたテレビのニュースでようやく貴方のことを知りましたから」

 

 それまでずっと、遊ぶことも娯楽に浸ることもなく覇王流のトレーニングを積んできたんです、という彼女。親はどうしているのかと尋ねたがどうやらアインハルトを残して別世界に赴任しているらしい。管理局員、というわけではないのだがそこが中々に危険な世界でアインハルトを連れて行くわけには行かなかったのだとか。だから、望むもの……トレーニング器具などは与えられて不自由はしなかったらしい。両親には記憶があることはいっていないと……なるほどね。

 

「もしかして俺を見たからあんな仮面付けて殴り合いしてたのか?」

 

「そ、そうではありませんっ!あ、あれについてはその……ちょうどよく変装できるものがあれしかなかったと言いますか……」

 

「……騎士甲冑ですらなかったのかよ。どこで売ってたんだあのバイザー。大人モード使えるなら手足の長さそのままに顔変えればいいのによ」

 

「あっ」

 

 変なところで抜けてるやつだなこいつは。まあ、年相応に可愛げがあってよろしいことで。ん?まてよ?アインハルトのあの深夜徘徊についてはティアナさんから厳重注意という形で終わらせたと聞いているが、さすがに書類上の賞罰に記載がある形で終わったんだよな?両親が知らないってことはもしかして書類にすら残さなかったり?うおお、職権乱用だ。ま、まあ俺が気にすることではない。黒歴史仮面の話はここで終わらせてしまおう。

 

「ああ、そうだ帰る前に。お前オフトレくるの?ノーヴェさんが誘ったって言ってたけど」

 

「その、練習があると言ったのに強引に……オーバーSのトレーニングも見れるからと」

 

「……ノーヴェさん詳細伏せたのかよ……航空魔道隊の戦技教導官が主としてやるトレーニングだ。自主練よりもよっぽどためになるぞ」

 

「航空魔道隊……!?管理局のですか!?」

 

 アインハルトがかなり驚いた様子で口元を抑える。教導官というのは経験、魔法、身体能力全てにおいて高レベルであり尚且つ専門の資格を持ったいわば魔法のスペシャリストのことを指す。平たく言えば魔法を教えるプロフェッショナルなのだ。そして航空魔道隊は管理局の花形部署の一つ。いわば海の執務官、陸の航空魔道隊、ツートップエリートなのだ。にゃはは~と笑うあの人、元機動六課の例に漏れず滅茶苦茶凄い人なのだ。

 

 残念ながら今回は八神家は参加見送りになったらしいけどエースオブエース、高町なのはのトレーニングを受けられると聞いてもろ手を挙げない魔導士はいないだろう。世俗に疎いらしいアインハルトも管理局のことは知っているらしくそわそわとしだした。うーん、これは半ば参加は確定みたいな感じじゃないかな。いいことだ。

 

「まあそれも、試験の結果次第だけどな。勉強してるだろ?」

 

「……はい」

 

 怪しい返事をするアインハルトだが、とりあえず俺はそれを聞かなかったことにして彼女を自宅まで送り届けるのだった。

 

 

 

 

「いらっしゃーいカイト君、それと初めましてだね?高町なのはです」

 

「どうも、なのはさん」

 

「イサム・フワです。恭也さんからお話は聞いていますし、雑誌のインタビューも読んでます」

 

「カイトせんぱーい!いらっしゃーい!フワさんも、ごきげよう~!高町ヴィヴィオです!」

 

 数日後、俺の姿は高町邸にあった。というのもオフトレ合宿の件について折角なのでイサムを誘ってみようと思ったのだ。なのはさん、あとホテルアルピーノのオーナーであるルーテシアに確認したらオッケーとのことなので今日一応挨拶ということでなのはさんの休日に合わせる形で俺が案内することにしたわけだ。

 

 イサムは、俺がインタビューやら何やらで四苦八苦しているときに地球に行って海鳴というらしい街にいる御神流を継ぐなのはさんの実家に挨拶にはいっているらしい。そこでしこたま恭也さんになのはさんの話をされたのだとか。イサム自身も管理局員としては知名度がバカ高いなのはさんのことは知っていたらしい。

 

「カイトに誘われるがまま来ちゃいましたけど、よろしいんですか?俺みたいな初対面の人間がトレーニングに混ざるのとかも」

 

「い~よ~!今年は新参戦の子がたーくさん居るから一人増えたところで問題ないない!むしろ、クロスレンジで強い子は沢山いていいからね!」

 

「ヴィヴィオ、テストどうだったんだ?」

 

「えっへへ~!見てくださいっ!花丸評価で優等生ですっ。コロナもリオもそうなんですよー」

 

「おお~。魔導関係は流石だがやっぱり文系だな。大手を振って行けるなヴィヴィオ」

 

 えへん、と胸を張って突き出された成績表に並ぶ花丸の乱舞、オフトレ合宿出発は明後日なので俺はむっふふ~と得意満面のヴィヴィオにほっこりしながらなのはさんが淹れてくれる異様に美味しいコーヒーを頂いた。イサム曰く、なのはさんのご実家は喫茶店を経営しているらしい、ホテルに泊まるつもりがいつの間にか下宿に変わってたとか言ってたが……ともかくコーヒーとシュークリームが絶品なのだとか。なのはさんが料理上手なのもそこら辺から来てるのかね。

 

「カイト、俺はいまいろんな意味でお前と出会えたことに感謝してるよ」

 

「よせよ。偶然だ。そういえばお前のご両親は許可くれたのか?」

 

「ああ、地球の件もそうだがかなり感謝してた。今度でいいから道場に来てくれ」

 

「暇だしオフトレの後にでも邪魔させてもらおうかな」

 

 イサムの実家かあ……こいつとはDSAAの試合後に週1レベルで模擬戦やらトレーニングをする仲なのだが、行う場所は大抵魔法使用可能な公園か俺の家の私有地だったから行ったことないんだよな。ミッドの都市開発はかなり画一的で、イサムの家があるエリアは移住者が集まるところだ。イサムの先祖はどうも100年ほど前に次元震でこっちに飛ばされた武芸者だったらしいんだが、それがよくもまあ伝わる武術を魔法に適合させたもんだよ。

 

「いやーイサム君が来てくれて助かっちゃうよ~。カイト君と同レベルって探してもいないから。模擬戦のチーム分け困っちゃってて」

 

「分かりますよ。こいつ反則ですよね。緊急術式ならともかく終ぞ防御魔法斬れなかったんですよ俺」

 

「それを言うならお前速すぎて攻撃が当たらなかったんだが?」 

 

「当てた奴が言う言葉じゃないんだよカイト。あのケージ魔法に区切られた時マジで焦ったんだからな」

 

 今更俺自身弱いなどと口が裂けても言うつもりはないけど、イサムにだけは反則だのなんだの言われたくはない。神速ってなんだアレ、魔法無しでフェイトさんのソニックムーヴ並みの速さを叩き出すな。俺が全方位から攻撃が迫るベルカシミュレーター経験者じゃなかったらそのまま真一文字に斬られてたぞ。防御に関してはほぼ勘だったんだからな?と俺はライバルに対して苦言を呈するのだった。




二回目のオフトレ回!という感じでやっていきます。イサム君も追加ですはい。それではまた次回
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。